2008年7月9日水曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第13回分課題コメント

第13回分の演習課題についての略解とコメントです。

(i) 手つかずの人もいました。また、議論が不十分だったり、いちおうできているけれど説明が冗長な人が目立ちました。場合分けを丁寧にしている人がいましたが、場合分けの議論は不要です。

まず、 E[Y^iY^j] = P(Y^i =1, Y^j =1) に注意です。つまり、E[Y^iY^j] は i と j の同時デフォルト確率を表していることに注意。

(A) min{p_i, p_j} ≧ E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) を示すには・・・

{Y^i =1, Y^j =1} = {Y^i =1} ∩ {Y^j =1} ⊆ {Y^i =1} であることから、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^i =1) が分かります。
同様にして、P(Y^i =1, Y^j =1)≦P(Y^j=1)も分かります。

(B) E[Y^iY^j]=P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ -min{0, 1 - p_i - p_j} を示すには・・・

P(Y^i =1, Y^j =1) ≧0 は明らか。
また、P(Y^i = 1) + P(Y^j = 1) - P(Y^i =1, Y^j =1) = P(Y^i =1 or Y^j = 1)
が成り立つことに注意して、 P(Y^i =1 or Y^j = 1) ≦ 1 であることから、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ p_i + p_j - 1
が成り立つことがわかります。
よって、
P(Y^i =1, Y^j =1) ≧ max{p_i + p_j - 1, 0}
が成り立ちますが、max(a,b) = -min(-a, -b) という関係が一般に成り立つので、
max{p_i + p_j - 1, 0} = -min{1 - p_i - p_j, 0}
として、(B)が成り立つことがわかります。

(ii) 少し計算ミス・マイナス符号のつけ忘れもありましたが、だいたい良くできていました。
-0.01436≦ ρ≦0.70353
となります。

(iii) 分散の計算が不正確な人がいました。あと期待値も勘違いをしている人がいました。
(Σ記号を使わずに書きます)

E[L]=E[Y^1 + ・・・+Y^m] = E[Y^1] + ・・・+ E[Y^m]
                  = P(Y^1 = 1) +・・・+P(Y^m = 1)
= π + ・・・ + π = mπ
また、
V(L) = V(Y^1 + ・・・+Y^m)
= V(Y^1) + ・・・ + V(Y^m) + 2{Cov(Y^1,Y^2) + ・・・Cov(Y^{m-1},Y^m)
とできることに注意して、
  V(Y^i) = E[(Y^i)^2] - E[Y^i]^2 = π - π^2
i ≠ j のとき、Cov(Y^i, Y^j) = E[Y^i Y^j] - E[Y^i]E[Y^j] = π_2 - π^2
であることから、

 V(L) = m(π - π^2) + 2 × m(m-1)/2 (π_2 - π^2)
=m(π - π^2) + m(m-1) (π_2 - π^2)

となります。(m(m-1)/2 は m 以下の数の中から、異なる2つの数を取り出す組合せの数です)

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