2009年12月26日土曜日

仕事納め

とりあえず25日(金)で年内の仕事納めということにして、残りの日は年次休暇を申請。
とは言え、メール仕事や自宅パソコン作業は適宜行う予定。

QMF2009のためのSydney出張から戻ってすぐにJAFEE大会という流れでしたが、まあ何とかいずれも無事に終了。
行きの飛行機では3時間ちょっとは眠れたと思います。着いたその日の午後に発表。
まあ、いつもの調子の危うい英語で自分のプレゼンをして、主旨の分からない質問に I have no idea と答えて終了。質問者は次のスピーカーで、その話を聞いていて質問の意図が分かったのですが、それでも答えは I have no idea が妥当。

QMF2009 は最終日の朝、ホテル全館が停電。17階(日本でいうところの18階)の部屋だった自分は昼近くまで部屋で待機。停電に関する館内放送はありましたが、QMFについてのアナウンスは特になかったはず(2階(日本でいう3階)がQMF2009会場)。まあ停電というアクシデントだし、中止だろうと勝手に決めていました。
部屋を出てしまったらカードキーは停電で使えなくなるのではないか、という心配もありました。
(実際にはカードキーやセキュリティボックスはバッテリーだったのか停電でも使えましたが)

待てども状態は改善されないので、昼前には真っ暗(細長い蛍光ライトみたいなものがところどころ置かれていた程度)の非常階段を下りていき、ホテルの外へ脱出。近くで味噌ラーメンを食べました。
その後少し土産を買ったりしてしてホテルに戻って、日本からの別の参加者に会って話しました。
なんと、電気も使えない状態の中で最終日のプログラムはホワイトボード講演によって粛々と進行したとのことでした。数学者タイプの人の講演だったから、確かにプロジェクタなど使えなくても会場に外光が差し込み、ホワイトボードがあれば講演は可能ではありますが・・・

朝7時少し過ぎに停電して、午後3時半くらいに復旧しました。
翌朝チェックインでしたが、停電によるディスカウントなど何もありませんでした。
文句を言ったら割り引いてくれたのでしょうか?

23日と24日のJAFEE大会も自分が座長をしたセッション以外は、会場外でバタバタと裏方仕事をしていたので、講演はほとんど聞けませんでした。
それでも、2日間で延べ170名近い参加者があって、JAFEE大会としては大盛況でした。
ICSのM2学生、博士課程学生、先生の発表がそれぞれありましたし、M1で会員になっている方も何人か参加してくださいました。

大会の前後もバタバタとメール仕事や事務仕事に追われてましたが、ようやく一段落。

年末年始は多少ゆっくりできそうですが、結局年内に終えられなかった仕事もあり、年明けすぐに対応しなければいけません。1月は、修論指導やら「季節労働」やら3件の発表or講演予定(どれも違うネタをかけるつもり。話慣れたネタもありますが、自分としては初めて話すものもあり、準備も多少必要)。

ということで、12月が終わっても走ることになりそうです。
まあ、世の中には私より本当に忙しい人が、ごまんといることは承知してますけど。

良いお年をお迎えください。

2009年12月9日水曜日

2010年度の担当授業について

まだ最終確定しているわけではありませんが、これを書いている時点での2010年度の時間割案における私の修士向けの担当授業と開講時期・曜日時間は以下のように案になっています。

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」は春学期火曜2限に実施
(昨年度、今年度と「金融数理の基礎」をやっていた時間帯です。こちらは動かない可能性が高いです)

「金融数理の基礎」は秋学期火曜1限に実施
(こちらは学期は秋学期のままだと思いますが、曜日時間は動く可能性が残っています)。

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」については、昨年度、今年度とやってみて、それなりに内容としての落としどころが見えてきた気もするが、ある意味で金融リスク管理の話題は生ものの素材であることに留意したいとも思っている。基本的には今年度の内容をベースにしていくつもりではある。

「金融数理の基礎」は秋学期に移すこともあるし、過去2年の反省(?)をふまえて、内容を大きく変えるつもり。基本的には離散時間モデルの枠組みで、マルチンゲールという概念を通じてオプション価格評価法を理解するというコンセプトなので、これまでと主目的は変えないつもり。
しかし、これまでは比較的高度な概念を具体的な計算を通じて理解してもらうことに重きをおいていたつもりだったが、試験や宿題を採点していて、計算はそれなりにできているが、その意味についてどれほど理解しているのかについて疑問符がつくような解答も少なくなかった。

ということで、オプション理論としての深みはなくなっても、
きちんと数学的思考で最も基本的な結果に到達することの方が、この授業のコンセプトとしては重要であるという考えに傾いている。

ということで、来年度は「集合と位相」「測度論」「積分論」などについて関連する話題にも、むしろ積極的に踏み込んで、抽象的な議論にも慣れてもらうことを意図しようかと思っている。
もちろん、基礎科目であるということは忘れていないので、いたずらに難しいことを教えるつもりはない。この分野を厳密に理解するには、こういう数学が必要なのですよ、というツアーガイドとしての役割が果たせればよいというくらいの考えでいる。

とは言いながら、そういう授業をしたことがないので、資料を収集しているところ。
手始めに、30講シリーズを取り寄せたので、数学が専門でない人向けに、集合や測度をどのように導入すればよいかをじっくり考えていきたい。


Project-Yo, Project-O, Project-N

Project-Yo は、原稿ファイルと画像ファイルを提出し、後は出版社の担当者と校正のやりとりになる模様。A4サイズでも37ページとけっこう長い論文で、1ページまるごと数表だったりもするし、脚注も多い。最終的には縦22cmサイズの単行本に収まることになるので、図表の配置やらで編集者を(そしてそれを校正する我々も)苦労させることになりそうだ。

Project-O は、パートナーが再投稿したようで、その journal のシステムから君のID登録がされたという連絡がきたので、ログインして自分の情報を微修正。

Project-N は、いろいろあったが、来週Sydney で発表できることになった。15日夜発の flight で現地には16日の朝着予定。自分の発表は、15:40からなので、飛行機が成田に引き返すようなトラブルがなければ、時間的には余裕だが、心の余裕は?
(自分の発表が早い内に済んだ方が、いろいろと後日程で心に余裕ができてよいのだが)

2009年12月4日金曜日

Project-Yo, Project-O, Project-N

Project-Yo は再投稿した論文がめでたく採択された。

Project-O は、自分で気になった記号ミスを修正してパートナーに戻す。近く、別の journal に再投稿する予定。

Project-N は、昨日英語版の修正をしていたところ、9月末に分析用に整備したデータが微妙におかしな状態になっていたことを見つけて、パラメータ推定から全てやり直す羽目に。
そのせいで、当初の(というか正しくないデータを用いた)結果よりも微妙な推定結果に・・・とりあえず分析結果を全て刷新し、考察コメントもそれにあわせて修正しないと。

2009年12月2日水曜日

現状の覚え書き

気がつけば12月。自分として研究が進んだという実感はほとんどなく、ひたすらいろいろなものに「コメント」して評論家生活に落ち着いてしまった感がある。
「研究者」としては極めてよろしくない状況。打破したいのだが「教育者」として忙しくもなっていく・・・

自分の研究プロジェクトについての今時点での覚え書き。
  • Project-GP:プロジェクトの進捗自体追えず・・・
  • Project-JH:完全放置状態。
  • Project-K:日本語版のドラフトはだいぶ整理できてきた。今月の英語発表2件と日本語発表はパートナー任せ。日本語発表の機会には、研究としての落としどころを見つけたい。
  • Project-N:日本語版は投稿した。英語版は発表して考えるつもり。
  • Project-O:パートナーが数値計算をやりなおしたらしく、近く revised paper を送ってくれるらしい。
  • project-SG:とりあえず継続の方向でいるはずだが・・・
  • Project-Ya:とりあえず英文ドラフト第1弾はできた。きちんとした数値実験の設定を練ろうというところ。
  • Project-Yo:再投稿して final answer 待ち
  • Project-Yu:方針については合意できたが・・・今度はこっちのリアクションの番だっけ?

2009年11月29日日曜日

Projec-Yo, Projec-Ya

Projec-Yo はとりあえず我々の対応を終了して再投稿。

Project-Ya もmilestoneが眼前なので、急ピッチで進行中。

2009年11月21日土曜日

Projec-Ya, Projec-Yo

3連休の初日、Projec-Ya と Projec-Yo に対応。

特に後者は、かなり論文に手術を加えた。
短い時間で大胆に切り貼りしたので、後のケアもしっかりしないと。

2009年11月19日木曜日

Project-Yo, Project-Yu, Project-N

Project-Yo はテクニカルな部分について修正項に反映。統計的な部分をかなりしごかれた感じですが、それはそれで勉強になりました。
critical comments については、私なりの対処方針案を示して、パートナーに投げた状態。Editor には月末まで待ってもらう。

Project-Yu は short questions に回答して、先方の方針に agree しておいた。

Project-N は、今後展開させるためには censoring の作法を知らないとだめかもと思い、今更ながらこちらこちらに目を通す。

2009年11月15日日曜日

Project-Yo

Project-Yo について査読結果が返ってきた。
レフェリーからまたも厳しい(?)指摘が返ってきたので、テクニカルな部分へのコメントに対処の道筋をつける。

ただ、レフェリーが納得していない最大の部分にどう応えるかは、少しやっかいかもしれない。
「書き方」の問題のようにも思えるのだが・・・

2009年11月12日木曜日

無題

JAFEE冬季大会のプログラムが公開されました。
個人であれば会員に限らず、非会員の方でも、こちらのページから参加登録していただくことが可能ですので、年の瀬でお忙しいと思いますが、ご参加いただければ幸いです。
※ICS修士・博士それぞれの在学生の方の発表もリストされています!(私も座長を務めます)

また、こちらはやっとこさ読み終えました。非常に参考になる提言が随所にあるので、原著も購入して、来年度の「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」の授業でも触れようかと思います。
※ちなみに同書のカバー画の全体像は例えばこちらで見られます。

一冊読み終えたので、次に読み始めたのはこちら。といっても、大学2年頃に購入して読んだものをもう一度読み返してみたくなったのです(ということでカバー装丁は昔のクリーム色っぽいもの)。この本は、高二の時に現国担当の先生に薦められていたのですが、そのときは結局読まなかったのですが、後にこちらを読んで、「そういえば構造主義の本を薦められたことがあったな・・・」と思い出して、買って読んだと記憶しています。

2009年11月10日火曜日

Project-K, Project-N, Project-Yu

Project-K についての打ち合わせ。といっても論文ドラフトを受け取っただけで、内容はこれから確認。
その打ち合わせにおいて、本筋ではないところで衝撃の事実を知る。

結果としては、12月のProject-N(英語版)がピンチというかほぼ絶望的な状態であることを知る。
自分の注意不足が原因ということであるが、いちおう関係筋に英語メールを送っておく。

昨日今日とメイン仕事前に集中していた Project-Yu について6ページほどのメモをパートナーに送信しておく。実際にはその倍くらい検討して、結局半分ほどの内容に落ち着いた。結果として目覚しい進捗はないのだが。
自分のこだわりで当初の方向とはだいぶ軌道がずれてきたが、まあそれはそれでよい気もしている。

2009年11月7日土曜日

Project-Ya, Project-Yu

Project-Ya に関して、進捗状況についての確認と11月末の研究集会やその先に向けてどうするかという打ち合わせ。
基本的にパートナーがどんどん作業をしているので、パートナーがやりたいように進めてもらえればと私は思っているが、内容が拡散してきたので、パラメータ推定のようなデータありきの話と、データとはとりあえず離れてできるシミュレーションや理論モデルの話を分けて進めてはどうかと助言。
また、11月末はシミュレーションの目的とアルゴリズムと結果の解釈を中心に話してはどうかと助言。

パートナー自身がtime limit を気にしているので、年内には形あるものが出来てくるだろうと期待している。
その成果をそれを3月の Paris につなげられれば言うことなしだ。

一方、新たな展開のあったProject-Yuは、パートナーの議論で気になったことの質問と、テクニックに走る前に同じような議論ができるのでは、という趣旨のコメントを2ページほどTeXにまとめてメール送信。

こちらは通勤移動中および就寝前に少しずつ読み進めて、現在「意志決定」の章の半ば。翻訳独特の読みにくさはあるけれども、翻訳経験者としては翻訳しづらい部分があるというところもよく分かるので、時に翻訳->原文推定->推定した原文を自分なりに再翻訳ということもしながら、ゆっくりペースで読むことにする。

2009年11月5日木曜日

Project-Yu 再始動ほか

Project-JJ はとりあえず終了ということに。

こちらで紹介した論文をつらつらと読み返す。
同じような分析をするためには、データベース整備作業が非常に難儀だ。
さすがに誰か手伝ってくれると良いのだが・・・

ということを考えているうちに、Project-Yu のパートナーからメール。
再び考え始めるとしよう。

帰りがけに書店で、これを見つけて購入(Amazon では2009/9/18発売になっているが、本を見ると本日発行)。一気に読めそうもないし、途中で挫折する可能性大だが、つらつらと読むとしよう。

2009年11月3日火曜日

frailty関連論文

このごろ、DefaultRisk.com への訪問頻度が落ちているが、
最近の訪問で、こちらがpublish されていることを発見。dymanic frailty を仮定しての最尤推定の方法で、EMアルゴリズム, Gibbs sampler によるMCMC などを援用して推定する方法が Appendix に詳しくまとめられている。(古いversion はこちら。技術的なことは、古い version の方が丁寧に書かれていることもあるので、参考になるかも)
旧バージョンにも目を通していたことはあるが、publish 版のコピーを通読してみた。なかなか面白い。

上記論文を読むにあたっては、こちら(frailty が無い場合でtime-varying な変数を使ってデフォルト確率の期間構造を最尤推定するという話題)とこちら(frailty のような観測できない何かのデフォルト・クラスターへの影響が認められるかどうかの実証)も読むことで理解が深まると思われる。

他にも、Risk, Oct.2006 の Cutting Edge のペーパーでは、格付推移について dymanic fraity モデルとその最尤推定を論じている。EMアルゴリズム,MCMCについてはここでも言及されている。
データの性質から入ると、このあたりのテクニックはむしろ当たり前だということなのだと気づく。ちゃんと勉強しないと。

2009年10月30日金曜日

現状の覚え書き

もうすぐ11月。1ヶ月以上早く走っている気もするが、特にM2の皆さんは全力疾走しないといけないわけで、身体を労りながらもまずは11月末の原稿提出に向けて、がんばっていただきたい。

自分の研究プロジェクトについての今時点での覚え書き。
  • Project-GP:結局、他人任せ。
  • Project-JH:完全放置状態。
  • Project-JJ:95%終了
  • Project-K:いろいろと修正方向の案は出しておいた。共同研究者任せ。12月に向けて形を整えていく必要あり。
  • Project-N:投稿した
  • Project-O:出直し
  • project-SG:とりあえず継続の方向で検討していただく。
  • Project-Ya:11月下旬に向け、近く打ち合わせの予定
  • Project-Yo:再投稿した
  • Project-Yu(?):しばらくやりとりしていたが、中断。

2009年10月25日日曜日

つぶやき

こちらで始めてみました。

2009年10月24日土曜日

JARIP大会発表

JARIP大会で project-O について発表。
保険に詳しい方々から有益な質問・コメントをいただけた。

日本でも我々の研究が受け入れられるようにするためには、
日本で一般的な商品性に沿ったモデルを考える必要がある。
これは目下のプロジェクトのspin-off で対応しようかと。

2009年10月23日金曜日

発表準備と雑用の1日

明日24日(土)は project-O についての学会発表。
発表準備でいろいろ考えていたら、新たに分かってきたことや分かっていたつもりで実は分かっていなかったことなどが整理できてきた。
それはそれでよいことだが、遠く離れたパートナーがしばらくビジネススクールの授業で忙しいようで、この点について議論はできないまま。
もともとは完成形の研究として発表予定だったが、大きくトーンダウンして話すことにした。
プレゼン資料を修正。

週明け26日(月)には内輪のセミナーで project-N の話を
する予定。そちらは月曜に間に合わせればよいが、気になる部分を追記して99%プレゼン資料を完成させる。

・・・といった発表準備を午前中にすまして、午後は肉体労働と
ワープロ作業とメール書き作業。
これから、もう1件夜の会議をこなして帰ることにする。

2009年10月18日日曜日

Project-O revisited2

今日も昼頃にオフィスへ。
前夜の自宅でのプログラム検討の結果、細かい不具合を見つけたので、その修正をする必要が生じたのだ。

前日の晩に、オフィスのPCで試しに実行していったプログラムはまだ終了していなかった。強制終了させたら85%くらいの進捗だった。

今回は、2台のPCでR と Matlab でそれぞれ同じシミュレーションを実行させて帰宅。
帰宅後は、もう一つのタイプのシミュレーションの検討とコード書き。
ただ、テストをする限りどうもイメージと合わない・・・

そう言えば、オフィスに行く途中でこちらのロケ現場に遭遇。休日は閉館しているM新聞社が入っているビルを「近畿商事」に見立てているようだ。道路上で、この俳優さんこの俳優さん(たぶん)が談笑していた脇をスルーしてオフィスに向かったのだった・・・

2009年10月17日土曜日

Podcasts

ICSの計量ファイナンス系の学生さんであれば、こちらの第9回・第10回をPodcastsで見ると勉強になるかと思います。iTunes から入手できます。第6回~第8回も見ていませんが内容的にはためになりそうです。

個人的には第1回で衝撃を受けてもらうという気もありますが・・・

ICSの私の授業を Podcasts のコンテンツにしてもあまり役に立たないかもしれませんが、大学/大学院の授業を録画して Podcasts で・・・というのが当たり前な時代が近い将来やってくるかもしれません。

Project-O revisited

家事を済ませて早い時間にオフィスに。
午前中から昼過ぎにかけて、大学業界特有の概算要求に相当する書類のドラフト作成。
その後は急に降ってわいた仕事に対応しながら、Project-O に関して、パートナーが書いたくれていた Matlab のコードを R に移植するという作業を実施。
Matlab は自分のオフィスマシン1台にしか入れていないが、Rは自宅も含めて自分の管理する全てのマシンにインストールされているのでR の方を多用している。

変数が非常に多いし、forやifが多用さえているコードなので、計算効率を考えていろいろと工夫したかったのだが、とりあえず実行できるコードを書き上げることを優先させる。
ただ、その作業過程で結構大きな問題にぶつかってしまったのだが・・・
1週間後に発表予定の内容なので、ちょっと焦り。

とりあえずオフィスのPCではコードを実行させたまま帰宅。

2009年10月16日金曜日

Project-O

Project-O に関しては、とりあえず残念な結果に。

Working paper updated

Project-N の日本語ワーキングペーパーをこちらに update しました。
きちんと推敲していないので、旧版の残滓があるかもしれません。
言っているそばから、英単語のスペルミスから説明不足の点までいろいろとマイナーな修正点を見つけたので、修正版を上げておきました。
いずれにしても、近いうちにきちんとした形でまとめたいと思います。

新しい点は、データを9月27日まで(ちょうどJALの格下げが含まれたところ)延長して
再度、パラメータ推定やら適合度検定やら行ったので、数値結果を全面的に入れ替えたこと
(主張は大きく変わっていません)
あと、内容をスリムダウンしました。業種分けをしない分析部分は全面カットしました。

2009年10月14日水曜日

Mission complete

Project-Yo はとりあえず completed.

