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2008年12月26日金曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2008年春学期の総括

遅くなりましたが、学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の反省を述べ、部分的に来年度以降の授業でどのように改善していくかを考えたいと思います。

全体的には、好意的に評価していただきました。
(期末試験前に回答していると思うので、最終成績によって評価が180度変わった人もいるかもしれません・・・)

以下、いくつかの学生コメントおよびそれに対する回答です。
コメントは原文ではなく、適宜、要点が分かるように私がまとめています。

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「第11回~13回(信用リスクの数理モデルのところ)の内容をもっと詳しくやってもらいたかった」
「以前の『信用リスク』の授業をカバーするという意味では不足」
(回答)カリキュラム評価の方にも「市場リスクと信用リスクは、別々の授業でそれぞれ扱ってほしい」という趣旨のコメントがあり、それと関係するコメントですね。
昨年度までは「市場リスク」を長山先生、「信用リスク」を中村先生が別々に担当していて、「市場リスク」を履修していた人の中には、「信用リスク」にどっぷりつかりたいと思っていたのに・・・とがっかりした人もいるかと思います。
また、それとは別に1コマ分の授業に無理につめこんだために、それぞれのトピックが表面的にしか扱われなかったという不満をもった方もいるでしょう。

残念ながら来年度も「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」という一つの授業で「市場リスク」も「信用リスク」も扱うことになります。
ただし、内容については見直して、信用リスクの数理をもう少し詳しく扱えるようにしたいと思います。
具体的には「確率論・統計学の復習」「オペレーショナル・リスク」について、1回分の授業を使うことをやめようと思います。あと、中間試験も無しにしようと思います。それで3回分浮くので、それをもう少し有効に使いたいと思います。

あと個人的な意見ですが、純粋に「市場リスク」をネタにして1学期もたせようと思うと、リスクというより統計の応用のような側面が強くなってしまうと思いますし、細かい話が多くなってくると思います。
また、「信用リスク」だけで1学期分ひっぱるためには、数理的に面倒なところ(要するに情報の構造の取り扱い)に入っていくことになります。授業として、そこまでカバーすべきかという点には少しひっかかります。
また最近では、「統合リスク」「リスクの資本賦課」「ERM」のような話題も出てきていますし、金融リスクをまとめて俯瞰する姿勢も大事に思います。
(問題は、それをナビゲートする役割として私自身が未熟だということですが・・・)

「プレゼン資料は予めイントラにUPしてもらえると良かった。ブログを活用されていますが、会社からはブログを見ることはできないので、イントラを活用してもらえると助かる」
(回答)プレゼン資料を前もってUPできるように努めます。また、ブログではなくイントラの活用ということですが、これについては検討させてください。もちろん、イントラを活用すべきことについては積極的に使いますが、ブログのメリットもありますし。
ブログのコンテンツをイントラに回すことも可能ではありますが、ブログの記事は気軽に修正できるため、そのたびにイントラの方もというのは大変なので避けたいというのが本音です・・・

「中川先生に他の分野についても授業をしてほしい。例えば、初級レベルの数学(特に確率過程)を上級レベルにつなげるような内容の授業をしてほしい」
(回答)最大の賛辞と受け取ります。ありがとうございます。ただし、現実に授業コマを増やすことについては・・・ 私大の先生に比べると授業負担は非常に 軽いかもしれませんが、社会人大学院生を相手にすると1コマ分の授業に対する準備やフォローを含めて、それなりに大変です。
とはいえ、他の授業評価やカリキュラム評価でももう少し数学をきちんとやりたいというニーズはあるようなので、単位にはならないが、集中的に何かのトピックをレクチャーする機会は作れると思います。

2008年7月28日月曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験答案【返却】

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験の採点答案を返却します。
(採点した答案についてはコピーをとってあります)

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、8月8日(金)までに直接中川まで連絡をください。。

2008年7月25日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」レポート課題講評

提出いただいた2回分のレポートの採点を終えました。
(のべ4時間くらいかかりました)

