2009年6月30日火曜日

「金融数理の基礎」第12回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

最後の証明のところは時間も押していたので、だいぶ rough な説明になってしまいました。すみません。他のところもボリュームたっぷりで消化不良の人ばかりだと思います。
いちおう宿題が一つの(苦い)薬になると思いますので、チャレンジしてください。

いずれにしても、今回のところは授業で話を聞いたり教科書を一読しただけでは容易に理解出来ないところだと思いますので、よく復習しておいてください。
定理4.2.2とその証明にこだわったのは、アメリカンオプションの価格付けに関する非常に重要な結果だと私自身は思っているからです。
(2つの異なる見方で定義したものが実は同じものだった(定理4.3.3でそれを明確にしますが)ということで、数学的な命題としては美しいものだと私は思います)

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の18名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031, IM09F037, IM09F041,

コメントですが、去年の記事とほとんど同じですので、そちらも参考にしてください(答えも
載っています)。

(i)~(iii)の計算は多くの人が正解でした。ところどころ計算ミスの人、あるいはアルゴリズムを正しく書けていない人がいたので注意してください。

(iv)は必ずしも著者の意図を私が酌んでいるか自信はありませんが、「ストラドルの場合は行使機会が1回で、プットかコールのどちらかのペイオフしか得ることはできないが、プットとコールの価格を単純に足している方はプットとコールを別々に買っているわけなので、それぞれを最適なタイミングで行使するチャンスがあり、チャンスが多い分割高になる」という説明が直観的に分かりやすいと思います。

ただ、何人かの人が指摘してくれましたが、権利行使価格によっては、価値が両者同じになる場合もあります。
そこで、きちんと題意の不等号が成立するためには、プットとコールを別々に買う方が2回権利行使をする機会があって、それ以外についてもストラドルを下回らないペイオフが受け取れるというようなことを確認することが本当は必要だと思います。

また、何人かの人が、「ストラドルとアメリカンプットでは最適行使のタイミングが違っている」という事実に着目していて、それは重要な指摘ですが、それだけを価格の不等式が成り立つ理由としては飛躍があります。

7/23(木)「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」期末試験

期末試験のアナウンスです。

日時と場所:7月23日(木) 18:35~19:45(正味70分) 第3講義室

遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり19:05まで)
追試験の予定はありませんただし、正当な理由があり、なおかつ試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式

* 第2回の授業から第14回の授業で扱った内容(プレゼン資料・配布資料、およびその中で指定されている準教科書の指定箇所)。プレゼン資料・配布資料の中の数式や些末な話題を細かく記憶してくる必要はありません。
授業で強調されていた事柄や繰り返し使われている用語の意味を確認したり、授業でどういう話題を扱ったかを自分なりに整理したりしておくこと。
* 計算問題を50点分、記述問題を50点分の合計100点満点の出題をする(ただし、成績評価上は60%のウェイト)。一部は問題を選択できるようにします。
* 計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。特に VaR と ES の計算方法、バックテストの考え方、Merton モデル、定数強度モデルによるクレジット・デリバティブの評価に関する問題、デフォルト相関などについて確認すること。
* 記述問題は、授業で触れた内容に関連したテーマの知識について文章で記述してもらいます。特に、以下のような内容について整理しておくこと。
「○○と△△の違い」
「○○について指摘されている問題点」
* 参考書、ノート、配布資料などの参照は不可とします。また卓上計算機などの使用も不可とします。

7/2(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回:信用リスク(7)

第13回はデフォルトの依存関係モデルの残りの部分と Giesecke-Goldberg(2005)の提唱しているトップダウン・アプローチとその周辺の話をしたいと思います。

関連する working paper をイントラネットにおいておきましたが、事前にプリントしたりする必要はありません。
授業の話を聞いて興味を持たれたら、後で見てください。

2009年6月27日土曜日

6/30(火)「金融数理の基礎」第12回:アメリカン・デリバティブ(2)