その成果はこちら

続いて、Project-JJ をようやく始動。
(Twitter で十分な情報量だ・・・)

2009年10月7日水曜日

M1ゼミ(2009年度秋学期)

秋学期のM1ゼミは7名で行うことになります。

各自の修士論文テーマに関係しそうな論文を探してきて、論文の内容と自分の研究との関連についてまとめて、30分程度で発表し、議論するというスタイルで行います。

1回のゼミで2名に発表してもらいます。全部で14回分のゼミ時間を確保するつもりなので、全部で述べ28名分の発表枠ができます。実際7名なので、一人4回は発表してもらうことを単位取得の必要条件にします。

2009年9月25日金曜日

現状の覚え書き

いろいろとあったせいか分かりませんが、何だか疲れてます・・・
新学期のスタートも近いので、自分の置かれている現状を整理する意味で、自分の研究面での tasks をメモしておきます。
  • Project-GP:12月までに一区切りつけ、3月までに完了しないといけないが、きちんとしたKick-offミーティングもしてない。まだ何も手付かず。
  • Project-JH:共同研究者のデータ整備作業待ちというフェーズで、完全放置状態。
  • Project-JJ:放置状態・・・というか、これが何のプロジェクトを指しているのか自分でも思い出せないでいる・・・と書いていたが思い出した。Project-Nの日本語版とつながる話だ。
  • Project-K:いろいろと修正方向の案は出しておいた。共同研究者任せ。
  • Project-N:放置状態だが、10月末に話す。日本語版の方は中途半端だがいずれ形にする。
  • Project-O:10月に発表予定。自分でもシミュレーションをしてみようと思う。全体的にはとりあえず結果待ち。
  • project-SG:素朴にデータ分析作業中。10月初に報告。
  • Project-Ya:形になりつつあるが、共同研究者任せ。
  • Project-Yo:論文の修正対応中。共同研究者の分析作業待ち。仕上げは自分が担当する予定。
  • Project-Yu(?):始めるかどうか思案中。

2009年9月3日木曜日

「金融数理の基礎」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「金融数理の基礎」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

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「講義でもいいので、TeXで作った授業ノートもアップしてもらえるとうれしい」
「板書だけだと、書くことだけで時間がつぶれてしまうところがある」
「板書が多い。レジュメで対応することはできないか?」
「板書をやめて、資料を配ってほしい。講義中の板書以外のコメント等まで理解して、書くことが困難となるため」

(回答)板書だけで押し通す授業は私の「金融数理の基礎」だけだと思うので、当然の意見という気がします。レジュメがあった方が楽でしょう。作る方としても教える内容を変えない限り、1回作れば毎年使い回せますし。

ただ板書をしているのは、数学的知識の伝達は黒板(ホワイトボードでもよいですが)を使うのが効率的であるという私自身の経験・思想が根底にあります。
私の出身の東大の数理科学研究科の各教室はだいたい上下スライド式の黒板が2つ装備されています(つまり最大で黒板を4面同時に使うことができるということです)。設計段階で数学者の意見が強く反映されたためです。
数学の伝承とはそういうものだという暗黙の了解がまだ残っているのでしょう。

正面に小さなホワイトボードしかない第3講義室は、その意味で数学の授業をするのに向いていないのですが、それでも板書をすることの効用の方を信じたいと考えています。

それに板書を全部書き写すことを私は要求しているわけではありません。
教科書を指定しているわけですから、うまく活用してほしいと思います。
また、授業中に完成版ノートを作ろうというのも無理だと思います。
私は大学時代、試験前には授業ノートをベースにもういちど清書用のノートを作っていました。
勉強法を押しつけるつもりはありませんが、ノートの取り方については皆さんの方にも工夫の余地はあると思います。

とはいえ、私の授業技術・板書技術によって緩和できるところもたくさんあると思いますので、そこは大いに反省したいと思います。

「板書が速すぎて、授業中には理解が追いつけない」
「板書の日本語比率を多くしてほしかった」
「後半の授業ペースが速くなり、ついていくのに苦労した」

(回答)これらは、私の授業技術・板書技術でだいぶ改善できるはずですので、工夫をしたいと思います。


「宿題の解答を充実させてほしい」
「毎回の宿題の解答がほしかった」

(回答)宿題の解答については特に対応しようという考えはありません。私が横着したいからというより、解答を与えるとそれを覚えるだけになってしまうので、教育的見地から答えとヒントくらいにとどめています。
(それに宿題をしようとしない人に解答を与えるということはあまりしたくないです)


「金利の期間構造もあつかってほしかった」
「ShreveのテキストIの4章までしか進めないのは残念」
「夏季休暇中に連続時間版の有志ゼミなどを開催していただけるとうれしい」

(回答)スピードアップをして、授業で扱う量を多くしてほしいと望む人も少なくないと思いますが、基礎科目としての位置づけなので、入学してすぐに受けるということや、授業の目的を勘案すると内容量としては適正と考えています。
もちろん、もっと勉強したいという意欲のある方に答えていく義務があると思います。
これはFSコース全体のカリキュラム編成で考えていくべきかもしれません。

「離散モデルに特化していたが、もう少し脱線してもよかったと思う」
「想定の範囲内だったので教科書からもう少し離れてもよかったのでは?」

(回答)教科書を超えたこともけっこう話したつもりでいましたが、こういう意見もありますので今後工夫したいと思います。ただ、いろんな人が受講していることをふまえると「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気持ちもあります。

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

-----------------------------------------------------------------------------
「Powerpoint資料(中川注:私の資料はBeamer TeX というもので作成しています)を事前に頂けると効率的に学習できたと思う。口頭での説明を、ノートする際に資料があればよかった」
「資料(プレゼン)は事前にイントラに up または配付してほしい。プレゼン資料に書き込みたい」
「配付資料とプレゼン資料を両方プリントアウトして配付していただけると、メモがとれるので助かる」

(回答)昨年度も同様の要望があり努力すると回答していながら実現できませんでした。昨年度と内容編成を変えたことの影響がけっこう大きく、資料の作成に手間取りました。
また、リスク管理に関する話はどんどんアップデートされていくので、新しい内容を盛り込みたいと欲張ってしまうことも原因です。来年こそは・・・努力したいと思います。


「市場リスクの方が内容が若干浅かったのが残念」

(回答)具体的にどのような点が浅かったのかが分かりませんが、市場リスクはその性質上、統計的技術や時系列解析の話題に帰着してしまうことが多く、必要以上に踏み込むことを(統計の専門家ではない)私がためらったというのも事実です。
また、他にポートフォリオのリスク計測の話題やデリバティブのヘッジ理論の話題を念頭においたコメントかもしれませんが、前者は他の授業で十分に説明されているはずですし、後者の説明には数学的に高度な内容を理解しておく必要になるので避けました。


「信用リスクの数学をもう少し詳しく説明してほしかった」
「信用リスクモデルについて実際に手を動かしてモデルを使うというような作業がなく、消化不良を起こした気持ちが残った」
「信用リスクの数理面をもっと詳しく講義してほしい」
「信用リスクに関わる研究の流れ・テーマについて幅広く取り上げてもらったことは良かった反面、広く浅くとなった感は否めない」
「当初の想定より難易度が高く、特に後半部分は難易度が高いのに説明のスピードが速く理解に苦しんだ」
「信用リスクについては予想より難易度が高く、理解が追いついていない部分が多い」
「後半、信用リスクの誘導型モデルに対する理解が不十分と感じる」

(回答)信用リスク部分の教え方についての意見はいずれもその通りだと思いますが、広範な全てのニーズを満たすのは難しいというのも正直なところです。信用リスクは、ベースとなる理論はありますが、このモデルやこのアプローチだけを知っていれば十分というものではありませんし、授業だけで全容を理解してもらおうということは諦観しています。
そのかわりにいろいろな考え方を紹介することで、興味を持ったモデルやアイデアについては各自で深めていってほしいという希望もあります。
まあ、受講者の数学的準備の状況や関心ある部分が近ければ、それ相応の対応もできると思いますが、実質数名しか受講できない授業にしてしまうことにも抵抗があります。


「市場リスクと信用リスクの講義内容のレベルが非常に大きく感じられた」(市場リスクの方が少し易しかったという意味だと解しました)
「前半のリスク管理の話は抜きで、信用リスク(市場性)だけを集中的に扱った方が理解が深まったと思う」
「教科書は、やや難解であり、実際は購入の必要を感じられなかった。市場リスクと信用リスクが別になっても、他のテキストを指定した方がいいのでは?」
「カバーする範囲が広いため、市場リスクと信用リスクを分けたカリキュラムを望む」

(回答)「市場リスク」と「信用リスク」のバランスについての言及、あるいは「市場リスク」と「信用リスク」を別の授業でという要望は昨年度もありました。これはFSコース全体のカリキュラム編成に絡んできますので、他の先生方と相談したいと思います。
個人的には「市場リスク」のうち VaRについては統計の授業で触れてもらえれば十分という気がします。
また、「市場リスク」「信用リスク」という区別よりも「リスクを数値化するということ」自体を考えるということも
重要という風潮があるので、それは「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」のようなコンセプトの授業でないと消化しきれないという思いもあります。

「これとは別に測度論や確率論の授業があってもいいのでは?」

(回答)これもカリキュラム編成に絡む問題です。
ただし実現したとしても、かなりの数学的準備ができている学生に限定しないと、1.5時間×14回程度の授業で完結するのは難しいと思います。
冬学期に数回の非正規のレクチャーとして可能かどうかを少し考えたいと思います。

2009年8月28日金曜日

現状の覚え書き

庶務仕事と締め切り仕事に追われてましたが、一段落つきました。

とりあえず、自分の置かれている現状を整理するというあくまでも私的な目的ですが、
自分の研究面での tasks をメモしておきます。
  • Project-GP:新しくスタートする
  • Project-JH:放置状態
  • Project-JJ:放置状態。構想は練っているが、当初の見込みよりもサーベイに要する時間が多そうだ
  • Project-K:とりあえず自分の方でやるべきことはやっておいた。様子見
  • Project-N:放置状態だが、9月の発表を経て12月までにはもう少し進めたい
  • Project-O:10月に発表予定だし、自分でもシミュレーションをしてみようと思う。paper の微修正も進めたい
  • Project-Ya:とりあえず静観
  • Project-Yo:論文の修正対応を急ぐ必要あり

2009年8月20日木曜日

「金融数理の基礎」成績確定

2009年度の「金融数理の基礎」の授業の成績を確定させました。

正直言って、だいぶ悩みました・・・

2009年8月13日木曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」成績確定

2009年度の「「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の授業の成績を確定させました。

期末試験は「6×(期末試験の点数の正の平方根)の小数部分を切り捨て」という変換式で100点満点を60点満点に変換しました。
変換後の平均点は50.8点、最高点は57点(1名)になりました。

また、レポート1、レポート2の平均点は(20点満点で)それぞれ14.6点、15.1点で、最高点は18点(2名)、20点(1名)でした。

課題レポートの提出および出来具合は平常点として算入しました(最高3点。7回あった課題レポートを毎回出した人は全員3点でした。あとは回数とその出来によってばらつきがあります)。

それらを合計しての平均点は、83.4点、最高点は93点(2名)でした。

2009年8月11日火曜日

M1ゼミ(2009年度春学期)の振り返り

2009年度の春学期M1ゼミでは、

D.Duffie, K.J.Singleton 著(本多 俊毅, 上村 昌司翻訳)『クレジットリスク ―評価・計測・管理―』,共立出版(2009) (※原書はこちら

を輪講しました。

スケジュールは、以下のようにしました。

5/11(月) 2.1~2.3節
5/18(月) 2.4~2.5節
5/25(月) 3.1~3.3節
6/1(月) 3.4~3.5節
6/8(月) 3.6~3.7節
6/15(月) 4章
6/22(月) 5.1~5.3節
6/29(月) 5.4~5.6節
7/6(月) 6.1~6.2節
7/13(月) 6.3~6.4節

細かいところも取りこぼさずに理解することを目指すというのがゼミ本来のあり方だとすると、上記のペースは無謀です。ですが、こだわりすぎると2章も終わったかどうかだと思います。
今回は前に進むということの方を意識しました。1回あたりのゼミで、少しでも分からなかったところをクリアにできればよいということにしました。
数学部分については、高校数学程度でも理解できるはずの部分については、できるだけ式の展開などをフォローしましたが、全体的には大きく端折りました。

選んだテキストについての感想ですが、ファイナンスの初学者および確率解析の初歩の理解がない人には読みこなすのは難しいテキストだと思います。
私の講義「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」と並行して読むと、箇所によっては理解しやすいかもしれません。

とはいえ、数学の議論にあまり拘泥せずに、信用リスクに関して短期間で研究というレベルまでガイドしてくれるテキストも他に思いつかないのも事実で、厳密性へのこだわりを割り切れば近年の研究についても、理論・実証両面についてたくさんの情報が凝縮されていて良いテキストだと思います。

数式や図のレジェンドなどに若干の誤植(原文自体のミスプリを引き継いでいるものがほとんどですが)がありますが、丁寧に読んでいけば気づく部類のものだと思いますし、大学院生が自習できちんと読むのであれば自分で気づいてほしいところです。
(と言いながら、私自身が見落としている部分がたくさんあると思いますが)

夏休み中も、ゼミ延長戦を3回予定しています。

2009年8月6日木曜日

出世

こちらに名前が載っていますが、「副会長」に出世しました。
実際は庶務担当」としての役割をせっせとこなしているだけですが・・・

2009年8月5日水曜日

ICS入試説明会(告知)

一橋大学大学院国際企業戦略研究科 金融戦略・経営財務コース(ICS-FS)では、2009年9月11日(金)に『平成22年度 入試説明会』を一橋記念講堂にて開催いたします。

国際企業戦略研究科の公式ホームページにも開催概要を掲載しております。
詳細は、こちらもご参照ください。


2009年7月31日金曜日

「金融数理の基礎」期末試験の採点答案の返却

「金融数理の基礎」期末試験の採点答案を本日返却するよう手配します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名の近くに書かれた赤い数字が今回の試験の点数です。
また、緑色の丸で囲まれた緑色の数字が、中間試験と宿題ポイントを平常点に換算した最終成績の得点になります。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

期末試験の採点結果および最終成績の得点について質問・異議等があれば、8月14日(金)までに直接中川に問い合わせてください。

2009年7月29日水曜日

「金融数理の基礎」期末試験採点コメント(追記)

「金融数理の基礎」の期末試験は24名が受験しました。

略解はイントラネットにアップしました。

全体の採点を終えました。(見直し1回目しましたが、最終結果は異なるかもしれません。)

平均点は問題別に
 問題1:21.58点(/24点)
 問題2:23.08点(/26点)
 問題3:12.00点(/25点)
 問題4:7.83点(/20点)
 問題5:6.75点(/15点)

となっており、全体の平均点は 71.25点(/110点)でした。最高点は92点(2名)で、90点台は全部で3名です。

また、最終成績は前にお伝えしたように
 min(100, roundup(max(0.5×中間得点+0.5×期末得点, 期末得点), 0)+平常点)
として算出することにします。

最終成績は確定したわけではありませんが、現状では
 A(80点以上)に相当する人は12名
です。ICS は成績表に得点が載らないようですが、
上の計算式での最高点は99点(2名)です。

採点コメントを簡単に書きます。

問題1は全体的に良くできていました。(1) は全員正解でした。
が、(3)で多少計算ミスが目立ちました。あと(2)も若干ミスが目立ちました。

問題2も比較的良くできていました。(1) は全員正解だったはずです。
(2)は十分に整理できていない人は若干減点しました。
(3) は計算経過を考慮して間違えていても部分点を与えました。

問題3は全部できていた人は少しでした。(1)または(2)で止まっている人が多かったです。
(3)については難しく考えすぎていた人が見受けられました。宿題で出した問題は一般の p についての出題だったので、特に p = 1/2 の場合を出してみたのですが・・・

問題4は、(1)は出題予告した証明のところでしたので、サービス問題のつもりで出したのですが、不等号の向きが全部正しかった人は思ったほど多くありませんでした。また、式変形や結論の根拠の説明は、私が完全と見なせるものは非常に少なかったです。気持ちをくんだところもあり1点を与えるかどうかのところでは少し甘い判断をしましたが、完全正解するかどうかの判断は厳しくしています。
(2)も出来もかなり予想を下回りました。