試験や平常点も加味した最終成績については(多少見直しするとは思いますが)、レポート提出者は全員合格です。
(試験負担とのバランスで、レポートの方は若干甘いかな?という採点かもしれません)
課題1:33業種インデックス・ポートフォリオの95%VaR,95%ES の算出およびその考察など

さすが社会人大学院生というべきか、力作が多く、興味深く読ませていただきました。

論理性に関しては10点中7点を基準点にして、課題の要求に対して適切に答えられているかを確認しました。また、分散共分散法による VaR を俎上にのせて議論しているときに、リターンの正規性についての検定などの統計的議論やバックテストについての数理的な考察を行っていれば、加点しました。

構成力については10点中7点を基準点にして、図表の使い方が適当か、具体的に用いた計算方法などが過不足なく説明されているか、単純に読みやすい構成か、などを考慮して加点しました。

シャープ・レシオの「シャープ」を Sharp と書いている人がいましたが、Sharpe(ノーベル経済学賞受賞者ですね)が正しいです。特に減点していませんが。
あと、三浦先生の授業のせいか、Shapiro-Wilk 検定で日次リターンの正規性を検定していた人が目立ちました。
その一方で、ヒストリカル法の場合でも適用するための前提となっている、リターンの独立性についてはあまり言及されていませんでした。授業でもスルーしたところでしたが・・・その辺は目をつむっています。



そのほか、ポートフォリオ構築のアイデアなどが独創的と見なされた(なおかつ説得力を感じた)ものについては1点加点しました。仮想ポートフォリオのボーナスは、絶対リターンが全員マイナスだったので見送りました。

課題2:線形判別モデルの構築と検証用データの判別

こちらも力作が多かったのですが、課題1のレポート比べると、若干読みにくいものが多い印象でした。
あまり重要な情報とは思えない表が本文中にたくさん挿入されていたり、重要な主張が長い説明の後に述べられていたりしていて、そうした印象を強めたかもしれません。

ちなみに、検証用データのうち、もともとデフォルト分類のサンプルから取り出したのは、
Y1, Y3, Y7 の3つです。
検証用データの会社名はイントラネットにアップしておきます。

この3つだけをピタッと当てたレポートはありませんでしたが、この3つ+1つというかなり精度のよい判別をしたレポートが2編ありました。
「(デフォルト判別正答数)-(デフォルト判別誤答数)」が1以上の人には1点あげました。

論理性に関しては10点中7点を基準点にして、課題の要求に対して適切に答えられているか確認しました。また、選択した指標と推定された係数の符号関係についての考察、変数選択の方法の説明、(指標数が比較的多い場合には)多重共線性の確認、などをきちんとしているか、などを考慮して加点しました。

構成力については10点中7点を基準点にして、図表の使い方が適当か、単純に読みやすい構成か、などを考慮して加点しました。

また、指標を独自に提案したり、説明変数の選び方に独自性があり、そのファイナンス的あるいは会計的な意味づけがきちんとされていて有効であると判断した場合にはプラス・αとして加点しました。
(新しい指標についてネーミングに疑問をもったものがありましたが、不問にしています)

特に気になったこととして、
「有利子負債」などの金額そのもの(規模指標)を説明変数として採用しているレポートが多かったです。確かに、規模指標は信用力の尺度として優れているのですが、そのまま用いると係数の値が異常に小さく推定されてしまいます。P-値などで有意であることはわかるかもしれませんが、他の指標と値の水準を合わせる(本来であれば、平均を引いて標準偏差で割るなどの規準化するのが有効かも知れません)ようにするなど一工夫が必要だと思います。
レポートでも係数のところを「0.000000」 と表示しているものもあり、これでは読み手に不親切です。
また、有利子負債の場合は、いろんな業種が入っていると単純に有利子負債額の大小と信用力を結びつけるのはあまり有効でないという気もします(これは個人的な見解ですので、採点には影響させていません)。

