2008年12月26日金曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2008年春学期の総括

遅くなりましたが、学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の反省を述べ、部分的に来年度以降の授業でどのように改善していくかを考えたいと思います。

全体的には、好意的に評価していただきました。
(期末試験前に回答していると思うので、最終成績によって評価が180度変わった人もいるかもしれません・・・)

以下、いくつかの学生コメントおよびそれに対する回答です。
コメントは原文ではなく、適宜、要点が分かるように私がまとめています。

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「第11回~13回(信用リスクの数理モデルのところ)の内容をもっと詳しくやってもらいたかった」
「以前の『信用リスク』の授業をカバーするという意味では不足」
(回答)カリキュラム評価の方にも「市場リスクと信用リスクは、別々の授業でそれぞれ扱ってほしい」という趣旨のコメントがあり、それと関係するコメントですね。
昨年度までは「市場リスク」を長山先生、「信用リスク」を中村先生が別々に担当していて、「市場リスク」を履修していた人の中には、「信用リスク」にどっぷりつかりたいと思っていたのに・・・とがっかりした人もいるかと思います。
また、それとは別に1コマ分の授業に無理につめこんだために、それぞれのトピックが表面的にしか扱われなかったという不満をもった方もいるでしょう。

残念ながら来年度も「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」という一つの授業で「市場リスク」も「信用リスク」も扱うことになります。
ただし、内容については見直して、信用リスクの数理をもう少し詳しく扱えるようにしたいと思います。
具体的には「確率論・統計学の復習」「オペレーショナル・リスク」について、1回分の授業を使うことをやめようと思います。あと、中間試験も無しにしようと思います。それで3回分浮くので、それをもう少し有効に使いたいと思います。

あと個人的な意見ですが、純粋に「市場リスク」をネタにして1学期もたせようと思うと、リスクというより統計の応用のような側面が強くなってしまうと思いますし、細かい話が多くなってくると思います。
また、「信用リスク」だけで1学期分ひっぱるためには、数理的に面倒なところ(要するに情報の構造の取り扱い)に入っていくことになります。授業として、そこまでカバーすべきかという点には少しひっかかります。
また最近では、「統合リスク」「リスクの資本賦課」「ERM」のような話題も出てきていますし、金融リスクをまとめて俯瞰する姿勢も大事に思います。
(問題は、それをナビゲートする役割として私自身が未熟だということですが・・・)

「プレゼン資料は予めイントラにUPしてもらえると良かった。ブログを活用されていますが、会社からはブログを見ることはできないので、イントラを活用してもらえると助かる」
(回答)プレゼン資料を前もってUPできるように努めます。また、ブログではなくイントラの活用ということですが、これについては検討させてください。もちろん、イントラを活用すべきことについては積極的に使いますが、ブログのメリットもありますし。
ブログのコンテンツをイントラに回すことも可能ではありますが、ブログの記事は気軽に修正できるため、そのたびにイントラの方もというのは大変なので避けたいというのが本音です・・・

「中川先生に他の分野についても授業をしてほしい。例えば、初級レベルの数学(特に確率過程)を上級レベルにつなげるような内容の授業をしてほしい」
(回答)最大の賛辞と受け取ります。ありがとうございます。ただし、現実に授業コマを増やすことについては・・・ 私大の先生に比べると授業負担は非常に 軽いかもしれませんが、社会人大学院生を相手にすると1コマ分の授業に対する準備やフォローを含めて、それなりに大変です。
とはいえ、他の授業評価やカリキュラム評価でももう少し数学をきちんとやりたいというニーズはあるようなので、単位にはならないが、集中的に何かのトピックをレクチャーする機会は作れると思います。

「金融数理の基礎」2008年春学期の総括

遅くなりましたが、学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「金融数理の基礎」の反省を述べ、部分的に来年度以降の授業でどのように改善していくかを考えたいと思います。

全体的には、好意的に評価していただきました。
(期末試験前に回答していると思うので、最終成績によって評価が180度変わった人もいるかもしれません・・・)

以下、いくつかの学生コメントおよびそれに対する回答です。
コメントは原文ではなく、適宜、要点が分かるように私がまとめています。

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「テキストと同じ部分の板書はもう少し減らせないだろうか。」
(回答)授業に臨んだほとんどの人がテキストを購入したと思いますが、必携を条件にしていたわけではないので、板書は板書として self-contained になるように心がけています。
また、板書内容をノートに全て書き写す必要はないので、聞く側でノートに書く内容を取捨選択してくれれば結構です。
あとは、教える側のリズムの問題で、テキストの書き写しに近いことでも自分で書くほうが話しやすいという気が個人的にしています。

「ペースが速くついていくだけで精一杯だった」
「後半少しスピード飛ばした感があった」
(回答)授業のスピードについては教える側も悩むところですが、1学期を通じてこの範囲をカバーしたいというのが先にあって、それを各回の授業に割り振るという感じなので、これ以上ゆっくり進めるというのは難しいと思っています。もちろん、そのときの学生さんの全体的な反応を見て、予定よりゆっくり進めることはあると思います。
ただし、授業だけで全てを理解したいというのは甘いと思います。予習復習が必要だと思います。

後半のスピードが早く感じるのは、前半の土台部分は時間をかけてできるだけ確実に理解してもらえるように配慮しているのと、後半の内容が否応なくレベルが上がっているので、前半理解が速かった人でも後半の内容が腑に落ちるまでに時間がかかるようになっている、という2つの理由が大きいと思います。

「板書が早い。宿題の模範解答がほしかった。」
(回答)板書のスピードについては、毎年指摘を受けるので改善はしたいと思っていますが、1時間に教える分量を考えると、自然にあのくらいの速さになってしまいます。書く内容を絞ればよいのでしょうが、最初のコメントへの回答でも書いたように、板書を self-contained にすることへのこだわりもあるため、大幅に絞るのは難しいと思います。
他の授業のように、私のノートを配付資料にしてすることも可能ですが、ファイナンスにとっての読み書き算盤のような位置づけの授業なので、手を動かして理解することも大切だと強く考えています。
(学生のどなたかが私の板書を TeX でまとめてくれることを密かに期待していたりして・・・)

宿題の模範解答については、私が考える解答のポイントは授業やブログ等で示しています。
完全なものを用意すると、学ぶ側は楽でしょうが、少しでも自分で考える余地を残す方が教育的だろうと勝手ながら思っています。

「板書見えにくい」
(回答)私の字が小さめで汚いというのが最大の理由かと思います。毎年の反省点です。
責任転嫁気味ですが、教室のホワイトボードが小さいことが、字が小さめになっている原因かと思います。
いずれにしても、私も見やすさを意識していきますが、読みにくいところがあれば、遠慮無く指摘してもらえればと思います。


「5章ランダムウォークは、もう少し時間をとって欲しかった。」
「できればテキスト第1巻をほぼ全てカバーして頂きたかった」
(回答)5章は今年度は授業で扱いましたが、内容は完全に数学ですし、証明もテクニカル過ぎるので、来年度は別のテキストのファイナンスの話題を解説しようと考えています。
6章は金利の期間構造の話で、2項モデルで金利の期間構造を説明しているテキストは他にあまりありませんので、紹介したいところですが、4回分くらい費やさないと消化できそうにないですし、数理ファイナンスの準備としては発展的話題なので見送るつもりです。本音としては、自分が、金利の期間構造をこれまで上手に教えてこられなかったというコンプレックスもありますが・・・

「シュリーブの2巻の授業もあったらいい」
(回答)これについては、藤田先生の「金融数理」で内容的には2巻の前半部分はカバーされていると思っています・・・

「中川先生にはもっと授業のコマを持ってほしい」
(回答)最大の賛辞と受け取ります。ありがとうございます。ただし、現実に授業コマを増やすことについては・・・ 私大の先生に比べると授業負担は非常に軽いかもしれませんが、社会人大学院生を相手にすると1コマ分の授業に対する準備やフォローを含めて、それなりに大変です。
とはいえ、他の授業評価やカリキュラム評価でももう少し数学をきちんとやりたいというニーズはあるようなので、単位にはならないが、集中的に何かのトピックをレクチャーする機会は作れると思います。

良いお年を

本日26日(金)が事実上の仕事納めになります。
とりあえず、年越しで持ち越す仕事は極力減らすことができました。

年明けは5日(月)から始動します。
1月いっぱいはおそらく修士論文の指導が中心になります。
その後3月いっぱいまでは、大学でのこの時期特有の行事も多くありますが、自分の研究をできるだけ進めていきたいと思います。

皆様良いお年を。

M1ゼミ(10月~12月)

秋学期のM1ゼミでは、特定のテキストや特定の論文を輪講するということは難しいと判断して、
1回90分のゼミで2名ずつ、修士論文につながりそうと考えていたり、あるいは是非読んでみたいと思っていたりしている学術論文を紹介してもらい、その後に少し議論を行う、というスタイルで行っています。

したがって、一人あたり、論文の概要の紹介に25~30分、議論に10~15分(全体で40分弱)という目算になります。
学期中に、計4回発表することをゼミ単位取得の必要条件としています。
また、必ずしも一回のゼミで1本の論文全てを紹介しなくてもよいが、学期中に2本は紹介すること。また、最低でも1本は英語の論文を紹介することを条件にしています。

10月~12月にかけて、ゼミ所属の学生さんが取り上げた論文を以下に挙げておきます。
バラエティに富んでおり、私自身勉強になると同時に、それぞれの論文および発表に対して、有益なコメントをするというのも難しく、ナイーブな質問になってしまうこともしばしばです・・・

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(順不同)

Bollerslev, T., J. Litvinova, and G. Tauchen,
"Leverage and Volatility Feedback Effects in High Frequency Data,"
Pre-Print (2004)

Duan, J.-C.,
"The GARCH Option Pricing Model,"
Mathematical Finance, 5(1), 13-32 (1995)

Hardle, W. and C. M. Hafner,
"Discrete time option pricing with flexible volatility estimation,"
Finance and Stochastics, 4, 189–207 (2000)

Bollen, N. P. B. and R. E. Whaley,
"Does Net Buying Pressure Affect the Shape of Implied Volatility Functions?"
The Journal of Finance, 59(2), 711-753 (2004)

Dennis, P. and S. Mayhew,
"Risk-Neutral Skewness: Evidence from Stock Options,"
Journal of Financial and Quantitative Analysis, 37(3), 471-493 (2002)

Aue, F. and M. Kalkbrener,
"LDA at work: Deutsche Bank's approach to quantifying operational risk,"
Journal of Operational Risk, 1(4), 49–93 (2006)

Hull, J., M. Predescu, and A. White,
"THE RELATIONSHIP BETWEEN CREDIT DEFAULT SWAP SPREADS, BOND YIELDS, AND CREDIT RATING ANNOUNCEMENTS,"
Working paper (2002)

Feldhütter, P. and D. Lando,
"Decomposing swap spreads,"
Journal of Financial Economics, 88(2), 375-405(2008)

Ang, A. and M. Piazzesi,
"A no-arbitrage vector autoregression of term structure dynamics with macroeconomic and latent variables,"
Journal of Monetary Economics, 50, 745–787 (2003)

Chen, L., Lesmond, D.A. and J. Wei,
"Corporate yield spreads and bond liquidity,"
The Journal of Finance, 62(1), 119-149 (2007)

Leland, H. E.,
"Corporate Debt Value, Bond Covenants, and Optimal Capital Structure,"
The Journal of Finance, 49(4), 1213-1252 (1994)

鈴木一功,
「コントロールプレミアムに関する考察」,
証券アナリストジャーナル 2005年7月, 68-77 (2005)

Zingales, L.,
"The Value of the Voting Right: A Study of the Milan Stock Exchaneg Experience,"
The Review of Financial Studies, 7(1), 125-148 (1994)

Loderer, C. and L. Roth,
"The pricing discount for limited liquidity: evidence from SWX Swiss Exchange and the Nasdaq,"
Journal of Empirical Finance, 12, 239-268 (2005)

刈屋武昭,
「企業の価値創造経営プロセスと無形資産」,
RIETI Discussion Paper Series 06-J-016 (2006)

山崎尚志,
「ERMへのファイナンス的アプローチ」,
損害保険研究, 70(3), 23-40 (2008)

2008年12月18日木曜日

論文メモ(その6)

今回目を通した論文はこちら

本当は、こっちを先に読んでおくべきなのだろうが、ぱっと見た印象で取っつきやすそうだったので、前者をまず選択した。

CDS に対する standard market model を設定して、
CDS option (というか、最近は Credit Default Swaptions とか CDS swaption と呼ばれることが多いようだ)の価格付け式や、Constant Maturity CDS 評価の近似式などを論じている。

ざっくり言えば、金利デリバティブの評価において、通常の money market account を numeraire とする risk-neutral measure でなく、満期がCFのタイミングにうまく対応している discount bond を numeraire とする forward risk-neutral measure で考えるというようなことを、CDS spread に絡むデリバティブ評価でも考えようというもの。

CDSwaption をリスク中立確率の下で表現したときに現れる "defaultable present value per basis point" と呼ぶべきものを numeraire とすることで、equivalent な測度変換が可能で、最終的に、CDSwaption に対して、いわゆる「Black 公式」を用いた表現ができるということを示している。
(idea は Jamshidian(2004) によるものらしい。Schonbucher(1999) は defaultable bond そのものを numeraire と考えたため、risk-neutral measure との同値性が保証されない状況で考えているとのこと)

Constant Maturity CDS 評価については、いわゆる BGM モデル(論文では、LIBOR market model)の枠組みで、CDS spread 変動のドリフトは CDS spread の水準にはほとんど影響しないという仮定と、足下の spread が forward CDS spread の一次結合で近似できるという仮定によって、扱いやすい近似評価式を導出している。

empirical な分析もしているが、きちんと見ていない。
また、数学的な議論の確認も例によって端折ってしまっているので、「読んだ」レベルではない。

おそらく、数学的な議論としては、この論文この論文で、先行研究が消化・昇華された形でまとめられているのだろう。CDS pricing およびその周辺の数理の進展はしっかり勉強したいところだが、後回しになっている。

#回によって、ですます調になっていたり、今回のようにである調だったり、していますが、その違いは書いているとき微妙なメンタリティが反映されています・・・

2008年12月16日火曜日

論文メモ(その5)

今回目を通した論文はこちらの3本目。

信用リスク研究において、intensity-based モデルを用いて default contagion を表現する方法として、私個人としてはGiesecke 流の top-down 的な方法論の可能性を研究していますが、 今回紹介する論文は bottom-up の視点でモデル化しています。

CDSのプレミアムや k-th-to-default swap のプレミアムの計算が目的ですが、
computational finance の話題に重点が置かれていて、自分たちが提案している大規模行列モデルをimplement するための限界というか実務での落としどころを探っているような書き方という印象で、読んでいて面白いです。

この論文で採用しているデフォルト強度は、ポートフォリオ内の他の企業がデフォルトした時点で、そのデフォルト企業との関係で決まる量だけ強度がジャンプするというもので、Markov jump 過程の形で定式化できることを数学的に主張しています。
彼らが言う状態とは、m 個の企業のデフォルト状態を 0 or 1 を成分とする m 次元ベクトルで表すものなので、状態数は 2^m 個ということになっています(彼らは数値計算例では m = 15 までトライしている)。

結果的に、デフォルト強度はそれまでにどこの企業がデフォルトしているかだけに依存した形になっています。どういう順番でデフォルトしたかを反映させることはモデル上は可能だが、定式化が煩雑になり、実際の計算量が爆発的に増加するとコメントしています。また、Hawkes モデルのように、強度がデフォルトした時刻に依存するものは、彼らの枠組みでは扱いにくいというコメントもあります。

k番目のデフォルト時刻の分布および、k番目のデフォルト企業の確率を計算するために、大規模な行列計算を用いた分析法(matrix-analytic approach)を導入しています。そのあたりの計算ロジックはきちんと見ていませんが、R とか matlab とかでは実装しやすい感じになっていると思います。

数値実験においては、15のTelecom 企業の5年CDS スプレッドを用いて、それぞれの銘柄の初期デフォルト強度だけを (semi-)calibrate しています。 contagion に関するパラメータ(dependence matrix)は所与としており、そのせいで "semi-"calibrate と書いています。
7章で、dependence matrix を推定/calibrate するための方法についていくつか挙げています。

あと、計算上は行列のexponential の計算が避けられませんが、それについては uniformization method(randomization method) が、大規模かつ sparse な行列に対するexponential の計算には、他と比べて実装しやすいと述べていて、そのアルゴリズムを紹介しています。

最後に、20 obligors までは直接この方法が適用できるだろうとということと、より大きなポートフォリオに対しては、対称性の利用やsubportfolio への分割が考えられるとして締めくくっています。

2008年12月12日金曜日

論文メモ(その4)

日経新聞12/10朝刊の「経済教室」で紹介されていたこちらに目を通してみました。

論文の概略は、「経済教室」に書かれていたとおりなので触れません。
銀行の合併と倒産リスクへの影響という研究テーマには関心がありますが、この論文で紹介されている実証研究に基づく主張にはあまり興味がわきませんでした。日本の有名な都市銀行合併のケースだけを扱っていて、そうした事例にはいろいろな意味での先入観があるからかもしれません。
それでも、こうした研究の方法論を提示しているという点で貢献があると思いました。