問題5は、手つかず(手付けず)の人が少しいました。またT のところを t としたり、normalize して分散を1にしたものを考えたりと、完全に正解の人は少数でした。出題を予告したところなので、もう少し出来ることを期待していました。教科書ベースで丁寧に説明した部分ではないので、全体としては甘めに採点しています。

2009年7月28日火曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」レポート課題講評

2回分のレポートの採点を一通り終えました。
週明けにはもう一度見直したいと思います。

レポート課題は昨年度とほとんど同じ(2つめの課題は対象データが違うのと、判別手法を線形判別だけに限定しないというところが異なります)ですが、採点は昨年度よりは少し厳しくしました。
(とはいえ、成績分布的には昨年度とあまり変化はないと思います)

プラスαがあって素点の合計が20点を超える場合は、20点で打ち止めにしています。

課題1:33業種インデックス・ポートフォリオの95%VaR,95%ES の算出およびその考察など

論理性に関しては,私が想定する必要最低限のことが盛り込まれていれば、10点中6点を基準点と与えました。そのうえで、分析内容や説明内容に加点要素があるかどうかを見ています。ただし、加点要素があっても、説明内容にそれを相殺するような大きな減点要素があれば加点を見合わせるなどしています。

今回は自分が設定したポートフォリオに対する1日あたりの 95%VaR と 95%ES をどのように設定したかということと、3ヶ月弱の間の変化をうけて設定した VaR や ES の妥当性をどのように省みるかということがポイントです。

前者については、分散共分散法を使うかヒストリカル法を使うかという点を議論して、系列相関の有無や正規性の検定を行っている人が多くいました。その点は加点要素です。ただし、検定結果の解釈が不明確な人や、検定と実際の選択した計量手法の関係をきちんと考察できていないと判断される人もいました。
また、ヒストリカル法を採用した人も250日分の過去データを使っている人が多かったのですが、なぜ250日分なのかについて触れていない人も多かったです。
もちろん、ヒストリカル法の性格を考えたときに、与えられたデータを最大限使うのが良しと考えるのは当たり前と思ったかもしれませんが、過去何日分のデータを用いて VaR を算出すべきかということについては議論してほしかったです(ちなみに第1回の授業でポートフォリオ構築の参考として提供したデータを使えば2年分のデータを利用できたことになりますが)。

また、VaR の振り返りについては、淡泊な人から細かい考察をしてくれた人まで結構差がありました。
当然、振り返りに力を入れてくれた人は加点要素になります。

構成力についても、10点中6点を基準点にして、図表の使い方が適当か、具体的に用いた計算方法などが過不足なく説明されているか、単純に読みやすい構成か、などの点で、私から見て工夫されている、ポイントがわかりやすいと感じたものに加点しました。
(よほどひどくないと積極的に減点はしていません)

ポートフォリオ構築のアイデアを細かく記述してくれていた人もいました。論理性という点での加点も考慮していますが、今回の課題においてはポートフォリオ構築自体はメインではないので、リスクについての記述と比べてバランスが悪い場合は減点要素にしています。

プラスαとして、仮想ポートフォリオ・ラリーの最終結果で事後の疑似シャープレシオが私を上回っていた4名(実際は5名ですが成績評価対象者は4名でした)に1点与えました。
あとは、レポート内容に独創的な(かつ意味があると考えられる)言及があると認められたものに加点しています。


課題2:デフォルト判別モデルの構築と検証用データの判別


論理性に関しては10点中6点を基準点にして、特に、モデルの選択理由、候補とした財務指標、変数選択の方法、推定された係数の符号関係についての考察、定性的なモデルの考察、などについて適切に説明されているかに注意して加点判断をしています。

指標選択の説明は重視しています。

係数の符号について全く言及していないレポートもありましたが、これは積極的に減点する要因にしています。通常想定される符号と反対になっていても、それなりに無理の無い説明がされていれば減点にはしていません。
他にも定量的な部分だけでなく、「中小企業」を相手にしていることを考慮しての定性的な考察などを行っていれば加点要素になっています。
(全体的に、定性的な吟味には注力されていないという印象です。データ自体の情報が少ないせいもあるかもしれませんが)

構成力についても10点中6点を基準点にして、図表の使い方が適当か、単純に読みやすい構成か、などを考慮して,工夫が見られたり特に分かりやすいと感じたものには、加点しました。

線形判別以外の二項ロジット・モデル、判別木(回帰木)モデルなどを行った人でそれなりに有効な結果を出している人には、オリジナリティということでプラスαの1点を加えています。

また、判別精度ポイントに関してですが、何もしない場合は13社の貸倒損失が出るということで13ポイントになります。ポイントが13より低くなっていれば機会損失を多く出すことなく貸倒損失を減らしていて、モデルがworkしたと見なせますから、2点与えました。13ポイントの人で並んだ人にも1点与えました。

2009年7月24日金曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験答案【返却】

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験の採点答案を返却します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

赤字の点数は100点満点での点数です。
これを最終的に60点満点に換算しますが、今のところ
 「6×(期末試験の点数の正の平方根)」の小数部分を切り捨て
で換算しようと考えています(決定ではありません)。
(100点が60点に、81点が54点に、64点が48点、・・・という対応なので実際の試験の点数よりは
成績へのウェイトは有利になります)

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、8月7日(金)までに直接中川まで連絡をください。ただし、コピーした答案を見ての検討が必要となりますが、今後は学会や出張などで大学を離れることも多くなりますので、対応についての回答が直ちに出来ない可能性があることをご理解ください。

2009年7月23日木曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験に対するコメント:修正

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」の期末試験は11名が受験しました。

全体の採点を一通り終えました。見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。
(一夜明けて見直しをして、若干厳しく採点しなおしました)

平均点は
 計算問題が35.00点(/50点)、最高点は47点(1名)
 記述問題が39.09点(/50点)、最高点は50点(2名)
 全体では、74.09点(/100点)、最高点は94点(1名)
でした。

略解はイントラネットにアップしました。

簡単なコメントをいくつかしておきます。

問題1

(1) 95%VaR を 200 としていた人がいましたが、問題で与えてある定義を使うと100 になるはずです。

(2) 比較的出来ていたと思いますが、ところどころ記号が抜けている人がいました。

(3) 完全にできていた人は意外に少数でした。

問題2

(1)全員が選択していました。 (i)を V0/Dとしていた人が少しいました。 (ii)は D と書くべきところを D(T) と書いたりする人がいました。
理由として答えてほしかったのは、「D(T) はデフォルトがなければ D、デフォルトしていれば VTであり、min(D, VT)と表される」「S(T)+D(T)=VT」ということが根拠になっているということです。オプションのペイオフと関連づけられるというのは、答えの言い換えにすぎず理由と言うには不十分と判断しました。

(2) (iii) のスプレッドでなぜか対数を持ち出している人が少しいました・・・この設定では不要です。

(3) 解いていた人は2人でした。

問題3

全体的に甘く採点していますが、根本的におかしいとか問題の要求に沿っていないと判断したものは大きく減点 or 0点にしています。
内容的には正解に近くても、表現として微妙にまずいところがあるときは1,2点減点しています。

各問いの選択者数は次の通りです。
(A) 7 (B) 11 (C) 3 (D) 1 (E) 9 (F) 9 (G) 1 (H) 3

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」の課題レポート提出状況

ファイナンシャル・リスク・マネージメントの課題レポートは本日(7/23)が提出締め切りでしたが、
2回分の課題レポートの提出を確認できたのは、以下の11名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020, IM08F028,
IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014, IM09F017

レポートについてのコメントはまたアップします。

週明けを目処に試験成績・レポート成績・平常点ポイントを総合して仮の成績を出す予定です。

なお、課題2の out-of-sample のデータにおける実際のデフォルト企業は
7, 11, 34, 56, 57, 58, 60, 61, 86, 91, 92, 93, 98
の13社でした。

なお、 out-of-sample データの判別の評価については、以下のようにポイント化して相対的に
ポイントが低い人に判別精度ポイントを付与するつもりです。

機会損失:デフォルトと判定しているが実際には生存していた企業数×0.5
貸倒損失:デフォルトと判定していないが実際にはデフォルトしていた企業数×1
(デフォルト企業を判別できなかったことは当然マイナスポイントだが、生存企業をデフォルトと判別してしまうことはビジネス機会を逸することになるので、それを機会損失ととらえてマイナスしている)

2009年7月21日火曜日

7/28(火)「金融数理の基礎」期末試験:追加

期末試験のアナウンスです。

日時と場所: 7月28日(火)20:10~21:25(正味75分) 第3講義室

※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり20:40まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式

  • 教科書(S.E.シュリーヴ「ファイナンスのための確率解析I」)の第3章と第4章、および第13回・第14回の配布資料の内容に基づいて出題する
  • ただし、メインテキストの第1章, 第2章の本文の内容は既知とし、第1章, 第2章に関連する問題も一部含まれる
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

試験問題をおおよそ作り終えましたが、110点満点の試験になりました・・・

あと第14回の配布資料ですが、最終ページの積分のところで typo が何カ所かありましたので、
それを修正したものをイントラネットに差し替えアップしておきました。

2009年7月20日月曜日

ファイナンシャル・リスク・マネージメント第2回レポート用のデータ・ファイルのミスについて

こちらの記事にコメントいただきましたが、重要な内容なので本記事に転載しておきます。

[コメント]

第2回レポート課題用に5/28のイントラネットにアップされているin-sampleのcsvファイルですが、Excelで開くと、タイトル行とデータがずれていると思われます。全企業で従業員数が1名になりますし、固定資産合計がゼロで有形固定資産はゼロではありません。最後の列はタイトルがありません。おそらく従業員数のところから最後まで1行ずつずれていると思われます。

[私の回答]

ご指摘ありがとうございます。列のズレという認識で正しいです。

私の単純ミスです(1が入っている列はデータ整備の際の temporary な flag です)。
申し訳ありませんでした。

ただ、他のどなたからも指摘がありませんでしたので、おそらく皆さん単純なミスだと理解されていると思います。

授業の際に、毎年何かしらデータ整備でミスをしているという話をしておいたので、免疫をもってくださった方が多かったかもしれません。

レポート締め切りも近いですし、皆さん間違えているところを適切に処理してくださっていると思いますので、この段階でデータ・ファイルの訂正などは行いませんが、よろしくお願いします。

2009年7月15日水曜日

「金融数理の基礎」第13回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第13回分の宿題レポートを返却しています。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

なお、返却されたレポートに緑色で書かれた丸に囲まれた数字があると思いますが、それが各自のこれまでの宿題レポートに対する評価を点数化したものです。これは試験成績に直接プラスされるものになります。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年7月14日火曜日

「金融数理の基礎」第14回フォロー

配付資料(前回の修正版)の修正版をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の20名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031,
IM09F037, IM09F041

問題の設定の勘違い、アルゴリズムの勘違い、計算ミス、なぜ間違えたのか不明、といった方が
少しずついましたが、8割方の人は全て正解していました。
期末試験も似たテイストの問題(テイスト???)を出題しますので、考え方をよく見直して
おいてください。

あと2週間の健闘を祈ります。
試験に関する情報は、追加的にここにアップされるかもしれません・・・

(更新)7/14(火)「金融数理の基礎」第14回:Black-Scholes 公式への収束

第14回目は、二項モデルの極限として Black-Scholes モデルが現れる部分について概説をしたいと思います。

前回配付した資料がtypoだらけですので、修正版を新たに配布します。その修正版に沿って、プロジェクタで解説していくつもりです。

また、授業の最初の5分程度で授業評価アンケートに回答していただくことになりますので、遅れずに教室に集まってください。

2009年7月10日金曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」第14回フォロー

授業で紹介した論文、プレゼン資料およびポートフォリオ・ラリーに関するデータ(レポート1用)をイントラネットにアップしておきました。

要望があったので、ポートフォリオ・ラリーに関するデータについて、各ポートフォリオについて設定日(2009/4/16)を1000とした指数値の時系列の動き、およびそれから計算される日次の対数リターンとその標準偏差(リスク)の推移をExcelブックにまとめたものもアップしておきました。

ちなみに、指数化は、日々の取引開始時点で投資比率が各ポートフォリオに合致するようにするという形で行っていることに注意してください。
要するに、前日値上がりした業種は前日終値で少し売って、前日値下がりした業種は前日終値で少し買って投資比率が設定したものと同じになるようにリセットさせているということです。
(授業でも説明はしていたと思いますが、1日VaR の計算は投資比率を一定にして算出してもらっていたと思うので、VaR の水準の妥当性評価のためにも、そのようにルール設定しました)

皆さんの中には、各ポートフォリオの投資比率は設定時点だけのもので、後はずっと売買せずホールドしたままのパフォーマンスだと思っていた人もいるかもしれませんが、そうではないのでご注意を。

インデックス値のデータもアップしてあるので、設定時点にポートフォリオで決めた投資比率で買って、あとはほったらかしにすることにした場合のパフォーマンス推移も自分で計算することはできるはずです。(日々、各業種への投資比率が変化していくことに対応すればよいだけです)

2009年7月9日木曜日

7/9(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第14回

授業としては最終回となる第14回は信用リスク研究についての最近の論文内容をいくつか紹介した後、この授業の全体的なまとめをしたいと思います。

今回も関連する paper をイントラネットにおいておきましたが、事前にプリントしたりする必要はありません。
授業の話を聞いて興味を持たれたら、後で見てください。

また、授業の最初の5分程度で授業評価アンケートに回答していただくことになりますので、遅れずに教室に集まってください。

※ポートフォリオ・ラリーの表彰も行います。

「金融数理の基礎」第12回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第12回分の宿題レポートを返却しています。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年7月7日火曜日

「金融数理の基礎」第13回フォロー

配付資料(レジュメと宿題部分が一緒になっています)をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の18名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031, IM09F037, IM09F041,

解答フォーマットを指定してあったので、停止時刻を辞書式に並べてあった人についてはチェックが容易でした。
ほとんどの人は良くできていましたが、OTMでは権利行使しない11個のケースの判定を誤っている人や、その11個の場合についての期待値の計算の一部を間違えている人がいたので、見直しておいてください。

ちなみに、残り1回を残していますが、平常点(宿題ポイント)の分布を掲載しておきます。
4回は提出していれば少なくとも1点分ついています。
(最終回の宿題を完全正解すれば、もう1点上がる余地のある人が16名います・・・)

1点  3
2 点 2
3 点 1
4 点 6
5 点 7
6 点 2
7 点 1

メモ

とりあえずこちらにリンクをはっておく。

2009年7月3日金曜日

7/7(火)「金融数理の基礎」第13回:アメリカン・デリバティブ(3)/ 期待損失の動的最適化

第13回目では、教科書 4.4節の残り~4.5節、準教科書 1.6-1.7節の内容を扱う予定でいます。
準教科書1.6-1.7節に関しては私から配布資料を用意します。
ただ、アメリカン・デリバティブについての残りの説明で、ほとんど時間が使われると思いますので、
期待損失の動的最適化については問題の意義くらいの説明になるかと思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • 最適行使時刻の特徴付け
  • アメリカン・コール・オプションの価格

2009年7月1日水曜日

「金融数理の基礎」第11回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第11回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月30日火曜日

「金融数理の基礎」第12回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

最後の証明のところは時間も押していたので、だいぶ rough な説明になってしまいました。すみません。他のところもボリュームたっぷりで消化不良の人ばかりだと思います。
いちおう宿題が一つの(苦い)薬になると思いますので、チャレンジしてください。

いずれにしても、今回のところは授業で話を聞いたり教科書を一読しただけでは容易に理解出来ないところだと思いますので、よく復習しておいてください。
定理4.2.2とその証明にこだわったのは、アメリカンオプションの価格付けに関する非常に重要な結果だと私自身は思っているからです。
(2つの異なる見方で定義したものが実は同じものだった(定理4.3.3でそれを明確にしますが)ということで、数学的な命題としては美しいものだと私は思います)

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の18名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031, IM09F037, IM09F041,

コメントですが、去年の記事とほとんど同じですので、そちらも参考にしてください(答えも
載っています)。

(i)~(iii)の計算は多くの人が正解でした。ところどころ計算ミスの人、あるいはアルゴリズムを正しく書けていない人がいたので注意してください。

(iv)は必ずしも著者の意図を私が酌んでいるか自信はありませんが、「ストラドルの場合は行使機会が1回で、プットかコールのどちらかのペイオフしか得ることはできないが、プットとコールの価格を単純に足している方はプットとコールを別々に買っているわけなので、それぞれを最適なタイミングで行使するチャンスがあり、チャンスが多い分割高になる」という説明が直観的に分かりやすいと思います。

ただ、何人かの人が指摘してくれましたが、権利行使価格によっては、価値が両者同じになる場合もあります。
そこで、きちんと題意の不等号が成立するためには、プットとコールを別々に買う方が2回権利行使をする機会があって、それ以外についてもストラドルを下回らないペイオフが受け取れるというようなことを確認することが本当は必要だと思います。

また、何人かの人が、「ストラドルとアメリカンプットでは最適行使のタイミングが違っている」という事実に着目していて、それは重要な指摘ですが、それだけを価格の不等式が成り立つ理由としては飛躍があります。

7/23(木)「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」期末試験

期末試験のアナウンスです。

日時と場所:7月23日(木) 18:35~19:45(正味70分) 第3講義室

遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり19:05まで)
追試験の予定はありませんただし、正当な理由があり、なおかつ試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式