第12回目では、メインテキストの4.3節の残り~4.4節を扱う予定でいます。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* 停止時刻の定義とマルチンゲールとの関係
* 経路依存する場合を含めた一般のアメリカン・デリバティブの定式化
* 最適行使時刻による価格付けのアイデアと優複製との関係
* 最適行使時刻の特徴付け

また、期末試験についてもアナウンスする予定です。

2009年6月24日水曜日

「金融数理の基礎」第10回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第10回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月23日火曜日

「金融数理の基礎」第11回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

授業中の質問の件ですが、

N期間モデルのように時間が有限の場合は、F=FN というように見なせます。

ですから、停止時刻の定義4.3.1' のところで、「n=0,1,...,N,∞」で条件が成立するとして、「F=FN」と見なすというルールを含めておけば大丈夫です。

そうすれば、2期間モデルの場合は
{ω | τ(ω)=∞} = {HH} ∈ F2=FはOKとなります。

もちろん{ω | τ(ω)≦∞}=Ω に着目してもかまいません。

(実際は{ω | τ(ω)=∞}については確認しなくてもかまいません。n=0,1,...,N だけを確認すれば十分になっています)

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の18名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001, IM09F002,
IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016, IM09F017,
IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031, IM09F037, IM09F041

以下コメントです。
授業内容が理解しきれなかったというコメントを書いてくれた方がいましたし、解答が途中で止まってしまっている人も若干いました。

たぶん、問題が解けた人の中にも、実際に自分が何をやっているのかを理解できていると言える人は多くないかもしれません。
(そのあたりの自信の無さといった感じが解答の中に染み出ている人もいました)

練習問題6, 7 は定理3.3.6 に沿って証明してもらえればよかったのですが、Lagrangian を設定するところから、議論している人が大半でした(もちろんそれでもかまいませんが、採点のときには後半部分のλの値やXNの表現式の部分だけに注意を払っています)。

練習問題7は逆関数導出を勘違いした人が少しいましたが、いちおう正しい手順を示している人が多かったです。

練習問題6の方は、N だけでなく、一般の n について X0 = Xnζn が成立することを示すところで、議論が不十分な人がいました。
また、多くの人が X0 = En[XNζN ] という等式から出発してリスク中立の表現式を経て結果を導いていました。
私がベストと考える示し方は、定理3.2.7の(3.2.6) 式に注目して、{Xnζn}がPの下でマルチンゲールであるということを使って議論する方法です。こちらは少数派でした。

練習問題8は手つかずの人も多かったですし、途中で give up している人も少しいました。
ただし、(i) は y は定数だと思えば、あとは U' >0, U'' < 0 という性質に注目すれば、高校数学で倣っているはずの、関数を1階微分して増減表を書いて極大・極小(あるいは結果として最大・最小)を調べる方法が使えます。
また、数名の人が V(x) = U(x) - yx が x について凹関数ということから
 V(x) ≦ V(I(y)) + V'(I(y))(x - I(y)) = V(I(y))
という不等式が成立することを根拠にしていました。

おそらくこの事実は金曜の授業かどこかで教わったのでしょうか?
正しい結果ですので良いと思いますが、この授業のレポートということで言えば、少し説明を加えてほしいところです。きちんと証明をつけてくれた人もいました。

最後にO.K. とマークしていれば、私としてはその問題について「理解している」と判断しています。、
そうでなければ、解答過程を見る限り必要と思われることに言及していないと私が判断していることを意味します。

6/25(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回:信用リスク(6)

第12回はデフォルトの依存関係モデルについて概説する予定です。

予定では、

  • デフォルト相関、アセット相関
  • CDO
  • 条件付き独立モデル
  • Copula モデル
  • デフォルト伝播モデル
を予定しています。
準テキストでは9.1節のCDOの部分および9.6~9.8節の部分に相当します。8.3節あたりの内容にも触れます。

あと期末試験のことにも触れようと思います。

2009年6月21日日曜日

6/23(火)「金融数理の基礎」第11回:アメリカン・デリバティブ(1)

第11回目では、教科書の4.1-4.3節の最初を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • アメリカン・デリバティブの定式化(これまでのヨーロピアンのものとの違い)
  • マルコフ型のアメリカン・デリバティブの価格付けのアイデア
  • 停止時刻の定義