また、「買入債務回転期間」については、単独で見た場合には、これが大きい値の方が「ツケで買い物できるくらい信用がある」ということを意味するため、Z スコア(大きいほど安全)への貢献という点からすると係数の符号は「正」であることが理屈の上では望ましいというのが私の考えなのですが、反対の解釈をしているレポートもありました。その意味で指標の符号が妥当かどうかをきちんと論じることは今回のレポートにおいて重要なことだと考えましす。


指標選択についても、いろいろなアイデアが提示されていました。
ただ、個人的に気になったのは、最初から定性的あるいは個人的判断で絞りすぎているものです。
もちろん、経験などを活かして絞り込むこと自体は悪くないのですが、今回の財務データでもこれまでの見方が通用すると言えるかどうかは平均値や中央値の比較などでもよいので、定量的に確認してほしいと思いました。
財務データだけを頼りに定量的に全て処理しようという立場も問題ですが、経験や俗説だけでトップダウンで判断しすぎるのも問題だと思います。

特に、これから修論を書こうとするときは、業務の経験とかがかえって邪魔をして、重要な論点を自明としてしまったり、また気にも留めなかったりして、見過ごしてしまう可能性がありますので注意してください。データを前にしたときには、自分の常識を一度疑って分析してみることも必要だと思います(これも受け売りですが)。

2008年7月23日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験コメント(速報2)

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」の期末試験は12名が受験しました。

全体の採点を一通り終えて、最初の方に採点した人と最後の方に採点した人との基準のゆらぎを補正しました。
(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。特に
記述部分はもう一度検討したいと思います)

平均点は
 計算問題が23.58点(/40点)、最高点は35点(1名)
 記述問題が50.33点(/60点)、最高点は60点(2名)
 全体では、73.92点(/100点)、最高点は93点(1名)
でした。

略解はイントラネットにアップしました。

全体講評は改めてしますが、目立った点だけメモします。

問1は、意表を突いた出題だったのか、きちんと全部できている人は一人だけでした。(i)はD/V_0なのですが、V_0/D と分子分母が反対のものが間違いとしては多かったです。
(ii) は負債のペイオフが min{V_T,D} = D - max{D-V_T,0} = D - (D - V_T)^+
となることに注目すれば、デフォルトなしの割引債をロングし、ヨーロピアン・プット・オプションをショートするポジションと見なせることから解答が得られます。
(i) は 2点×3, (ii) は 3点×2 です

問2は、比較的よくできていました。(iii)の近似の議論の説明不足or適切でない説明には多少減点しました。
(i) 4点、(ii) (iii) 各5点

問3は、(i) は比較的よくできていました。(ii) は変化球的な出題でしたが、きちんとできている人はいませんでした。部分点を適当に与えています。13回目の授業の課題との関係でいうと、0≦p_{AB}≦p(上のbar は省略)が言えることと、0 < p <0.01 という仮定から示すことができます。
(p > 0 については問題文で明示していませんでしたが、p = 0 とすると、Y^A,Y^B の分散が 0 になり、相関係数を定義できなくなるので、自明としました。ただ、p >0 とした方が混乱させずに済んだと思います。すみません)

あるいは、以下のような考え方もできます。

相関係数の意味から考えると、相関係数 1 のときは、Y^B = aY^A + b (a>0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p = p が成立しなければならず、そうなると p=0 でなければならず不適となります。

一方、相関係数 -1 のときは、Y^B = aY^A + b (a<0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = 1-Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p + p=1 が成立しなければならず、そうなると p=1/3でなければならず、p<0.01 の仮定から不適となります。

(i) (ii) 各7点

問4については、(A)5名 (B)3名 (C)5名 (D)10名 (E)2名 (F)1名 (G)10名
という分布でした。20点×3という採点で、基礎点としてそれぞれ10点を与えています。

(A) は等分散性の仮定については全員指摘していましたが、そこからどうして線形の判別式が出てくるかの明解な説明がされていない解答がありました。数式群のヒントをうまくつかってほしいところでした。

(B) 0で割るエラー値や小さい値で割る異常値が現れやすいこと、事業利益が赤字の場合、単純にインカバが大きいほど安全性が高いという単調性が満たされない、という2点を挙げてほしいと考えてました。この問題を選んだ人の得点は皆高いです。