* 第2回の授業から第14回の授業で扱った内容(プレゼン資料・配布資料、およびその中で指定されている準教科書の指定箇所)。プレゼン資料・配布資料の中の数式や些末な話題を細かく記憶してくる必要はありません。
授業で強調されていた事柄や繰り返し使われている用語の意味を確認したり、授業でどういう話題を扱ったかを自分なりに整理したりしておくこと。
* 計算問題を50点分、記述問題を50点分の合計100点満点の出題をする(ただし、成績評価上は60%のウェイト)。一部は問題を選択できるようにします。
* 計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。特に VaR と ES の計算方法、バックテストの考え方、Merton モデル、定数強度モデルによるクレジット・デリバティブの評価に関する問題、デフォルト相関などについて確認すること。
* 記述問題は、授業で触れた内容に関連したテーマの知識について文章で記述してもらいます。特に、以下のような内容について整理しておくこと。
「○○と△△の違い」
「○○について指摘されている問題点」
* 参考書、ノート、配布資料などの参照は不可とします。また卓上計算機などの使用も不可とします。

7/2(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回:信用リスク(7)

第13回はデフォルトの依存関係モデルの残りの部分と Giesecke-Goldberg(2005)の提唱しているトップダウン・アプローチとその周辺の話をしたいと思います。

関連する working paper をイントラネットにおいておきましたが、事前にプリントしたりする必要はありません。
授業の話を聞いて興味を持たれたら、後で見てください。

2009年6月27日土曜日

6/30(火)「金融数理の基礎」第12回:アメリカン・デリバティブ(2)

第12回目では、メインテキストの4.3節の残り~4.4節を扱う予定でいます。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* 停止時刻の定義とマルチンゲールとの関係
* 経路依存する場合を含めた一般のアメリカン・デリバティブの定式化
* 最適行使時刻による価格付けのアイデアと優複製との関係
* 最適行使時刻の特徴付け

また、期末試験についてもアナウンスする予定です。

2009年6月24日水曜日

「金融数理の基礎」第10回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第10回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月23日火曜日

「金融数理の基礎」第11回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

授業中の質問の件ですが、

N期間モデルのように時間が有限の場合は、F=FN というように見なせます。

ですから、停止時刻の定義4.3.1' のところで、「n=0,1,...,N,∞」で条件が成立するとして、「F=FN」と見なすというルールを含めておけば大丈夫です。

そうすれば、2期間モデルの場合は
{ω | τ(ω)=∞} = {HH} ∈ F2=FはOKとなります。

もちろん{ω | τ(ω)≦∞}=Ω に着目してもかまいません。

(実際は{ω | τ(ω)=∞}については確認しなくてもかまいません。n=0,1,...,N だけを確認すれば十分になっています)

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の18名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031, IM09F037, IM09F041

以下コメントです。
授業内容が理解しきれなかったというコメントを書いてくれた方がいましたし、解答が途中で止まってしまっている人も若干いました。

たぶん、問題が解けた人の中にも、実際に自分が何をやっているのかを理解できていると言える人は多くないかもしれません。
(そのあたりの自信の無さといった感じが解答の中に染み出ている人もいました)

練習問題6, 7 は定理3.3.6 に沿って証明してもらえればよかったのですが、Lagrangian を設定するところから、議論している人が大半でした(もちろんそれでもかまいませんが、採点のときには後半部分のλの値やXNの表現式の部分だけに注意を払っています)。

練習問題7は逆関数導出を勘違いした人が少しいましたが、いちおう正しい手順を示している人が多かったです。

練習問題6の方は、N だけでなく、一般の n について X0 = Xnζn が成立することを示すところで、議論が不十分な人がいました。
また、多くの人が X0 = En[XNζN ] という等式から出発してリスク中立の表現式を経て結果を導いていました。
私がベストと考える示し方は、定理3.2.7の(3.2.6) 式に注目して、{Xnζn}がPの下でマルチンゲールであるということを使って議論する方法です。こちらは少数派でした。

練習問題8は手つかずの人も多かったですし、途中で give up している人も少しいました。
ただし、(i) は y は定数だと思えば、あとは U' >0, U'' < 0 という性質に注目すれば、高校数学で倣っているはずの、関数を1階微分して増減表を書いて極大・極小(あるいは結果として最大・最小)を調べる方法が使えます。
また、数名の人が V(x) = U(x) - yx が x について凹関数ということから
 V(x) ≦ V(I(y)) + V'(I(y))(x - I(y)) = V(I(y))
という不等式が成立することを根拠にしていました。

おそらくこの事実は金曜の授業かどこかで教わったのでしょうか?
正しい結果ですので良いと思いますが、この授業のレポートということで言えば、少し説明を加えてほしいところです。きちんと証明をつけてくれた人もいました。

最後にO.K. とマークしていれば、私としてはその問題について「理解している」と判断しています。、
そうでなければ、解答過程を見る限り必要と思われることに言及していないと私が判断していることを意味します。

6/25(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回:信用リスク(6)

第12回はデフォルトの依存関係モデルについて概説する予定です。

予定では、

  • デフォルト相関、アセット相関
  • CDO
  • 条件付き独立モデル
  • Copula モデル
  • デフォルト伝播モデル
を予定しています。
準テキストでは9.1節のCDOの部分および9.6~9.8節の部分に相当します。8.3節あたりの内容にも触れます。

あと期末試験のことにも触れようと思います。

2009年6月21日日曜日

6/23(火)「金融数理の基礎」第11回:アメリカン・デリバティブ(1)

第11回目では、教科書の4.1-4.3節の最初を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • アメリカン・デリバティブの定式化(これまでのヨーロピアンのものとの違い)
  • マルコフ型のアメリカン・デリバティブの価格付けのアイデア
  • 停止時刻の定義

2009年6月18日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回フォロー

Newsweek(2009.6.24) で紹介されているP. Wilmottのサイトはこちら

あと、次回の話題になりますが、
準教科書の 9.1.3項の図9.3(P.448) の「従属性のある場合」の累積損失の密度関数のグラフ
を描こうと思っていますが、そこに与えられている、m = 1,000, PD=0.5%, 「デフォルト相関」2% という設定になるように工夫していますが、うまくいきません。
これはシミュレーションするしかないと思っているのですが・・・

(ちなみに独立の場合のグラフも、私が求めた密度関数と「高さ」が違っているのですが・・・)

相関のある二項分布シミュレーションの定番ってあるのでしょうか?
私は正規分布ファクターモデル経由でシミュレーションしているのですが。

もし challenging な人がいたら、準教科書の図が描けるかどうか試してみて下さい。
("日本の P. W." N先生にとってはお茶の子さいさいかもしれませんが・・・)

「金融数理の基礎」第9回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第9回分の宿題レポートを返却しています。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月16日火曜日

「金融数理の基礎」第10回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の21名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031,
IM09F032, IM09F037, IM09F041

以下宿題の採点コメントです。

単なる計算問題で答えだけに注目すれば全部正解の人が7割くらいでした。
考え方自体は正しいけれど計算ミスという人が残り2割。考え方自体がまだまだと思われる人が残り1割という感じです。
ただ、前回の宿題は数字があっているかどうかというよりも「何を計算しているのか」を理解することが重要だと考えています。

単にオプションの価格を計算するという目的であれば、リスク中立評価式で計算すればいいわけで、試験に出題するとすれば、Radon-Nikodym微分や状態価格密度の定義やその意味するものを問う形式にすると思います。

また、前回の記事のせいか、レポートをワープロ清書してくれる人が増えました。手書きでも読み手を意識して答えの箇所を強調してくれていたり、整理して記述しているという印象のレポートも増えている気がします。(前回は計算問題だったので、書きやすかったかもしれません。今回は証明問題ばかりですから、どうなるでしょう?)

Excelシートで計算を実行した結果を貼り付けてくれた人もいましたが、それに関しては評価が少し微妙になります。別に計算式を書いた上で、確認の意図で Excel で検算してみたというのは良いことだと思います。
ただし、今回の問題程度の計算だと、単に Excel で計算させましたというだけだと、正解のときは正しい理解をしていると見なせます(見なしています)が、答えを間違えている場合には何が間違いの原因であるのかを遡及しにくい(できない)ケースもあります。
Excel で確認することはとてもよいことですが、実際にどういう計算を実行させているのかを明らかにするようにしてください。(最低限、埋め込んだ数式を隣のセルに文字列表示するとか)

6/18(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回:信用リスク(5)

第11回は誘導型アプローチに基づくクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

* リスク中立評価
* Duffie-Singleton モデル
* CDS のプライシング

などを予定しています。
準教科書では9.3~9.5節の部分に相当します。

2009年6月12日金曜日

6/16(火)「金融数理の基礎」第10回:状態価格(2)

第10回目では、教科書の3.3節を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* CAPM と無裁定評価法の違い
* 効用関数の性質
* 最適投資問題の解法の整理
* Lagrange未定乗数法を用いた解法

例題3.3.2は事前によく読んできてほしいですが、授業では細かくフォローしません。
むしろ、補題3.3.3 やLagrange未定乗数法を使う形に問題を整理してから解法については詳しく見たいと思います。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月11日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回フォロー(追記)

配布資料とプレゼンテーションをイントラネットにアップしておきました。
(「外性的」ではなく「外生的」だとご指摘いただきましたので、プレゼン資料の
当該箇所を直しておきました。昔のファイルを再利用、再々利用しているからですね・・・
恥ずかしい話ですが、私はある時期まで「内性」「外性」と書いていました。
今考えると、標準的な漢字変換では両者とも出てこないのですが・・・)

あと、vulnerable という単語の発音についても指摘されました。
あえてカタカナで表記すると、「ルネラブル」というのが最も近いということです。
こちらでも確認できます。

私は細かいところ(大きなところでも?)でしくじっていることがあると思いますので、遠慮無くご指摘ください。

今回は特に提出を要する課題はありません。
テキストの色
前回の課題レポートの提出を確認できたのは、以下の10名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM09F014, IK09F002

レポートに関するコメントです。

問題1の解法としては、偏導関数の符号に着目するタイプ、グラフを表示して確認するタイプ、あるいはその両方を行ったもの、それから標準正規分布関数で表示する前のデフォルト確率の表現式に着目してパラメータとの関係を考察したもの、に別れていました。

それぞれについて気になったことがあればレポートでコメントしてあります。
ただ、一般的なコメントとして、ボラティリティに関してだけは、V0>D であればデフォルト確率はボラティリティについて単調に増大するのですが、V0<Dのことも考えると、逆のケースもありえます。

考察して指摘してくれていた方もいますが、もし債務超過状態から出発していると、ボラティリティが大きい方が債務超過から脱出できる可能性も高くなるので、ボラティリティが大きい方がデフォルト確率を小さくする可能性もあると考えるのは自然です。

問題2についてはリクエストがありましたので、略解を作りイントラネットにアップしておきました。
ほとんど正解と見なせる方も少なからずいて頼もしい限りでした。
一方で手つかずだったという人もいました。略解を読んですぐに理解してもらえるとも思えませんが、
どういうポイントが問題を解く際の障害になっているのかということは、略解を読んで少しでも分かってもらいたいところです。

最後の部分で「多項式関数と指数関数の収束スピードの違い」に注目する話が出てきます。
ここのところを細かく議論している人はいなかったので、私なりの説明を加えておきました。
また、正しい収束の結果を明示していた人に対しても、本当にそうなることをきちんと説明できますか?
という突っ込みの気持ちをこめて添削しておきました。

2009年6月10日水曜日

「金融数理の基礎」第9回フォロー

久々に授業後に「採点」のない火曜の夜を過ごしました。
(それでこんな本を読んでました・・・このシリーズ(三部作?)も読みました。)

宿題レポートに関する私の考え方をコメントしておきます。
  1. 手書き or ワープロ?
     毎週の宿題に対してワープロを使って清書する時間がない人が大半だと思いますが、読み手の立場からするとワープロで清書されたレポートの方が読みやすいですし、本当はワープロでの清書を求めたいところです。字がきれいな方が読みやすくて良いということも感情的にはありますが、それは大きな問題ではありません。(少なくとも私には自分のことを棚に上げて、字の読みやすさ云々を言える立場ではありませんし・・・)
     ワープロの方が望ましいと考えるのは他に理由があります。

  2. ワープロの方が楽
     手書きだといきなりぶっつけで紙と筆記具があれば、どこでも解答を書けるというメリットはあります。ただし、途中で大幅な修正をしようと思ったときに、一から書き直さなければならないとなると面倒です。それに毎回手で書かないといけません。
     ワープロは最初は面倒に感じるかもしれませんし、数式入力ができないものや面倒なものもあるでしょう。しかし、一度使ったファイルは使いまわせますし、宿題の記号や設定は似たものが多いので、回を追うごとに入力自体の負担は逓減していくと思います。。それに間違えても修正が容易です。簡単にコピペできるので、校正を怠るとミスプリを増殖させてしまうというマイナス面もありますが。
     それに修士論文を手書きにしようと思っている人は少ないでしょうし、数式の入力などあまりしたことがない人でも、修論研究では少なからず数式を使う人は多いでしょうから、こういう機会に少しずつ慣れていくこともよいと思います。

  3. 整理して書くことに自然とつながる
     数学の問題の解答をいきなりワープロで書き始めることは難しく、一度は自分の手で計算することが必要となります。その結果をワープロで入力する場合には、必要以外のことを書くことが非効率なので、多少なりとも整理して書くという意識につながるはずです。そういう意識が高まれば、読み手にとってどうまとめるのが適当かということを考えてレポートを作成できるようになると思います。
     手書きだといきなりぶっつけで解答を書けますが、その結果自分の思考過程がダラダラと記述されているものが完成されることもあります。そういうものはたとえ正しい推論をして正しい解答を得ていたとしても読み手にストレスを与えます。もちろん、手書きでも整理して清書して提出されている方が少なくないと思っていますが。

  4. 手書き書類が通用している職場はありますか?
     手書きのビジネス文書が罷りとおっている職場は現在あるでしょうか?(サ○エさんの世界には、逆にそういう会社しか出てきませんが・・・) 少なくとも文書だけで仕事上の報告を完結させる必要があるとき、ワープロを使わない人はいないでしょう。大学でもワープロで作成したもの以外受け付けないとする先生も増えてきていると思います。

  5. と言われても「清書する時間がない」という人
     問題を解くのに時間がかかってしまいワープロで清書する時間がないという人は多いでしょう。職場でレポート作成は大っぴらにできないでしょうし。もちろん宿題レポートは手書きでOKです。本質は、レポートとは読み手(すなわち私)を意識して書かれる文書だということです。つまり十分に解答を整理して書くことが必要なことであって、ワープロでもダラダラ書いてあるものは論外です。

  6. と言われても「数式を入力するスキルがない」という人
     MS Word の数式エディタは多くの人が使えるはずですから、未経験の人は試しに少しずつ使ってみることです。Windows なんてOSは使っていない!という人であれば、TeX が自然と使えるはずなので、TeXの使用を勧めます(今学期TeXでレポートを作成してくれているのは1人だけだと思います)。本当はすべての人に TeX を使って欲しいと思っているのですが・・・。TeX をまったく知らないという人は例えばこちらを参照してください。Web で TeX 入力を体験したいときにはここなどを見てください。

2009年6月9日火曜日

「金融数理の基礎」の成績評価について

「金融数理の基礎」の成績評価はシラバスでは、中間試験(50%)期末試験(50%)としていますが、期末試験で挽回できるように以下のような換算式を採用したいと思います。

Min{0.5×Max{ 中間試験得点, 期末試験得点} + 0.5×期末試験得点 + 平常点, 100}

中間試験で80点だった人が、期末試験で40点しかとれなかった場合は全体では60点と評価されることになります。しかし、中間試験で40点だった人が、期末試験で80点とると全体では80点と評価されることになります。
中間試験の成績にかかわらず、期末試験で60点以上とれば単位は保証されるということです。
中間試験の成績にかかわらず、期末試験で100点をとれば、成績も100点ということになります。

試験時間が短かったという感想を漏れ聞くので、期末試験の時間は10分ほど延長することを検討します。

期末試験範囲は、第9回~第14回の授業で扱う内容ということになりますが、第1章・第2章の内容は既知として授業を進めます。
したがって、期末試験では第1章・第2章の内容に関する問題も出題されることになります。

6/11(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回:信用リスク(4)

第10回は誘導型アプローチおよびクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

* デフォルト・リスクのある金融商品の評価法の概要
* 誘導型モデルの概要
* 強度モデルの数理

などを予定しています。
準教科書では9.1~9.4節の部分に相当しますが、私の方でも資料を用意します。

2009年6月5日金曜日

6/9(火)「金融数理の基礎」第9回:状態価格

第9回目では、教科書の3.1-3.2節をいくつか扱います。
時間的には 3.1節の内容を押さえて 3.2 節は重要なところをピックアップして説明する感じになると思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* 確率測度の変換の数学的意味
* Radon-Nikodym 微分と状態価格密度と状態価格の関係
* 状態価格のファイナンス的意味

また、中間試験の結果についても少し触れる予定です。

2009年6月4日木曜日

2009年度「金融市場の計量分析」の前半

2009年度の博士課程向け講義「金融市場の計量分析」(水曜1限)の前半7回の中川担当分が終わりました。

今年度の内容をメモしておきます。

  1. 4月8日 オリエンテーション(Black-Scholes 公式の導出過程など)
  2. 4月15日 デフォルト時刻の stopping time の性質による特徴付け、Leland(1994)主結果の概説、Duffie-Singleton(1999)の主結果の証明 
  3. 4月22日 Duffie-Lando(2001)の主結果の概説、Kusoka(1999) の example の概説
  4. 5月13日 Giesecke-Goldberg(2008) について学生の発表
  5. 5月20日 Errais-Giesecke-Goldberg(2008), Giesecke-Kim(2009)の概説
  6. 5月27日 中川「相互作用型の格付変更強度モデルによる格付変更履歴データの分析」(2009) の概説と discussion
  7. 6月3日 Nakagawa-Shouda, "Analyses of Mortgage-Backed Securities Based on Unobservable Prepayment Cost Processes"(2004)の概説と discussion

2009年6月3日水曜日

宿題レポートの評価ポイントについての補足

(人によっては)答案用紙の得点そばに書かれている緑の数字の算出根拠について質問を受けましたので、回答しておきます。
ただし、この措置は暫定的なものです。平常点の扱いは、中間・期末試験の結果とあわせて最終的に決定します。