関心があったのは、DD(Distance to Default)をどのように算出しているか、という技術的なところです。金融機関を対象にしているので、負債項目が一般事業会社のそれと異なるという点はあるものの、フレームワークは Merton モデルのそれと全く同じで特に補足することはありません。

銀行資産の現在価値(および過去時点の価値)とボラティリティの推定方法は、Crosby-Bohn(2002)に紹介されている KMVが採用しているとされている方法です。

株式価値を、資産のヨーロピアン・コール・オプション(負債価値を権利行使価格)だと見なすのは同じで、株価をインプットすることで、資産の現在価値とボラティリティを未知パラメータとする方程式を作るわけです。ただ、これだけだと解けないので、もう一つ方程式を作るわけで、レバレッジを勘案して、株価のボラティリティと資産価値のボラティリティの関係式からもう一つ方程式を作る方法もありますが、
この論文では、ボラティリティを、資産価値の過去データによる対数収益率の標準偏差として定義するという方法を採用しています。

最初に資産価値の時系列の初期値を与えて、それから対数収益率を計算してボラティリティの推定値を統計的に求め、それをB-S式にインプットとして新たな資産価値の時系列の推定値を求め、それからまた新しいボラティリティの推定値を求め、収束するまで続ける・・・といったものです。
つまり、Black-Scholes 式と標準偏差の計算式をループするアルゴリズムになります。
(Crosby-Bohnは、最初に ボラティリティの初期値を与えているようです。どちらから始めようと収束するころには分からなくなっているので関係ないのでしょう)

まあ、この辺のことは我々が翻訳した「定量的リスク管理」の第8章に詳しく書かれています・・・

2008年12月11日木曜日

論文メモ(その3)

この前の大阪出張の行きの新幹線で読んだ論文がこちら

ここしばらく、信用リスクでは Giesecke 氏の論文をフォローしているわけですが、経歴を見ると彼の方が若干年下のようで、私自身もっと精進しなければいけません・・・

信用リスクの Top-down approach での self-exciting intensity についての simulation などが直接の応用例として考えられます。

彼らが提案している方法のベースとなるのは、「(完全情報下での)強度λをもつ点過程のジャンプ時刻の同時分布は、その点過程から生成される自然なフィルトレーションへの λ の optional projection を強度とする点過程のジャンプ時刻の同時分布が同じ」という数学的命題です。

結果的に、元々ジャンプ拡散過程などで強度過程λをモデル化しても、実際にλに従って、イベント時刻を発生させようとした場合には、拡散項のブラウン運動のパスを発生させたりする必要はなく、一般に「過去のイベント時刻とジャンプサイズの関数」として表される、射影された強度に従ってシミュレーションすればよいので楽になるということです。

問題は、その射影された強度が容易に得られるかどうかになりますが、その点については affine point process (強度が Duffie,Pan, Singleton(2000) でいうところの affine jump-diffusion process で与えられているもの)で、具体的に計算しています。
条件付の Laplace 変換を計算していくなかで、例によって Riccaci 型の連立ODEが出てきて、その解を用いて表現するという流れになっています。

数値例としては、Riccaci が明示的に解ける例(CIR型 に self-exciting なジャンプ項がくっついた形)でシミュレーションによる sample path の例が載っています。

自分の研究に関係するところなので、この方法でシミュレーションする必要が生じた段階になったら、もう一度詳しく検討したいと思います。(今考えているモデルは拡散項を入れておらず、 λ の optional projection が λ 自身になっているので、この論文の方法を参考にしなくてもよいのです)

この論文の内容については、こちらのリサーチ部門の方が詳しいと思いますし、もっと発展的なことをされているのではないでしょうか?

2008年12月10日水曜日

論文メモ(その2)

前回の論文に関連するものとして、今回読んだのはこちら。付録を除けば20ページの内容。記号の意味を注意深く確認しながら読まないといけないが、それほど数学的に難しい議論をしているわけではないので、記号や議論の仕方に慣れればサクサク読める。

Structural approach with incomplete information に属するモデルで、経営者が意図的に会計情報を操作して、その企業の資産価値についての不正確な情報を外部に伝える、という状況をモデルで表現している。先行研究で、会計の不透明性に対する risk premium が実証的に見いだされてきたことを挙げ、その内生的構造をモデル化しようというのがモチベーション。

具体的なモデルについて大まかに述べると、経営者は有限個の会計報告パターン(おそらくは利益の過大申告(程度も何段階かある)、過少申告(程度も何段階かある)、正直申告、のような選択肢を考えているのだろう)から毎期選択して、意図した形で会計情報を市場にアナウンスする。
その報告パターンによって、実際の資産価値の挙動の様子も変わる。また、市場では実際の資産価値に、報告パターンに依存したノイズが加えられた形で観測される。

外部からは、経営者がどういうパターンで報告したかを知ることはできないが、市場で観測される情報をもとにして、真の資産価値と報告パターンの条件付き密度関数(filtering density) を計算することができれば、このモデルにおける株式や割引債の価値を算出できるという流れになっている。

Black-Scholes 式の中の原資産の現在価値が不確実なので、求めた filtering density で原資産の現在価値についてもう1回積分する形で表されるので、結果に表れる式自体は特に不思議ではない。
ただし、filtering density の計算式を直接数値計算で実行するのは難しいので、適当な近似を考える必要があるということで、論文の後半はそれぞれの要素の近似方法について議論している。

アイデアは Capponi(2008)による方法らしく、unnormalized density を前もって選んでおいた Gaussian densities の weighted sum で近似しようというもの。この辺になるとプログラムに落とそうという気持ちがないと興味がわかないので、ていねいに読んでません。手の動く学生にきちんと読んでもらってついでに実装してもらうのがよいかも。

filtering approximation scheme が確立すれば、デフォルト確率や期待回収率やスプレッドの期間構造も、適当な weightd sum の形に書けますよ、という話が次にきて、最後はイタリアの食品大手で破綻してしまった Parmalat の事例分析を紹介している。そこでは、会計不正を考慮したモデル化をしないと、資産過程のボラティリティをかなり大きめに推定してしまうこともある、というようなことを主張している。

付録の証明などはきちんと見てません。

自分では、この論文を今のところさらに詳しく読む予定はないですが、会計情報と株価(あるいは社債価値)の関係に関心があり、そこそこの数理ファイナンスの知識がある計量ファイナンス系の学生の方には参考になる論文かもしれません。

2008年12月8日月曜日

論文メモ(その1)

最近ブログの更新をさぼっています。
もともと授業についての情報提供を目的としているので、授業がない今学期は休眠状態でもよいのですが、自分のためになるかと思い、読んだ論文の概要でも書いていこうと思います。
これも何回かで企画倒れになる可能性は高いですが。

今日読んだのは、こちらの論文。証明部分を除いて本文が10ページなので、すぐ読めます。
Structural approach with incomplete information の範疇の信用リスク・モデルについて、delayed filtration という概念で整理しようという論文。ただし、「連続型」と「離散型」という2つのタイプの delayed filtration を定義し、これらが本質的に異なるものであることを主張しています。

「連続型」delayed filtration は、time-change によって実際の時刻よりも過去の情報が到着するようなもので、情報は遅れながらも連続的に更新されていくようなもの。
一方、「離散型」delayed filtration は、イベントが発生しないと情報が更新されないようなもので、本質的に marked point process から生成される自然な filtration のようなもの。

また、それぞれのタイプについて delayed filtration の例を挙げて、具体的な停止時刻(要はデフォルト時刻)の強度表現を求めています。強度を求める際に、「瞬間的なデフォルト率」という直感的な見方(Meyer's Laplacian approximation という呼び方が Aven によってなされたようです)を用いています。しかし一般には、瞬間的なデフォルト率として得られたものが、停止時刻の compensator のRadon-Nikodym 微分と一致するとは限らないので、その辺は Aven の定理を持ち出して注意深く議論しています。

Appendix の証明はざっと目を通しただけです。

2008年11月14日金曜日

訃報

伊藤清先生が逝去されました。例えばこちら。またはこちら
謹んでご冥福を祈りいたします。

2008年11月10日月曜日

翻訳本の出版情報(追加・修正)

私が関わってきた以下の翻訳本プロジェクトが近々形になりそうです。

Amazon には情報が載っていました。

ジョージ チャッコ, アンダース ソジョマン, ヴィンセント ダッサン, 本橋 英人著,
( 監修:中川秀敏、翻訳:本橋 英人、長谷川 嘉成、柴田 裕俊)
『クレジットデリバティブ 信用リスクハンドブック』,
ピアソンエデュケーション, 2008/11/25 発売

G. Chacko, A. Sjöman, H. Motohashi, V. Dessain, "Credit Derivatives: A Primer on Credit Risk, Modeling, and Instruments"

の日本語訳です。
基本的な数学の知識をもっていて、これからクレジット・デリバティブについて勉強しようという方向けの本です。
信用リスクについてけっこう詳しい人でも、少し違った目線でのまとめ方や説明の仕方が参考になるかもしれません。
詳細が分かったら、この記事を更新します。

私の役割は「監訳」だと思ってましたが、「監修」になってますね。と思ったら、本の表紙画像では「監訳」になってる・・・
監訳にせよ監修は本来もっと実績のある人がやるものだと思いますが、いろいろな経緯があり引き受けさせていただきました。
私はPart II, Part III を中心に訳文のチェックをしましたが、全体的な取りまとめは原著の著者でもある本橋さんがやってくださいました。

いずれにせよ、翻訳部分についての責任の一端を私が担うことになりますので、誤訳等を見つけられましたら叱咤のうえ、ご連絡いただければと思います。

2008年11月4日火曜日

前記事「チャレンジ!」へのフォロー

前記事「チャレンジ!」の内容に関して、このブログが例の有名巨大掲示板サイトの某スレッドから直リンクされていましたので、そこからこのブログに来た方もいるかもしれません。
結局正しい解答は何なのかについての議論は収斂していないようですね。2通りの答えの数字や、両方とも間違っている、といった話は出ていますが、解き方まで言及したものは少なくとも出てきていません。

試験主催者が解答を発表すれば済む話だと思いますし、私にその義務はないのですが、いちおう私なりの解き方を示しておきます。(表向きは前回の記事をICS内部学生への課題という位置づけにして、その解答について今回の記事で紹介するということです)

出題者の意図は、二項モデルで通貨オプションを評価する場合の、リスク中立確率を計算する公式をきちんと理解しているかを問うことであったと推察されます。

現時点での資産価格が S で、1年後の資産価値が uS と dS (u > d) とする場合、無裁定条件(d < 1+r < u) が成り立っているという仮定のもとで、1年後に資産価値が上昇する(uS になる)リスク中立確率は、
(1+r - d)/(u-d)
で与えられます。

ただし、この資産が配当支払いのある株式であるとか外国通貨である場合は、配当率や外国金利の分を無リスク利子率から引いておかなければなりません。
通貨オプションの場合、R を米ドル金利(年複利)とすると、1年後に円安となる(uS になる)リスク中立確率は、
((1+r)/(1+R) - d)/(u-d)
と修正されます。

今回の問題は、1年後ではなく3ヶ月後ということを考慮すると、
{(1+r*3/12)/(1+0.25*3/12) - d}/(u-d)
として求められることになります。

今回の設定に上の式をあてはめると、
{(1+0.02*3/12)/(1+0.06*3/12) - 105/110}/(116/110 - 105/110)
= 0.356023
と計算されます。
(計算はExcel でやりました。卓上計算機で適当に桁を丸めながらやると、少し
ずれるかもしれません)

リスク中立確率が求まれば、ドルプット max{110 - 3ヵ月後のレート, 0} の価格はリスク中立確率に関するペイオフの期待値を円金利で割り引いて求められることに注意します。
今の設定では、ドルプットのペイオフは円安時には 0 で、円高時には 5 となる
ので、

[ 0 * 0.356 + 5 * (1 - 0.356)] /(1+0.02*3/12) = 3.203

となります。

#会計士試験のテキストなどには、例題を通じてもっとわかりやすく解説されているのではないでしょうか?

もちろん、上のような式を暗記して使えることは大事ですが、個人的には1期間2項モデルの場合は複製戦略を通じた理解が先にありきだと考えています。

要するに、円安時の価値が0、円高時に価値が5となる問題のドルプットと同じ結果をもたらすドルと円の運用ポートフォリオ(要するにヘッジポートフォリオ)を構築し、その初期費用としてオプション価格を求めようというものです。

いま、複製ポートフォリオとして、x ドルとy 円を3ヶ月安全資産で運用すると考えます。
現在のレートが 110円/ドルですから、円ベースの初期コストは 110x + y(円)になります。

3ヵ月後に円安になったとき、運用していたドルを円に戻すとき 116円/ドルになっているので、
その円ベースの価値は
 116x*(1+0.06*3/12) + y*(1+0.02*3/12)・・・(1)
となるはずです。(ドル3ヶ月金利は6%といっているので、その分を考慮する必要があります)
同様に、円高の場合は、円ベースの価値は
 105x*(1+0.06*3/12) + y*(1+0.02*3/12)・・・(2)
となるはずです。

ドルプットを複製するためには、(1)=0, (2)=5 という式が成立する必要があり、
これを x と y の連立方程式だと思って解きます。

そうすると、x = -0.4478, y= 52.4649 と得られます。
つまり、0.4478ドルを借り入れ(3ヵ月後には6%*3/12 分の利息をつけて返さなければならない)、52.4649円分を運用するということです。

その結果、初期コストは、
110x + y = 110*(-0.4478) + 52.4649 = 3.2069
となるということです。
(桁の丸め方の問題でしょうが、これだと 3.21 が答えになってしまいます)

2008年10月8日水曜日

チャレンジ!

春学期に「金融数理の基礎」を履修した人にとっては、良い復習問題になると
思いますので、紹介しておきます。

H20年度の公認会計士論文式試験の経営学の問題3です。(問題はこちらのファイルの17ページ目と19ページ目。いつまでリンクが有効かは不明)
1期間2項モデルで通貨オプション評価をしましょうというのが最終的なねらいです。

この話を紹介した理由は、某有名巨大掲示板サイトで、この問題の模範解答が専門学校によって違っているという話が出ていたからです。

見てみると、最後の設問2つ、リスク中立確率の計算とオプション価格の計算の答えが2種類に分かれているようです。
例えば、こちらのファイルの3ページ目(解答例A)とこちらの3ページ目(解答例B)のようになっています。

ということで、これは自分で白黒はっきりさせなければならない・・・と勝手に思って解いてみました。
私の得た答えは、解答例Bのものと同じです。

ただし、最初に問題を解いたプロセスは、設問の流れとは異なり、複製戦略を求めて、その複製費用として先にオプション価格を求めて、それからリスク中立確率を計算するという方法でした。(そうすると、
オプション価格の最後の桁が少しずれたのですが・・・)

Δを計算する例の分数型の公式を少しアレンジすれば直接リスク中立確率が計算できますが、通貨オプションの場合の公式を記憶するのはどうかと思いますし、その公式を導出するためには、複製の議論から入るのが一つのやりかたなので、複製の議論を試してほしいところです。

興味を持った人は考えてみてください。
#私が支持した解答が正しいという先入観は持たずに・・・

2008年10月6日月曜日

国際会議 THIC & APFA7、RIETI 政策シンポジウム のご案内

別ルートのMLですでに情報を得ている人もいると思いますが、
以下のような国際会議のアナウンスがありましたので、紹介しておきます。

=========================================================*
*国際会議 THIC & APFA7、RIETI 政策シンポジウム のご案内*
**
本会議は、国立大学法人 東京工業大学と国立大学法人 一橋大学が
共同主催し,独立行政法人 経済産業研究所が協賛する国際会議です。
**
人間の様々な活動データやモデルから経済現象や社会現象を明確にする
ことを目的とした国際会議です。次のような現象にターゲットを当てています。
・ 金融市場価格(為替相場,株価,国債・社債価格など)の変動、
市場間や通貨間の相互作用、連鎖暴落現象
・ 企業成長、景気変動,倒産の伝播、
企業ネットワーク(資本関係,販売・仕入関係,研究連携など),
金融ネットワーク(システミックリスクの評価など),企業の生産性
・ ミクロデータ(POSデータなど)を用いた企業売上や価格の解析,
企業の価格設定行動や消費者購買行動のモデル化,オンライン市場の価格形成
・ 人間社会の情報ネットワーク
うわさの伝播・口コミ情報の伝播・宣伝効果など
・ 複雑ネットワークの数理、動的現象、ネットワークの成長・形成
・ 相転移や臨界現象、過渡現象などと関連した社会現象

http://www.thic-apfa7.com/index.html

レジストレーション、アブストラクトの締め切りが、今月末となっております。
広く社会現象のデータ解析・数理モデルについて物理学・経済学・情報科学者の
議論の場を用意してございます。

本メールの情報を関連のある諸学会のメーリングリストにご送付いただけると幸いです。

以下に今後の大切な日程をお知らせいたします。

2008年10月31日(金) 発表申込(アブストラクト投稿)締切
2008年11月28日(金) 採択通知
2008年12月12日(金) プログラム確定
2009年3月1日(日) APFA7&THIC国際会議歓迎会 (如水会館)
2009年3月2日(月)~3月5日(木) APFA7&THIC国際会議
(東工大大岡山キャンパス)
2009年3月5日(木)午後 RIETI政策シンポジウム
(独立行政法人 経済産業研究所主催)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/09030501/info.html