(C) 数式群のヒントを使って、V_0とσ_V の2つを未知パラメータとして Black-Scholes 式などから求めるということに触れてほしいという意図です。

(D) 用語群のヒント「可予測な停止時刻、接近不可能な停止時刻、信用スプレッド(が残存期間が0に近づくと0に収束してします)」を3つうまく使っていれば、全体の説明に不備があっても高い点を与えています。ただ、後半の説明が不十分なものが目立ちました。

(E) (F) は解答する人が少なかったですが、数式群のヒントを適切に使えている人は1名だけでした。

(G) セルに分割してセルごとにリスクを計測する点を強調している人がいましたが、それ自体は LDA とは直接関係ありません。ポイントは、損失頻度と1件あたりの事故損失額をそれぞれ適当な分布でモデル化し、両者を組み合わせて(複合ポアソン分布に従う)ある期間内の累積損失額の 99.9%VaR をリスク量とする、という内容がほしいところです。上記のことに触れていれば、多少文章がおかしいところには目をつむって満点をあげています。

ファイナンシャル・リスク・マネージメントの課題レポート

ファイナンシャル・リスク・マネージメントの課題レポート2つの提出を確認できているのは以下の12名です。

IM07F023, IM07F029, IM07F031, IM07F044, IM08F017, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F037, IM08F039, IK08F001

期末試験の受験者と一致しましたので、特に連絡がなければこの12名を成績評価対象者とします。

レポートの採点は週末にかけて行います。

試験結果(60点分)とレポート(40点分)に平常点(宿題の提出状況)を+αで加味して
最終的な成績を、28日(月)には確定させようと思います。

2008年7月16日水曜日

7/23(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」期末試験

期末試験のアナウンスです。

試験前に、授業評価のアンケートを実施するそうです。

日時と場所:7月23日(水) 18:40~19:40(正味60分) 第3講義室


※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり19:10まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式
  • 第9回の授業から第14回の授業で扱った内容(プレゼン資料・配布資料)。プレゼン資料の内容や数式を細かく記憶してくる必要はないが、資料の中で強調されたり繰り返し使われている用語の意味を確認したり、授業でどういう話題を扱ったかを自分なりに整理したりしておくこと
  • 計算問題を40点分、記述問題を60点分出題する
  • 計算問題は、配布資料の演習問題の類題を出題する。特に Merton モデル、定数強度モデルによるクレジット・デリバティブの評価に関する問題、デフォルト相関について確認すること
  • 記述問題は、授業で触れた内容に関連したテーマの知識を問う問題とする。以下の点について、見直しておいてください。
    (線形判別分析の前提、KMVモデルのDD算出のアイデア、構造型(+完全情報)モデルの弱点、ハザードレート過程とマルチンゲール強度過程の相違点、条件付き独立モデルとデフォルト伝播モデルの相違点、損失分布手法によるオペリスク計測)
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

2008年7月10日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年7月9日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分課題コメント

第13回分の演習課題についての略解とコメントです。

(i) 手つかずの人もいました。また、議論が不十分だったり、いちおうできているけれど説明が冗長な人が目立ちました。場合分けを丁寧にしている人がいましたが、場合分けの議論は不要です。

まず、 E[Y^iY^j] = P(Y^i =1, Y^j =1) に注意です。つまり、E[Y^iY^j] は i と j の同時デフォルト確率を表していることに注意。

(A) min{p_i, p_j} ≧ E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) を示すには・・・

{Y^i =1, Y^j =1} = {Y^i =1} ∩ {Y^j =1} ⊆ {Y^i =1} であることから、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^i =1) が分かります。
同様にして、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^j=1)も分かります。

(B) E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ -min{0, 1 - p_i - p_j} を示すには・・・