まず、「金融数理の基礎」の成績評価は中間試験と期末試験の結果で決めるというのが大前提です。
平常点も考慮するとしていますが、最大でも5点程度の加算が妥当と考えていますし、平常点は考慮しないで済むなら、それにこしたことはないと思っています。

宿題レポートは、あくまでも授業の復習と試験対策のためのものと位置づけていますが、平常点として考慮する材料を残すためにいちおう私の方では毎回評価を記録しています。
返却するレポートには点数をつけていませんが、試験と異なりレポート評価には、見やすさや形式が整っているかということや、自発的に探究している部分があるかということなど、問題の正否以外の要素についての私の主観的評価も反映させているためです。

次に今回のポイント数字の根拠ですが、来週以降も5回(第9回~第13回)分の宿題を予定していますので、前半の6回も合わせて計11回の提出機会があります。

この11回に全て提出して、それが私の判断で毎回ほぼ完璧(問題に正解している+α)だとすれば6点加算されるようにしています。
これまでの6回分を毎回提出してきて、問題の出来だけで言えば、平均して4割前後であれば1点、5割から6割の人は2点、7割から8割くらいの人は3点くらいの換算になっていると思います。

中間試験時点では、4点の人が最大、3点が若干名、大半が2点、提出回数が少なかったりすると1点となっています。これからの後半でのレポート評価がよければ、もう少し上積みされると思いますし、期末の出来を考慮して平常点のウェイトをもう少し上げる可能性はあります(下げることはしません)。

コンピュータ環境の整備やら

唆されて(?)、自分のオフィスの新しいデスクトップPCにUbnutu9.04を入れました。
もともと Windows Vista がプレインストールしてあって、そこにいろいろとソフトをダウンロードしてあり、Windows を消去するのも不便と思い、パーティションの空きに入れて dual boot にしました。

Ubuntu自体のインストールは簡単ですし、TeXやらScilabやらをインストールするのも簡単なのですが、日本語設定(UTF-8とEUC-JPの違いによるもの)の部分やらScilabのメニューバーが読めないとかの細かい不具合が起こっています。WEB で情報を探しましたが根本的な対処法はよく分からないという感じです。
update で不具合が修正されるのを待ちます。

Linux についての知識もあまり無いですし、日本語で作業することが多いうちは、私としてはUbuntu に完全移行するという判断はできないです。少しずつ勉強していきます。

また、共同研究者から送られてきた Matlab コードをScilab 用に変換しましたが、グラフィックのところが
きちんと変換されず、plot の問題を解決できず・・・
予算があれば Matlab を買ってしまおうか・・・

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案の返却

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案を本日返却するよう手配します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名右のところに赤丸で囲まれた赤い数字が100点満点での今回の点数です。
人によっては、その左に緑の四角で緑の数字が記入されている人もいると思いますが、それは第1回~第6回の宿題レポート評価についてのポイント(最終成績に加算される点数だと思ってください)です。
何回かレポート提出しているのに緑の数字が無い人は、まだ宿題評価で加算する水準まで達しないと判断されているということです。
緑の数字は後半の宿題レポートの出来次第で加算されていきます。

また、中間試験の成績は全体の5割を占めることになっていますが、単に今回の点数に0.5をかけるという処理をするわけではありません。期末試験でリベンジできるような評価法を採用する予定です。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

中間試験の採点結果について質問・異議等があれば、6月9日(火)までに直接中川に問い合わせてください。

2009年6月2日火曜日

「金融数理の基礎」中間試験採点コメント(速報2)

略解と採点方針はイントラネットにアップしておきました。

「金融数理の基礎」の中間試験は25名が受験しました。

全体の採点&第1回見直しを終えました。だいぶ甘めに評価したつもりです。

平均点は問題別に
 問題1:22.2点(/25点)
 問題2:15.6点(/25点)
 問題3:8.3点(/20点)
 問題4:15.4点(/30点)
となっており、全体の平均点は 61.6点(/100点)でした。
去年の中間試験の平均が71.6でしたので、10点低下したことになります。

問題3(3)があったので、満点はとりにくいとは思いましたが、全体的に難易度を上げたつもりはありませんでした。時間が足りなかったでしょうか?

最高点は87点(1名)、80点台が5名です。

現状の成績評価法だと、期末試験での挽回が厳しい人が少なくないので、
期末試験でリベンジできるように評価法を少し変えようと思います。
それについては次回に授業で説明します。


いくつかコメントしておきます。

問題1は7割弱の人が全部正解していました。(整数または分数で答えよという指示でしたが、小数で答えた人がけっこういました。減点も考えましたが、そんなことで減点していたら大変なことになるので、大目にみました)。(1)と(3)を間違えている人がいました。以前から出しているパターンの問題ですので、基本的に答えが正しいかどうかで判断しています。

問題2は例題1.3.2とマルコフ過程を絡めた問題。
(1)は8割くらいの出来。(2)はきちんと出来ている人はごく少数。fやgが登場していれば多少点数をあげました。(3)もきちんと正しく表現できている人は半数くらい。微妙なミスも減点は少しにしたつもりです。(4) はそこそこ良くできていました。答えが違っていても、計算すべき式が正しい人には多少点をあげました。

問題3は教科書38~39ページにかけての記述を参考に作成しました。
(1) は劣マルチンゲールが正解ですが、「優マルチンゲール」という誤答が比較的多かったです。あと「マルチンゲール」という解答も少しありました。
(2) 本当の意味で正解と見なせるものはごくわずかですが、多少の式変形の飛躍や変な表現については大目にみました。「適合性」に触れていないものは1点だけ減点しました。
(3) 今回の最難問だと思いますが、誰もできていませんでした(惜しいという人が1名)。ただ、否定に関する問題は出すと言っておいたはずなので、もっと正解に近い解答が多いことを期待しましたが・・・

問題4 は、2章の練習問題9を少し変えて出しました。過去にも同様の問題を出したことがあります。
2割強の人が全問正解していました。逆に手つかずの人も含めて3点未満という人が3割強いました。
前から順番に解かずに問題4に先に手を付ければもう少し点を稼げた人もいると思います。

(1) は4つの確率を足して1 になるはずなのに、足して2になるような解答をしている人が多少いました。
あとは(2) (3) で少し計算ミスが見られましたが、手を付けていた人は全体的に点をとっていました。
細かいチェックを改めてしますので、平均点や得点分布は多少変わるかもしれません。

6/4(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回:信用リスク(3)

第9回は数理ファイナンスアプローチにおける信用リスクの構造型アプローチについて概説する予定です。

予定では、

  • 構造型アプローチ(+完全情報)の概要
  • Merton モデル(とその応用としての、KMVモデルおよび1ファクターモデル)
  • 初到達時刻モデル(外生的な閾値設定と内生的な閾値設定)
  • 構造型アプローチ(+不完全情報)の概要と既存研究紹介
  • Duffie-Lando モデル
などを予定しています。
準教科書では8.2節の部分に相当するところを扱いますが、私の方でドキュメントを用意する予定です。

2009年5月27日水曜日

「金融数理の基礎」第6回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第6回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月26日火曜日

「金融数理の基礎」第7回フォロー

第6回の宿題の略解をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の20名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016,
IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025, IM09F031,
IM09F037, IM09F041

以下宿題の採点コメントです(昨年度と同じような内容です)。

以前に比べると、読みやすいレポートが増えてきましたが、説明不足に感じたり、議論をもっと整理してほしいものも少なくありません。
例 えば式変形を淡々と行っている解答がありますが、何も説明せずに複数の性質を使って一気に式変形していたりするのは、こちらとしてはきちんと理解しているのか、大事な議論をうやむやにして結果につながるように辻褄をあわせているのか判断に戸惑います。
式変形がいたずらに長くなるのが嫌であれば、「○○と△△、および□□により(or を用いて)」という説明を入れてから、複数の性質を使った変形をしてほしいです。

また、反対に説明が冗長に思えるものもあります。少し見直せばもっと短く端的に説明できる解答も多いです。
テストは時間との戦いなので、議論を整理して解答せよというのは厳しい要求ですが、レポートは(建前としては)検討する時間が十分あるので、自分の思考を整理してから解答をまとめてほしいと思います。
このコメント自体は、講義する自分自身への戒めでもあるのですが・・・

問1:(1) E_n[M_{n+1}]=M_n を示すところは多くの人が良くできていましたが、もう少し説明してほしいという解答も少なからずありました。

{M_n} が適合過程であることについて言及する人が増えましたが、まだ忘れている人 or 不要だと思っている人がいるということですね。

さらに細かいことですが、この問題は M_0 も含めてマルチンゲールですが、{X_k} を使って定義しているのは n ≧ 1 の場合なので、 n= 0 の場合については別に確認する必要があります。
 
(2) 数学的帰納法を用いた人と、巧妙な式変形を用いて直接示そうという人に別れましたが、後者の方が多かったです。鍵となる等式が説明なしに成り立つところから議論を進めていたりする人がいましたが、明らかと思えるところでも説明をしてほしいです。
式変形の際の細かい記述ミスについては気づけば直していますが、スルーしている可能性もあるのでご容赦ください。

あと、n=0 の場合に I_n = 1/2(M_n^2 - n) が成立することに言及していない人がほとんどでしたが、触れておく方が議論しては完璧です。n=0の場合だけは自明ですが、対称ランダムウォークの式変形の議論だけでは正当化できないことに注意です。

(3) 実は、前回の宿題であった練習問題6においてΔ_j を M_j とすれば、{M_n} がマルチンゲールであることを証明しているので、マルチンゲール変換の特別な形と見なせて、前回の宿題(一般論)から結論が得られる、という解答が隠れた ベストアンサーかもしれません。

証明は、I_n の定義そのものから前回の宿題とほぼ同じ議論をしているもの、と(2)の式を使って示すものの2通りに分かれていました。この問題を(2)の前においておけば、おそらく全員が前者のアプローチをとったと思いますが、いちおうこれも意図的に(2)の後において、どっちを選択するかを見るつもりでした。
前者の方針だと、n=0 のときは別の議論で確認する必要があります。I_n を {M_k} で定義しているのは、n ≧ 1 のときだからです。
後者は (2) が n= 0 でも成立していることを自覚していれば、n=0 を特別に考えなくてもよいです。

{I_n} が適合過程であることについて言及している人は(1)より少し減っています。

(4) は手つかずの人もいましたし、解いている人の中でもMarkov性の定義を十分理解していないと思われる解答が見られました。
任意の時点 n、任意の関数 f に対して、ある関数 g が存在して
E_n[f(I_{n+1})] = g(I_n)
が成り立つことを示すことになります。
このテキストに沿ってMarkov性を示すには、f を用いて g を具体的に表現するのが最も明解な答え方になります。
途中の議論に不備があったにせよ、略解と同様の正解を得ていた人は思ったよりは多かったです。

g を得ている人でも見た目は I_n と M_n の関数のままで解き終えている人や、M_n が I_n で表されることは(2)から分かるので、I_n と M_n の関数を強引に I_n に対応づけて新たに定義して証明を終わらせている人がそこそこいました。
その理解は正しいですし8割方Markov過程を理解していると判定できますが、関数 g の形を具体的に表すことができるのであれば、具体的に示すことにこしたことはありません。

任意の関数f について考える必要があるのですが、f(x)=x の場合しか考えていない人が少しいました。

あ とテキストの例題のように、I_{n+1}/I_n という比を考えようとしている人がいましたが、株価過程の場合とは異なり、この設定では「I_{n+1} = I_n × 何か」という関係になっていないので比をとる意味はあまりなく、むしろ差に注目する方が自然です。

もちろん、Markov 過程の前提として、それは適合過程であることが必要ですから、(3) で{I_n}の適合性に触れたとしても、ここでも改めて触れておくことは大事かもしれません。

5/28(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第8回:信用リスク(2)(追記)

第8回目は、判別分析によるデフォルト判別の話をします。
判別分析そのものの理論面や財務指標の意味などはさらっと流して、財務指標を説明変数としてデフォルト判別に応用する場合の注意点をフォーカスしたいと思います。
また、第2回目のレポート課題をアナウンスしたいと思います。

予定としては、以下のことに触れるつもりです。準教科書には特に対応箇所がありません。

  • Altman モデル
  • 財務指標の例と作成上の注意
  • 線形判別分析モデル作成時のポイント(分析ツールの説明)
  • モデル評価

Just a note

とりあえずこれにリンク

2009年5月23日土曜日

6/2(火)「金融数理の基礎」第8回:中間試験

6月2日(火)の第8回目の授業は中間試験です。

日時と場所:6月2日(火) 20:10~21:10(正味60分) 第3講義室
※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり20:40まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式
  • 試験範囲は、教科書の第1章と第2章全体
  • 全体の7割は、メインテキストの例題や練習問題およびその類題を出題する
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

5/26(火)「金融数理の基礎」第7回:二項モデルの確率論的整理(4)

第7回目は、教科書の2.5節の残りと1,2章の練習問題をいくつか扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 例題2.5.4 が非マルコフになること
  • 例題2.5.6 のマルコフ過程に対する backward な再帰式の導出法

2009年5月22日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月21日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回フォロー(追記)

配布プリントをイントラネットにアップしておきました。今回のプリントには課題はありません。
プレゼン資料をアップしました。

授業後に、某銀行のリスク計測モデルについての情報を寄せてくださった方がいます。ありがとうございます。

あと、授業で回覧してリストに載せなかった本はこちらこちらです。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の14名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014, IM09F017,
IK09F002, IK09F004

以下、課題(前回問題3)へのコメントです。

ES の計算方法をまだ正しく理解できていない人が若干いました。
(答えだけを列挙すると、(i) -0.8 (ii) H のとき -2, T のとき -0.5 (iii) -0.8 (ii) H のとき -2, T のとき +1)

特に時点1で最初のコイントスの結果で条件付けした場合の計算が不正確な人がいました。

例えば、(ii) で最初のコイントスが H の場合は、

1/(1-0.1) × [(-2)×0.1] = -2

となるのですが、0.1 の部分を 0.2 とか 0.1/0.2=0.05 とかにしてしまっている人がいました。
また、最初のコイントスが T の場合は、

1/(1-0.1) × [1×0.05 + (-2)×(0.1-0.05)] = -0.5

となりますが、(0.1-0.05)の部分が、(0.1-0.04)/0.8 などになっている人がいました。

もう一度ES の計算方法を確認しておいてください。
変に機械的に考えないで、ESの意味そのものを考えれば、求めた数字がESとして適当かどうかを自分でも判定できるはずです。

(v)のコメントについてですが、「時点0でのESの値が同じでも、時点1の状態によってESの値が異なることがある」というような内容の人が多かったです。
これは前回の問題2で私が解説した内容に引きづられたためかもしれません。説明不足だったと思います。すみません。
(ちなみに、時点0 での5/8-ES は L_1 もL_2 も -1 で、時点 1 において u だった場合は、L_1 の方の 5/8-ES は 5となり、L_2 の方の 5/8-ES は -1 でした。また、時点 1 において d だった場合は、L_1 の方の 5/8-ES は -13となり、L_2 の方の 5/8-ES は -1 となります)

ポイントは、損失という意味では、L_1 では最初に u のときには 5 だけリスク資本を積むべき水準になりますが、L_2 では(uでもdでも)-1 のままです。となると、次の時点の状態によって片方はリスクが顕在化し、片方はリスクが現れてこない状態なわけです。そうなるとL_1 の場合に、時点0の段階で5/8-ES の結果が -1 であるとしても、それを時点0でのリスクとすることは、自然には感じられないということです。

問題3においても、多期間リスク尺度を考える以上は、「時点0でのESの値が同じでも、時点1の状態によってESの値が異なる」こと自体は不自然なことではなく、むしろ時間と状態によってリスク値が変わって当然です。
問題なのは、各時点のリスク値および時間による変化の仕方が、「リスク」という意味合いに照らして整合的と思えるかどうかということです。時点1で状態によっては正のリスクが算出されることがわかっているのに、時点0でリスクが負(リスク資本が不要である)という状態は違和感がありませんか?というところがミソです。

ですから、考察する際にはもう少し2つの確率分布の設定の結果の違いに注目することが必要になります。
確率測度 P の下では最初のコイントス結果が H でも T でも 90%-ES がマイナスになりますから、時点0のリスクがマイナスであってもあまり違和感がありません。
(ちなみに、時点0での90%-ES は、時点1の90%-ESの期待値に一致しています。これは一般的に成り立つことではありません)
一方で、確率測度 P^ の下では最初のコイントス結果が T のとき 90%-ES が+1となり、リスク資本が必要な状態になりますから、それが20%の確率でしか起こらないことであったとしても、時点0のリスクがマイナスであり、リスクが正として現れないP のときと同じ値であるということはあまり自然とは思えません。
(ちなみに、P^ の下では時点0での90%-ES は、時点1の90%-ESの期待値に一致しません)

これは一つの説明の仕方ですが、いずれにしてもリスク量は「積むべきリスク資本」という視点からすると90%-ES は不自然な状況を引き起こすということを指摘してほしいというのが出題の意図でした。

2009年5月20日水曜日

「金融数理の基礎」第5回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第5回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月19日火曜日

「金融数理の基礎」第6回フォロー

配付プリント(中間試験情報・宿題つき)とG.W.問題のExcelブックをイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の23名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM06F023, IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033,
IM08F036, IM09F001, IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F012,
IM09F014, IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024,
IM09F025, IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

第5回分の宿題についてのコメントです(昨年度とほとんど同じコメントになりますが)。

問1:テキストでいうところの「条件付Jensen不等式」とマルチンゲールの条件を組み合わせるだけです。回りくどい説明をしている人が少しいました。また、条件付き期待値であれば、En[ ]のように書くべきなのに、E[ ] としている人が数名いました。
うっかり書き忘れたということでしょうが、条件付き期待値という概念を理解しているかどうかはこの授業で大事なポイントですし、1カ所だけ忘れているようであれば大目に見ますが、何カ所も条件付きであることを明示していない場合は、テストでは減点対象になります。