2009年3月6日(木) サテライトミーティング (伊藤伸泰先生(東京大学)主催)
"Can We simulate the whole human society?"
現段階で決まっているPlenary Speakerをご案内いたします。
Albert-László Barabási (University of Notre Dame, USA)
Xavier Gabaix (New York University, USA)
Koichi Hamada (Yale University, USA)
Shlomo Havlin (Bar-Ilan University, Isreal)
Didier Sornette (Swiss Federal Institute of Technology (ETH) Zurich,
Switzerland)
Eugene H. Stanley (Boston University, USA)
Constantino Tsallis (Brazilian Center for Physics Research, Brazil)
Rosalio Mantegna (Palermo University, Italy)

Moshe Levy (Hebrew University of Jerusalem, Israel)
Takatoshi Ito (The University of Tokyo, Japan)
Hiroshi Yoshikawa(The University of Tokyo, Japan)


後援団体: 日本物理学会、日本経済学会、進化経済学会、情報処理学会、人工知能学会

2008年10月2日木曜日

新しいWEBページ(テスト版)

自分の覚え書きのようなものですが、Google Sites に
新しい WEBページ(テスト版)を作成してみました。

こちらです。

新しい情報は、2008年度の自分の足跡と今後の予定くらいです。

2008年9月20日土曜日

最近の読書

最近は講演やワークショップの資料作成に追われていますが、移動時間などを利用して読書もしています。

ここ一週間に読んでいたのは、黒木亮「エネルギー()」です。



大きな書店で平積みになっていて、すでに読まれた方もいると思います。
サハリンの原油・LNG開発プロジェクトに携わる商社マンが主人公のフィクションですが、人物や組織など実在する名前も多数登場しており、1997~2007年の実際に起きた経済ニュースの裏側を作者の取材+想像力で本当らしく脚色したという作品です。また、上で触れた商社マン以外にも、イランなど中東での原油開発に命を賭ける別の商社マンやエネルギーデリバティブで設けるトレーダーについても、それぞれの物語が語られ、少しだけクロスオーバーがあります。

いろいろと勉強になりましたが、単純な感想としては「商社マンは大変だなぁ・・・」

2008年9月9日火曜日

ワークショップ「研究とは?修士論文とは?」

在学生向け非公式イベント:ワークショップ「研究とは?、修士論文とは?」のお知らせ

在学生向けメールでも予告した通り、「研究とは?、修士論文とは?」ということについて
私なりに考えていることを説明し、学生の皆さんと意見交換することを目的とした
ワークショップを行いたいと思います。
(ワークショップというと格好良く聞こえるのでそう呼びますが、どちらかというとオープンゼミといったノリです)

日時:9月24日(水)の19:00~20:00(終了時刻は予定)
場所:第3講義室
内容:
  ・ 研究のネタをどう見つけ、どうふくらませていくか?
  ・ 「修士論文」とはそもそも何か? 何をどのように書くべきか?
など。
(この後は、中川ゼミ所属予定のM2の人向けのアウトライン指導を行う予定です)

参加申込み:資料の用意の都合があるので、参加予定者はメールで「ワークショップ参加希望」というタイトルで22日(月)の18時までに中川まで連絡をください。
また、以前メール添付したアウトラインについての資料にも触れますが、そちらは各自プリントしてきてください。


なお、このワークショップに参加しなくても、おおよそ伝えたいことは以下の2冊に書かれています。

というか、私が話す内容はこの2冊に書かれていて私が同意・共感した部分に、私のこれまでの指導経験や論文審査経験を組み合わせたものになります。例などはファイナンス系の研究を意識してアレンジする予定です。

戸田山氏の本は、「レポートから卒論まで」という副題ですが、修士論文を書こうとする人には必読と思います。

妹尾氏の本は、もしかしたら入学前に参考にされた方もいるかもしれません。入学願書に付ける研究計画書を想定していますが、修論のための研究計画策定のために読み返すと、いろいろと参考になると思います。

ファイナンス系の論文を書く場合には、データの説明、統計分析についての記述、数式を用いた説明などについてのお作法も身につける必要もありますが、それらは今回のワークショップではあまり扱いません。


2008年9月5日金曜日

このブログの今後について

秋学期には、このブログ管理者がICSで担当する講義はありません。

しばらくの間、このブログはゼミ関連の情報と、ICSの学生の方に紹介したいと思った情報について気まぐれに掲載していこうと思います。
コメントや質問は随時受け付けます。

なお、完全にプライベートなことですが、8/27に私の母が鬼籍に入りました。その前は何回かの片道3時間弱かけての看護、その後は葬儀やら何やらでバタバタしておりました(まだしばらくはいろいろありますが・・・)。
そうした関係で、8月に入ってから、メール等での問い合わせにあまり丁寧に対応できなかったことをお詫びします。

あともう少しだけ、個人的な感慨を述べさせていただきます。
母はファイナンスとか金融工学とかについては全く知らなかったわけですが、地道にコツコツと蓄えていて、それなりのものを私を含め家族のために遺してくれていました。母の遺してくれた財産を目の当たりにして、私が研究していることは何の意味があるのか・・・とふと考えてしまったりしました。

閑話休題。ということで、春学期の授業についての総括もまだしてません。来年度へ向けて総括はしないといけませんがpending させてください。というのも、目先のところ
等が予定されていて、特に後者2つについてはこれから準備をしないといけません。

あと、9/24に予定している「研究とは何か?」についてのワークショップですね・・・。これも近いうちにこのブログで詳細を予告します。ただし、ICS公式イベントではないので、他に優先すべきイベントが入った場合は直前でも日時を変更します。

2008年8月4日月曜日

入試説明会のお知らせ

一橋ICS への入学を考えていて、このページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれませんので、2009年度入試説明会の告知ページにリンクをはっておきます。

一橋大学大学院国際企業戦略研究科 金融戦略・経営財務コース(MBA)
平成21年度 入試説明会


■日時: 2008年9月5日(金)
    【受 付】18:30開始
    【説明会】18:45開始(20:30終了予定)

■会場: 学術総合センター2階 一橋記念講堂

内容や申し込み方法については、上記リンクで行ける研究科WEBページをご覧ください。

書籍の紹介

春学期の授業の総括は改めてするつもりですが、
とりあえず授業は終了してしまったので、今後はこのブログをどうしようかと
思っていますが、とりあえず気が向いたらICSの学生の方やICSに関心をお持ちの方に有益と思われる情報をアップしていこうと思います。

今回は、知り合いの先生が翻訳、あるいは執筆された本を紹介します。

一冊は数学の本で翻訳書です。測度論に基づく確率論を学ぶための準備として良書だと思います。
M.ツァピンスキ, E.コップ著(二宮 祥一・原 啓介翻訳)『測度と積分―入門から確率論へ
(原著はこちら



もう一冊はコーポレートファイナンスの基礎から実践まで学べるテキストです。ちなみに、あとがきかどこかに、私の名前も出していただいています。

石島 博著『バリュエーション・マップ-企業価値評価の科学と演習


夏休みの読書にいかがでしょうか?

2008年7月31日木曜日

「金融数理の基礎」期末試験答案【返却】

「金融数理の基礎」期末試験の採点答案を返却します。

(採点した答案についてはコピーをとってあります)共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、8月8日(金)までに直接中川まで連絡をください。

2008年7月30日水曜日

「金融数理の基礎」期末試験採点コメント(速報2)

「金融数理の基礎」の期末試験は19名が受験しました。

略解はイントラネットにアップしました。

全体の採点を終えました。(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。)

平均点は問題別に
 問題1:37.6点(/40点)
 問題2:26.7点(/30点)
 問題3:22.8点(/30点)

となっており、全体の平均点は 87.1点(/100点)でした。最高点は99点(1名)で、90点台は全部で11名です。

また、期末試験で挽回した人が多かったこと、期末試験は実質的に中間試験の範囲もカバーしていたことですし、期末試験で挽回した人のがんばりは評価する意味で、前にも使ったことのある変換式ですが、最終成績は
 min(100, roundup(max(0.5×中間得点+0.5×期末得点, 期末得点), 0)+平常点)
として算出することにします。
平常点は、宿題の提出状況・出来具合に応じて、0~4点を与えました(今回の試験を受けた人については2点~4点に分布しています)。

最終結果ではありませんが、現状では
 A(80点以上) :16名、B(70~79):3名
という分布になりました。ICS は成績表に得点が載らないようですが、
上の計算式だと、100点評価の人は4名います。

以下、簡単なコメントです。

問題1はだいぶよくできていました。計算過程が書かれていてもそこは採点対象にしていません。
約分しきれていないものは、1点減点してあります。
間違いの中では、(5)のアメリカンコールの価格の計算ミスがやや多かったです。アメリカンとはいえ、コールはヨーロピアンと同じになるので、(3)ができていれば、(5)もできるはずだと思ったのですが。

問題2も比較的よくできていました。
(2)は間違っていても、計算過程が書いてあり、間違いの箇所を確認できれば、その度合いに応じて部分点を挙げています。
(3) は解答が2種類ありますが、どちらか一方でも正解としました。誤答については、1カ所しか間違えていなくても、その解答が停止時刻になっていないものは5点減点しました。間違えていても停止時刻になっていれば2~3点の減点にとどめています。

問題3の(1)は、定義は比較的よくできていました。後半の意味づけの問いについては言葉では書けていますが、数式の展開をもって示してほしいところなので、リスク中立評価式を用いていないものは減点しています。また、説明の文章が分かりにくいものや適切な用語法でないものなども場合によっては減点しました。

(2) は不等号の向きは全員正解でした。後は細かいミスで議論に影響するものは度合いに応じて減点しています。

(3) のポイントは、条件付き期待値の既知量の括りだしと独立性の性質を使って、X_{n+1} という $n+1$ 回目のコイントスの結果に依存する変数の(ただの)期待値の計算に帰着するところと考えます。
そこで、言葉で「条件付き期待値の既知量の括りだしと独立性の性質」の内容に言及していなければ、それぞれ1点ずつ減点しました。
また、手つかずの人も若干いました。

2008年7月28日月曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験答案【返却】

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験の採点答案を返却します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、8月8日(金)までに直接中川まで連絡をください。。

7/29(火)「金融数理の基礎」期末試験

期末試験のアナウンスです。

※試験前に授業評価のアンケートを実施します。

日時と場所:7月29日(火) 20:10~21:10(正味60分) 第3講義室
※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり20:40まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式

  • メインテキスト(S.E.シュリーヴ「ファイナンスのための確率解析I」)の第3章の3.1, 3.2節(練習問題は1~5)、第4章全体、第5章の5.1~5.3節(練習問題は1~5)の内容に基づいて出題する
  • ただし、メインテキストの第1章, 第2章の本文の内容は既知とし、第1章, 第2章に関連する問題も一部含まれる
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

2008年7月25日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」レポート課題講評

提出いただいた2回分のレポートの採点を終えました。
(のべ4時間くらいかかりました)

試験や平常点も加味した最終成績については(多少見直しするとは思いますが)、レポート提出者は全員合格です。
(試験負担とのバランスで、レポートの方は若干甘いかな?という採点かもしれません)
課題1:33業種インデックス・ポートフォリオの95%VaR,95%ES の算出およびその考察など

さすが社会人大学院生というべきか、力作が多く、興味深く読ませていただきました。

論理性に関しては10点中7点を基準点にして、課題の要求に対して適切に答えられているかを確認しました。また、分散共分散法による VaR を俎上にのせて議論しているときに、リターンの正規性についての検定などの統計的議論やバックテストについての数理的な考察を行っていれば、加点しました。

構成力については10点中7点を基準点にして、図表の使い方が適当か、具体的に用いた計算方法などが過不足なく説明されているか、単純に読みやすい構成か、などを考慮して加点しました。

シャープ・レシオの「シャープ」を Sharp と書いている人がいましたが、Sharpe(ノーベル経済学賞受賞者ですね)が正しいです。特に減点していませんが。
あと、三浦先生の授業のせいか、Shapiro-Wilk 検定で日次リターンの正規性を検定していた人が目立ちました。
その一方で、ヒストリカル法の場合でも適用するための前提となっている、リターンの独立性についてはあまり言及されていませんでした。授業でもスルーしたところでしたが・・・その辺は目をつむっています。



そのほか、ポートフォリオ構築のアイデアなどが独創的と見なされた(なおかつ説得力を感じた)ものについては1点加点しました。仮想ポートフォリオのボーナスは、絶対リターンが全員マイナスだったので見送りました。

課題2:線形判別モデルの構築と検証用データの判別

こちらも力作が多かったのですが、課題1のレポート比べると、若干読みにくいものが多い印象でした。
あまり重要な情報とは思えない表が本文中にたくさん挿入されていたり、重要な主張が長い説明の後に述べられていたりしていて、そうした印象を強めたかもしれません。

ちなみに、検証用データのうち、もともとデフォルト分類のサンプルから取り出したのは、
Y1, Y3, Y7 の3つです。
検証用データの会社名はイントラネットにアップしておきます。

この3つだけをピタッと当てたレポートはありませんでしたが、この3つ+1つというかなり精度のよい判別をしたレポートが2編ありました。
「(デフォルト判別正答数)-(デフォルト判別誤答数)」が1以上の人には1点あげました。

論理性に関しては10点中7点を基準点にして、課題の要求に対して適切に答えられているか確認しました。また、選択した指標と推定された係数の符号関係についての考察、変数選択の方法の説明、(指標数が比較的多い場合には)多重共線性の確認、などをきちんとしているか、などを考慮して加点しました。

構成力については10点中7点を基準点にして、図表の使い方が適当か、単純に読みやすい構成か、などを考慮して加点しました。

また、指標を独自に提案したり、説明変数の選び方に独自性があり、そのファイナンス的あるいは会計的な意味づけがきちんとされていて有効であると判断した場合にはプラス・αとして加点しました。
(新しい指標についてネーミングに疑問をもったものがありましたが、不問にしています)

特に気になったこととして、
「有利子負債」などの金額そのもの(規模指標)を説明変数として採用しているレポートが多かったです。確かに、規模指標は信用力の尺度として優れているのですが、そのまま用いると係数の値が異常に小さく推定されてしまいます。P-値などで有意であることはわかるかもしれませんが、他の指標と値の水準を合わせる(本来であれば、平均を引いて標準偏差で割るなどの規準化するのが有効かも知れません)ようにするなど一工夫が必要だと思います。
レポートでも係数のところを「0.000000」 と表示しているものもあり、これでは読み手に不親切です。
また、有利子負債の場合は、いろんな業種が入っていると単純に有利子負債額の大小と信用力を結びつけるのはあまり有効でないという気もします(これは個人的な見解ですので、採点には影響させていません)。

また、「買入債務回転期間」については、単独で見た場合には、これが大きい値の方が「ツケで買い物できるくらい信用がある」ということを意味するため、Z スコア(大きいほど安全)への貢献という点からすると係数の符号は「正」であることが理屈の上では望ましいというのが私の考えなのですが、反対の解釈をしているレポートもありました。その意味で指標の符号が妥当かどうかをきちんと論じることは今回のレポートにおいて重要なことだと考えましす。


指標選択についても、いろいろなアイデアが提示されていました。
ただ、個人的に気になったのは、最初から定性的あるいは個人的判断で絞りすぎているものです。
もちろん、経験などを活かして絞り込むこと自体は悪くないのですが、今回の財務データでもこれまでの見方が通用すると言えるかどうかは平均値や中央値の比較などでもよいので、定量的に確認してほしいと思いました。
財務データだけを頼りに定量的に全て処理しようという立場も問題ですが、経験や俗説だけでトップダウンで判断しすぎるのも問題だと思います。

特に、これから修論を書こうとするときは、業務の経験とかがかえって邪魔をして、重要な論点を自明としてしまったり、また気にも留めなかったりして、見過ごしてしまう可能性がありますので注意してください。データを前にしたときには、自分の常識を一度疑って分析してみることも必要だと思います(これも受け売りですが)。

2008年7月23日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験コメント(速報2)

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」の期末試験は12名が受験しました。

全体の採点を一通り終えて、最初の方に採点した人と最後の方に採点した人との基準のゆらぎを補正しました。
(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。特に
記述部分はもう一度検討したいと思います)

平均点は
 計算問題が23.58点(/40点)、最高点は35点(1名)
 記述問題が50.33点(/60点)、最高点は60点(2名)
 全体では、73.92点(/100点)、最高点は93点(1名)
でした。

略解はイントラネットにアップしました。

全体講評は改めてしますが、目立った点だけメモします。

問1は、意表を突いた出題だったのか、きちんと全部できている人は一人だけでした。(i)はD/V_0なのですが、V_0/D と分子分母が反対のものが間違いとしては多かったです。
(ii) は負債のペイオフが min{V_T,D} = D - max{D-V_T,0} = D - (D - V_T)^+
となることに注目すれば、デフォルトなしの割引債をロングし、ヨーロピアン・プット・オプションをショートするポジションと見なせることから解答が得られます。
(i) は 2点×3, (ii) は 3点×2 です