2009年6月18日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回フォロー

Newsweek(2009.6.24) で紹介されているP. Wilmottのサイトはこちら

あと、次回の話題になりますが、
準教科書の 9.1.3項の図9.3(P.448) の「従属性のある場合」の累積損失の密度関数のグラフ
を描こうと思っていますが、そこに与えられている、m = 1,000, PD=0.5%, 「デフォルト相関」2% という設定になるように工夫していますが、うまくいきません。
これはシミュレーションするしかないと思っているのですが・・・

(ちなみに独立の場合のグラフも、私が求めた密度関数と「高さ」が違っているのですが・・・)

相関のある二項分布シミュレーションの定番ってあるのでしょうか?
私は正規分布ファクターモデル経由でシミュレーションしているのですが。

もし challenging な人がいたら、準教科書の図が描けるかどうか試してみて下さい。
("日本の P. W." N先生にとってはお茶の子さいさいかもしれませんが・・・)

「金融数理の基礎」第9回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第9回分の宿題レポートを返却しています。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月16日火曜日

「金融数理の基礎」第10回フォロー

配付資料をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の21名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F025, IM09F031,
IM09F032, IM09F037, IM09F041

以下宿題の採点コメントです。

単なる計算問題で答えだけに注目すれば全部正解の人が7割くらいでした。
考え方自体は正しいけれど計算ミスという人が残り2割。考え方自体がまだまだと思われる人が残り1割という感じです。
ただ、前回の宿題は数字があっているかどうかというよりも「何を計算しているのか」を理解することが重要だと考えています。

単にオプションの価格を計算するという目的であれば、リスク中立評価式で計算すればいいわけで、試験に出題するとすれば、Radon-Nikodym微分や状態価格密度の定義やその意味するものを問う形式にすると思います。

また、前回の記事のせいか、レポートをワープロ清書してくれる人が増えました。手書きでも読み手を意識して答えの箇所を強調してくれていたり、整理して記述しているという印象のレポートも増えている気がします。(前回は計算問題だったので、書きやすかったかもしれません。今回は証明問題ばかりですから、どうなるでしょう?)

Excelシートで計算を実行した結果を貼り付けてくれた人もいましたが、それに関しては評価が少し微妙になります。別に計算式を書いた上で、確認の意図で Excel で検算してみたというのは良いことだと思います。
ただし、今回の問題程度の計算だと、単に Excel で計算させましたというだけだと、正解のときは正しい理解をしていると見なせます(見なしています)が、答えを間違えている場合には何が間違いの原因であるのかを遡及しにくい(できない)ケースもあります。
Excel で確認することはとてもよいことですが、実際にどういう計算を実行させているのかを明らかにするようにしてください。(最低限、埋め込んだ数式を隣のセルに文字列表示するとか)

6/18(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回:信用リスク(5)

第11回は誘導型アプローチに基づくクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

* リスク中立評価
* Duffie-Singleton モデル
* CDS のプライシング

などを予定しています。
準教科書では9.3~9.5節の部分に相当します。

2009年6月12日金曜日

6/16(火)「金融数理の基礎」第10回:状態価格(2)

第10回目では、教科書の3.3節を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* CAPM と無裁定評価法の違い
* 効用関数の性質
* 最適投資問題の解法の整理
* Lagrange未定乗数法を用いた解法

例題3.3.2は事前によく読んできてほしいですが、授業では細かくフォローしません。
むしろ、補題3.3.3 やLagrange未定乗数法を使う形に問題を整理してから解法については詳しく見たいと思います。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年6月11日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回フォロー(追記)

配布資料とプレゼンテーションをイントラネットにアップしておきました。
(「外性的」ではなく「外生的」だとご指摘いただきましたので、プレゼン資料の
当該箇所を直しておきました。昔のファイルを再利用、再々利用しているからですね・・・
恥ずかしい話ですが、私はある時期まで「内性」「外性」と書いていました。
今考えると、標準的な漢字変換では両者とも出てこないのですが・・・)