また、厳密には{φ(M_n)} が適合過程であることに言及する必要があります。ほぼ自明なことですが、そのことについて触れているかどうかで、その人がきちんと定義を確認できているかどうかが判断できます。その意味では適合性について触れていた人は2名くらいでした。

問2:これも、条件付期待値の性質を繰り返し適用して式変形していき、とどめとして {M_n} がマルチンゲールであるという性質を使うことになります。

説明不足と感じられる答案が多く見受けられました。ほぼ自明な変形であっても、ここでは条件付き期待値の性質を適切に利用できるかどうかを見たいわけなので、いちいち式変形にはその根拠を示してほしいところです。そういう意図で出題しています。

また、問1と同じで、{I_n}自体が適合過程であることにも言及する必要があります。自明と感じられるかもしれませんが、少し込み入った定義になっているので、2行くらいで簡単な説明がほしいところです。
これも言及している人はごくわずかでした。

あと、この問題のM_n が対称ランダムウォークとして定義されたものに限定していると勘違いしていた人もいて、M_{n+1} - M_n = X_{n+1} のような記法を使っていた人がいますが、関係ありませんし、
E[X_{n+1]}] = 0 と言われても意味不明です。

問3:本質は計算問題と見なして結果をまずチェックしてそれが正しければ、計算過程の細かい議論の不備には目をつむっています。

(i)(iii) は条件式を出すところまではけっこう出来ている人が多かったです。ただ、図の示し方という意味では不十分な人がいました。
(iii) で log x + log y = log xy や log 1 = 0 という対数の性質に気づけなかった人が若干いました。対数の性質を復習しましょう。

(ii) は恒等式の議論にもちこむと x^2 + y^2 = 2 と x + y = 2 という方程式が出てきますが、この解は x=y=1 なので、条件を満たさず不適となります。計算ミスで間違った解を出している人が若干いました。あと、(ii) だけスキップしたり、j恒等式と見なさずに少し面倒な議論に持ち込んでいた人もいました。

あとどうでも良いですが、キリル文字変換については例えばこちらをお試しください。

5/21(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回:信用リスク(1)

第7回目は、信用リスクの初回と言うことで、信用リスク計量にモデルについての概説をしたいと思います。
内容に関しては特に予習するポイントはありませんが、2つ目のレポート課題に向けての知識確認ということでB/S, P/L の基礎知識と財務指標の定義などについての小テストをしようと思っています。

予定としては、

  • 信用リスクのとらえ方
  • 信用リスク計量モデルの分類あれこれ
  • 会計知識の小テスト

です。

2009年5月16日土曜日

雑感

今学期は、月曜にゼミ2コマ、火曜・水曜・木曜に授業1コマずつというスケジュール(水曜は6月第1週で自分の担当分が終わるが)なので、それなりに大変です。

5月の残りの金曜日2回は、前任校東工大MOTでも講義します・・・

火曜の「金融数理の基礎」と木曜「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」は、大部分は昨年度の(本質的には東工大MOT時代からの)配付資料(宿題や演習問題)やプレゼン資料を再利用していますので、準備にはあまり時間がかかっていないと思われるかもしれませんが、さにあらず。

「金融数理の基礎」はぶっつけ本番でもそこそこ講義はできると思います。それでも90分で予定している内容をそれなりにうまく説明するためには、どこの部分をどのくらいの時間をかけて説明するとか、時間が超過しそうなときにはこの部分は省くとか、そういう授業進行のイメージ作りに時間を使います。

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」は、去年とシラバスを変えたので、プレゼン資料を編集する手間が多少あり、正直なところ準備は自転車操業状態です。また、統計分析作業の多くを Excel から、まだ不慣れな R に切り替えたりしているので、データ分析作業にも時間をとられています。

また、そもそもリスク管理は日々見直しされる性質のものですので、説明する際のデータを新しく取り直したり、リスク管理を取り巻く規制の動向や新しい理論・方法についても授業に反映させたりしないと意味がない科目ですので、本質的に毎年内容をチェンジさせる必要が生じます。
ただ、(いちおう経験している)実務から離れてだいぶ時間が経っていますし、最新の実務での動向などは目学問・耳学問に終始してしまい、あまり授業に向けて内容を消化できていないという反省の日々です。

結局自分が出来ることは、ある程度確立している数学モデルについて、その意味するところを説明することだということはわきまえています。
細かいテクニカルな話よりは、リスク計測手法を一般化・普遍化するという視点も大切ということを授業のメッセージとして込めているつもりです。

水曜の博士課程科目「金融市場の計量分析」は、自分の研究テーマである信用リスクについての論文をいくつか取り上げています。教えること及びそのための準備は自分自身のためにもなっていますが、修士向け授業では省略するような計算ロジックの細かいところにもこだわったりするので、準備はそれなりに大変です。

月曜のM1ゼミは、共通のテキストを学生が輪読するというものですが、学生の発表にナイスな教育的突っ込み&フォローをするために、自分でもテキストの予習が欠かせません。いちおうプロなので、ぶっつけでも質問攻めにはできるとは思いますが、フォローの方は準備しておかないと多少不安です。

ICSの授業・ゼミについてはそんな感じです。

研究面では、自分の研究については一区切り付けたので、水面下で走っている共同論文プロジェクト3つ(本当は4つですが・・・)を夏までには目処をつけたいと思っています。

その他にも頼まれ仕事がありますが、とりあえず棚上げ状態。6月に入ったら直ちにその棚を下ろさないと・・・

ということで「暇ではない」ことを無駄にアピールしてみました。
それでも他の人に比べたら、相変わらずマシかもしれませんね・・・

2009年5月15日金曜日

ファイナンシャル・リスク・マネージメント:授業計画の変更

次回から信用リスクの話題に移りますが、シラバスで示してある授業計画案を以下のように修正したいと思います。
最初に信用リスク計測について概説的な話をすることにします。
全体的には当初予定していたトピックスをほとんどカバーする予定です。

7. (5/21) 信用リスク計測についての概観
8. (5/28) デフォルト判別分析
9. (6/4) 構造型アプローチ(Merton モデル、初到達時刻モデル、ファクターモデル)
10. (6/11) 誘導型アプローチ(強度モデルのための数学の整理
11. (6/18) 誘導型アプローチによるクレジット・デリバティブの評価
12. (6/25) 信用リスクの依存関係モデル
13. (7/2) トップダウン・アプローチ
14. (7/9) 信用リスクについての新しい話題
15. (7/23) 学期末試験

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

5/19(火)「金融数理の基礎」第6回:二項モデルの確率論的整理(3)

第6回目では、メインテキストの2.4節の残り~2.5節の例題2.5.4 までを扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 41ページの最後から43ページの中段くらいにかけての説明
  • マルコフ過程の定義および47ページ真ん中あたりの説明
  • 補題2.5.3 が意味するもの
  • 例題2.5.4が、マルコフではないということの意味
また、授業の冒頭で、GW問題についての簡単なレビューと、中間試験についてのアナウンスをする予定です。

2009年5月14日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と関連するファイルをイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の14名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014, IM09F017,
IK09F002, IK09F004

コメントですが、多少の計算ミスはありましたが大多数ほとんどの人が正しく解答できていました。
標準正規分布関数Φ に対して、Φ(2.33) ≒ 0.99 としましたが、Excel で NORMSINV(0.99) を使って計算した場合との誤差も見てみてください。

第2主成分、第3主成分まで考える際のポートフォリオの標準偏差の計算式を間違えている人がいたので、復習しておいてください。
また、私の指示が曖昧だったためか、別に私がアップした日本の金利データ(円LIBORとswap rate)
を使って、主成分分析をしたうえで答えてくれていた人もいました。
それについては、正誤を確認できませんが、分析プログラムが添付されていたので、プログラムで気づいたことにはコメントしておきました。

2009年5月13日水曜日

「金融数理の基礎」第4回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第4回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第5回フォロー(追加)

宿題プリント(配布したもの)をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の22名(G.W. もあったせいか提出者数は少し増えました)です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F033, IM08F036, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025,
IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

以下、コメントです。
(大部分が、昨年度のコメントの repeat になりますが・・・)

問1:(i)についてはあまり問題なかったのですが、(ii)についてはあえて厳しく見たときには完全な解答と見なせるものはほとんどありませんでした。
証明問題では、何を前提として使っていいのかが重要なのですが、こうした演習問題を解く場合には
テキストに書かれている定義や証明されている性質や定理や命題、およびそのテキストの前提となる基礎数学の知識だけ(場合によっては、どういう事実かをきちんと説明する必要もあると思います)を使うというのがルールになります。

(i)については、テキストにも書かれている「A∩B=空集合のとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)」という(授業で示した)確率の有限加法性と「A∪A^c=Ω, A∩A^c=空集合」に触れていれば問題ありません。
(A^c は A の補集合とします)

(ii)でよく見られたものとしては、
  • 証明すべきことは2つある(一般には不等号が成立することと、排反な場合には等号が成立すること)のに、片方しか言及していないもの。片方が分からなかったのか、答える必要性を感じなかったから書いていなかったからか、判然としなかったです。
  • 教科書や授業でま だ証明されていない事実を証明せずに使ってしまっているもの。このテキストに沿った場合には、確率の性質として、証明せずに使えるものは、定義そのものと「A∩B=空集合のとき、 P(A∪B)=P(A)+P(B)」というテキストに書いてある性質、あるいは授業で紹介した「A⊂Bのとき、P(A)≦P(B)」という性質くらいです。
    この問題に関しては、他のこと(例えば、一般に P(A∪B)=P(A)+P(B) - P(A∩B) であること)は自明と思えてもいちいち証明して使うべきです。証明して使おうとしている人はごく少数でした。
証明の方針としては「数学的帰納法」をうまく用いるのが自然だと思いますが、厳密にいうと 「N=k の場合に仮定して・・・」というところの書き方は、多くの場合厳密には不十分でした(今年は厳しく指摘しませんでしたが)。
厳密には、「k 個の集合の選び方によらず、k個の和集合については問題の不等号が成立する」という書き方をしないといけません。単に A_1, ・・・ A_k の場合に成り立つと仮定しても、それは特別な k 個の集合を選択した場合にだけ成り立つと仮定しているかもしれないからです。少なくとも、集合の選び方によらないことを断っておく文言が必要です。
(集合の演算、∪や∩は普通の演算の和と積に対応するので、交換法則や結合法則は当然成り立つのですが、数学科の集合論の授業では最初にそういう自明に思える性質を証明するということを習います)

後は、N=2 とか N=3 の場合に示して(それも飛躍がある人が多かったですが)、それを強引に一般化している人が多かったです。
ほぼ当たり前に思えることでも、一般の自然数に対して成り立つことを言う場合は数学的帰納法を使うか。飛躍と感じられないように説明する必要があります。

いずれにしても、証明問題はどの既存知識を使えるかどうかを問題の文脈から考えることが必要です。
(東大に入試でも、三角関数の加法定理の証明や、円周率が3.05より大きいことの証明などが出題されたことがあります。特に後者は円周率は3.141592... を知っているから自明というわけにはいかないですよね)

問2: 計算ミスが多少あった以外はだいたいできていました。ただ確率分布を表現する方法が適切でない人が少しいました。S3 の分布を与えるという場合は、S3 の取り得る値と確率が対応されているような書き方 P(S3 = △) =□のような表し方か、S3 の値と確率の対応表として表すことが必要です。
(期待値の計算なのに、条件付き期待値と勘違いしている人がいました)

(ii)の平均成長率の計算を誤解している人が少しいました。また、 25% ではなく 125%(あるいはそれに相当する小数・分数)と答えた人がいました。教科書での「成長率」の使い方は「粗成長率」というべきもののような気がします。一般には、25%のように答える方が自然と思います。その上で、この 25%という数字は何なのかに言及しているかどうかというところに私はポイントを置きましたが、あまりそのことに触れている解答はありませんでした。

問3:条件付き期待値は確率変数であるので、答え方としては E_1[Y_3](H) = とか E_2[Z_3](TH)=
とか、情報を与える期待値の添え字の時点までのコイントスの結果を具体的に与えて、確率変数の取る値を計算することになるので、手計算派の人はけっこう答えをまとめて書くのが面倒だったと思います。
(この問題については、Excel 派の人が多くなっていました)
また、手付かず(手付けず?)の人もいました。

計算ミスは可能な限りチェックしたつもりです。また、答えの数字をチェックしにくい、あるいは数字のチェックができない答え方の人がいました。
また、根本的に条件付き期待値の計算結果が違っていた人も少なからずいました。授業では丁寧に例題をしたわけではなかったので、その場で理解できなかったかもしれませんが、教科書を参考にすれば計算法は修得できるはずです。
また、そもそも条件付き期待値とは何かをよく復習しておいてください。

Y の方は線形性(授業では前回まだやっていなかったですが)を使って、S の条件付き期待値に帰着させている人がいました。それ自体は悪くない考えです。
ただ、線形性は Z の方には有効ではないのですが、強引に同じような議論をして間違えている人がいました。

問4:手つかず、自分の誕生日の場合だけ、全部という3つの解答パターンがありました。
計算するための自作プログラムのコードをつけてくれた方も何人かいました。
また、私が想定した以上に、この問題の背景について分析してくれた方もいました。こういうのはうれしいですね。
あと(iii) でコールとプットの価格差を計算させたのにはある意図があったのですが、その辺のことに言及してくれていたのはわずかでした。問題の意図を考えてもらうことがむしろ大事で、それがなければ(iii)は、ただの小学生レベルの引き算の問題をさせているだけになってしまいます・・・
(iv) は何人かの人がコメントしてくれていましたが、微分して最大・最小を見つけるとか、Excel のソルバーで最適化するとかいう手段がうまく行かない最大・最小問題のケースです。
ということで 366(閏年生まれも考慮して)通り全てについて計算して、そこから最大・最小を探し出すというのが最も適当な方法と言えます。

成績評価ではプログラムを書く能力の有無を考慮するわけではありませんが、授業の内容を理解しているかどうかを確認する手段として、プログラムを自力で作らせて計算させることは非常に有効だと思っています。
リスク中立確率、株価分布、デリバティブの価値などの計算方法を正しく理解していないと、当然プログラムで正確に表現することはできません。
ただ、正確に理解していてもプログラムでうっかりミスをしてしまうことはよくあることなので、如何に自分で
自分のプログラムの誤りを見つけるかということが大事になってくると思います。
今回全部の小問い正解した人も、自分にプログラムや計算方法に間違いがないと自信を持っていた人はどれだけいるでしょうか?

他の計算問題についても言えますが、自分の計算ミスを他人に指摘される割合を減らして、できるだけ自分でミスを発見して事前に修正できるようになってほしいと思います。

コードを付けていた人で計算結果が正しくなかった人は、ざっとコードを追って問題点が分かった場合にはコメントしています(複数の問題があるかもしれませんが、気づいたところだけを指摘しています)。
あと、手計算や結果の数表をつけてくれた人についても、間違っているところが指摘出来る場合は指摘してあります。

2009年5月11日月曜日

5/14(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回:市場リスク(4)

第6回目は、市場リスクの最終回ということになりますが、市場リスクというよりは、リスク尺度自体に再度目を向けます。

準教科書では、5章の接合関数(Copulas) の最初の方と6章の6.2, 6.3節あたりの内容のいくつかの話題を大まかに扱います。また、多期間リスク尺度については準教科書には触れられていませんが、一般論よりも例をいくつか紹介したいと思います。

予定としては、

  • リスクの統合
  • copula
  • リスク資本配分
  • 多期間リスク尺度導入の難しさ
などの話題をとりあげたいと思います。

2009年5月8日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月7日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と関連するファイルをイントラネットにアップしておきました。

問題2の主成分分析についての説明が中途半端でしたので、補足説明をイントラネットに追加しておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の13名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F017, IK09F002,
IK09F004

以下、レポートに関するコメントです。

250営業日での99%VaR 超過回数に対する検定に関して、対応する確率の表の作成や、第1種エラーおよび第2種エラーについての記述はほとんどの人が正しく述べていました。
しかし、散漫と事実だけを記したものも多く、結局「グリーン」「イエロー」「レッド」という区分が妥当かどうかについて、説得力のある主張・判断に至っていないものもありました。
「・・・以下の方が区分の基準として望ましい」とか「・・・であるから、このようにゾーン分けをしたと推察される」というような主張で、その理由・根拠も一応納得できるものについてはコメントしています。

当然、妥当かどうかの議論は想像の域を超えないので、それが正しい議論かどうかの判定はできませんが、それでも入手できる限られた情報と方法でいろいろと考えてみることは大切だと思います。

ちなみに、何人かの人が指摘していましたが、BIS規制においては市場リスクに対する所要自己資本額を、「前日の99%VaR値」と「直前の60営業日における日次の99%VaR値の平均に「乗数」を適用した値」の大きい方で与えることにしていており、「グリーン」「イエロー」「レッド」の区分は、この「乗数」を3~4のいずれに設定するかを決めるのに使われます。

所要自己資本額は少ない方がうれしいので、その意味ではVaR はできるだけ低い方が良いのですが、だからと言って VaR を低めに設定しすぎるとVaRを超過するケースが多くなってリスク管理的には本末転倒になり望ましくないので、「レッド」になるほど超過していた場合は低めだったVaRに対して最大の4を掛ける(要するにペナルティ)という対応になります。

詳しくはこちらのページの「2.サーベイの結果」の項を参照のこと。

2009年5月2日土曜日

5/12(火)「金融数理の基礎」第5回:二項モデルの確率論的整理(2)