問2は、比較的よくできていました。(iii)の近似の議論の説明不足or適切でない説明には多少減点しました。
(i) 4点、(ii) (iii) 各5点

問3は、(i) は比較的よくできていました。(ii) は変化球的な出題でしたが、きちんとできている人はいませんでした。部分点を適当に与えています。13回目の授業の課題との関係でいうと、0≦p_{AB}≦p(上のbar は省略)が言えることと、0 < p <0.01 という仮定から示すことができます。
(p > 0 については問題文で明示していませんでしたが、p = 0 とすると、Y^A,Y^B の分散が 0 になり、相関係数を定義できなくなるので、自明としました。ただ、p >0 とした方が混乱させずに済んだと思います。すみません)

あるいは、以下のような考え方もできます。

相関係数の意味から考えると、相関係数 1 のときは、Y^B = aY^A + b (a>0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p = p が成立しなければならず、そうなると p=0 でなければならず不適となります。

一方、相関係数 -1 のときは、Y^B = aY^A + b (a<0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = 1-Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p + p=1 が成立しなければならず、そうなると p=1/3でなければならず、p<0.01 の仮定から不適となります。

(i) (ii) 各7点

問4については、(A)5名 (B)3名 (C)5名 (D)10名 (E)2名 (F)1名 (G)10名
という分布でした。20点×3という採点で、基礎点としてそれぞれ10点を与えています。

(A) は等分散性の仮定については全員指摘していましたが、そこからどうして線形の判別式が出てくるかの明解な説明がされていない解答がありました。数式群のヒントをうまくつかってほしいところでした。

(B) 0で割るエラー値や小さい値で割る異常値が現れやすいこと、事業利益が赤字の場合、単純にインカバが大きいほど安全性が高いという単調性が満たされない、という2点を挙げてほしいと考えてました。この問題を選んだ人の得点は皆高いです。

(C) 数式群のヒントを使って、V_0とσ_V の2つを未知パラメータとして Black-Scholes 式などから求めるということに触れてほしいという意図です。

(D) 用語群のヒント「可予測な停止時刻、接近不可能な停止時刻、信用スプレッド(が残存期間が0に近づくと0に収束してします)」を3つうまく使っていれば、全体の説明に不備があっても高い点を与えています。ただ、後半の説明が不十分なものが目立ちました。

(E) (F) は解答する人が少なかったですが、数式群のヒントを適切に使えている人は1名だけでした。

(G) セルに分割してセルごとにリスクを計測する点を強調している人がいましたが、それ自体は LDA とは直接関係ありません。ポイントは、損失頻度と1件あたりの事故損失額をそれぞれ適当な分布でモデル化し、両者を組み合わせて(複合ポアソン分布に従う)ある期間内の累積損失額の 99.9%VaR をリスク量とする、という内容がほしいところです。上記のことに触れていれば、多少文章がおかしいところには目をつむって満点をあげています。

ファイナンシャル・リスク・マネージメントの課題レポート

ファイナンシャル・リスク・マネージメントの課題レポート2つの提出を確認できているのは以下の12名です。

IM07F023, IM07F029, IM07F031, IM07F044, IM08F017, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F037, IM08F039, IK08F001

期末試験の受験者と一致しましたので、特に連絡がなければこの12名を成績評価対象者とします。

レポートの採点は週末にかけて行います。

試験結果(60点分)とレポート(40点分)に平常点(宿題の提出状況)を+αで加味して
最終的な成績を、28日(月)には確定させようと思います。

2008年7月22日火曜日

「金融数理の基礎」第14回フォロー

配布資料は訂正版をイントラネットにアップしておきました。
(他にもミスプリなどあるかもしれませんが)

Excel で二項モデルのパスを表示させるツールを見せていたときに、
分割数を増やしていくと、スケーリングの効果で空間方向の振幅幅が小さくなるというようなコメントをしましたが、よく考えてみるとおかしなコメントでした。乱数で生成させたパス1つ1つで確率過程の振幅を論じること自体がもちろんナンセンスなのですが、パス1つ1つから伺えるおよその振幅の大きさについても、リアルに t だけ時間が経過したときのパスの「振幅の大きさ(=時点 t でのランダムウォークの標準偏差)」はおよそ √t になるということは、分割数には依らず言えることです。
ということで、分割数を多くしてもリアルな時間軸を固定している限り、振幅は見た目で小さくなることはありません。
混乱させるコメントをしてすみませんでした。

M1ゼミ(6月・7月分)

S. E. Shreve, "Stochastic Calculus for Finance II: Continuous-Time Models"
(長山いづみ他訳「ファイナンスのための確率解析II-連続時間モデル」)

の輪読をしているゼミの6月分、7月分のサマリーです。

6月2日(月)第4回:3章の練習問題3.4, 3.5, 3.8 をやりました。

6月9日(月)第5回:4.1節から4.3節にかけて伊藤積分の定義と性質のところを2名の方に発表してもらいました。
本当は、L^2空間の収束の議論をきちんとやるべきところですが、そこはスルーしました。

6月16日(月)第6回:4.4節の伊藤の公式(テキストでは、Ito-Doeblin の公式となっていますが)のところを2名の方に発表してもらいました。
前半の伊藤の公式の証明に関するところより、後半の応用の方にウェイトをおきました。

6月23日(月)第7回:4.5節のBSM方程式のところを2名の方に発表してもらいました。
前回の伊藤の公式の練習問題のような形で取り組み、Greeks の計算にもトライしました。

6月30日(月)第8回:4章の練習問題4.5, 4.7, 4.8, 4.12 をやり、時間が少し余ったので 4.19 にも挑戦してもらいました。4.6節と4.7節を飛ばしたので、4.19を解くのに必要な「積の公式」と「Levy の定理」についてやっていなかったので、ヒントとして少し補足しました。

7月7日(月)第9回:5.1節から5.2節にかけてギルサノフの定理と測度変換の影響について、2名の方に発表してもらいました。日本の研究者としては、Cameron-Martin-Maruyama-Girsanov の定理と呼びたいというような話もしました。

7月14日(月)第10回:5.3節から5.6節の4つの節を4名に分担して発表してもらいました。時間の割に発表の分量は多めだったのですが、とりあえず5章までの重要な内容は読んだというアリバイを作りました・・・

「金融数理の基礎」第12回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第12回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年7月21日月曜日

7/22(火)「金融数理の基礎」第14回:連続モデルへ

第14回目は、期末試験範囲ではありませんが、二項モデルの極限として Black-Scholes モデルが現れる部分について概説をしたいと思います。

当日資料を配付して、それにそって説明していきますが、Shreve の第2巻を持っている人は、3.2節あたりの内容になります。最後は、有名なヨーロピアン・コール・オプションの価格式を導出して授業を終わりにしたいと思います。

2008年7月16日水曜日

「金融数理の基礎」第13回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

7月15日(火)提出の「金融数理の基礎」第12回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の14名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM07F029, IM07F044, IM08F007, IM08F010, IM08F013,
IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F028, IM08F030,
IM08F037, IM08F039

脱線話として、子供の数の認識の話をしましたが、その元ネタはこちらの本です。
この本の著者は、私の大学受験時代には受験数学のカリスマの一人で、今は経済学部の先生としていろんな本を出版しています。
数学部分をフォローするのに少し骨が折れるかもしれませんが、夏休みに読む本としてこちらの本もお薦めしておきます。

あと、数学における「原理」という用語の使われ方について質問がありましたので、少し調べてみましたが、腑に落ちる説明はありませんでした。
あくまでも私見ですが、数学における「○○の原理」と呼ばれるものは、公理や定義から証明さえるべき定理の一種にすぎないけれども、非常に汎用性が高く、その定理からさらに数多くのいろいろな命題が証明できるものが多いように思います。
そういう定理全てが「原理」と呼ばれるわけではありませんが、誰かがそれを principle と呼ぼうと言い出して、それに多くの人が同意された場合に、習慣的に「○○の原理」と呼ばれるようになったのではないでしょうか?

「金融数理の基礎」第12回分宿題コメント

第12回分の宿題についてのコメントです。

一通り目を通しましたが、もう一度ロジックの確認などをしたいと思います。
返却は来週の火曜日になるかと思います。

採点していて気になったところをコメントしておきます。

問題4.6
(i) r≧0 という条件がきいているのですが、そのことを明確に表現していないものがありました。数学の問題では、解答の中で与えられた条件を適切に使えているかどうかをチェックするので、 当たり前と思われる部分でもでいるだけ丁寧に理由を明示する方がよいでしょう。

あと、S_n/(1+r)^n という割引株価がリスク中立確率測度の下でマルチンゲールになるという性質に注目していた人が多く、それは良い方針なのですが、
E[S_τ/(1+r)^τ] =S_0 という式(期待値は~を省略していますが、リスク中立確率の下での期待値)を何も説明せずに使っている人がいましたが、細かく言うと、ここでは任意抽出定理を使うことになりますし、その場合でもE[S_(τ∧N)/(1+r)^(τ∧N)] =S_0 というように、停止時刻のところを(τ∧N) という形にしないといけません。

(ii) これは、結構採点に悩む解答が多かったです。肝要なところを言葉で説明しているので、本当に分かっているのかどうかがよく分からないのです。数式の扱いに慣れないと難しいことかもしれませんが、
今回、数式でうまく説明するための基本となるアイデアは
 max{f(x)+g(x)} ≦max{f(x)} + max{g(x)}
という不等式です。(f を (i) のペイオフの割引価値、g をコール・オプションの本源的価値の割引価値、x を停止時刻と思えば、今回のケースを考えることができます)

ファイナンス的なポイントは、多くの人が指摘しているように、(i)のデリバティブとヨーロピアン・コールの合成ペイオフが、アメリカン・プット・オプションのペイオフと見た目が同じになるということです。
ただし、不等式の関係を示すということなので、正確には、
(i)のデリバティブとヨーロピアン・コールの合成ペイオフが、アメリカン・プット・オプションのペイオフを下回らないということを適切に示すのが良い方針となります。

(iii) こちらは V_0^EP≦V_0^AP を示すことは難しくないですし、ヨーロピアンの場合のプット・コール・パリティを使えば、それほど難しくなく、比較的よくできていました。

問題4.7
手つかずの人もいましたが、満期まで権利行使しないのが最適という結論は多くの人が得ていました。
ただし、時刻 0 での価値を S_0 - K/(1+r)^N と正しく解答していた人はあまり多くありませんでした。

r≧0 の言及がないものがありました。上の(i)と同様のコメントが当てはまります。

発展課題

4名の方がチャレンジしていました。
理論解をきちんと導出している人はいませんでしたが、漸化式に基づく議論で良いところまでいっている人はいました。ただ、素朴に考えていくと、計算すべき期待値は無限和の形で表されるため(しかも一般項のわからない漸化式が含まれる形)、工夫をしないと自力では計算できません(たぶん工夫は可能でしょうが、この方針では私も実は解けていません)。
数値計算で理論値を導出できている人がいましたので、期待値が有限になると知っていれば、無限和をある程度の有限和で近似するというアプローチも現実的ですね。

4名ともシミュレーションをしていて、そのうち3名の方は理論値に近く収束できていました。
残りの1名は、10回連続ではなく9回連続の場合のシミュレーションをしてしまったのだと思われます。
プログラム中の判定で <10 と ≦ 10 のようなところを微妙に間違えているのではないでしょうか?
私も、VBAをずっと使っていて、たまに C でプログラムするときは、
for と if の条件表記でよくミスしてしまいます。

解法については、何かの機会に紹介したいと思います。
ちなみに理論値は 2046 です。これは 2^11-2 に対応しますが、
実際には、2+2^2+・・・+2^10 を計算したものと見ることになります。

7/23(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験

期末試験のアナウンスです。

試験前に、授業評価のアンケートを実施するそうです。

日時と場所:7月23日(水) 18:40~19:40(正味60分) 第3講義室


※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり19:10まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式
  • 第9回の授業から第14回の授業で扱った内容(プレゼン資料・配布資料)。プレゼン資料の内容や数式を細かく記憶してくる必要はないが、資料の中で強調されたり繰り返し使われている用語の意味を確認したり、授業でどういう話題を扱ったかを自分なりに整理したりしておくこと
  • 計算問題を40点分、記述問題を60点分出題する
  • 計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。特に Merton モデル、定数強度モデルによるクレジット・デリバティブの評価に関する問題、デフォルト相関について確認すること
  • 記述問題は、授業で触れた内容に関連したテーマの知識を問う問題とする。以下の点について、見直しておいてください。
    (線形判別分析の前提、KMVモデルのDD算出のアイデア、構造型(+完全情報)モデルの弱点、ハザードレート過程とマルチンゲール強度過程の相違点、条件付き独立モデルとデフォルト伝播モデルの相違点、損失分布手法によるオペリスク計測)
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

2008年7月11日金曜日

7/8(火)「金融数理の基礎」第13回:ランダムウォーク(2)

第13回目では、メインテキストの5.2-5.4節を扱う予定でいます。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • 対称ランダムウォークの初到達時刻の期待値が∞になることと、明示的な密度関数の導出のアイデア
  • 対称ランダムウォークの鏡像原理とその応用としての、初到達時刻の分布の導出
  • 永久アメリカン・プット
期末試験についてのアナウンスもする予定です。
5章については何とか次回で一区切りつけてしまいたいので、証明の細部に立ち入るのは控えたいと思います。

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フィナンシャル・リスク・マネジメントの授業を履修している人だけでなく、このブログを読んでいる方すべてにお薦めしたいと思います。

2008年7月10日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第11回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第11回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年7月9日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分課題コメント

第13回分の演習課題についての略解とコメントです。

(i) 手つかずの人もいました。また、議論が不十分だったり、いちおうできているけれど説明が冗長な人が目立ちました。場合分けを丁寧にしている人がいましたが、場合分けの議論は不要です。

まず、 E[Y^iY^j] = P(Y^i =1, Y^j =1) に注意です。つまり、E[Y^iY^j] は i と j の同時デフォルト確率を表していることに注意。

(A) min{p_i, p_j} ≧ E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) を示すには・・・

{Y^i =1, Y^j =1} = {Y^i =1} ∩ {Y^j =1} ⊆ {Y^i =1} であることから、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^i =1) が分かります。
同様にして、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^j=1)も分かります。

(B) E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ -min{0, 1 - p_i - p_j} を示すには・・・

P(Y^i =1, Y^j =1) ≧0 は明らか。
また、P(Y^i = 1) + P(Y^j = 1) - P(Y^i =1, Y^j =1) = P(Y^i =1 or Y^j = 1)
が成り立つことに注意して、 P(Y^i =1 or Y^j = 1) ≦ 1 であることから、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ p_i + p_j - 1
が成り立つことがわかります。
よって、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ max{p_i + p_j - 1, 0}
が成り立ちますが、max(a,b) = -min(-a, -b) という関係が一般に成り立つので、
max{p_i + p_j - 1, 0} = -min{1 - p_i - p_j, 0}
として、(B)が成り立つことがわかります。

(ii) 少し計算ミス・マイナス符号のつけ忘れもありましたが、だいたい良くできていました。
-0.01436≦ ρ≦0.70353
となります。

(iii) 分散の計算が不正確な人がいました。あと期待値も勘違いをしている人がいました。
(Σ記号を使わずに書きます)

E[L]=E[Y^1 + ・・・+Y^m] = E[Y^1] + ・・・+ E[Y^m]
                  = P(Y^1 = 1) +・・・+P(Y^m = 1)
= π + ・・・ + π = mπ
また、
V(L) = V(Y^1 + ・・・+Y^m)
= V(Y^1) + ・・・ + V(Y^m) + 2{Cov(Y^1,Y^2) + ・・・Cov(Y^{m-1},Y^m)
とできることに注意して、
  V(Y^i) = E[(Y^i)^2] - E[Y^i]^2 = π - π^2
i ≠ j のとき、Cov(Y^i, Y^j) = E[Y^i Y^j] - E[Y^i]E[Y^j] = π_2 - π^2
であることから、

 V(L) = m(π - π^2) + 2 × m(m-1)/2 (π_2 - π^2)
=m(π - π^2) + m(m-1) (π_2 - π^2)

となります。(m(m-1)/2 は m 以下の数の中から、異なる2つの数を取り出す組合せの数です)

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第14回フォロー

プレゼン資料とポートフォリオ・ラリーのデータをイントラネットにアップしておきました。

第13回の課題を提出したことが確認できているのは以下の9名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F044, IM08F017, IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F037, IM08F039, IK08F001

2008年7月8日火曜日

「金融数理の基礎」第11回分宿題コメント

第11回分の宿題についてのコメントです。

提出した人の多くは正解でした。
最後の期待値の計算ミスや同じものをリストしてしまった解答が若干ありました。
(目を皿のようにして確認したわけではないので、見落としはあるかもしれません。あしからず)

「OTM のとき決して権利行使されない停止時刻」という意味が分からなかった人がいたので、フォローしておきます。

OTM は Out of The Money の略で、その時点で仮にオプションを行使しても正の payoff を受け取れない状態を指すことに注意します。

今回の例で、OTM に当たるのは、G_n という本源的価値が負の値のときですから、
具体的には G_1(H) = -3, G_2(HH)=-11 の部分ということになります。
よって、「OTM のとき行使する」ということは、「1回目のコイントスが H のときに行使する」あるいは「最初の2回のコイントスの結果がHH のときに行使する」 ということです。
これは停止時刻でいうと、τ(HH)=τ(HT)=1 あるいは τ(HH)=2 という場合に相当します。

ですから、「OTM のとき決して権利行使されない停止時刻」として、○をつけるのは、上のような場合を除いたもので、具体的には τ(HH)=0 または τ(HH)=∞ になっている停止時刻ということになります。
正しく解答していた人でも、その辺の説明をしているレポートは無かったので、確認しておいてください。

