2009年9月3日木曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

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「Powerpoint資料(中川注:私の資料はBeamer TeX というもので作成しています)を事前に頂けると効率的に学習できたと思う。口頭での説明を、ノートする際に資料があればよかった」
「資料(プレゼン)は事前にイントラに up または配付してほしい。プレゼン資料に書き込みたい」
「配付資料とプレゼン資料を両方プリントアウトして配付していただけると、メモがとれるので助かる」

(回答)昨年度も同様の要望があり努力すると回答していながら実現できませんでした。昨年度と内容編成を変えたことの影響がけっこう大きく、資料の作成に手間取りました。
また、リスク管理に関する話はどんどんアップデートされていくので、新しい内容を盛り込みたいと欲張ってしまうことも原因です。来年こそは・・・努力したいと思います。


「市場リスクの方が内容が若干浅かったのが残念」

(回答)具体的にどのような点が浅かったのかが分かりませんが、市場リスクはその性質上、統計的技術や時系列解析の話題に帰着してしまうことが多く、必要以上に踏み込むことを(統計の専門家ではない)私がためらったというのも事実です。
また、他にポートフォリオのリスク計測の話題やデリバティブのヘッジ理論の話題を念頭においたコメントかもしれませんが、前者は他の授業で十分に説明されているはずですし、後者の説明には数学的に高度な内容を理解しておく必要になるので避けました。


「信用リスクの数学をもう少し詳しく説明してほしかった」
「信用リスクモデルについて実際に手を動かしてモデルを使うというような作業がなく、消化不良を起こした気持ちが残った」
「信用リスクの数理面をもっと詳しく講義してほしい」
「信用リスクに関わる研究の流れ・テーマについて幅広く取り上げてもらったことは良かった反面、広く浅くとなった感は否めない」
「当初の想定より難易度が高く、特に後半部分は難易度が高いのに説明のスピードが速く理解に苦しんだ」
「信用リスクについては予想より難易度が高く、理解が追いついていない部分が多い」
「後半、信用リスクの誘導型モデルに対する理解が不十分と感じる」

(回答)信用リスク部分の教え方についての意見はいずれもその通りだと思いますが、広範な全てのニーズを満たすのは難しいというのも正直なところです。信用リスクは、ベースとなる理論はありますが、このモデルやこのアプローチだけを知っていれば十分というものではありませんし、授業だけで全容を理解してもらおうということは諦観しています。
そのかわりにいろいろな考え方を紹介することで、興味を持ったモデルやアイデアについては各自で深めていってほしいという希望もあります。
まあ、受講者の数学的準備の状況や関心ある部分が近ければ、それ相応の対応もできると思いますが、実質数名しか受講できない授業にしてしまうことにも抵抗があります。


「市場リスクと信用リスクの講義内容のレベルが非常に大きく感じられた」(市場リスクの方が少し易しかったという意味だと解しました)
「前半のリスク管理の話は抜きで、信用リスク(市場性)だけを集中的に扱った方が理解が深まったと思う」
「教科書は、やや難解であり、実際は購入の必要を感じられなかった。市場リスクと信用リスクが別になっても、他のテキストを指定した方がいいのでは?」
「カバーする範囲が広いため、市場リスクと信用リスクを分けたカリキュラムを望む」

(回答)「市場リスク」と「信用リスク」のバランスについての言及、あるいは「市場リスク」と「信用リスク」を別の授業でという要望は昨年度もありました。これはFSコース全体のカリキュラム編成に絡んできますので、他の先生方と相談したいと思います。
個人的には「市場リスク」のうち VaRについては統計の授業で触れてもらえれば十分という気がします。
また、「市場リスク」「信用リスク」という区別よりも「リスクを数値化するということ」自体を考えるということも
重要という風潮があるので、それは「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」のようなコンセプトの授業でないと消化しきれないという思いもあります。

「これとは別に測度論や確率論の授業があってもいいのでは?」

(回答)これもカリキュラム編成に絡む問題です。
ただし実現したとしても、かなりの数学的準備ができている学生に限定しないと、1.5時間×14回程度の授業で完結するのは難しいと思います。
冬学期に数回の非正規のレクチャーとして可能かどうかを少し考えたいと思います。

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