第5回目は、教科書の2.3節の続き~2.4節を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 条件付き期待値の重要な性質(例題の説明は省略します)
  • マルチンゲールの定義と基本的な性質
  • 2項モデルにおける割引株価過程および割引富過程がマルチンゲールになること
  • リスク中立価値評価式のマルチンゲールによる特徴付け
条件付き期待値の重要な性質がどのように使われているかを見るために、後半は命題の証明の中身も少し見ていきたいと思います。

5/7(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回:市場リスク(3)

第5回目は、金利リスクに関する話題が中心です。ただし、リスク管理の観点に話を絞るので、Vasicek モデルとか CIR モデルとか HJM モデルとか BGM モデルとか、確率微分方程式モデルの話は特にしません。(それは秋学期の中村先生の授業できっちりやると思います)

準教科書にそのまま当てはまるところはありませんが、2.1節の Example 2.6(bond portfolio)には触れておきたいと思います。

あとは参考書指定している Hull 本や関連図書について触れたいと思います。

予定としては、

  • 金利の数式表現、期間構造のモデル化
  • ポートフォリオの金利リスク管理のアイデア(grid point sensitivity, cashflow mapping)
  • 主成分分析を用いたVaR 算出方法
といった話題に触れたいと考えています。

2009年5月1日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年4月30日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と関連するファイルをイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の12名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM09F014, IM09F017, IK09F002

略解をイントラネットにアップしておきました。
簡単なコメントをしておきます。

(ii) で、線形近似が正規分布に従うことは分かっていながら、分散の計算の仕方が正しくない人が少しいました。間違えた人は復習しておいてください。
(iv) は準教科書の例2.18の式を知らないとできないと思います。式を正確に覚えなくてもよいですが、正規分布の場合は公式でESも計算できるということは記憶にとどめておいてください。

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ICS外部向けアナウンスです。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)講演会については、こちらを参照してください。


「金融数理の基礎」第3回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第3回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年4月28日火曜日

「金融数理の基礎」第4回フォロー

宿題プリント(配布したもの)および前回の宿題の解答例(問3の解説が昨年度のままだったので修正しました)をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の20名(順調に提出者が減少しています!)です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F033, IM08F036, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025, IM09F031, IM09F032,
IM09F037, IM09F041

以下、コメントです。

問1 は教科書の ωn+1=H の場合の証明を参考にすればできますが、どういう根拠を使って式変形しているのか説明不足に感じられるものにはコメントしています。
ほとんどの人が証明の内容を理解しているとは思いますが、式変形の際の根拠がレポートに中に触れられていないということは、よく分からないまま書き写している可能性を払拭できないので、評価上は少し減点することになります。

また、付け足しの計算問題を忘れていたのか解答していない人や、計算ミスの人が少なからずいました。

問2は(0) は皆さん正解でした。(i)(iii) は答え方がまだ分かっていない人が若干いました。あと、式はできるだけ整理した形で書くようにしてください(減点まではいきませんが)。
(i) の答えの中で、r=0.03 であることや u = 2.5 としていることを途中で忘れている人がいました。
(ii) は正解している人は半数くらいでしょうか?手計算派とコンピュータ派は今回も半々といったところでしょうか。
コンピュータ派の人も、試験対策として手計算の練習はしておいてください。

問3は、二項モデルと同様の複製戦略を考えようとして、未知数2つに対して、制約となる方程式が3つあり、解が求まらないという議論をしている人がいました。その考察自体は間違いではないのですが、では価格をどう与えるのか?をさらに一歩進めてほしかったと思います。
解答例で最初に紹介している方法は、すぐにはピンとこないかもしれませんが、自分で図を描いたりして説明の意味を考えてみてください。
同じような考え方は、アメリカン・デリバティブの価格付けのところで使います。

また、リスク中立確率が存在するとしてリスク中立価格評価式を持ち出して議論する人も多かったです。(複製の議論と併記している人もいました)
確率であるという要請があるので、3つの確率の和が1であるという条件には多くの人が気づいていました。
ただ、リスク中立ということから導かれる条件や、いすれの確率も正の値であるという不等式条件まで考慮している人はあまりいませんでした。

無裁定という条件だけを使って数理ファイナンスで用意される答えは、公正価格は 0.6<V_0<1.2 を満たさないといけないというものですが、そこまでたどり着いている人は一人でした。
(計算ミスや条件を忘れていなければこの答えにたどりついたかもという人はあと二人くらいいました)

また、無裁定条件だけでなく、非完備市場で価格を一意に求めるために、元の確率測度とリスク中立確率の「距離」が最小になるとか、エントロピーが最小になるとか、別の条件を持ち出して一意に求めるということに言及している人が二人いました。
よく勉強されていると思います。ただし、どうしてそのような追加条件を求めることが適当であるかについて、ファイナンス的に説明できるようにしてほしいと思います。

2009年4月27日月曜日

4/30(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回:市場リスク(2)

第4回目は、VaRとES算出に関する話題の残りです。

準教科書でいうと、2.3.2, 2.3.3, 2.3.5 項の内容に触れます。3.1.4 項の内容にも少し触れます。

  • ヒストリカル法およびモンテカルロ法による VaRの計測の概要
  • 正規性および独立性の検定に関して
  • バックテストの考え方
準教科書が手もとにあれば、該当部分にざっと目を通しておいてください。

また、第1回レポート課題(成績評価に直結するもの)の説明も行います。

2009年4月24日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

4/28(火)「金融数理の基礎」第4回:二項モデルの確率論的整理(1)

第4回目は、教科書の2.1節~2.3節の内容を扱います。また、準教科書の1.1節の内容にも言及します。特に「条件付き期待値」の定義は、準教科書に書かれているものを紹介する予定です。

前2回は「ファイナンス」が背景にあることを前提にした数学モデルの話をしましたが、第4回は純粋に「数学」の話が中心になります。

また、第2回の宿題(d<1+r<u が無裁定の十分条件であること)についても復習したいと思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 有限確率空間、確率変数、分布、期待値などの用語の確認(すでに授業の中で使っていますので、この辺はさらっと進める予定です)
  • 条件付き期待値の記法と何を表しているかのイメージ
  • 条件付き期待値の重要な性質

2009年4月23日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と第3回の演習用のデータをイントラネットにアップしておきました。

また、第1回目のレポートは授業前に返却しましたが、欠席した人の分は共同研究室のフォルダに入れてもらうようにしました。

※今回のレポート課題は「問2」だけです。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の14名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F022, IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014,
IM09F017, IK09F002

なお、第2回目のレポート課題の問1は準教科書の例2.4と例2.5の内容をまとめてあるだけの場合は特にコメントしませんので、ご容赦ください。オリジナルなことを書いてある場合にはコメントをつけます。

問2 は全て正解していたのは3名でした。
何人かの人は(5) のLに対する99%ESを、約6280万円(6.28)と算出している人がいました。
これは Lの99%VaRが5と求めていたので、L≧5 としたときの条件付き平均をそのまま計算してしまったのでしょう。
授業でも説明したように、きっちり99%以上のところだけの平均をとる必要があるので注意が必要です。

また、説明なしに正規分布のときのVaRやESの計算式を持ち出している人がいましたが、この場合はそのままでは使えません。
二項分布を正規分布で近似するという文脈で、正規分布のときのVaRやESの計算式を使っている人がいましたが、今回の設定ではVaRもESも正確な値に比べてかなり低い数字が出てしまうようです。

あと「劣下方性」とか「劣法性」とかの記述もありました・・・

今日の授業中に問1で演習したような離散分布に対する VaR と ES の計算は、期末試験でも必ず出題します。
VaR や ES になじみのない人には、今回の説明は不親切だったかもしれませんが、数式に振り回されず、VaR や ES の根本的な意味を考えれば、どう考えればよいかを自分自身の力で見いだせるはずです。良く考えてみてください。
そのうえでVaR や ES の定義の数式を見直すと、意味するところが理解できてくるようになると思います。

あと今回は市場リスクに対するVaR と ES 計算方法について概説したわけですが、「市場リスク」が何を指しているのか、という質問を受けました。
確かにそこは明確に定義していませんでした。

準教科書には「市場リスクとは、株や債券の価格、為替、商品価格など基礎的要素の価値の変化によって、それに依存する金融資産の価値が変化するリスク」(準教科書1.1.2項より引用)とあります。

「基礎的要素」という用語が多少あいまいですが、現実には、取引するための市場が存在していて、客観的な価格なり値(実際の取引値ではなく、bid と ask かもしれませんが)を少なくとも日次で取得できる金融商品や金融指標(あるいはそれらを変換したもの)のことを「基礎的要素」と考えればよいのでしょう。

蛇足ですが、「客観的な価格なり値」は、実際取引可能な価格を意味していませんし、流動性の低い資産であれば、両者はかなり乖離するはずで、「流動性リスク」を考慮する必要があることはいうまでもありません。

実務的な市場リスクおよび流動性リスクの対応については、こちらこちらが非常に参考になると思います。

2009年4月22日水曜日

「金融数理の基礎」第2回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第2回分の宿題レポートを返却します。

一度書いたコメントを消したり書き直したりして、レポート用紙を汚くしてしまっている人が今回もいます。すみません。

コメントを消しているのは、私が比較的最初の方でレポートをチェックしている場合や初見ではその人の解答ロジックが私にスッと入ってこない場合が多く、他の人のレポートをチェックしたり、じっくり読み直したりしているうちに、私が適当でない(あるいは的外れな)コメントを書いていることに気づくというパターンです。

私があまりコメントしていないレポートは、私から見て特に問題がなく(あるいは少々ミスしていても、私が理解しやすいロジックで説明してあって細かいところをスルーしている)良くできていることを意味しています。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。


採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年4月21日火曜日

「金融数理の基礎」第3回フォロー

※アンケートの「速すぎる」に2票(1票は少し速いから移動?)入りました!
授業はテキストの該当箇所を一度はしっかり読んでおいてもらうことを前提に組み立てていますので、真っ新で授業に臨まれると、さすがに速いと感じると思います。それに授業時間内に完全に理解できるというわけでもないと思いますので、復習も忘れずに。

最後にやってもらったプット・オプションの計算練習は是非自分なりに完結するようにしてください。

あと、年を重ねてくると実行に移しにくいとは思いますが、授業中に「少し待ってください!」と言うのも学生の権利です。

宿題プリント(配布したもの)および前回の宿題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の22名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM06F023, IM08F014, IM08F019, IM08F022, IM08F032, IM08F033,
IM09F001, IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012,
IM09F014, IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F025,
IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

以下、コメントです。

問1はしっかり解けている人もいましたが、全体的に出来が良いとは言えませんでしたので、次回の授業で解説します。

問題文のエッセンスは、(X_0 = 0 として)
(★)「0<d<1+r<u ⇒全ての実数Δ_0 に対して 『P(X_1<0)>0でない ⇒ P(X_1>0)>0でない
を証明せよということです。

否定で条件付けられると分かりにくいので、『』内の命題を対偶で表します。
(元の命題(A ⇒ B)とその対偶(「Bでない」 ⇒「Aでない」)は真偽が必ず同じになるというのは、誰もがどこかで習っていると思いますが・・・)

上の『』内の命題の対偶は
『P(X_1>0)>0 ⇒ P(X_1<0)>0
になります。

ここで、(A ⇒ B)というのは、(「A でない」または B)と同値だと話したと思いますので、 ⇒ を使わずに表すと
『P(X_1>0)=0 または P(X_1<0)>0
となります。
これを別の表現にすると『P(X_1≦0)=1 または P(X_1<0)>0と表せます。これは授業でも説明した形のはずです)

ということで、
「0<d<1+r<u ⇒全ての実数Δ_0 に対してP(X_1≦0)=1 または P(X_1<0)>0
を示すという問題になりました。「または」なので、どんな実数Δ_0に対しても、必ず X_1≦0 になるか、 P(X_1<0)>0 となることのどちらか一方でも成り立つことを示せばOKです。

他に議論が不十分な点として、以下のようなケースが見受けられます。昨年度も同じ課題を出しましたが、そのときのコメントとも重複します。

  • 株の購入単位Δが正の場合でしか成り立たない議論をしている(Δ=0, Δ<0では様子が変わります)
  • (★)の対偶を示そうとした人もいましたが、「d<1+r<u」の否定を考えようとした人に、「1+r<d」「u<1+r」としている人が多く見られました。厳密には、「d<1+r<u」の否定は「1+r≦d または≦1+r」となり、等号も入れる必要があります。
  • 数式の記法が若干変な人もいました。
問2コール・オプションと勘違いしていた人が何人かいました。テスト本番では注意してください。(2) は本質的に問1と同じことを尋ねている問題だということに注意してください。
ポイントは、X_1(H)とX_1(T)のどちらかが正だと、もう一方は必ず負になるということを数式で明確にすることです。

なお、この問題の(隠れた?)メッセージとしては、「株式現物とマネーマーケットで No Arbitrage が成立していれば、株のオプションをポートフォリオに加えてみたところで arbitrage を見出すことはできない」ということです。
完備市場になっているので、どんなデリバティブも複製できるので当然なのですが、要するに完備市場では、デリバティブを導入しても本質的に資産数を増やすことにつながらない、ということですね。

問3は(1)は出来が良かったですが、(2) は K=1 の場合にS_1(T) も In the money になって (2^2 - 1^1)^+ = 3 を考慮しないといけないことを忘れている人が若干いました(計算ミスの人も)。また、K=9 のところも 0 でない数値を答えている人が少しいました。
ほとんどが routine な作業でも、少しだけ irregular なことが混ざっていて、注意しなくてはいけないよ、という教訓だと思ってください。
まあ、これは手計算を少なからず行って、計算効率をあげよう?と思った人について言えることで、機械的にプログラムしてしまうと、 irregular な要素はなくなってしまうのですが。

手計算派とコンピュータ(Excel?)派は半々といったところでした。

2009年4月20日月曜日

4/23(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回:市場リスク(1)

第3回目から市場リスクを題材に話を進めます。
といっても、市場の価格データを利用してリスクを計量するという意味で市場リスクを題材にするというだけで、紹介する考え方は他のリスクを計量する場合にも応用可能ですし、紹介する方法が市場リスク計測方法としてお奨めであるということでもありません。

準教科書でいうと、2.3.1節の内容にあたることをメインに扱いますが、VaR や ES の復習もします。

  • 第1回課題(問題2)についての振り返り
  • VaRとESについての計算問題
  • 分散共分散法による VaRの計測の概要
  • 分散共分散法による VaRの計測演習とその説明
予習のポイントですが、ポートフォリオ理論をご存知の方は、平均-分散アプローチにおける平均ベクトルや分散共分散行列の取り扱いについて確認しておいてください。
(本質的には、正規分布のいろいろな性質の確認になると思います)

また、それに加えて業種インデックスの過去データから、いかに期待リターンや分散共分散行列を推定すべきかについても少し考えてみてください。

2009年4月17日金曜日

M1ゼミ(2009年度春学期)

M1ゼミの振り分けは、20日(月)の自己紹介が終わった後に、各教員からどのような内容のゼミを行うかについて簡単な説明があって、その後に希望する教員のところに集まって相談するという流れになると思います。

実際には、ゼミ所属希望者の意向や予備知識のレベルに応じて内容を変える可能性がありますが、私のM1ゼミでは、クレジット・リスクをテーマにすると話したと思うので、

この記事でも紹介しましたが、最近翻訳版が出版された

D.Duffie, K.J.Singleton 著(本多 俊毅, 上村 昌司翻訳)『クレジットリスク ―評価・計測・管理―』,共立出版(2009) ※原書はこちらです。(今現在、Amazonでは原著の方が安くなっています・・・)

をテキストとして輪講をしたいと考えています。

実質1.5時間×10回程度で全部を読もうとすると、か なりのハイペースにしないと読めないですし、
かといって、生半可な理解のままでページ数だけをこなすという読み方もしたくないので、どのように進めていくかは思案中です。

スケジュールとしては、何をするかにかかわらず、
4/27(月)は、顔合わせと、テキストの読み方や準備・発表の仕方についてのガイダンスと、予備知識のレクチャーの予定です。

学生の方に発表してもらうのは、
5/11(月)から7/13(月)までの計10回になります。
#希望があれば、休み中に延長戦で2回くらいやるかもしれません。





 

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と第1回課題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の16名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F022, IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM09F014, IM09F017,
IK09F003, IK09F004, ID06L006, EM091014

問題2の「百年に1度・・・」については、皆さんの答えを集めて、次回の授業で少し検討したいと思います。

解答として多かったのは、VaR をイメージしているもので、
年次で観測される何らかの経済or金融の指標の観測値が発生する確率が 1% 以下であるという表現のものです。もちろん、自然な答えだと思います。
ただし、「百年に1度」=「1年に起こる確率が1%(以下)」という単純な読み替えだけで良いのでしょうか?また、年次単位だと過去サンプルもそれほど多くはないなかで、1%以下とする水準(つまり99%V@R)をどのように決めるのが妥当でしょうか?

