2010年9月25日土曜日

「金融数理の基礎」の準教科書の正誤表

準教科書として挙げている
M.ツァピンスキ, E.コップ(二宮 祥一, 原 啓介翻訳), 『測度と積分-入門から確率論へ』, 培風館(2008)
の正誤表が、以下のURLにあります。

2010年9月22日水曜日

10/1(金)「金融数理の基礎」第1回:Guidance & Introduction

第1回目は、講義内容についてのガイダンスとオリエンテーションが主な内容です。
ただし、現在の高校数学Aで履修することになっている「論理と集合」についての知識確認をexercise込みで行いたいと思います。

* 授業の到達目標の説明
* 準教科書・参考書について
* 授業の進め方、予復習のポイントの説明
* 高校数学A「論理と集合」に関する知識確認

という流れで進めたいと思います。

また、イントラネットのこちらに「集合・写像」に関する基礎的内容の予習用資料をアップしておきました。
(この講義の第1回目のところにもアップしてありますが、履修登録しないと閲覧できないようなので、
一般のDocument/Others カテゴリに今月いっぱい掲載しておこうと思います)

講義でもこの資料について部分的に触れます。受講予定者は事前に目を通しておいてください。

授業スケジュールも、講義要綱およびこちらの記事に掲載したものと若干異なってきます。
ただし、最終的な到達目的および大きな流れに変更はありません。
集合論、測度論、積分論を経て確率論を導入し、その応用として数理ファイナンスの基礎理論であるデリバティブ価格評価法を理解することを目指します。

あと、準教科書として挙げている
 M.ツァピンスキ, E.コップ(二宮 祥一, 原 啓介翻訳), 『測度と積分-入門から確率論へ』, 培風館(2008)
は、入手困難な状況のようですね…

原著はこちらになります。
Marek Capinski, Peter E. Kopp, Measure, Integral and Probability. 2nd ed. [Paperback], Springer(2004)

原著は比較的入手が容易なようですね。


なお、今年度のこの授業は多分に実験的な要素を含んでいます。その点ご留意ください。

2010年9月16日木曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2010年度春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントをまとめたものが共同研究室から送られてきました。
今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、皆さんのコメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままではなく、要点が分かるように私が適当に編集したものも含まれています。

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「レジュメの内容が少し高度で理解しにくいものもあった。」

(回答)理解しにくい部分の原因の多くは、私自身の資料作成能力および説明能力がまだまだであるということにつきると思います。そこは反省し少しずつでも改善に努めたいと思います。
 内容として高度な部分ももちろんありますが、レジュメの内容を全て理解することを要求するつもりはありません。テーマによっては、もっと深く勉強したくなる人もいると思うので、そういう人向けにガイダンスの用をなせばよいと思い、授業では特に触れなくても幾分アドバンスな内容も資料に盛り込みました。

「期待との差異は、先生の現在取り組んでいる研究内容があまり多くなかったこと。」


(回答)それなりに紹介したつもりでしたが、あまり印象がなかったでしょうか?

「前半のあまり難しくない部分に時間を割き過ぎていた感はある。逆に後半の難しい部分が少し駆け足だった気がする。」
「受講者のレベル差があったとは思うが、もう少し数式の説明があった方が理解し易かった。」
「内容は期待通りであったが、もう少し細かくっこんでも良かった。自分で証明等できないと「理解した」とは思えないので不安になる。」
「もう少し数学的要素が多い事を期待していた。全ての展開を追えなかったので、詳細までの理解はできなかった。やや表面的な部分での理解はできたと思う。」
「期待通りの内容だった。(もう少し数式の展開があると思っていたが。)」
「金融数理の基礎のようにホワイトボードを使用する形式の方が良かった。」

(回 答)いずれも信用リスクでの数理モデルについて、もう少しきちんと数学的に説明してほしいという要望だと理解しました。毎年そういう要望は多いです。
ただし、ブラウン運動とかフィルトレーションの概念を知らない人は、証明を詳しく解説したところで、おそらく全くその議論にはついていけなくなります。

 そこで私なりの折衷案として、ブラウン運動についても時点を決めれば正規分布に従う確率変数と見なせるというところに説明をとどめたり、、それぞれの記号や数式がどうして必要になるのかという「数式表現の心?」を汲んでもらうことを優先しました。

 物足りなさを感じた人もいる一方で、数式説明に十分お腹いっぱいだった人もいたようです。どこに力点を置くかは難しいですね。参加者の顔ぶれを見ながら微妙な舵取りには心がけてはいますが。
 それでもMBAの信用リスク講義としては国内最高レベルの内容を扱っていると自負してます(本当かな?)