P(Y^i =1, Y^j =1) ≧0 は明らか。
また、P(Y^i = 1) + P(Y^j = 1) - P(Y^i =1, Y^j =1) = P(Y^i =1 or Y^j = 1)
が成り立つことに注意して、 P(Y^i =1 or Y^j = 1) ≦ 1 であることから、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ p_i + p_j - 1
が成り立つことがわかります。
よって、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ max{p_i + p_j - 1, 0}
が成り立ちますが、max(a,b) = -min(-a, -b) という関係が一般に成り立つので、
max{p_i + p_j - 1, 0} = -min{1 - p_i - p_j, 0}
として、(B)が成り立つことがわかります。

(ii) 少し計算ミス・マイナス符号のつけ忘れもありましたが、だいたい良くできていました。
-0.01436≦ ρ≦0.70353
となります。

(iii) 分散の計算が不正確な人がいました。あと期待値も勘違いをしている人がいました。
(Σ記号を使わずに書きます)

E[L]=E[Y^1 + ・・・+Y^m] = E[Y^1] + ・・・+ E[Y^m]
                  = P(Y^1 = 1) +・・・+P(Y^m = 1)
= π + ・・・ + π = mπ
また、
V(L) = V(Y^1 + ・・・+Y^m)
= V(Y^1) + ・・・ + V(Y^m) + 2{Cov(Y^1,Y^2) + ・・・Cov(Y^{m-1},Y^m)
とできることに注意して、
  V(Y^i) = E[(Y^i)^2] - E[Y^i]^2 = π - π^2
i ≠ j のとき、Cov(Y^i, Y^j) = E[Y^i Y^j] - E[Y^i]E[Y^j] = π_2 - π^2
であることから、

 V(L) = m(π - π^2) + 2 × m(m-1)/2 (π_2 - π^2)
=m(π - π^2) + m(m-1) (π_2 - π^2)

となります。(m(m-1)/2 は m 以下の数の中から、異なる2つの数を取り出す組合せの数です)

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第14回フォロー

プレゼン資料とポートフォリオ・ラリーのデータをイントラネットにアップしておきました。

第13回の課題を提出したことが確認できているのは以下の9名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F044, IM08F017, IM08F023, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F037, IM08F039, IK08F001

2008年7月7日月曜日

7/9(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第14回:オペリスク

第14回はオペレーショナル・リスクの評価について概説する予定です。

予定では、
  • オペリスクについての概説
  • 損失分布手法
  • 複合Poisson 分布モデル
  • シナリオの活用
などを予定しています。
準テキストではいちおう10章に相当します。

また、前回尻切れになってしまった Giesecke-Goldberg の研究紹介についても少し補足します。

そして、約2ヶ月におよぶポートフォリオ・ラリーの最終結果と表彰?も行う予定です。

2008年7月4日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2008年7月2日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回分課題コメント

第12回分の演習課題についての略解とコメントです。

問1(iii) で c(0,1) が「 qδ で近似できる」とすべきところを 「 q(1-δ) で近似できる」としてしまいました。 私の出題ミスです。申し訳ありませんでした。

問1 (i) 1/(1+0.05) ≒ 0.952
(ii) 1/1.05 *[(1 - q)・1 + q * 0.6] = 0.941 という方程式を立てて、q = 0.0299 となり、約3% と分かる。
また、q > p という理由としては、債券に投資する場合はデフォルト・リスクを引き受ける見返りとして、リスク・プレミアムを要求することが反映されているというのが自然な説明でしょう。
もちろん、リスク・プレミアムが意味するところをきちんと議論する必要が本当はありますが。

(iii) 数字を入れると c(0,1) ≒ 0.012 となりますが、
数式のままで考えると、c(0,1) = -log ( 1 - qδ) となりますが、
一般に x が十分小さいとき、log(1-x)≒-x が成り立つので
c(0,1) ≒ qδ と近似できることが分かります(実際、qδ ≒ 0.012 となることからも重ねて確認できます)。

私の出題ミスを悟って、正しい近似の議論をしてくださった方も多かったです。

※金利を年複利で与えておいて、スプレッドを連続複利で計算せよというところに違和感を覚えた人もういるかもしれませんが、
  1/(1+r+c) = 1/(1+r)*[(1 - q)・1 + q * (1-δ)] という形で、スプレッド c を定義しても、c ≒ qδ を結論づけることはできます。