注目すべき経済or金融指標を明確にしていない解答が多かったですが、資産間の相関や流動性に注目していた人もいましたし、100年以上年率データがとれる事例ということでダウ平均を例にして、パラメータ推定も含めて具体的な計測プロセスを示したものもありました。

また、「百年に1度」とありますが、年単位で考えなくても月次、週次、日次での観測値が「百年に1度」ということは考えられるわけで、その場合に1%という確率を観測期間に対応して変換して、過去の有名なイベントと照らして考察している人もいました。

2項分布を持ち出している人もいましたが、それで何が説明できるのかについてあまり深い考察がされていないと感じました。2項分布はVaRの水準の妥当性をテストする際に不可欠なので、良い着眼だと思いますが。

また、希有なイベントの発生時刻が Poisson 過程のジャンプ時刻だと考えるというものもありました。そうなると考慮すべき「希有なイベント」が分かっていて、なおかつそれを数千年単位で観測して、適合度検定をするというような話になってしまいます。

問題3は、一読して気になった文章についてはコメントをしておきました。最初の2つの小問は字数制限を気にしたせいだと思いますが、「なぜそういう選択をすると言えるのか」についてもう少し言葉を補ってほしいというものがいくつかありました。
(実際での入試採点のポイントがわかりませんが、満点をもらえそうな解答は多くないかもしれません)

課題としたのは、Exercises の 2 と 3 でしたが、1 についても触れた人がいたので、チェックしました。

4/21(火)「金融数理の基礎」第3回:無裁定価格評価二項モデル(2)

第3回目の授業では、前回の復習と補足をした後、教科書の1.2節「多期間二項モデル」を扱います。1.3節の内容にも少し言及したいと思います。(1.3節の内容自体は、2.5節のマルコフ過程のところで詳しく触れるので、最初はスルーします)

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* 多期間の場合の記号の確認
* 1期間と本質的に違いはあるのか?
* 例題1.2.4の Lookback option(path-dependent の例)

あと、説明しようと思っていて時間が無くて端折っていたこととして、以下のことにも触れたいと思います。

* 「リスク中立」と名付けられている理由
* 1期間で3つ以上の価格に変化しうる場合を考えるのは難しいのか?(これは14ページの「完備」というキーワードとも関連します)

2009年4月16日木曜日

ポートフォリオのファイル提出者(ファイナンシャル・リスク・マネージメント)

エントリー期限(4/16(木)正午)までに、私がポートフォリオのファイルを受領したことが確認できた人のIDは以下の14名です。確認してください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F022, IM08F029, IM08F028, IM08F030, IM08F036, IM09F014,
IM09F017, EM091014

このラリーへの参加自体は任意ですが、自分でポートフォリオを作ってリスクを計測するという作業はレポート課題で必須となります。
ラリーへの途中エントリーも可能ですが、(授業成績とはほとんど関係ない)パフォーマンス評価の際に、期限を守った人と不公平にならないようにハンデをつけることになると思います。

証券化商品のリスク管理についてのセミナー

5月26日(火)に、証券化商品のリスク管理についてのセミナーがあるそうです。
詳細はこちら
会場は市ヶ谷駅から歩いていくところだと思いますが、
会社員時代に私も、そこで何回かセミナーの講師を務めたことがあります。

通常は、世の中でたくさん開かれているであろうセミナーのアナウンスを、このブログでいちいちしませんが、このセミナーの講師の一人であるKさんは、東工大時代の私の「弟子」(私が彼の博士課程時の指導教官だったということ。実際は彼が独力でほとんどの研究成果を出したわけで、私はゼミで議論したり、論文添削したりした程度です)にあたりますので、弟子の活躍を影ながら応援するという意味で宣伝しておきます。

2009年4月15日水曜日

「金融数理の基礎」第1回分宿題レポート【返却】

※授業のスピードについてのアンケートのガジェットを追加しましたので、投票してください(21日の夕方まで投票可能)。

「金融数理の基礎」初回分の宿題レポートを返却します。

赤ボールペンの調子が悪かったので、青ペンでコメントを入れてあります。
(また、書いたコメントを消して汚くしてしまった人もいます。すみません)

最初の課題の否定命題の表現については「自分はこういうつもりで書いたのに!」と思う方もいると思いますが、「存在する」εやx,y が自由にとれる δに依存して設定できるかどうかがポイントであり、そこが一義的に読み取れない表現については注意しています。

連続だが一様連続ではない関数と定義域の例について、証明をしているものについて一字一句細かく見たわけではないですが、若干細かいところが不正確な人もいました。この授業では、ε-δ論法は必要ではありませんが、昔勉強したはずだという人は機会あるときに復習しておいてください。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年4月14日火曜日

「金融数理の基礎」第2回フォロー

宿題プリント(配布したもの)および前回の宿題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の23名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM06F023, IM07F001, IM08F014, IM08F019, IM08F022, IM08F033,
IM09F001, IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012,
IM09F014, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025,
IM09F030, IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

宿題レポートもざっと目を通しましたので、コメントをつけておきます。

課題1ですが、最初にお詫びしないといけません。
ホワイトボードに命題Pと命題Qの否定命題を書いたときに、「A⇒B」の部分の否定を「A⇒(Bでない)」としたままでした。その後、少し触れたと記憶していますが、「A⇒B」の否定は「Aかつ(Bでない)」となるので、命題Pと命題Qの否定でも該当箇所は 「|x-y|<δ かつ |f(x)-f(y)|≧ε」ととらえないといけません。
皆さんの解答に、「|x-y|<δ ⇒ |f(x)-f(y)|≧ε」とメモしてあるものが多数あったので、気づきました。
私のミスです。すみません。

上記の私のミスにつられてしまったために表現が不正確になった人もいましたが、そもそも不適当な表現の人が少なからず見受けられました。解答例を参考にしてください。それほど難しい表現はしていませんが、x,y,ε,δ のことをどのような順番で説明するかが重要です。

命題 P の否定では、εをxに応じて与えることが許されますが、命題Q の否定では、まず最初に適当な正の εの存在を宣言する必要が出てきます。

また、おおよそ正しいことを言っている人でも妙にややこしく書いている人がいました。
そのほか、∀, ∃を使わないという指示でしたので、δ>0 とか |x-y|<δ とか |f(x)-f(y)|≧ε はそのまま使ってもらってかまいませんでした。ここも記号を使わないで言葉で説明してくれた人が何人かいました。

このあたりは、数学独特の表現なので、慣れない人もいると思いますが、論文や他の授業のレポートを書く際にも論理はとても重要なので、適当な論理学の本を読んで勉強してみてください。

連続だが一様連続でない関数の例ですが、定義域 A の与え方も大事です。
定義域は省きますが、1/x, 1/(x-1), sin(π/x) (x が 0 に近づくところがポイント)、x^2(x が∞に近づくところがポイント)などが例として挙げられてました。


課題2は、固有方程式の計算ミスなどは見られましたが、手を付けた人はだいたいできていました。
線形代数の基本的な計算ですから、できなかった人は勉強しておいてください。

課題3も、前半の確率については、簡単な表現が得られなかったにしても多くの人が正解に達していました。後半の期待値については、発散する(あるいは存在しない)といった正解の人は全体の半数くらいでしょうか。
いろいろと数値的な実験をしていた人が何人かいましたし、失敗したときに赤玉ではなく白玉を追加した場合の考察をしていた人もいました。良いことです。

2009年4月13日月曜日

4/16(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回:金融リスクの基本的概念

第2回目は、金融リスクの基本的概念を扱います。

ただし、前半は市場リスクとか信用リスクとかリスクの種類を限定しないリスク計量化の一般的なフレームワークを扱うため、数式を多用した抽象的な解説になります。
後半は、Value at Risk およびExpected Shortfallの話をしますが、今回はそれに厳密な数学的定義を与えます。
・・・具体的な話に触れてから一般化する方が理解しやすいのでは?という意見もあると思いますが、とりあえずガツンといきましょう。

準教科書でいうと、2.1、2.2節および6.1節の内容にあたることを扱います。主なトピックは次のようなものです。
  • リスク計測方法についての概観(準教科書2.2.1項)
  • 損失分布およびリスク・マッピングの考え方(準教科書2.1節)
  • Value at Risk(VaR) の定義と性質(準教科書2.2.2項)
  • Expected Shortfall(ES) の定義と性質(準教科書2.2.4項)
  • Coherent risk measure(準教科書6.1節)
準教科書が手元にあれば、該当部分にざっと目を通しておいてください。
最低限、Value at Risk および Expected Shortfall がどういうものかを調べておいてください。

また、ポートフォリオ・ラリーへのエントリーも受け付けています。

2009年4月10日金曜日

4/14(火)「金融数理の基礎」第2回:無裁定価格評価二項モデル(1)

第2回目では、教科書の1.1節「1期間二項モデル」を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • (この講義全体を通して用いる)記号の確認。連続ドラマの初回に登場人物を紹介する感じですね。大事なことは、その記号が表すもののファイナンス的な意味ですが、数学的にはどういう性質のもの(定数なのか変数なのか、実数値なのか自然数値なのかetc.)かもきちんと押さえるようにしてください。
  • 「裁定」とは?「無裁定」とは?教科書の地の文には言葉でしか書いていません。数式ではどう表すべきでしょう。
  • 「複製」という考え方に基づくデリバティブの価格付けの手続き
  • 「リスク中立確率」とはどういうもの?「リスク中立」とはどういう意味?

2009年4月9日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第1回フォロー

第1回目の配布資料・プレゼン資料およびTOPIXと東証33業種指数(2007/4/2~2009/4/8の営業日ベースの終値)のデータはイントラネットにアップしておきました。

宿題は、Exercises の 2番と、答えが分かった上での3番の(1)(2)(3) です。
解いた人はレポートとして、次回の授業前後に直接私に手渡すか、共同研究室のトレイに授業前に提出するようにしてください。

あと1番について、ホワイトボードに密度関数のグラフを描きましたが、fat tail なものを描いてしまいました。一般に非負値しかとらないような確率変数の分布を fat-tail にすると平均が大きくなってしまいますから、平均を上回る割合が多くなるようにするためには、tail を薄くしておく必要があります。
まあ、「生活水準の平均」などというものは定義があいまいなものですし、定義できたとしても回答者が母平均を知らない状況での「平均以上」という回答割合を議論しても、そもそもあまり意味のないですが。

あと、宿題というわけではありませんが、ポートフォリオ・ラリー用のポートフォリオ構築をするという課題もあることをお忘れ無く。
来週16日(木)の正午までにファイルをメール添付で送ってください。
あと期間中の投資比率は固定したままです。

ポートフォリオ構築と言われても何をどうしたらよいか分からないという声もありましたので、昨年度まで提供していたExcelツールもイントラネットにアップしておきました。
ただし、ツールの使用法は授業中に口頭で説明していたので、きちんとしたマニュアルはありません。

今回のポートフォリオ構築は、理論にのっとっていなくてもかまいません。
ドタ勘でもそれぞれの比率が0以上で足して1という条件を満たしていればOKです。
#あとの演習では、ドタ勘で作ったポートフォリオであっても、平均-分散アプローチに基づいてVaRやESを求めてもらいます。

ここでツールについて少しだけ説明をするので、それを手がかりにしてみてください。

***********************************************************************************
(1)まず、VBAマクロを使用していますので、Excelでマクロが使えるようにセキュリティ・レベルを下げておく必要があります。

(2) また、リスク最小化とかSharpe ratio 最大化というところで、ソルバーアドインをVBAで動かすようにしています。当然、ソルバーがアドインされていないと使えないことと、Excel のバージョンによっては、VBAのエディタを開いて参照設定を手でいじらないといけないかもしれません。対処法はExcelに詳しい人を周りで見つけて尋ねてください。
#私も直接エラーの状況を見ればいくつか対処はできますが、メール等では十分に対応を回答できないと思います。

(3) とりあえず、設定周りがうまくいっていれば、[data]というシートのデータをアップデートします。
古いデータも活かしたければ、重複しないように新しい分を付け足してください。まるまる入れ替えてもかまいませんが、1行目はラベル、1列目は日付というような構成は変えないでください。

(4) その後、[control]シートの「統計量計算」というボタンを押してもらえれば、[daily_return]というシートに自動的に[data]シートに対応した日次対数収益率が計算されます。
さらに、[control]シートのE列の「標準偏差」のところが自動的に計算されます。また、見えないようになっていますが、33×33の相関行列も別のところに計算されていて、後でポートフォリオのリスク計算をするときに考慮されるようになっています。

(5)あとは、[control]シートのD列の「期待リターン」に適当な数字を入れる必要があります。対数収益率データから標本平均を計算してもいいのですが、CAPMで求めたり、大まかな見込み数字を入れるなどしてもよいと思います。B,C列は各業種に対する投資比率の上下限制約です。デフォルトでは上下限は一律10%,0%になっていますが、業種ごとに設定できます。その業種を絶対に組み入れたくなければ上限も下限も0%にすればよいです。

(6)あと推定日数とかいろいろ設定を要しますが、コメントを読んでください。いじらなくてもよいと思います。

(7)あとは、「Sharpe Ratio 最大化」というボタンを押してください。うまく計算できたら、F列に返った数字が制約つきの平均-分散モデルにおけるSharpe ratio についての最適投資比率になっています。
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最後になりますが、授業中に紹介した「とある社長」が作成したドキュメントはこちらから見ることができます。

2009年4月7日火曜日

「金融数理の基礎」第1回フォロー

第1回目の講義資料、プレゼン資料、Excelファイルはイントラネットにアップしておきました。

宿題を確認しておくと、
配付資料の最後のページにある short questions に関して

  • 問題1の (1)(2) を解く
  • (3) の答えは (ii) である。そこで、実際に命題Pを満たすが、命題Qを満たさない関数f(および定義域A)の例を見つけて、できればその関数が P を満たすが Q を満たさないことを証明せよ
  • 問題2を解く
  • 問題3を解く(ユニークな解法を期待します)

宿題のレポート提出方法ですが、次回の授業時間に直接提出するか、あるいは共同研究室に宿題提出用のトレイを用意してもらう予定なので、次回の授業前までにそちらに提出してもらってもかまいません。

あと、traffic jam ゲームの件ですが、人の動きを忘れてスペースの動きに注目すると、問題解決のための別のアプローチも出てくると思います。
余裕があれば、小学生にも理解できるような、動き方について、できるだけシンプルな説明方法を考えてみてください(これは宿題ではありませんが、オプション問題として解答をお待ちしています)。

次回以降は、基本的には教科書に沿って、ホワイトボードに板書する形式の授業をする予定です。

2009年4月5日日曜日

team building のゲームの数理モデル

新M1の皆さん、team building お疲れ様でした。
私は微妙に全身が筋肉痛です。

さて、team building の中で heavy traffic (だったか traffic jam だったか、そういう名前の記憶力が最近衰えている気がします)という2つのチームの入れ替えゲームをして、事前に戦略を皆さんで検討して見事成功しましたね。
帰宅後、そのゲームの数理モデルを私なりに作って、それを Excel で簡単なゲームとして再現できるように実装してみました。

新M1の方が多く受講されそうな「金融数理の基礎」の初回に、そのExcel ツールもお見せしながら、その話題にも少し触れようかと思います。

2009年4月2日木曜日

4/9(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第1回:Guidance & Introduction

第1回目は、講義内容についての説明とオリエンテーションということで
  • リスクとは?リスク管理とは?
  • 授業の到達目標の説明
  • 準教科書・参考書の紹介
  • 授業の進め方、演習・レポート課題について
  • Exercises など
という流れで進めたいと思います。

なお、この授業と似たような内容のものを2007年度東工大大学院技術経営専攻向けに講義しました。そのときの情報はこちらにあります。
また、昨年度のICSでの授業に関してのブログ記事はこちらで全て見ることができます。

4/7(火)「金融数理の基礎」第1回:Guidance & Introduction

第1回目は、講義内容についての説明とオリエンテーションということで

* 授業の到達目標の説明
* 教科書・準教科書および参考書の紹介
* 授業の進め方、予復習のポイントの説明
* 金融数理の歴史についての概観
* short questions(高校生~大学教養レベルの数学の知識確認)

という流れで進めたいと思います。
実際に教科書の中身に入るのは2回目の授業からとなります。

なお、この授業とほぼ同内容のものを2006,2007年度の東京工業大学工学部経営システム工学科3年生向けに講義しました。そのときの情報はこちらからたどっていけます。
ただし、ICSの授業の方がカバーする内容が多くなります。

また、昨年度のICSでの授業に関してのブログ記事はこちらで全て見ることができます。

2008年度M1ゼミ(1月~3月)

2009年1月~3月にかけて、ゼミ所属の学生さんが取り上げた論文を以下に挙げておきます。

Duffie, D. and N. Gârleanu, "Risk and Valuation of Collateralized Debt Obligations," Financial Analyst Journal, 57 (1), 41-59 (2001).

Hull, J. and A. White, "Valuing Credit Derivatives Using an Implied Copula Approach,"
Journal of Derivatives, Fall (2006).

Gates, S., "Incorporating Strategic Risk into Enterprise Risk Management"
Jounal of Applied Corporate Finance, 18(4), 81-90 (2006).

Nocco, B., "Enterprise Risk Management:Theory and Practice"
Jounal of Applied Corporate Finance, 18(4), 8-20 (2006)

Christensen, B. J., M. Nielsen ,and J. ZhuLong, "Memory in Stock Market Volatility and the Volatility in Mean effect:The FIEGARCH-M Model"

Bollerslev, T. and H. O. Mikkelsen, "Modeling and pricing long memory in stock market volatility,"
Journal of Economics, 73, 151-184 (1996)

Rosenberg, J. V. and R. F. Engle, "Empirical Pricng Kernel,"
Journal of Financial Economics, 64, 341-372 (2002)

Bliss, R. R. and N. Panigirtzoglou, "Option Implied Risk Aversion Estimates,"
The Journal of Finance, 59(1), 407-446 (2004)

Leland, H. E.,
"Corporate Debt Value, Bond Covenants, and Optimal Capital Structure,"
The Journal of Finance, 49(4), 1213-1252 (1994)

Harada, K. and T. Ito, "DID MERGERS HELP JAPANESE MEGA-BANKS AVOID FAILURE?
ANALYSIS OF THE DISTANCE TO DEFAULT OF BANKS,"
NBER WORKING PAPER SERIES 14518

Piazzesi, M., "Bond yield and the Federal Reserve,"
Journal of Political Economy, 113(2), 311-344 (2005)

Liao, S. L. and J. C. Chang, "Economic determinants of default risks and
their impacts on the pricing of the credit derivatives," Working paper

Dyck, A. and L. Zingales, "Private Benefits of Control: An International Comparison,"
Journal of Finance, 59(2), 537-598 (2004)

山田健, 「強制転換条項付き優先株式の2項ツリー法によるプライシング」,
日本銀行金融研究所『金融研究』2006.10 189-213 (2006)