「金融数理の基礎」第12回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

7月8日(火)提出の「金融数理の基礎」第11回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の19名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F029, IM07F044, IM08F007, IM08F010,
IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023, IM08F024, IM08F026,
IM08F027, IM08F028, IM08F030, IM08F037, IM08F038, IM08F039,
IM08F040

証明は適当に省略して、テキストに挙げられていないR.W. のオモローな性質を紹介しようと
思いましたが、結局、証明に時間をかけてしまいました。
次回はもう少し、いろんな話題を紹介できるように配慮したいと思います。

2008年7月7日月曜日

7/9(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第14回:オペリスク

第14回はオペレーショナル・リスクの評価について概説する予定です。

予定では、
  • オペリスクについての概説
  • 損失分布手法
  • 複合Poisson 分布モデル
  • シナリオの活用
などを予定しています。
準テキストではいちおう10章に相当します。

また、前回尻切れになってしまった Giesecke-Goldberg の研究紹介についても少し補足します。

そして、約2ヶ月におよぶポートフォリオ・ラリーの最終結果と表彰?も行う予定です。

2008年7月4日金曜日

7/8(火)「金融数理の基礎」第12回:アメリカン・デリバティブ(残り), ランダムウォーク(1)

第11回目では、メインテキストの4.5節、5.1-5.2節を扱う予定でいます。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • アメリカン・コール・オプションの価格
  • 対称ランダムウォークの定式化
  • 対称ランダムウォークの初到達時刻の面白い性質
5章に入ると、ほとんど単なる数学のお話になりますが、直感に反するような
不思議な結果が得られるところでもあります。
また、証明で使われているテクニックの中には、是非この機会に知っておいて
ほしいものもありますので、証明についてもポイントとなる部分は詳しく見ていこう
と思います。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第10回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第10回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年7月2日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分課題コメント

第12回分の演習課題についての略解とコメントです。

問1(iii) で c(0,1) が「 qδ で近似できる」とすべきところを 「 q(1-δ) で近似できる」としてしまいました。 私の出題ミスです。申し訳ありませんでした。

問1 (i) 1/(1+0.05) ≒ 0.952
(ii) 1/1.05 *[(1 - q)・1 + q * 0.6] = 0.941 という方程式を立てて、q = 0.0299 となり、約3% と分かる。
また、q > p という理由としては、債券に投資する場合はデフォルト・リスクを引き受ける見返りとして、リスク・プレミアムを要求することが反映されているというのが自然な説明でしょう。
もちろん、リスク・プレミアムが意味するところをきちんと議論する必要が本当はありますが。

(iii) 数字を入れると c(0,1) ≒ 0.012 となりますが、
数式のままで考えると、c(0,1) = -log ( 1 - qδ) となりますが、
一般に x が十分小さいとき、log(1-x)≒-x が成り立つので
c(0,1) ≒ qδ と近似できることが分かります(実際、qδ ≒ 0.012 となることからも重ねて確認できます)。

私の出題ミスを悟って、正しい近似の議論をしてくださった方も多かったです。

※金利を年複利で与えておいて、スプレッドを連続複利で計算せよというところに違和感を覚えた人もういるかもしれませんが、
  1/(1+r+c) = 1/(1+r)*[(1 - q)・1 + q * (1-δ)] という形で、スプレッド c を定義しても、c ≒ qδ を結論づけることはできます。

問2

与えられた等式の c^* のところに 0.02 を代入して、h^Q の非線形方程式を作り、例えばExcel のゴールシークやソルバーで解くと、およそ h^Q = 0.0323 程度になります。

一方、(r+h^Q)Δ が十分小さいとすると、
exp(-(r+h^Q)Δ) ≒ 1 - (r+h^Q)Δ
となることから、

c ≒ {Lh^Q(r+h^Q)Δ}/{(r+h^Q)Δ [1 - (r+h^Q)Δ]}
≒ {Lh^Q(r+h^Q)Δ}/{(r+h^Q)Δ}  ({(r+h^Q)Δ}^2 ≒ 0 と見なす)
≒ Lh^Q

と整理してみることができる。よって、 h^Q ≒ c / L と近似できることが分かります(実際、c/L ≒ 0.033 となることからも重ねて確認できます)。

問2 の方は、数式レベルで近似関係の成立を議論している人はあまり多くありませんでした。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回フォロー

プレゼン資料と課題のファイルをイントラネットにアップしておきました。

第12回の課題を提出したことが確認できているのは以下の11名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F016, IM07F044, IM08F017, IM08F023, IM08F024, IM08F026,
IM08F027, IM08F037, IM08F039, IK08F001, IM05F023

授業の話題に、日経平均が43年ぶりに10日連続下落という話題に触れましたが、
それに関して次の問題の答えは分かるでしょうか?
「1営業日ごとに日経平均が上がるか下がるか半々の確率であり、日々の上がり下がりは独立であるとしたとき、計測してから初めて10日連続下落するまでの日数の期待値はどれくらいか?」
けっこうな難問だと思いますが・・・

「金融数理の基礎」第10回分宿題コメント

第10回分の宿題についてのコメントです。

解き方は分かっていながら計算ミスをした人、ストラドルのアルゴリズムの理解が不十分だった人、
(iv)の答え方が不適切と判断された人がそれぞれ少しずついましたが、全体的に良くできていたと
思います。

授業フォローのところに書いておいた宿題コメントをこちらに転記します。

解答は、
(i) 116/125=0.928 (ii) 64/25 = 2.56 (iii) 412/125 = 3.296
(iv) 大まかに言えば、「straddle は結局1回の行使で、call か put いずれか一方のpayoff しか受け取れないが、put と call を別々にもっていれば、それぞれを最適なタイミングで行使して、両方の payoff を受け取る可能性があるため」といったもので、そのような内容に触れていればOKとしています。
ただし、厳密には call と put それぞれを行使する機会が存在するというだけでは、straddle の価格が put と call の価格の和を上回らないことは言えても、真に小さくなることまでは言えないと考えます。
したがって、真の不等号が成り立つことを主張するためには、straddle の最適行使タイミングが、put と call の最適行使タイミングとずれていることを具体的に指摘することが大切に思います。

2008年7月1日火曜日

「金融数理の基礎」第11回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

7月1日(火)提出の「金融数理の基礎」第10回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の20名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F029, IM07F031, IM07F044, IM08F007,
IM08F010, IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023, IM08F024,
IM08F026, IM08F027, IM08F028,IM08F030, IM08F037, IM08F038,
IM08F039, IM08F040

前回の課題の解答ですが、
(1) 116/125=0.928 (2) 64/25 = 2.56 (3) 412/125 = 3.296
(4) 大まかに言えば、「straddle は結局1回の行使で、call か put いずれか一方のpayoff しか受け取れないが、put と call を別々にもっていれば、それぞれを最適なタイミングで行使して、両方の payoff を受け取る可能性があるため」といったもので、そのような内容に触れていればOKとしています。
ただし、厳密には call と put それぞれを行使する機会が存在するというだけでは、straddle の価格が put と call の価格の和を上回らないことは言えても、真に小さくなることまでは言えないと考えます。
したがって、真の不等号が成り立つことを主張するためには、straddle の最適行使タイミングが、put と call の最適行使タイミングとずれていることを具体的に指摘することが大切に思います。

2008年6月29日日曜日

7/2(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回:信用リスク(5)

第13回はデフォルトの依存関係モデル、および信用ポートフォリオのリスク評価について概説する予定です。

予定では、

  • 条件付き独立モデル
  • Copula モデル
  • デフォルト伝播モデル
  • Giesecke-Goldberg による top-down アプローチ・モデル
  • 複合Poisson 分布モデル→第14回に回します。
などを予定しています。
準テキストでは9.6~9.8節の部分に相当します。8.4~8.5 節の内容にも少し触れます。

「金融数理の基礎」第10回フォロー(更新)

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

6月24日(火)提出の「金融数理の基礎」第8回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の17名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F029, IM07F044, IM08F007, IM08F010,
IM08F013, IM08F017, IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F028,IM08F030, IM08F037, IM08F038, IM08F039

stopping time について、まだよく理解できていない人がいると思いますので、
クイズを出しておきます。少し考えてみてください。
(定義に基づいて考えれば分かるはずです)

2期間2項モデルの設定で、次のように定義される τ のうち、stopping time となるのは
どれでしょうか?

(1) τ(HH)=1, τ(HT)= τ(TH)= τ(TT)=2
(2) τ(HH)=2, τ(HT)= τ(TH)= τ(TT)=∞
(3) τ(HH)=∞, τ(HT)= τ(TH)=2, τ(TT)=∞
(4) τ(HH)= τ(HT)= τ(TH)= 1, τ(TT)=∞

答えは、(2)(3) です

2008年6月26日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第8回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第8回分の宿題レポートを返却します。

今回はよくできていたので、単に○だけされている人が多いと思います。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分課題コメント

第11回分の演習課題についてのコメントです。

取り組んだ人は少なかったですが、取り組んだ方はだいぶ善戦していたと思います。

問題1は、それぞれのパラメータで偏微分してもらえれば明快だと思いましたが、偏微分しなくても議論はできます。
ただし、ボラティリティσに関するところで、V_0 > D という条件を私が明示していなかったので、場合分けなどをして検討してくれていた人がいました。こちらで想定していなかったことにまで時間を費やさせてしまってすみません。しかし、一方で条件にきちんと留意した議論をしてくれることは頼もしく思えました。

あと、若干σで偏微分した後の整理した式が不正確な人がいました。結論には影響を与えていませんが。

問題2は、思った以上に大変な計算だと感じた人がいるかもしれません。
大まかな証明(計算)の流れとしては、
  • ロピタルの定理が使える形であることを確認し、それを利用して時間についての偏微分を行う
  • d_{1,t}, d_{2,t} → ∞ となることを示し、Φ(-d_{1,t})→0, Φ(d_{2,t})→1,Φ’(-d_{1,t})→0, Φ’(d_{2,t})→0 などを示す
  • ロピタルの定理を適用する
というものだと思います。説明不足あるいは計算の整理がされていない解答もありましたが、がんばって取り組んだ跡が見受けられました。

ロピタルの定理については、いろいろなヴァージョンがあると思いますが、
私の手元になるテキストによると以下のようになります。

(ド・ロピタルの定理)
a のある右近傍で微分可能な関数 f(x), g(x)(≠0) が x→a+0 のとき無限小であって、
lim_{x→a+0} f'(x)/g'(x) = A となるならば、 lim_{x→a+0} f(x)/g(x) = A
が成り立つ

7/1(火)「金融数理の基礎」第11回:アメリカン・デリバティブ(2)

第11回目では、メインテキストの4.3節の残り~4.5節を扱う予定でいます。
第12回でもアメリカン・デリバティブについて少し補足しようと思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • 停止時刻の定義とマルチンゲールとの関係
  • 経路依存する場合を含めた一般のアメリカン・デリバティブの定式化
  • 最適行使時刻による価格付けのアイデアと優複製との関係
  • 最適行使時刻の特徴付け
  • アメリカン・コール・オプションの性質

2008年6月25日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回フォロー

プレゼン資料と課題のファイルをイントラネットにアップしておきました。

第11回の課題を提出したことが確認できているのは以下の8名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F016, IM08F017, IM07F029, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F037, IK08F001

提出されなかった人は問2の計算をギブアップしたか、そもそも複雑な計算なだけに
スルーしたということでしょうか?

授業の最初に触れた、BFS2008のページはこちら
BFSのWorld congress は第1回がパリ(2000)、第2回クレタ島(2002)、第3回シカゴ(2004)、第4回東京(2006)です。
2010年は果たしてどこに?それはロンドンの最終日あたりにアナウンスされると思います。

「金融数理の基礎」第8回分宿題コメント

第8回分の宿題についてのコメントです。

計算ミスをした人、また解くべき問題を勘違いした人が若干いましたが、
テキストの定義や例題にそって計算すればよかったためか、
全体的によくできています。

今回の宿題を通じて本当に考えてほしいことは、
自分がやった計算の意味づけです。
状態価格(密度)を用いてデリバティブの価格付けをするという
行為はどういうことなのかを、よく復習しておいてください。

2008年6月23日月曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回課題に関する質疑

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回課題の財務指標作成について、受講生の方に重要な質問をいただきました。私の回答と交えて、紹介しますので参考にしてください。


Q1:「経営資本営業利益率」の計算式で、分母は今期の「経営資本」のみのようですが、前期との平均ではなくてよいのでしょうか?

A:本当は平均を使う方がよいと思うのですが、1期分の経営資本を作るのも面倒ですので、Excelの例では省きました。

Q2:「インタレスト・カバレッジ・レシオ=EBITDA÷支払利息・割引料」と定義が書かれていますが、「事業利益(EBIT)÷支払利息・割引料」という定義が一般的と思われます。償却前で見る方が良いのでしょうか?

A:「事業利益(EBIT)÷支払利息・割引料」が会計的な整合性を考えると、一般的だと思います(注:プレゼン資料ではこの定義を紹介していて、Excelでは EBITDAを分子に用いたもので計算しています)が、EBITの代わりに、CFの近似概念としてのEBITDA などを使ってみて、それで仮に説明がつくのであれば、それを使うことも良しとする立場です。

Q3:「有利子負債」の定義に、「受取手形裏書譲渡高」が含まれていますが、割引手形は利払いを伴いますが、裏書譲渡は利払いを伴いませんので外した方がよいのでしょうか?
(「借入金依存度」についても同様です。)

これは、私の会計知識不足からきているところです。
裏書譲渡分を入れない方がよいと思われれば、外してけっこうです
会計学者である白田佳子さんの「倒産予知の実務」を確認しましたが、
受取手形割引高だけを加算したものを定義にしています。


Q4:「売上債権回転期間」「買入債務回転期間」及び「棚卸資産回転期間」 についてですが、これらは効率性分析の1指標であるとともに、「売上債権」等が存在する平均的な期間を示したもので、直近の売上と比較する方が、指標の目的にあう印象があります。(中略)そういった観点から考えると、「回転期間」関連の指標はそれぞれ直近数ヶ月の影響しか受けませんので、前期末との平均を分子にするよりも対象決算期末の数字のみを使う方が良いように思われますが、いかがでしょうか?

A4:そちらの方が適切かもしれませんね

全体についての回答:基本的に、デフォルト判別に効果があれば指標の作り方に決まりがなくてもよい(もちろん、ある程度その意味するところを説明できないといけませんが)というのが私の立場です。
ただ、指標作りのヒントとして既存の指標はいろいろと参考になると思い、自分の経験も含めて紹介しました。

6/25(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回:信用リスク(4)

第12回は誘導型アプローチおよびクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

  • デフォルト・リスクのある金融商品の評価法
  • 誘導型モデルの概要
  • 強度モデルの数理
  • Duffie-Singleton モデル
  • Credit Default Swap(CDS), First-to-Default Swap の評価例
などを予定しています。
準テキストでは9.1~9.4節の部分に相当します。

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案の返却

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案を本日返却するよう手配します。

(採点した答案についてはコピーをとってあります)

中間試験の成績は全体の5割を占めることになっていますが、単に今回の点数に0.5をかけるという処理をするわけではありません。期末試験の難易度とのバランスをとって調整したいと思います。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点結果について質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年6月19日木曜日

6/24(火)「金融数理の基礎」第10回:アメリカン・デリバティブ(1)

第10回目では、メインテキストの4.1-4.3節をいくつか扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。
  • アメリカン・デリバティブの定式化(これまでのヨーロピアンのものとの違い)
  • マルコフ型のアメリカン・デリバティブの価格付けのアイデア
  • 停止時刻の定義とマルチンゲールとの関係
また、中間試験に関するコメントも少ししようと思っています。

2008年6月18日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回フォロー

プレゼン資料はイントラネットにアップしておきました。
KMV モデルを簡単に実装したExcelファイルもいずれアップします。
配付資料のアップは見送ります。

今回の演習問題をレポート提出する人は、次回の授業のときに提出してください。

「金融数理の基礎」中間試験採点コメント(速報2)

「金融数理の基礎」の中間試験は21名が受験しました。

略解と採点方針はイントラネットにアップしました。

全体の採点を終えました。(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。)



いくつかコメントしておきます。

問題1は全部できていた人が多かったです。(1)で a=0 とした人がいて、ファイナンスのモデルとして負の金利はナンセンスであるという気持ちは分かるのですが、今扱っているモデルは、r>-1 が前提となる制約であり、「無裁定」という条件だけからは金利の非負制約を与えることはできません。

問題2は、(1)で計算ミスと問題の勘違いが若干見られましたが、よくできていました。(2)は「マルコフ過程の定義」とそれを示すために「独立性の補題」をどう使ったかがポイントですが、きちんとできている人は少数でした。g は f を使って表せるということは示していても、なぜそのように書けるかの説明が十分でないものが多かったです。あるいは、(2)はパスした人も多かったです。
(3)は過半の人ができていました。(4)は(1)で計算ミスした人は正答にいきつかないわけですが、計算過程がきちんと分かっている人には部分点を与えています。