問2

与えられた等式の c^* のところに 0.02 を代入して、h^Q の非線形方程式を作り、例えばExcel のゴールシークやソルバーで解くと、およそ h^Q = 0.0323 程度になります。

一方、(r+h^Q)Δ が十分小さいとすると、
exp(-(r+h^Q)Δ) ≒ 1 - (r+h^Q)Δ
となることから、

c ≒ {Lh^Q(r+h^Q)Δ}/{(r+h^Q)Δ [1 - (r+h^Q)Δ]}
≒ {Lh^Q(r+h^Q)Δ}/{(r+h^Q)Δ}  ({(r+h^Q)Δ}^2 ≒ 0 と見なす)
≒ Lh^Q

と整理してみることができる。よって、 h^Q ≒ c / L と近似できることが分かります(実際、c/L ≒ 0.033 となることからも重ねて確認できます)。

問2 の方は、数式レベルで近似関係の成立を議論している人はあまり多くありませんでした。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回フォロー

プレゼン資料と課題のファイルをイントラネットにアップしておきました。

第12回の課題を提出したことが確認できているのは以下の11名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F016, IM07F044, IM08F017, IM08F023, IM08F024, IM08F026,
IM08F027, IM08F037, IM08F039, IK08F001, IM05F023

授業の話題に、日経平均が43年ぶりに10日連続下落という話題に触れましたが、
それに関して次の問題の答えは分かるでしょうか?
「1営業日ごとに日経平均が上がるか下がるか半々の確率であり、日々の上がり下がりは独立であるとしたとき、計測してから初めて10日連続下落するまでの日数の期待値はどれくらいか?」
けっこうな難問だと思いますが・・・

2008年6月29日日曜日

7/2(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回:信用リスク(5)

第13回はデフォルトの依存関係モデル、および信用ポートフォリオのリスク評価について概説する予定です。

予定では、

  • 条件付き独立モデル
  • Copula モデル
  • デフォルト伝播モデル
  • Giesecke-Goldberg による top-down アプローチ・モデル
  • 複合Poisson 分布モデル→第14回に回します。
などを予定しています。
準テキストでは9.6~9.8節の部分に相当します。8.4~8.5 節の内容にも少し触れます。

2008年6月26日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回分課題コメント

第11回分の演習課題についてのコメントです。

取り組んだ人は少なかったですが、取り組んだ方はだいぶ善戦していたと思います。

問題1は、それぞれのパラメータで偏微分してもらえれば明快だと思いましたが、偏微分しなくても議論はできます。
ただし、ボラティリティσに関するところで、V_0 > D という条件を私が明示していなかったので、場合分けなどをして検討してくれていた人がいました。こちらで想定していなかったことにまで時間を費やさせてしまってすみません。しかし、一方で条件にきちんと留意した議論をしてくれることは頼もしく思えました。

あと、若干σで偏微分した後の整理した式が不正確な人がいました。結論には影響を与えていませんが。

問題2は、思った以上に大変な計算だと感じた人がいるかもしれません。
大まかな証明(計算)の流れとしては、
  • ロピタルの定理が使える形であることを確認し、それを利用して時間についての偏微分を行う
  • d_{1,t}, d_{2,t} → ∞ となることを示し、Φ(-d_{1,t})→0, Φ(d_{2,t})→1,Φ’(-d_{1,t})→0, Φ’(d_{2,t})→0 などを示す
  • ロピタルの定理を適用する
というものだと思います。説明不足あるいは計算の整理がされていない解答もありましたが、がんばって取り組んだ跡が見受けられました。

ロピタルの定理については、いろいろなヴァージョンがあると思いますが、
私の手元になるテキストによると以下のようになります。

(ド・ロピタルの定理)
a のある右近傍で微分可能な関数 f(x), g(x)(≠0) が x→a+0 のとき無限小であって、
lim_{x→a+0} f'(x)/g'(x) = A となるならば、 lim_{x→a+0} f(x)/g(x) = A
が成り立つ

2008年6月25日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回フォロー

プレゼン資料と課題のファイルをイントラネットにアップしておきました。

第11回の課題を提出したことが確認できているのは以下の8名です。
(共同研究室に提出された人がいたとすると、そちらは確認していません)
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM07F016, IM08F017, IM07F029, IM08F024, IM08F026, IM08F027,
IM08F037, IK08F001

提出されなかった人は問2の計算をギブアップしたか、そもそも複雑な計算なだけに
スルーしたということでしょうか?