あと、vulnerable という単語の発音についても指摘されました。
あえてカタカナで表記すると、「ルネラブル」というのが最も近いということです。
こちらでも確認できます。

私は細かいところ(大きなところでも?)でしくじっていることがあると思いますので、遠慮無くご指摘ください。

今回は特に提出を要する課題はありません。
テキストの色
前回の課題レポートの提出を確認できたのは、以下の10名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM09F014, IK09F002

レポートに関するコメントです。

問題1の解法としては、偏導関数の符号に着目するタイプ、グラフを表示して確認するタイプ、あるいはその両方を行ったもの、それから標準正規分布関数で表示する前のデフォルト確率の表現式に着目してパラメータとの関係を考察したもの、に別れていました。

それぞれについて気になったことがあればレポートでコメントしてあります。
ただ、一般的なコメントとして、ボラティリティに関してだけは、V0>D であればデフォルト確率はボラティリティについて単調に増大するのですが、V0<Dのことも考えると、逆のケースもありえます。

考察して指摘してくれていた方もいますが、もし債務超過状態から出発していると、ボラティリティが大きい方が債務超過から脱出できる可能性も高くなるので、ボラティリティが大きい方がデフォルト確率を小さくする可能性もあると考えるのは自然です。

問題2についてはリクエストがありましたので、略解を作りイントラネットにアップしておきました。
ほとんど正解と見なせる方も少なからずいて頼もしい限りでした。
一方で手つかずだったという人もいました。略解を読んですぐに理解してもらえるとも思えませんが、
どういうポイントが問題を解く際の障害になっているのかということは、略解を読んで少しでも分かってもらいたいところです。

最後の部分で「多項式関数と指数関数の収束スピードの違い」に注目する話が出てきます。
ここのところを細かく議論している人はいなかったので、私なりの説明を加えておきました。
また、正しい収束の結果を明示していた人に対しても、本当にそうなることをきちんと説明できますか?
という突っ込みの気持ちをこめて添削しておきました。

2009年6月10日水曜日

「金融数理の基礎」第9回フォロー

久々に授業後に「採点」のない火曜の夜を過ごしました。
(それでこんな本を読んでました・・・このシリーズ(三部作?)も読みました。)

宿題レポートに関する私の考え方をコメントしておきます。
  1. 手書き or ワープロ?
     毎週の宿題に対してワープロを使って清書する時間がない人が大半だと思いますが、読み手の立場からするとワープロで清書されたレポートの方が読みやすいですし、本当はワープロでの清書を求めたいところです。字がきれいな方が読みやすくて良いということも感情的にはありますが、それは大きな問題ではありません。(少なくとも私には自分のことを棚に上げて、字の読みやすさ云々を言える立場ではありませんし・・・)
     ワープロの方が望ましいと考えるのは他に理由があります。

  2. ワープロの方が楽
     手書きだといきなりぶっつけで紙と筆記具があれば、どこでも解答を書けるというメリットはあります。ただし、途中で大幅な修正をしようと思ったときに、一から書き直さなければならないとなると面倒です。それに毎回手で書かないといけません。
     ワープロは最初は面倒に感じるかもしれませんし、数式入力ができないものや面倒なものもあるでしょう。しかし、一度使ったファイルは使いまわせますし、宿題の記号や設定は似たものが多いので、回を追うごとに入力自体の負担は逓減していくと思います。。それに間違えても修正が容易です。簡単にコピペできるので、校正を怠るとミスプリを増殖させてしまうというマイナス面もありますが。
     それに修士論文を手書きにしようと思っている人は少ないでしょうし、数式の入力などあまりしたことがない人でも、修論研究では少なからず数式を使う人は多いでしょうから、こういう機会に少しずつ慣れていくこともよいと思います。