問題3は、各指示にすべて整合するように証明を組み立てていけば、解答のバリエーションはほとんどなく、テキストの証明のような式になるはずなので、そこからはずれているものは結果として正しい変形でも減点しました。目立ったのは、(3)式のところで
Δ_n/(1+r)^nE_n[S_{n+1}/(1+r)] (E_n はリスク中立確率測度の下での条件付き期待値のつもり)
と変形して、(4) でE_n[S_{n+1}/(1+r)] = S_n と変形するというものです。
それは結果として正しい式ですが、
(4) で「割引株価過程がマルチンゲール」という指示を使うためには
Δ_nE_n[S_{n+1}/(1+r)^{n+1}]
という形で残しておいて、(4)では
 E_n[S_{n+1}/(1+r)^{n+1}] = S_n/(1+r)^n
と変形することが自然なので、先のような変形は(3)のところで減点しました((4)では結果的に答えてほしい式になっているので減点してません)

問題4 (1) は場合分けの解答が多くよくできていました。この問題は max の処理のところで場合分けをすることが要諦と考えますので、場合分けをせずに証明しているものはいずれも正解とは見なせないと判断して減点しています。示すべきことが自明に見えれば見えるほど、より素朴な手続きで示すことが肝心になります。
(2) もよくできていましたが、(1)の結果と「条件付き期待値の線形性」しかポイントはないので、「(条件付き期待値の)線形性」ということに言及していないものは厳しいと思いましたが減点しました。期待値の線形性は当たり前のように使うことがほとんどですが、それを使って証明する場合、ましてそれが最大のポイントであるようなケースでは、どういう事実を使っているかは言及してほしいです。
(3) は結果オーライにしました。答えだけを書いていた答案もあり、事実として覚えていただけか導出した結果だけを書いていたかわかりませんが、知識として知っていることも評価しました。
ただきちんと導出している答案も多かったです。
(4) は、(3)をひきずって F_0 = 0 を仮定している人がいましたが、それは仮定されていません。ただし設問のつながり方からして、不親切だったと思うのでそれについての減点はあまりしていません。説明不足の答案が多かったのですが、割引株価過程がリスク中立測度の下でマルチンゲールになることをどこかで使って結論を導出していることが分かるものはOKとしています。
(5) は、当てずっぽうで埋めた人が多そうだったので、部分的な正解をどう扱うか少し悩みましたが、1箇所合っていれば2点とすることにしました。また、解答が2通りあるので、点数が高くなる方の基準で採点しました。ただし、本来はきちんと導出できてこそ意味があります。


平均点は問題別に
 問題1:23.5点(/25点)
 問題2:17.1点(/25点)
 問題3:11.7点(/16点)
 問題4:19.3点(/34点)
となっており、全体の平均点は 71.6点(/100点)でした。

最高点は100点(1名)、あと90点台が2名です。

2008年6月16日月曜日

6/18(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回:信用リスク(3)

第11回~13回は、数理ファイナンス・アプローチに基づく信用リスク・モデルについて話をする予定ですが、第11回は構造型アプローチについて概説する予定です。

予定では、

  • 構造型アプローチ(+完全情報)の概要
  • Merton モデル、KMVモデル
  • 初到達時刻モデル、株式価値最大化モデル
  • 構造型アプローチ(+不完全情報)の概要と既存研究紹介
  • Duffie-Lando モデル
などを予定しています。
準テキストでは8.2節の部分に相当します。

私の方で11~13回分のレクチャーノートを用意したいと思っています。

あと、ごくせんの裏番組ですが、こんなドラマをやっていましたね・・・

2008年6月14日土曜日

6/17(火)「金融数理の基礎」第9回:中間試験

第9回目は、中間試験です。

日時と場所:6月17日(火) 20:10~21:10(正味60分) 第3講義室
※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり20:40まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式

  • 試験範囲は、メインテキストの第1章と第2章(授業中の私の脱線部分は含みません。つまり、解答の根拠をメインテキストのP.1~P.62 に求められるような出題になります。
    ただし、解答においては、テキスト中で使われていなくても、私が授業で使っていた略号や記号の使用は正しい使われ方をしていれば認めるつもりです
  • 全体の8割は、メインテキストの例題や練習問題およびその類題を出題する
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

2008年6月12日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回フォロー(追記)

配付資料とプレゼン資料はイントラネットにアップしておきました。

演習用データについて何件か質問をいただいたので、
insample の方だけ、コード名と対応する企業名および P に該当する決算年月
をオープンにしました。補足ファイルをイントラネットにアップしておきました。
あと財務項目の数字の単位は「百万円」です。

分析ツールについて不具合等あったら連絡をください。

また、線形判別分析というわけではないですが、
財務指標を用いてデフォルト分析するための参考書として
例えば、こちらを挙げておきます。
必ずしも同書の議論や手法に同意するわけではないですが、会計的な観点は財務指標の作成や選択の際に参考になると思います。上の本が入手できなければ、この著者の他の本でも良いと思います。

あと、最近こちらの本が出版されました。
LGDやEADの推計についての話などが載っています。

あと、例の翻訳本は7月中旬の出版を目指して追い込みに入っているようです。
(私の責任範囲の仕事は全うしました)

実は別の本の翻訳にも関係しているのですが、そちらも追い込みのはずですが、どうなっているのでしょうか?

「金融数理の基礎」第8回フォロー(追加)

配付資料はイントラネットにアップしておきました。

第8回分の宿題レポートは、6/24(火)の授業時に提出するか、前もって共同研究室に提出しておいてください。

授業内容についてのフォローですが、配布したプリントの状態価格についての命題1のブランクのところについてコメントしておきます。状態価格をすべてのstate ωについて和を取るとどうなるか?ということですが、

答えは、1/(1+r)^N つまり、状態によらず時点 N において 1 受け取れる安全資産(要するに無リスクの割引債)の時点 0 での価格となります。
(これは、状態価格密度の期待値でもあります)



Duffie の本の 3rd. ed. の参考文献リストに加えてもらっている私の論文(修論を手直ししたもの)ですが、
そこで考えている問題は「Vasicek とか Cox-Ingersoll-Ross だとか、いろいろな短期金利のモデルが提唱されているが、きちんとした均衡モデルの枠組みで説明づけられる金利モデルのクラスはどのようなものか?」というものです。
そこでは state price process を用いて表示した割引債や株式の価格式を使って議論しています。
結果としては・・・ほとんどの金利モデルは均衡モデルの枠組みで説明できてしまうという、ありがたいのかありがたくないのかよく分からない結果になっています。

#個人的には、今月はサッカー月間という感じです。

2008年6月5日木曜日

6/11(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回:信用リスク(2)(追記)

第10回目は、判別分析によるデフォルト判別の話をします。理論的なところだけでなく、それを財務指標を変数としてデフォルト判別に応用するということを意識した話をしたいと思います。
また、第2回目のレポート課題をアナウンスしたいと思います。

予定としては、

  • 財務指標の例と作成上の注意(Excel で実際に作ってみる予定)
  • 線形判別分析の理論的背景
  • 重回帰分析を応用した判別分析
  • 第2回レポート課題について
なお、第2回レポート用のデータをイントラネットにアップしておきました。
余裕がある人は、[original...] というB/SとP/L の財務項目数値のデータを用いて、[fin_ratio...]という財務指標を計算するためのシートで各指標を計算してみてください。私の方で用意した定義は1行目の指標名のところにコメントしてあります。

ノートPCを持参できる方は、事前にデータをダウンロードしておいてください。
授業中に少し作業もできると思います。

それから分析用ツールはベータ版として
Excel2003(2000,2002でも動作可能?)用とExcel2007用を
イントラネットにアップしておきます。

とりあえず[コントロール]シートのボタンを押して動作するかどうかを
チェックしてください。
最低限、マクロを実行可能にしないと何も動きません。

不具合の情報などありましたら連絡ください。ただし、回答や対応は週明けに
なってしまうと思うのでご容赦ください。
一応簡単な対策マニュアルもおいておきます。少しでも参考にしてください。

「金融数理の基礎」第6回宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第6回宿題レポートを返却します。

また、今回は略解をイントラネットの講義の第6回目に追加しておきました。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第6回宿題コメント(少し追加・修正)

第6回分の宿題についてのコメントです。
略解は近いうちにアップする予定です。

以前に比べると、読みやすいレポートが増えてきました。
それでも、説明不足に感じたり、議論をもっと整理してほしいと思うところがあります。

例えば式変形を淡々と行っている解答がありますが、一つの等号でつないでいるところに何も説明せずに複数の性質を使って変形していたりするのは、こちらとしてはきちんと理解しているのか、大事な議論をうやむやにして結果につながるように辻褄をあわせているのか判断に戸惑います。
式変形がいたずらに長くなるのが嫌であれば、「○○と△△、および□□により(or を用いて)」という説明を入れてから、複数の性質を使った変形をしてほしいです。

また、全体としては議論に不備はないとしても、少し見直せばもっと短く端的に説明できる解答も多いです。
テストは時間との戦いなので、議論を整理して解答せよというのは厳しい要求ですが、レポートは(建前としては)検討する時間が十分あるので、自分の思考を整理してから解答をまとめてほしいと思います。
このコメント自体は、講義する自分自身への戒めでもあるのですが・・・

問1:(1) E_n[M_{n+1}]=M_n を示すところは多くの人が良くできていましたが、あともう少し説明 or 詳しい式変形をしてほしいという解答が多かったです。
E_n[X_{n+1}] = 1/2*1 + 1/2*(-1)
と条件付き期待値の式から直接具体的な期待値の計算をしている人が多かったです。
条件付き期待値の定義に沿えば、それも正しいのですが、どちらかというと
E_n[X_{n+1}] =E[X_{n+1}]
と条件付き期待値の独立性の性質から、ただの期待値計算に帰着するというのをはさんでもらう方が、この問題の解答についてはベターだと思います。

また、{M_n} が適合過程であることについて言及する人が増えました。ただ、それが十分な説明であると見なせる人は少数でした。
 
(2) 数学的帰納法を用いた人と、巧妙な式変形を用いて直接示そうという人と、ギブアップした人に別れました。変形のバリエーションは様々ですが、直接式変形する解答の割合が高かったです。
証明すべき式が与えられていて、n と (n+1) の関係に手がかりがあるようであれば、数学的帰納法を試みるのが自然な選択かもしれません。ただ、数学的帰納法にせよ直接式変形するにせよ、対称ランダムウォークの特別な性質をうまく利用できるかどうかがポイントになります。

あと、n=0 の場合に I_n = 1/2(M_n^2 - n) が成立することに言及していない人が多かったですが、触れておく方が議論しては完璧です。n=0の場合だけは自明すぎるため、逆に対称ランダムウォークの式変形では正当化できないので。

(3) 実は、前回の宿題であった練習問題6においてΔ_j を M_j とすれば、{M_n} がマルチンゲールであることを証明しているので、マルチンゲール変換の特別な形と見なせて、前回の宿題(一般論)から結論が得られる、という解答が隠れたベストアンサーだと思って出しました。(この問題だけは私が付け足したものです)

証明は、I_n の定義そのものから前回の宿題とほぼ同じ議論をしているものと(2)の式を使って示すものの2通りに分かれていました。この問題を(2)の前においておけば、おそらく全員が前者のアプローチをとったと思いますが、いちおうこれも意図的に(2)の後において、どっちを選択するかを見るつもりでした。

こちらも{I_n} が適合過程であることについて言及する人が増えました。

(4) は手つかずの人も多く、解いている人の中でもまだMarkov性を十分理解していないと思われる解答が見られました。
任意の時点 n、任意の関数 f に対して、ある関数 g が存在して
E_n[f(I_{n+1})] = g(I_n)
が成り立つことを示すことになります。
このテキストに沿ってMarkov性を示すには、f を用いて g を具体的に表現するのが最も明解な答え方になります。

g を得ている人でも見た目は I_n と M_n の関数のままで解き終えている人がいました。M_n は I_n で表されることは(2)から分かるので、そこで議論を止めたかもしれませんが、M_n は I_n で表すことができますから、最終的に I_n の式だけで表すところまで話を進めてもらうのが肝要と考えます

また、(2)をヒントにした人でも、M_n = "I_n の関数" と表すときの平方根の処理でマイナスの場合を忘れてしまっている人がいました。(結果としてはマイナスを考慮してもしなくても同じなのですが)
全体的にみて、最後の符号処理の議論を含めてきちんと g の表現式を得た人は一人だけでした。

あとテキストの例題のように、I_{n+1}/I_n という比を考えようとしている人がいましたが、株価過程の場合とは異なり、この設定では「I_{n+1} = I_n × 何か」という関係になっていないので比をとる意味はあまりなく、むしろ差に注目する方が自然です。

2008年6月4日水曜日

6/10(火)「金融数理の基礎」第8回:状態価格

第8回目では、メインテキストの3.1-3.2節をいくつか扱います。
時間的には 3.1節の内容を押さえて 3.2 節は重要なところをピックアップして説明する感じになると思います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 確率測度の変換の数学的意味
  • Radon-Nikodym 微分と状態価格密度と状態価格の関係
  • 状態価格のファイナンス的意味
また、3.3節は自習部分とし、期末試験の範囲にも含めません。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回フォロー

配付資料とプレゼン資料はイントラネットにアップしておきました。
中間試験の略解もイントラネット(前回のところ)のファイルを更新しておきました。
問5の簡単な解説をつけてあります。

簡単な Regression Tree を Excel で実装した話をしましたが、
確か最適な指標と閾値を見つけるロジックは C 言語でプログラムを書いて、
それを DLL として、Excel との間で値をやりとりするようなしかけにしたと思います。
Excel と DLL の間の値の受け渡しがうまくいかず、何度も Excel ブックが途中で落ちるという経験をしました。

Excel については、授業で話したように得られた tree をきれいに表示するために、セルの位置指定や
さらに分岐があるかどうかの場合分けのロジックを正確に書くのに苦労した記憶があります。

作っていたときは大変でしたが、楽しく作業したことを思い出します。
残念ながらファイルは会社に残してきて、私の手元にはありませんが。

あと、今日の最後に紹介した本はこちらです。

「金融数理の基礎」第7回フォロー

中間試験情報の入った配布資料はイントラネットにアップしておきました。

6月3日(火)提出の「金融数理の基礎」第6回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の19名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM07F029, IM07F031, IM07F044, IM08F007, IM08F010,
IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023, IM08F024, IM08F026,
IM08F027, IM08F028, IM08F030, IM08F037, IM08F038, IM08F039,
IM08F040

授業のフォローをまず1件だけ。

2章の練習問題9の設定で、私が「株が下がったときに金利が上がる設定になっているのは妥当だ」という趣旨の発言をしたことについて、それは反対で「株が下がれば金利は下がるのでは?」という質問をいただきました。

ご指摘はごもっともです。教科書的には
「株が下がる→株の売り圧力が大きい→株を売った資金が債券に流れる→債券が買われる→債券価格が上がる→金利が下がる」
という投資資金が株と債券のどちらに流れるのかという観点で整理できると思います。
実際に、最近の日本のマーケットではこうした傾向が伺えるというご指摘をいただきました。

ただ、グローバルな視点で見ると、問題の設定のように、もともと無リスク金利が25%の国であれば、株価が半分に落ち込むような状況では、その国の(そもそも安い)債券も同時に売られてしまい金利が50%に上がるというのも不思議ではないと思います。これは極端な例ですが、経済が弱いときは株安と債券安(つまり金利高)が同時に起こることも珍しくないと思います。
ちなみに、私が大学生の頃に読んだ石ノ森章太郎の「マンガ日本経済入門」の一コマに「金利は株価の(株価は金利の?)逆数ですからね」というニュアンスの台詞があったことを記憶しています。
そのせいか私は株が下がれば金利は上がるという図式が先に思い浮かんでしまいます。

2008年6月3日火曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」中間試験の採点答案の返却

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」中間試験の採点答案を返却します。

(採点した答案についてはコピーをとってあります)

100点満点で採点して、平均点は69.6点、最高点は91点でした。

中間試験の成績は全体の3割を占めますが、単に今回の点数に0.3をかけるという処理をするわけではありません。2回分のレポートと期末試験の難易度とのバランスをとって調整したいと思います。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点結果について質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年6月2日月曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」第6回課題レポート【返却】

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」第6回課題レポート(金利ポートフォリオ見直し)
を返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

コメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

また、提出された方の提案したポートフォリオ一覧をイントラネットの第7回のところにアップしておきました。

「金融数理の基礎」第5回宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第5回宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年5月30日金曜日

6/4(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回:信用リスク(1)

第9回目は、信用リスクの初回と言うことで、信用リスク・モデルについての概説をしたいと思います。
内容に関しては特に予習するポイントはありませんが、2つ目のレポート課題に向けての知識確認ということでB/S, P/L の基礎知識と財務指標の定義などについての小テストをしようと思っています。

予定としては、

  • 中間試験の講評
  • 信用リスクのとらえ方
  • 信用リスク・モデルの一つの分類
  • 会計知識の小テスト
などです。
時間があれば、判別分析についても少し説明したいと思います。

「金融数理の基礎」第5回宿題コメント

第5回分の宿題についてのコメントです。

問1:テキストでいうところの「条件付Jensen不等式」とマルチンゲールの条件を組み合わせるだけです。少し回りくどい説明をしている人がいました。
ただし、厳密にいうと、φ(M_n) が適合過程であることにも言及する必要があります。ほぼ自明なことですが、そのことについて触れているかどうかで、その人がきちんと定義を確認できているかどうかが判断できます。その意味では誰も適合性について触れていませんでした。