 なお、博士向けの講義「金融市場の計量分析」では、たぶんそこまでやらなくてもいいというくらい数学的な説明をしました。

「信用リスクの部分が少なかったと思う」
「市場リスクと信用リスクの両方を十数回でやるのは、先生にとっても大変と思う。ぜひ従前のように2つを分離して欲しい。」
「もう少し信用リスクの部分に時間を割いて欲しかった。」

(回答)「市場リスク」と「信用リスク」のバランスについての言及、あるいは「市場リスク」と「信用リスク」を別の授業でという要望は毎年あります。昨年度の回答コメントと同様になりますが、カリキュラム体系の見直しの中でファカルティで議論したいと思います。
 個人的には、「市場リスク」「信用リスク」という区別よりも「リスクを数値化すること」「数値化したリスクをもとに適切なリスク管理をすること」自体をどのように考えるかが、今後はますます重要になっていくと考えます。そういうことは「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」のようなコンセプトの授業でないと消化しきれないという思いもあります。来年度以降も少しずつ、ナイーブな「市場」「信用」という切り分けだけでなく、統合的な視点ということも盛り込んでいきたいと思います。

「宿題が定期的に出されたおかげで、理解度が深まった。1度だけHWの提出のされ方が分かりにくい事があった。(確かイントラにupされた第7回???)」
「授業中に配布されたレポートの評価がほとんどない為、やる気のない人が多かった。」
「レポート・課題も多く負担が重いと感じる学生もいたのでは、と思う。」

(回答)宿題としてのレポートの扱いについてのコメントですね。提示の仕方が毎回統一されていなかったという点では、ご指摘の通りです。反省します。
 ただ、私の場合、事前に課題を用意していても授業で消化するかレポート(宿題扱い or 任意扱い)にするかの判断を授業の流れの中で判断しますし、そのこと自体は意味があることだと思っています。また、授業の中で、こういうことを受講している皆さんに考えてもらうといいのでは?と思いついてアドリブで課題にしてしまうこともあります。ということで、適切に課題指示ができない可能性は今後も残ってしまいますが…改善に努めます。

また、これは専門科目なので、ほどほどの難易度の課題を宿題レポート扱いにして、全員が提出するように促して、それを成績評価に明示的に組み込むということに私自身はそれほど意義を感じていません。
それよりは少し発展的・応用的な課題を提示して、成績にプラスされるかもしれないからという理由ではなく、知的好奇心がモチベーションとなって「意欲ある人」に取り組んでもらうことがよいと考えています。


「成績評価でレポートの配点が高いのが他の講義の評価方法と比較して高く感じた。」
「レポートは2つあったが、できれば提出日を前半と後半に分けてもらいたい。社会人なので時間に余裕がなくどうしてもすべてが後回しになってしまい、結局あまり良い結果に繋がらないと感じた。」

成績評価のためのレポートについてのコメントですね。
レポート評価のウェイトを高くしているのは、この科目は単に知識が豊富というだけでなく、実際にデータを扱って「リスク計測とかリスク管理って結局何?」ということを少しでも自問自答してもらうことが大事だと私が考えているためです。


レポート提出日についても意図的に一緒にしています。課題自体は比較的早い段階で提示しているわけなので、作業をどう進めていくかということも含めて皆さんに考えてほしいと思います。また「社会人だから時間について配慮する」ということはICSではあえて明言しないカルチャーですしね。


「他にオペレーショナルリスク等もやって欲しい。」

(回答)1回分使ってオペリスクを取り上げるべきかという点で悩みます。現場での当事者の方はあいかわらず大変でしょうが、最近は学術的にオペリスクについて、あまり議論が盛り上がっていない感がします…取り上げ方は考えます。

2010年9月3日金曜日

研究覚え書き

早くも9月になった。研究プロジェクトの進捗覚え書き。
確率の哲学的側面についても勉強しようとしつつも中途半端な状態…
自分としてもいろいろ考えているが、何かしら具体的な目標を立てないとな。

  * Project-AM:とりあえず先方の分析読解待ち
  * Project-O:再投稿の結果待ち
  * Project-Ya:進捗報告を受ける。共著者が9月の学会で報告予定。投稿論文のreviewにはもうしばらく時間がかかりそうだ
  * Project-Yu:8月中旬から一気に進行。共著者が来日してくれて 9/2,9/3と研究打ち合わせ。いちおう投稿への道筋がついた。あとは、新しいプロジェクトについての話もした。今度のキーワードは longevity risk ということになりそう。11月の研究集会でこの話を自分としては初めてする予定