  3. 整理して書くことに自然とつながる
     数学の問題の解答をいきなりワープロで書き始めることは難しく、一度は自分の手で計算することが必要となります。その結果をワープロで入力する場合には、必要以外のことを書くことが非効率なので、多少なりとも整理して書くという意識につながるはずです。そういう意識が高まれば、読み手にとってどうまとめるのが適当かということを考えてレポートを作成できるようになると思います。
     手書きだといきなりぶっつけで解答を書けますが、その結果自分の思考過程がダラダラと記述されているものが完成されることもあります。そういうものはたとえ正しい推論をして正しい解答を得ていたとしても読み手にストレスを与えます。もちろん、手書きでも整理して清書して提出されている方が少なくないと思っていますが。

  4. 手書き書類が通用している職場はありますか?
     手書きのビジネス文書が罷りとおっている職場は現在あるでしょうか?(サ○エさんの世界には、逆にそういう会社しか出てきませんが・・・) 少なくとも文書だけで仕事上の報告を完結させる必要があるとき、ワープロを使わない人はいないでしょう。大学でもワープロで作成したもの以外受け付けないとする先生も増えてきていると思います。

  5. と言われても「清書する時間がない」という人
     問題を解くのに時間がかかってしまいワープロで清書する時間がないという人は多いでしょう。職場でレポート作成は大っぴらにできないでしょうし。もちろん宿題レポートは手書きでOKです。本質は、レポートとは読み手(すなわち私)を意識して書かれる文書だということです。つまり十分に解答を整理して書くことが必要なことであって、ワープロでもダラダラ書いてあるものは論外です。

  6. と言われても「数式を入力するスキルがない」という人
     MS Word の数式エディタは多くの人が使えるはずですから、未経験の人は試しに少しずつ使ってみることです。Windows なんてOSは使っていない!という人であれば、TeX が自然と使えるはずなので、TeXの使用を勧めます(今学期TeXでレポートを作成してくれているのは1人だけだと思います)。本当はすべての人に TeX を使って欲しいと思っているのですが・・・。TeX をまったく知らないという人は例えばこちらを参照してください。Web で TeX 入力を体験したいときにはここなどを見てください。

2009年6月9日火曜日

「金融数理の基礎」の成績評価について

「金融数理の基礎」の成績評価はシラバスでは、中間試験(50%)期末試験(50%)としていますが、期末試験で挽回できるように以下のような換算式を採用したいと思います。

Min{0.5×Max{ 中間試験得点, 期末試験得点} + 0.5×期末試験得点 + 平常点, 100}

中間試験で80点だった人が、期末試験で40点しかとれなかった場合は全体では60点と評価されることになります。しかし、中間試験で40点だった人が、期末試験で80点とると全体では80点と評価されることになります。
中間試験の成績にかかわらず、期末試験で60点以上とれば単位は保証されるということです。
中間試験の成績にかかわらず、期末試験で100点をとれば、成績も100点ということになります。

試験時間が短かったという感想を漏れ聞くので、期末試験の時間は10分ほど延長することを検討します。

期末試験範囲は、第9回~第14回の授業で扱う内容ということになりますが、第1章・第2章の内容は既知として授業を進めます。
したがって、期末試験では第1章・第2章の内容に関する問題も出題されることになります。

6/11(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回:信用リスク(4)

第10回は誘導型アプローチおよびクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

* デフォルト・リスクのある金融商品の評価法の概要
* 誘導型モデルの概要
* 強度モデルの数理

などを予定しています。
準教科書では9.1~9.4節の部分に相当しますが、私の方でも資料を用意します。

2009年6月5日金曜日

6/9(火)「金融数理の基礎」第9回:状態価格

第9回目では、教科書の3.1-3.2節をいくつか扱います。
時間的には 3.1節の内容を押さえて 3.2 節は重要なところをピックアップして説明する感じになると思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