授業の最初に触れた、BFS2008のページはこちら
BFSのWorld congress は第1回がパリ(2000)、第2回クレタ島(2002)、第3回シカゴ(2004)、第4回東京(2006)です。
2010年は果たしてどこに?それはロンドンの最終日あたりにアナウンスされると思います。

2008年6月23日月曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回課題に関する質疑

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第2回課題の財務指標作成について、受講生の方に重要な質問をいただきました。私の回答と交えて、紹介しますので参考にしてください。


Q1:「経営資本営業利益率」の計算式で、分母は今期の「経営資本」のみのようですが、前期との平均ではなくてよいのでしょうか?

A:本当は平均を使う方がよいと思うのですが、1期分の経営資本を作るのも面倒ですので、Excelの例では省きました。

Q2:「インタレスト・カバレッジ・レシオ=EBITDA÷支払利息・割引料」と定義が書かれていますが、「事業利益(EBIT)÷支払利息・割引料」という定義が一般的と思われます。償却前で見る方が良いのでしょうか?

A:「事業利益(EBIT)÷支払利息・割引料」が会計的な整合性を考えると、一般的だと思います(注:プレゼン資料ではこの定義を紹介していて、Excelでは EBITDAを分子に用いたもので計算しています)が、EBITの代わりに、CFの近似概念としてのEBITDA などを使ってみて、それで仮に説明がつくのであれば、それを使うことも良しとする立場です。

Q3:「有利子負債」の定義に、「受取手形裏書譲渡高」が含まれていますが、割引手形は利払いを伴いますが、裏書譲渡は利払いを伴いませんので外した方がよいのでしょうか?
(「借入金依存度」についても同様です。)

これは、私の会計知識不足からきているところです。
裏書譲渡分を入れない方がよいと思われれば、外してけっこうです
会計学者である白田佳子さんの「倒産予知の実務」を確認しましたが、
受取手形割引高だけを加算したものを定義にしています。


Q4:「売上債権回転期間」「買入債務回転期間」及び「棚卸資産回転期間」 についてですが、これらは効率性分析の1指標であるとともに、「売上債権」等が存在する平均的な期間を示したもので、直近の売上と比較する方が、指標の目的にあう印象があります。(中略)そういった観点から考えると、「回転期間」関連の指標はそれぞれ直近数ヶ月の影響しか受けませんので、前期末との平均を分子にするよりも対象決算期末の数字のみを使う方が良いように思われますが、いかがでしょうか?

A4:そちらの方が適切かもしれませんね

全体についての回答:基本的に、デフォルト判別に効果があれば指標の作り方に決まりがなくてもよい(もちろん、ある程度その意味するところを説明できないといけませんが)というのが私の立場です。
ただ、指標作りのヒントとして既存の指標はいろいろと参考になると思い、自分の経験も含めて紹介しました。

6/25(水)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回:信用リスク(4)

第12回は誘導型アプローチおよびクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

  • デフォルト・リスクのある金融商品の評価法
  • 誘導型モデルの概要
  • 強度モデルの数理
  • Duffie-Singleton モデル
  • Credit Default Swap(CDS), First-to-Default Swap の評価例
などを予定しています。
準テキストでは9.1~9.4節の部分に相当します。

2008年6月18日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回フォロー

プレゼン資料はイントラネットにアップしておきました。
KMV モデルを簡単に実装したExcelファイルもいずれアップします。
配付資料のアップは見送ります。

今回の演習問題をレポート提出する人は、次回の授業のときに提出してください。