「フィナンシャル・リスク・マネジメント」の期末試験は12名が受験しました。
全体の採点を一通り終えて、最初の方に採点した人と最後の方に採点した人との基準のゆらぎを補正しました。
(見直しは後でするので、最終結果は異なるかもしれません。特に
記述部分はもう一度検討したいと思います)
平均点は
計算問題が23.58点(/40点)、最高点は35点(1名)
記述問題が50.33点(/60点)、最高点は60点(2名)
全体では、73.92点(/100点)、最高点は93点(1名)
でした。
略解はイントラネットにアップしました。
全体講評は改めてしますが、目立った点だけメモします。
問1は、意表を突いた出題だったのか、きちんと全部できている人は一人だけでした。(i)はD/V_0なのですが、V_0/D と分子分母が反対のものが間違いとしては多かったです。
(ii) は負債のペイオフが min{V_T,D} = D - max{D-V_T,0} = D - (D - V_T)^+
となることに注目すれば、デフォルトなしの割引債をロングし、ヨーロピアン・プット・オプションをショートするポジションと見なせることから解答が得られます。
(i) は 2点×3, (ii) は 3点×2 です
問2は、比較的よくできていました。(iii)の近似の議論の説明不足or適切でない説明には多少減点しました。
(i) 4点、(ii) (iii) 各5点
問3は、(i) は比較的よくできていました。(ii) は変化球的な出題でしたが、きちんとできている人はいませんでした。部分点を適当に与えています。13回目の授業の課題との関係でいうと、0≦p_{AB}≦p(上のbar は省略)が言えることと、0 < p <0.01 という仮定から示すことができます。
(p > 0 については問題文で明示していませんでしたが、p = 0 とすると、Y^A,Y^B の分散が 0 になり、相関係数を定義できなくなるので、自明としました。ただ、p >0 とした方が混乱させずに済んだと思います。すみません)
あるいは、以下のような考え方もできます。
相関係数の意味から考えると、相関係数 1 のときは、Y^B = aY^A + b (a>0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p = p が成立しなければならず、そうなると p=0 でなければならず不適となります。
一方、相関係数 -1 のときは、Y^B = aY^A + b (a<0) という関係が成立するのですが、取り得る値を考えると、Y^B = 1-Y^A となる場合しか考えられず、そうなるとデフォルト確率について 2p + p=1 が成立しなければならず、そうなると p=1/3でなければならず、p<0.01 の仮定から不適となります。
(i) (ii) 各7点
問4については、(A)5名 (B)3名 (C)5名 (D)10名 (E)2名 (F)1名 (G)10名
という分布でした。20点×3という採点で、基礎点としてそれぞれ10点を与えています。
(A) は等分散性の仮定については全員指摘していましたが、そこからどうして線形の判別式が出てくるかの明解な説明がされていない解答がありました。数式群のヒントをうまくつかってほしいところでした。
(B) 0で割るエラー値や小さい値で割る異常値が現れやすいこと、事業利益が赤字の場合、単純にインカバが大きいほど安全性が高いという単調性が満たされない、という2点を挙げてほしいと考えてました。この問題を選んだ人の得点は皆高いです。
(C) 数式群のヒントを使って、V_0とσ_V の2つを未知パラメータとして Black-Scholes 式などから求めるということに触れてほしいという意図です。
(D) 用語群のヒント「可予測な停止時刻、接近不可能な停止時刻、信用スプレッド(が残存期間が0に近づくと0に収束してします)」を3つうまく使っていれば、全体の説明に不備があっても高い点を与えています。ただ、後半の説明が不十分なものが目立ちました。
(E) (F) は解答する人が少なかったですが、数式群のヒントを適切に使えている人は1名だけでした。
(G) セルに分割してセルごとにリスクを計測する点を強調している人がいましたが、それ自体は LDA とは直接関係ありません。ポイントは、損失頻度と1件あたりの事故損失額をそれぞれ適当な分布でモデル化し、両者を組み合わせて(複合ポアソン分布に従う)ある期間内の累積損失額の 99.9%VaR をリスク量とする、という内容がほしいところです。上記のことに触れていれば、多少文章がおかしいところには目をつむって満点をあげています。
0 件のコメント:
コメントを投稿