* 確率測度の変換の数学的意味
* Radon-Nikodym 微分と状態価格密度と状態価格の関係
* 状態価格のファイナンス的意味

また、中間試験の結果についても少し触れる予定です。

2009年6月4日木曜日

2009年度「金融市場の計量分析」の前半

2009年度の博士課程向け講義「金融市場の計量分析」(水曜1限)の前半7回の中川担当分が終わりました。

今年度の内容をメモしておきます。

  1. 4月8日 オリエンテーション(Black-Scholes 公式の導出過程など)
  2. 4月15日 デフォルト時刻の stopping time の性質による特徴付け、Leland(1994)主結果の概説、Duffie-Singleton(1999)の主結果の証明 
  3. 4月22日 Duffie-Lando(2001)の主結果の概説、Kusoka(1999) の example の概説
  4. 5月13日 Giesecke-Goldberg(2008) について学生の発表
  5. 5月20日 Errais-Giesecke-Goldberg(2008), Giesecke-Kim(2009)の概説
  6. 5月27日 中川「相互作用型の格付変更強度モデルによる格付変更履歴データの分析」(2009) の概説と discussion
  7. 6月3日 Nakagawa-Shouda, "Analyses of Mortgage-Backed Securities Based on Unobservable Prepayment Cost Processes"(2004)の概説と discussion

2009年6月3日水曜日

宿題レポートの評価ポイントについての補足

(人によっては)答案用紙の得点そばに書かれている緑の数字の算出根拠について質問を受けましたので、回答しておきます。
ただし、この措置は暫定的なものです。平常点の扱いは、中間・期末試験の結果とあわせて最終的に決定します。

まず、「金融数理の基礎」の成績評価は中間試験と期末試験の結果で決めるというのが大前提です。
平常点も考慮するとしていますが、最大でも5点程度の加算が妥当と考えていますし、平常点は考慮しないで済むなら、それにこしたことはないと思っています。

宿題レポートは、あくまでも授業の復習と試験対策のためのものと位置づけていますが、平常点として考慮する材料を残すためにいちおう私の方では毎回評価を記録しています。
返却するレポートには点数をつけていませんが、試験と異なりレポート評価には、見やすさや形式が整っているかということや、自発的に探究している部分があるかということなど、問題の正否以外の要素についての私の主観的評価も反映させているためです。

次に今回のポイント数字の根拠ですが、来週以降も5回(第9回~第13回)分の宿題を予定していますので、前半の6回も合わせて計11回の提出機会があります。

この11回に全て提出して、それが私の判断で毎回ほぼ完璧(問題に正解している+α)だとすれば6点加算されるようにしています。
これまでの6回分を毎回提出してきて、問題の出来だけで言えば、平均して4割前後であれば1点、5割から6割の人は2点、7割から8割くらいの人は3点くらいの換算になっていると思います。

中間試験時点では、4点の人が最大、3点が若干名、大半が2点、提出回数が少なかったりすると1点となっています。これからの後半でのレポート評価がよければ、もう少し上積みされると思いますし、期末の出来を考慮して平常点のウェイトをもう少し上げる可能性はあります(下げることはしません)。

コンピュータ環境の整備やら

唆されて(?)、自分のオフィスの新しいデスクトップPCにUbnutu9.04を入れました。
もともと Windows Vista がプレインストールしてあって、そこにいろいろとソフトをダウンロードしてあり、Windows を消去するのも不便と思い、パーティションの空きに入れて dual boot にしました。

Ubuntu自体のインストールは簡単ですし、TeXやらScilabやらをインストールするのも簡単なのですが、日本語設定(UTF-8とEUC-JPの違いによるもの)の部分やらScilabのメニューバーが読めないとかの細かい不具合が起こっています。WEB で情報を探しましたが根本的な対処法はよく分からないという感じです。
update で不具合が修正されるのを待ちます。

Linux についての知識もあまり無いですし、日本語で作業することが多いうちは、私としてはUbuntu に完全移行するという判断はできないです。少しずつ勉強していきます。

また、共同研究者から送られてきた Matlab コードをScilab 用に変換しましたが、グラフィックのところが
きちんと変換されず、plot の問題を解決できず・・・
予算があれば Matlab を買ってしまおうか・・・

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案の返却

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案を本日返却するよう手配します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名右のところに赤丸で囲まれた赤い数字が100点満点での今回の点数です。
人によっては、その左に緑の四角で緑の数字が記入されている人もいると思いますが、それは第1回~第6回の宿題レポート評価についてのポイント(最終成績に加算される点数だと思ってください)です。
何回かレポート提出しているのに緑の数字が無い人は、まだ宿題評価で加算する水準まで達しないと判断されているということです。
緑の数字は後半の宿題レポートの出来次第で加算されていきます。