問2:これも、条件付期待値の性質を繰り返し適用して式変形していき、とどめとして M_n がマルチンゲールであるという性質を使うことになりますが、説明不足と感じられる答案が多くありました。また、問1と同じで、I_n自体が適合過程であることにも言及する必要があります。自明と感じられるかもしれませんが、2行くらいで簡単な説明がほしいと思います。
あと、この問題のM_n が対称ランダムウォークとして定義されたものに限定していると勘違いしていた人もいますが、そうではありません。

問3:これについては出題の仕方があまり適切ではなかったと反省するところではあります。それは出題の段階で感じていたことでしたが、他にうまい設定を考え付かなかったので、結局、無裁定二項モデルという特殊な例に対して、ファイナンスとはあまり関係ない数学的な技術を問う問題のまま出題しました。

そのため、無リスク金利の扱いで無用な混乱をさせてしまったようです。私のタイプミスか何かと思ったのか、無リスク金利で割引した株価過程に対して議論していた人が少しいました。

また無リスク金利については他の問題からコピペしたのが残っているだけで、この問題に関しては不要な情報と思ってしまった人もいたようで、 0 < d < 1 +1/4 < u という無裁定と同値な制約条件がそもそも前提として存在することを考慮しないで答えていた人がいました。
私としては、その部分を気づかせるために問題文で「無裁定・・・」をゴシックにしていたのですが。

答え方として要求していませんでしたが、本当は必要十分条件をud平面に図示してもらうという大学入試にありがちな問題を念頭においていたので、その際には単なる等号成立条件から成り立つ以外に、何らかの制約条件が存在して図示されるのはある部分ということに思い至るかな、と考えていました。

まあ、私の出題の仕方も適切ではなかったですし、ファイナンス的な意味があるわけではないので、この問題に関して特にこだわる必要はありません。
強いて言えば、私の出題パターンとして、細かい条件を直接明示せずに問題文から読み取ってもらうような傾向がある、と思っていただければよいと思います。

2008年5月28日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」中間試験コメント(速報2)

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」の中間試験は17名が受験しました。

全体の採点を終えました。
(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。特に
記述はもう一度検討したいと思います)

平均点は
 計算問題が30.5点、最高点は50点(1名)
 記述問題が38.6点、最高点は43点(6名)
でした。


計算問題の略解はイントラネットにアップしました。

全体講評は改めてしますが、目立った点だけメモします。
問1は全部できている人も多かった一方で、ふるわない人も少なくなく出来は二極化してました。
単純に正解1つにつき3点です。

問2は、手つかずの人がほとんどでした。問2は練習問題では扱わないタイプの問題でしたが、分布関数の逆関数を計算するだけでできます。そこに気づいてほしいところでした。
答えがまちがっていても、逆関数の議論に思い至っている人は3点をベースに部分点を挙げました。

問3は、全体的によくできていました。
(i) は金額ベースで答えるので、C_A, C_B をかける必要があります。
(ii) は収益率の標準偏差として答える必要があることに注意です。
(iii)では、本当はρ=1 では等しく、ρ<1 では単純和の方が大きいと答えてほしかったのですが、少しおまけしてあります。議論が不完全な人は少し減点しています。
また、(iii)について VaR の劣加法性が成り立たないと決めつけてしまっている人がいました。VaR の劣加法性は一般的に成り立つとは限らないのであって、正規分布のときなど成り立つ場合もあります。

問4は、完璧にできている人はあまりいませんでした。全部の数字があっていないと本当は意味がありませんが、甘めに部分点(1箇所ミスで4点、2箇所ミスで2点、3箇所以上ミスは0点)をあげました。

問5については、(A)4名 (B)9名 (C)4名 という分布でした。

コメントは別途したいと思いますが、現段階での採点方針として

(知識)こちらで想定していた内容(それぞれについて2つor3つののポイントを用意していました)に比べて不足している場合、1件だけだと5点減点。2件ないと10点減点としています。また、不適当な用語の使い方や正解と見なせないようなことを記述してある場合は適宜減点をしています。

(見解)主張が明確でないもの(つまり、あなたの主張はこういうことですか?と問い正したくなる文章)については、5点減点。あとは、前提となることや論理的なつながりのわかりにくさに応じて最大5点の減点をしています。(ということで見解部分については全員20点以上となっています)

細かい誤字脱字は見逃してあります。あと「である調」と「ですます調」の混在や「ですます調」だけでの解答などがありましたが、通常、試験の記述問題の答えやレポート・論文では「ですます調」は使わない方が賢明だと思います。

フィナンシャル・リスク・マネジメントの授業計画の一部変更について

信用リスクに関して5回分話す予定ですが、当初の予定(講義要綱および3月時点のシラバス記事のもの)を以下のように少し変更したいと思います。

【授業計画】の変更箇所:

9. (6/4) 信用リスク :信用リスク計量化の概説
10. (6/11) 信用リスク:デフォルト判別モデルなどの統計モデル(演習含む)
11. (6/18) 信用リスク:構造型アプローチによるモデルの概観
12. (6/25) 信用リスク:誘導型アプローチによるモデルの概観とクレジット・デリバティブの評価

2回目のレポートは6/11にアナウンスします。
また、この回はノートPCがあると良いと思います。

6/3(火)「金融数理の基礎」第7回:二項モデルの確率論的整理(4)

第7回目では、メインテキストの2.5節の残りと1,2章の練習問題をいくつか扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 例題2.5.6 のマルコフ過程に対する backward な再帰式の導出法
  • 第5回配布プリントの問2(例題2.5.6の類題として説明したいと思います)
  • 1章の練習問題9 および 2章の練習問題9(時点と状態によって、上昇率・下落率・無リスク金利が変化するモデル)
  • 2章の練習問題12(Chooser option+Put-Call parity)
また第6回分の宿題レポートは、授業時に提出するか前もって共同研究室に提出しておいてください。

2008年5月27日火曜日

「金融数理の基礎」第6回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

5月27日(火)提出の「金融数理の基礎」第5回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の17名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F029, IM08F007, IM08F010, IM08F013,
IM08F017, IM08F020, IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F028, IM08F030, IM08F037, IM08F038, IM08F039

いつもは、金曜日にはコメントや返却ができるようにチェックをしているのですが、今週は他の用事もあり、今回分についてはコメントや返却が遅れる見込みです。

また、今回の宿題は配布した分のうち問題1だけとします。
問題2については、次回の授業の中で扱います。レポートに解答してあっても特にチェックしないのであしからず。

M1ゼミ(5月分)

私のところのM1ゼミは4名で、前期の間に

S. E. Shreve, "Stochastic Calculus for Finance II: Continuous-Time Models"
(長山いづみ他訳「ファイナンスのための確率解析II-連続時間モデル」)

の3章から5章を読むことにしました。
1回90分で2名の方に発表してもらうという形です。

かなりのハイペースにしないと読めないので、細かいところを一つ一つ完全に理解するというよりは、各セクションでの重要な定義および結果と、その背景にはどういう数学的あるいはファイナンス的な概念があるのかということを確認していくことを主たる目的にしていくと思います。
とはいえ、短時間でこれだけ速く読み進めていくのは私自身初めての試みでもあるので、どういうコメントをしていくかは試行錯誤中です。

5月分のゼミのサマリーです。

12日(月)第1回:こんな感じで進めていくと良いのでは?という意味で私自身が3.1節~3.3節のブラウン運動の定義のところまでを30分程度で話しました。その後は1章、2章全体に関係する内容をごく簡単に説明しました。

19日(月)第2回:3.3節の続きから3.4節を2名の方に発表してもらいました。
[W,W](t) = t とならない経路全体は確率ゼロととらえられることなど、2次変分に関する内容について少しフォローしました。

26日(月)第3回:3.5節から3.7節を2名の方に発表してもらいました。
Markov 性の定義が一般には厄介なこと、stopping time の概念、証明中の dominated convergence theorem の使われ方、strong Markov property など少しフォローしました。

5/15(木)、22日(木)「金融市場の計量分析」第6回、第7回

第6回と第7回をまとめて。

第6回では、

P. Schonbucher,
"Modelling Dynamic Portfolio Credit Risk",
Working paper
(2003)

の Proposition 1 と Proposition 5(およびその前提となる 4(iii))の証明をやりました。

ただし、Prop.1の方はcadlag なプロセスのジャンプの過程の predictability(実際には progressively meaurability) がの成立がきちんと言えなかったので、完全に納得できたというところまではいきませんでした。

第7回では、

S. R. Das, P. Hanouna,
"Implied Recovery",
Working paper(2006)

R. M. Gaspar, I. Slinko,
"On Recovery and Intensity's Correlation - A New Class of Credit Risk Models",
Working paper
(2007)

を紹介しました。特に前半の Merton モデルによる recovery rate と intensity の関係の特徴づけの話について紹介しました。

これで、第7回をもって私の担当回は終了しました。


2008年5月23日金曜日

「金融数理の基礎」第4回宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第4回宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年5月22日木曜日

5/27(火)「金融数理の基礎」第6回:二項モデルの確率論的整理(3)

第6回目では、メインテキストの2.4節の残り~2.5節の内容を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 41ページの最後から43ページの中段くらいにかけての説明(定理2.4.8は少し言及しますが、板書はしません)
  • マルコフ過程の定義および47ページ真ん中あたりの説明
  • 補題2.5.3 の内容
  • 例題2.5.4→例題2.5.6(非マルコフを多次元マルコフと見なす考え方)
また最後に時間が足りなくなるかもしれませんが、第7回目は問題演習にしていて多少バッファーになると思うので、あわてすぎないようにします。

また第5回分の宿題レポートは、授業時に提出するか前もって共同研究室に提出しておいてください。(今度から共同研究室の提出状況も確認します)

5/28(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第8回:中間試験(追記)

第8回目は、中間試験です。

日時と場所:5月28日(水) 18:40~19:40(正味60分) 第3講義室
※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり19:10まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式
  • 第2回の授業から第7回の授業で扱った内容(プレゼン資料・配布資料)。プレゼン資料の内容や数式を細かく記憶してくる必要はないが、資料の中で強調されたり繰り返し使われている用語の意味を確認したり、授業でどういう話題を扱ったかを自分なりに整理したりしておくこと
  • 計算問題を50点分、記述問題を50点分出題する
  • 計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。特に VaR と ES の計算方法、バックテストの考え方について復習しておくこと
  • 記述問題は、授業で触れた内容に関連したいくつかのテーマの中から選択して解答してもらう予定。知識も多少問うが、それよりも問いに対して論理的な説明ができているかどうかを重視する
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

2008年5月21日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回フォロー

授業関係のファイルをイントラネットにアップしておきました。

第6回の課題を提出してことが確認できているのは以下の13名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM07F016, IM07F023, IM07F029, IM07F037, IM07F044,
IM08F007, IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F037, IM08F039,
IK08F001

皆さんがどんな戦略を提案したかをまとめて一覧にしたものを紹介することにしたいと思います。

皆さんのレポートを見ていて、もう少し出題の仕方に注意を払えばよかったと反省しています。
リスクが高い低いの判断は、想定しているリターンや戦略との関係で見ないといけないので、ただリスクだけを小さくするということは本来意味がないことですね。
たぶん、その辺をあえて割り切って解答しされた方も多かったことでしょう。

問題の基準となるポートフォリオも、全体的に金利が上がり、なおかつ相対的に短期の方が上がる「ベア・フラット(?と言えばよいのでしょうか)」の方向に自信があるとすれば、それなりに大きなリスクをとる意味があるのかもしれません。

ということで、どういう目的を設定するかをまず考え、そのうえで金利リスクをどのようにコントロールするかを考えるように促すべきだったと思います。

また、分散共分散法による 99%VaR を最小化するということを直接の目的としていた人が何人かいましたが、どちらかというと上位の主成分に対する係数を0に近づけるという目的が先にあって、結果的に VaR が小さく(見えるように)なるという方が自然な見方のような気がします。
それにこのモデルではVaRをいくらでも0に近くすることはできますが、それはリスクをとらない代わりに少なくとも金利リスクに関しては超過リターンも見込まないということの裏返しになっていることに注意。

あと、「現在のポートフォリオを劇的に変えずに」の部分の解釈は何パターンかありました。多くの人が1つか2つの年限に対応するGPSだけを変えて(要するに、GPSを変化させようとする年限と同じ残存年の割引債のトレードなどだけで)という解釈をしていました。
今回の問題については、そういう考え方でも良いのですが、現実的にはポートフォリオの総額の枠内で組み替えることになると、ただロングしたりショートしただけでは不十分で、買ったらその分の資金を別の資産を売って充当するとか(反対も然り)を考えることが必要かと思いますので、最低でも2つのGPSを変化させていくことが現実かもしれません(先物を使うことを想定すれば、単独でも良いと思いますが)。

そういうことも念頭においたのか、全体(あるいはlong, shortそれぞれも)のGPS総和を保持することを制約にしていた人もいました。ただし、GPS総和を維持するように取引することで、必ずしも売買金額をネットで0にできるというわけでもないことには注意が必要だと思います。


以下、授業に関するコメントです。

授業で紹介した copula に関する文献はこちらから。
(Clayton copula の乱数生成のところには注意)

また、多期間リスク尺度の難しい話を少しでも知りたいという方はこちらの最初の論文を。

「金融数理の基礎」第4回宿題コメント

第4回分の宿題についてのコメントです。
全体的に、レポートはだいぶ読みやすく(採点しやすく)なっていました。

問1:証明問題ですが、(i)についてはあまり問題なかったのですが、(ii)についてはあえて厳しく見たときには完全な解答と見なせるものはほとんどありませんでした。
証明問題では、何を前提として使っていいのかが重要なのですが、こうした演習問題を解く場合には
テキストに書かれている定義や証明されている性質や定理や命題、およびそのテキストの前提となる基礎数学の知識だけ(場合によっては、どういう事実かをきちんと説明する必要もあると思います)を使うというのが(空気を読んだ場合の)ルールだと思います。

(i)については、テキストにも書かれている「A∩B=空集合のとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)」という性質と「A∪B=Ω」をうまく用いればOKです。

(ii)でよく見られたものとしては、
  • 証明すべきことは2つある(一般には不等号が成立することと、排反な場合には等号が成立すること)のに、片方しか言及していないもの。片方が分からなかったのか、答える必要性を感じなかったから書いていなかったからか、判然としなかったです。
  • まだ証明されていない事柄を使ってしまっているもの。このテキストに沿った場合には、証明せずに使えるものは、定義そのものと「A∩B=空集合のとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)」というテキストに書いてある性質、あるいは授業で紹介した「A⊂Bのとき、P(A)≦P(B)」という性質くらいなもので、この問題に関しては、他のこと(例えば、一般に P(A∪B)=P(A)+P(B) - P(A∩B) となることなど)はいちいち証明して使うべきであると考えます。
証明の方針としては「数学的帰納法」を用いるものと、一般の確率論のテキストに見られるように「一般のN個の重なりのある和集合を、重なりがないような(つまり、排反になるような)N個の集合に分解して考える」というものでした。

数学的帰納法でもかまわないのですが、厳密にいうと 「N=k の場合に仮定して・・・」というところの書き方が多くの人が不十分です。「k 個の集合の選び方によらず、k個の和集合については問題の不等号が成立する」という書き方をしないといけません。単に A_1, ・・・ A_k の場合に成り立つと仮定しても、それは特別な k 個の集合を選択した場合にだけ成り立つと仮定しているにすぎません。少なくとも、集合の選び方によらないことを断っておく文言が必要です。
(集合の演算、∪や∩は普通の演算の和と積に対応するので、交換法則や結合法則は当然成り立つのですが、数学科の集合論の授業では最初にそういう自明に思える性質を証明するということを習います)

後者の方針は集合論の性質をうまく利用する意味で非常によいのですが、多くの確率論のテキストでは、最初から有限加法性あるいは完全加法性と呼ばれる性質を確率測度の備える条件として定義に含めています。有限加法性とは(ii)の後半の排反な場合には等号が成立するという性質そのもので、完全加法性は「N=∞」としての等号成立です。
しかし、このテキストでは、別の定義を与えて、それを命題として証明せよ、という問題ですから、ほぼ自明とはいえ、その性質を最初から当然として使うことは適切ではありません。
(また、細かく言うと、帰納法の方針のところでコメントしたことに通ずるのですが、排反になるようなN個の集合の分解の仕方によらないことにも触れておくべきです)

要するに、一般の n について A_1, A_2, ・・・. A_n が排反な集合であるとき
P(A_1∪A_2∪・・・∪A_n)=P(A_1)+P(A_2)+・・・+P(A_n)
が成り立つということもいちいち証明して用いることが必要です。
(ほとんど n=2 の場合と同じように示せますが、それはそれで一般の場合にも成り立つことを説明しておくべきです。そうでなければ問題として出題されている意味がありません)


問2:計算ミスが多少あった以外はだいたいできていました。ただ確率分布を表現する方法が適切でない人が少しいました。S_3 の分布を与えるという場合は、S_3 の取り得る値と確率が対応されているような書き方 P(S_3 = △) =□のような表し方か、S_3の値と確率の対応表として表すことが必要です。

(ii)の平均成長率が 25% ではなく 125%(あるいはそれに相当する小数・分数)と答えた人がいました。悪くはないと思いますが、25%のように答える方が自然と思います。その上で、この25%という数字は何なのかに言及しているかどうかというところに私はポイントを置きました。何人かの人はコメントをしてくれていました。

問3:条件付き期待値は確率変数であるので、答え方としては E_1[Y_3](H) = とか E_2[Z_3](TH)=
とか、情報を与える期待値の添え字の時点までのコイントスの結果を具体的に与えて、確率変数の取る値を計算することになるので、けっこう答えを書くのが面倒だったと思います。
多くの人が(計算ミスが多少あったにせよ)きちんと解答してくれていました。

なお、確率は HもTも1/2 につもりでいましたが、受講生の方からそれを確認するメールをいただきました。その意味では確率についても問題の中で明示しておくべきだったと思います。すみませんでした。

「金融数理の基礎」第5回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

5月20日(火)提出分の「金融数理の基礎」第4回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の20名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F028, IM07F029, IM07F037, IM07F044,
IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F028, IM08F030, IM08F037,
IM08F038, IM08F039

ちなみに、私はレポートの回収をした後、まず名簿順にレポートをソートするのですが、
一般に人間の手で sorting を行う場合に、効率のよいとされる sorting の
アルゴリズムをどなたかご存知でしょうか?
(まあ、成績処理をするだけなら順不同で採点して、学籍番号と点数を採点順に
記録していって、あとでExcel シート上とかでソートするのが一番賢いのでしょうが・・・)

あと、中間試験は、
 日時と場所:6月17日(火) 8:10~9:10(正味60分) 第3講義室
 試験範囲:テキストの第1章と第2章
の予定です。
※詳細は次回の授業のときにでもアナウンスします。


授業内容に関するフォローコメントですが、

条件付き期待値の性質の"独立性"についてです。これは一般に「独立性」の仮定があれば言える結果ですが、
テキストの条件では、「X という確率変数が最初のn回までのコイントスの結果とは関係せず、(n+1)回目以降の結果だけから決まるという」場合だけを条件にして、付録の証明もそのような場合についての証明になっています。
これは、「確率変数 X と F_n(時点 n までに得られるコイントスの結果から構成できるσ加法族)が独立」となる最も単純な例であり、直感的に独立という感じが成り立つのは分かると思いますが、
実際には「確率変数 X とσ加法族 F_nが独立」という条件は、直感に反するような場合もあります。

特殊な例ですが、
n=0,1,2,・・・に対して、Y_n(H) = 1, Y_n(T) = -1 とし、P(H)=P(T)=1/2 という設定で、
n=1,2,・・・に対して、X_n = Y_0×Y_1×・・・×Y_n
として X_n という確率過程を定義し、F_n :=σ(Y_1, ・・・, Y_n) とすると、
X_{n+1} は Y_1~Y_n の情報を全て使って定義されているにも関わらず、
F_n と独立になっています。
(そもそも X_1, X_2, ・・・, X_n そのものが独立な確率変数の列になっています。証明は考えてみてください)

あと、マルチンゲールの語源についての一つの言及はここの最後に書いてあります。
リアルなマルチンゲールの図入りの説明はこちら

Musiela-Rutkowski の本の中国版はこちら

確率のことは中国語では「概率」とか「機率」と書くようです。漢字から受ける印象だと中国語の漢字の方がふさわしい気もします。
あとどうでも良いですが、馬爾可夫鏈とか布朗運動とかが何のことか分かりますか?

2008年5月19日月曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回フォロー

授業関係のファイルをイントラネットにアップしておきました。
中間試験の情報も配布資料にあります。

演習問題の問題2(iii)を解いた人は、次回の授業時にレポートを提出してください。

また、第5回の課題(95%-VaR, 95%-ES)のファイルを受領した人は以下の17名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM07F001, IM07F016, IM07F023, IM07F029, IM07F031,
IM07F037, IM07F044, IM08F007, IM08F017, IM08F020, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F039, IK08F001

授業の最初のほうで、2007年1月から直近までのLIBOR-SWAPRATEの変動をお見せしました。
昨年の10月あたりから今年の4月にかけてLIBORが、2年物スワップレートなどと比べて、だいぶ上がっていた点についてコメントしましたが、360日ベースといった換算日の不整合の可能性や、
サブプライム問題以降、TIBOR とは異なりLIBORはジャパン・プレミアムと考えられる(注:ジャパン・プレミアムという部分については私の聞き違いあるいは思い込みだったかもしれません)スプレッドがかなり大きかったというようなご指摘をいただきました。
私自身、TIBORと少し比べましたが、去年8月くらいから拡大して、2007/10/1では、6M で LIBOR の方が 20bp くらい高くなっていますね。
ただ、LIBORが上昇すれば自然とスワップレートも上昇するような気もするのですが、2年物はどちらかというと下がっていたりしています。
このあたりのことをご存知の方がいたらぜひ教えてください。

受講生の方から追加でコメントをいただきました。私は単に円金利の動きを見ていただけですが、実際には、欧米の金利や金融市場のドタバタの余波を受けた結果と考えられるという丁寧な解説でした。

以下、私でいただいた解説を要約したものです。ただし、これが唯一絶対の見方であると言いたいわけではないことをお断りしておきます。
  • LIBOR上昇は、ヘッジファンドに資金を貸していた欧米の投資銀行によるドルやポンド、ユーロの資金調達圧力上昇の影響につられて高止まりした一方で、SWAPレートの低下は米利下げの影響や『質・流動性への逃避』的な行動からグローバルに国債へ資金シフトが起きたために、金利が低下したことが影響したためと考えられる。

  • ただし、邦銀の資金調達ニーズは欧米金融機関に比べ高くなかったため、LIBORと国内金融機関の貸出金利であるTIBORの乖離が起きた。このことは外銀に比べむしろ邦銀の信用力の方が高くなっていたことを示唆する(ジャパン・プレミアムということではない)。

講義資料作成に用いた参考文献として授業の最後で紹介した本は以下の通りです。

太田 智之「債券投資とファイナンス理論
デービッド・G. ルーエンバーガー「金融工学入門

2008年5月16日金曜日

5/21(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回:市場リスク(4)

第7回目は、市場リスクの最終回ということになりますが、市場リスクというよりは、リスク尺度自体に再度目を向けて、最近のアカデミックな動向などを紹介したいと思います。

準テキストでは6章の内容のいくつかに相当しますが、私のほうは別のソースを使って資料を作成します。

予定としては、

  • coherence および law invariance, comonotonicity
  • copula
  • risk capital allocation
  • multi-period risk
などの話題をとりあげたいと思います。
(第7回の内容は、中間試験の範囲には含めませんが、期末試験の範囲にはなります)

「金融データ・・・」の中間試験が気になる人も多いでしょうし、トピックスの紹介が中心なので少し早めに切り上げて、質問の時間などをとれるようにしたいと思います。

2008年5月14日水曜日

5/20(火)「金融数理の基礎」第5回:二項モデルの確率論的整理(2)

第5回目では、メインテキストの2.3節の続き~2.4節の内容を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 条件付き期待値の重要な性質(例題の説明は省略します)
  • マルチンゲールの定義と基本的な性質
  • 2項モデルにおける割引株価過程および割引富過程がマルチンゲールになること
  • リスク中立価値評価式のマルチンゲールによる特徴付け
後半の部分は証明の中身も少し見ていきたいと思います。
その際に、条件付き期待値の重要な性質がどのように使われていたかを見ていきます。

あとは増大情報系(フィルトレーション)を表すための記号も最初に導入しておこうと思います。

2008年5月13日火曜日

「金融数理の基礎」第4回フォロー

今回の宿題と前回の宿題(問1と問4)に解答に関するExcelファイルを略解をイントラネットにアップしておきました。

今回の宿題は次回の授業(5/21)のときに提出してください。

授業は抽象的な話に終始してしまい、なかなか理解が追いつけなかった人もいるかと思います。
せっかく確率論の基礎的な部分に触れる機会でしたので、(かなり short cut でしたが)一般的な世界までご案内しました。

また、今回の範囲については、テキストを読んでいただければおおよそ理解できる内容ですし、テキストを参考にすれば宿題の計算問題も(面倒でしょうが)どう計算すればよいか分からないということ無いと思います。

条件付き期待値の定義について、あえて“ほぼ正式な”定義を説明した理由を繰り返すと、
  • 有限状態の場合には、テキストの定義のように、条件付き期待値を直観的な理解にも沿うように、具体的に書き表すことができるが、一般には明示的な表現ができない
  • しかしながら、条件付き期待値という概念は確率解析、ひいては数理ファイナンス理論では欠かせないものなので、それがどのように導入されるかという雰囲気をつかんでほしかった
ということになります。「ほぼ正式な」と書いた意味は、授業で触れたように「条件付き期待値が存在する」ことをきちんと保証しないということもありますが、もう一つ授業できちんと触れなかった問題として、「存在するとしてそれが一意であるか?」ということも曖昧にしたので「ほぼ正式な」と断っておきました。
厳密には「確率1の意味で、条件付き期待値は一意に決まる」ことが、 Radon-Nikodym の定理を用いて存在と同時に示されます。
「存在と一意性」について言及した上であれば、授業で説明したものは「正式な」条件付き期待値の定義になります。

あと、説明するときに「最初のn回目までのコイントスの結果だけに・・・」と言ったり書いたりするのが大変なので、情報の増大系を表現するための次回以降は都合のよい記法を導入していこうと思います。


また、前回の宿題の振り返りで少しふれた「誕生日のパラドックス(本来の意味でのparadoxとは意味あいが違う)」についてはご存じの方も多いと思いますが、例えばこちらを参照してください。

最後に、最近藤田先生が新しい本を出版されたので、紹介しておきます。
ランダムウォークと確率解析―ギャンブルから数理ファイナンスへ」(日本評論社)です。

連続時間モデルで使われる確率解析の道具は、離散時間モデルではどのように表現されるかという点へのこだわりがすごく、その点では非常にユニークなテキストになっていると思います。
それでいて、数学的には非常に豊富な内容が含まれています。

後期の藤田先生の金融数理の授業はこの本の内容をベースに行われるのではないかと推測されます。

2008年5月12日月曜日

「金融数理の基礎」第3回宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第3回宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年5月10日土曜日

「金融数理の基礎」第3回宿題コメント

宿題についてのコメントです。

第3回宿題の略解をイントラネットにアップしておきました。

全体について:

 何ページにもわたって解答が書かれていたり、答えがどこにまとめてあるのか分かりにくかったりするレポートが多く、中身以前のチェックがけっこう大変でした。
 レポートは、採点者が読みやすいように書くことも意識してほしいと思います。問題を解いたときの思考過程を全てレポートに書く必要はありませんし、思考の自然な流れのままに書く必要もありません。特に、解答そのものや説明の核になる部分は、できるだけまとめてわかりやすく書いてほしいと思います。
 皆さんも仕事に関係するドキュメントを目にするときに、結論や議論のポイントがすぐに把握できないドキュメントを読むのはつらいと思いますが・・・

問1:各時点・各状態での株式保有単位についてはほとんどの人がきちんと議論できて答えも正しく求めていました。オプションを売る立場のヘッジと混同していて、符号の勘違いをしている人が若干いましたが、
 株式保有単位が決まってしまえば、マネーマーケットで取引すべき額は自明だと考えたのか、マネーマーケットでの取引については文章だけで済ましている人が何名かいました。おそらく自身では計算できる(できた)のでしょうし、解答が冗長いなってしまうと考えて省略したのかもしれまえん。ただ、この問題では確認の意味で、具体的な数字を与えたうえでの問題なので、いつ・どの状態のときに、どれだけの額を具体的にマネーマーケットで運用or調達することになるかも明示してほしいところです(次に述べるような勘違いの可能性を確認できないので)。
 また、マネーマーケットでの運用(調達)額を明示している場合でも、オプションの価値もマネーマーケットでの運用分に含めてしまっていて、実際にマネーマーケットで取引すべき額とは異なる数字を答えている人もいました。
 他には、特定の状態のときのみ具体的な数字を出して議論している人がいましたが、後述するような一般論を考えていないのであれば、この問題に関しては不十分という気がします。

 数値を全てのケースについて具体的に書くのが大変と感じたのであれば、一般論を展開して戦略を表す数式を具体的に与えるという答え方がもっともスマートな方法だと思います。各時点・各状態に依存した株の保有単位とマネーマーケットでの運用(調達)額は、単に連立方程式の解ですから、数式で明快に表せます。先に、一般解を求めてから数値を当てはめてみるという解答が、個人的にはベストと思っています。

問2:(1)題意を勘違いした人や、y が単なる和を表す変数なのに平均をとったものと勘違いして、いる人が若干いました。正しく再帰的アルゴリズムの関係式を出していた人は半数くらいでした。

(2)結果を見る限りは、ほとんどの人が正しい解答を得ていました。ただし、(1)で答えた再帰的アルゴリズムではなく、コイントス3回の結果8通りの場合に従って答えを導いている人が多かったです。まあ、この問題では(1)のアルゴリズムを用いるメリットはあまりないので、手法は問わず、答えがきちんと出せたかどうかを評価しました。

(3)最後まで整理した形で解答した人は意外と少なかったです(テキスト自体が整理していない形を出しているので問題はないのですが・・・)。(1)と同様に、題意を勘違いした人や、y の意味を取り違えている人が若干いました。

問3:ポイントは、あのような1期間3項モデルの設定では、「無裁定の条件だけからは複製戦略は見つからない or リスク中立確率が一つに決まらない」というところに気づくことです。
もし、特に意図的に他の条件や仮定を加えずに、複製戦略が求められたり、リスク中立確率が1つに決まっているとすれば、無裁定以外の情報を自分で補っていることになります。
「複製戦略が一意に求まらない」と表現していた人がいました。間違いではありませんが、「一意に求まらない」というのは「複製戦略が複数ある」という意味で使うことが一般的なので、「存在しない」ことを表す表現としては適当とは思えません。

完備のときと同じ議論ができないことに気づいた後の議論の方向としては次のようなものが考えられます。
  • 別の制約条件(効用関数とか分散についての制約)やモデルで与えている株以外の危険資産の存在を仮定するなどして、複製戦略や唯一のリスク中立確率を決めにいこうというアイデア
  • リスク中立確率が存在することは言えるので、妥当なリスク中立確率の範囲(集合)を見つけて、妥当な価格の範囲を議論しようというアイデア
  • 売り手および買い手のどちらかに裁定機会が存在しないようにするための条件を議論して、妥当な価格の範囲を議論しようというアイデア
1つ目に関しては、明確に意識している人はあまり問題はないのですが、明確に意識しているようには思えないのに一意に価格が決まるような議論をしている人が少しいました。それは無裁定 or リスク中立という以上の条件を自分で付加していることに注意してください。

2つ目と3つ目の考え方は同値で、最終的に同じ fair price の範囲が与えられます。
今回の権利行使価格5のコール・オプションの妥当な価格の範囲は 0.6<V(0)<1.2 になります。
0.6 以下だと買い手有利、 1.2以上だと売り手有利になります。
きちんとこの範囲に言及している人も少しだけいました。厳密ではなくとも 0.6 や 1.2 という数字に気づいていた人もいました。

問4:(1)(2)(3)(5)は、正解している人が多かったです。リスク中立確率の計算で p と q の算出式を逆にしてしまった人がいましたが・・・
(4)は最小の場合はほとんど正解でしたが、最大の方は間違えてしまっている人が少しいました。
(4)についてはコンピュータで最適化を試みた人、オプション価格と原資産価格や上昇率などの理論的関係に注目して演繹的に解答した人、その両方を行っている人の3タイプに分かれていました。

計算機に頼った人で最適化を総当りでやらなかった場合には、アルゴリズムによっては初期値に依存してしまって最大ではなく極大に収束してしまう可能性もあります。
実際にいろんな誕生日のパターンで問題を解いて、MとDの2軸に対するオプション価格を3次元グラフに描いてくれた人がいました。描かせてみると分かるのですが、山が2つ現れるようなグラフになってしまいますので、局所最適のアルゴリズムだと最大がある方の山に行ってくれない可能性もあると思います。
きちんと理論的に上昇率とオプション価格の関係を捉えようとしていた人の中にも、最大値をとるのは単調増加しているところの最後の時点と決めつけてしまっている人が少しいました。単調減少している部分の出発点も最大値を取り得ます。

あと(3)は単に差を計算せよ、という以上に実は意味があります。コールとプットの価格は人によって違っていても、あることが共通な人は価格差は同じになります。そのことに気づいてコメントしてくれた方もいました。価格差が同じになる条件は何か、気づいていない人はもう少し考えてみてください。

2008年5月9日金曜日

5/8(木)「金融市場の計量分析」第5回

P. Schonbucher,
"Modelling Dynamic Portfolio Credit Risk",
Working paper
(2003)

の2節の Bayesian view での整理と、3節・4節の内容について。
記号に惑わされた。

「金融数理の基礎」第3回宿題の提出に関して

5月8日(木)提出期限の「金融数理の基礎」のレポートの提出が確認できているのは、以下の21名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F028, IM07F029, IM07F031, IM07F037,
IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F028, IM08F030, IM08F037,
IM08F038, IM08F039, IM08F040

以上の人の分については、一通り目を通しました。

宿題に関するコメントは土曜日あたりにアップしたいと思います。
レポート自体は12日(月)には返却できるようにしたいと思います。