また、中間試験の成績は全体の5割を占めることになっていますが、単に今回の点数に0.5をかけるという処理をするわけではありません。期末試験でリベンジできるような評価法を採用する予定です。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

中間試験の採点結果について質問・異議等があれば、6月9日(火)までに直接中川に問い合わせてください。

2009年6月2日火曜日

「金融数理の基礎」中間試験採点コメント(速報2)

略解と採点方針はイントラネットにアップしておきました。

「金融数理の基礎」の中間試験は25名が受験しました。

全体の採点&第1回見直しを終えました。だいぶ甘めに評価したつもりです。

平均点は問題別に
 問題1:22.2点(/25点)
 問題2:15.6点(/25点)
 問題3:8.3点(/20点)
 問題4:15.4点(/30点)
となっており、全体の平均点は 61.6点(/100点)でした。
去年の中間試験の平均が71.6でしたので、10点低下したことになります。

問題3(3)があったので、満点はとりにくいとは思いましたが、全体的に難易度を上げたつもりはありませんでした。時間が足りなかったでしょうか?

最高点は87点(1名)、80点台が5名です。

現状の成績評価法だと、期末試験での挽回が厳しい人が少なくないので、
期末試験でリベンジできるように評価法を少し変えようと思います。
それについては次回に授業で説明します。


いくつかコメントしておきます。

問題1は7割弱の人が全部正解していました。(整数または分数で答えよという指示でしたが、小数で答えた人がけっこういました。減点も考えましたが、そんなことで減点していたら大変なことになるので、大目にみました)。(1)と(3)を間違えている人がいました。以前から出しているパターンの問題ですので、基本的に答えが正しいかどうかで判断しています。

問題2は例題1.3.2とマルコフ過程を絡めた問題。
(1)は8割くらいの出来。(2)はきちんと出来ている人はごく少数。fやgが登場していれば多少点数をあげました。(3)もきちんと正しく表現できている人は半数くらい。微妙なミスも減点は少しにしたつもりです。(4) はそこそこ良くできていました。答えが違っていても、計算すべき式が正しい人には多少点をあげました。

問題3は教科書38~39ページにかけての記述を参考に作成しました。
(1) は劣マルチンゲールが正解ですが、「優マルチンゲール」という誤答が比較的多かったです。あと「マルチンゲール」という解答も少しありました。
(2) 本当の意味で正解と見なせるものはごくわずかですが、多少の式変形の飛躍や変な表現については大目にみました。「適合性」に触れていないものは1点だけ減点しました。
(3) 今回の最難問だと思いますが、誰もできていませんでした(惜しいという人が1名)。ただ、否定に関する問題は出すと言っておいたはずなので、もっと正解に近い解答が多いことを期待しましたが・・・

問題4 は、2章の練習問題9を少し変えて出しました。過去にも同様の問題を出したことがあります。
2割強の人が全問正解していました。逆に手つかずの人も含めて3点未満という人が3割強いました。
前から順番に解かずに問題4に先に手を付ければもう少し点を稼げた人もいると思います。

(1) は4つの確率を足して1 になるはずなのに、足して2になるような解答をしている人が多少いました。
あとは(2) (3) で少し計算ミスが見られましたが、手を付けていた人は全体的に点をとっていました。
細かいチェックを改めてしますので、平均点や得点分布は多少変わるかもしれません。

6/4(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回:信用リスク(3)

第9回は数理ファイナンスアプローチにおける信用リスクの構造型アプローチについて概説する予定です。

予定では、

  • 構造型アプローチ(+完全情報)の概要
  • Merton モデル(とその応用としての、KMVモデルおよび1ファクターモデル)
  • 初到達時刻モデル(外生的な閾値設定と内生的な閾値設定)
  • 構造型アプローチ(+不完全情報)の概要と既存研究紹介
  • Duffie-Lando モデル
などを予定しています。
準教科書では8.2節の部分に相当するところを扱いますが、私の方でドキュメントを用意する予定です。