2009年9月25日金曜日

現状の覚え書き

いろいろとあったせいか分かりませんが、何だか疲れてます・・・
新学期のスタートも近いので、自分の置かれている現状を整理する意味で、自分の研究面での tasks をメモしておきます。
  • Project-GP:12月までに一区切りつけ、3月までに完了しないといけないが、きちんとしたKick-offミーティングもしてない。まだ何も手付かず。
  • Project-JH:共同研究者のデータ整備作業待ちというフェーズで、完全放置状態。
  • Project-JJ:放置状態・・・というか、これが何のプロジェクトを指しているのか自分でも思い出せないでいる・・・と書いていたが思い出した。Project-Nの日本語版とつながる話だ。
  • Project-K:いろいろと修正方向の案は出しておいた。共同研究者任せ。
  • Project-N:放置状態だが、10月末に話す。日本語版の方は中途半端だがいずれ形にする。
  • Project-O:10月に発表予定。自分でもシミュレーションをしてみようと思う。全体的にはとりあえず結果待ち。
  • project-SG:素朴にデータ分析作業中。10月初に報告。
  • Project-Ya:形になりつつあるが、共同研究者任せ。
  • Project-Yo:論文の修正対応中。共同研究者の分析作業待ち。仕上げは自分が担当する予定。
  • Project-Yu(?):始めるかどうか思案中。

2009年9月3日木曜日

「金融数理の基礎」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「金融数理の基礎」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

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「講義でもいいので、TeXで作った授業ノートもアップしてもらえるとうれしい」
「板書だけだと、書くことだけで時間がつぶれてしまうところがある」
「板書が多い。レジュメで対応することはできないか?」
「板書をやめて、資料を配ってほしい。講義中の板書以外のコメント等まで理解して、書くことが困難となるため」

(回答)板書だけで押し通す授業は私の「金融数理の基礎」だけだと思うので、当然の意見という気がします。レジュメがあった方が楽でしょう。作る方としても教える内容を変えない限り、1回作れば毎年使い回せますし。

ただ板書をしているのは、数学的知識の伝達は黒板(ホワイトボードでもよいですが)を使うのが効率的であるという私自身の経験・思想が根底にあります。
私の出身の東大の数理科学研究科の各教室はだいたい上下スライド式の黒板が2つ装備されています(つまり最大で黒板を4面同時に使うことができるということです)。設計段階で数学者の意見が強く反映されたためです。
数学の伝承とはそういうものだという暗黙の了解がまだ残っているのでしょう。

正面に小さなホワイトボードしかない第3講義室は、その意味で数学の授業をするのに向いていないのですが、それでも板書をすることの効用の方を信じたいと考えています。

それに板書を全部書き写すことを私は要求しているわけではありません。
教科書を指定しているわけですから、うまく活用してほしいと思います。
また、授業中に完成版ノートを作ろうというのも無理だと思います。
私は大学時代、試験前には授業ノートをベースにもういちど清書用のノートを作っていました。
勉強法を押しつけるつもりはありませんが、ノートの取り方については皆さんの方にも工夫の余地はあると思います。

とはいえ、私の授業技術・板書技術によって緩和できるところもたくさんあると思いますので、そこは大いに反省したいと思います。

「板書が速すぎて、授業中には理解が追いつけない」
「板書の日本語比率を多くしてほしかった」
「後半の授業ペースが速くなり、ついていくのに苦労した」

(回答)これらは、私の授業技術・板書技術でだいぶ改善できるはずですので、工夫をしたいと思います。


「宿題の解答を充実させてほしい」
「毎回の宿題の解答がほしかった」

(回答)宿題の解答については特に対応しようという考えはありません。私が横着したいからというより、解答を与えるとそれを覚えるだけになってしまうので、教育的見地から答えとヒントくらいにとどめています。
(それに宿題をしようとしない人に解答を与えるということはあまりしたくないです)


「金利の期間構造もあつかってほしかった」
「ShreveのテキストIの4章までしか進めないのは残念」
「夏季休暇中に連続時間版の有志ゼミなどを開催していただけるとうれしい」

(回答)スピードアップをして、授業で扱う量を多くしてほしいと望む人も少なくないと思いますが、基礎科目としての位置づけなので、入学してすぐに受けるということや、授業の目的を勘案すると内容量としては適正と考えています。
もちろん、もっと勉強したいという意欲のある方に答えていく義務があると思います。
これはFSコース全体のカリキュラム編成で考えていくべきかもしれません。

「離散モデルに特化していたが、もう少し脱線してもよかったと思う」
「想定の範囲内だったので教科書からもう少し離れてもよかったのでは?」

(回答)教科書を超えたこともけっこう話したつもりでいましたが、こういう意見もありますので今後工夫したいと思います。ただ、いろんな人が受講していることをふまえると「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気持ちもあります。

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

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「Powerpoint資料(中川注:私の資料はBeamer TeX というもので作成しています)を事前に頂けると効率的に学習できたと思う。口頭での説明を、ノートする際に資料があればよかった」
「資料(プレゼン)は事前にイントラに up または配付してほしい。プレゼン資料に書き込みたい」
「配付資料とプレゼン資料を両方プリントアウトして配付していただけると、メモがとれるので助かる」

(回答)昨年度も同様の要望があり努力すると回答していながら実現できませんでした。昨年度と内容編成を変えたことの影響がけっこう大きく、資料の作成に手間取りました。
また、リスク管理に関する話はどんどんアップデートされていくので、新しい内容を盛り込みたいと欲張ってしまうことも原因です。来年こそは・・・努力したいと思います。


「市場リスクの方が内容が若干浅かったのが残念」

(回答)具体的にどのような点が浅かったのかが分かりませんが、市場リスクはその性質上、統計的技術や時系列解析の話題に帰着してしまうことが多く、必要以上に踏み込むことを(統計の専門家ではない)私がためらったというのも事実です。
また、他にポートフォリオのリスク計測の話題やデリバティブのヘッジ理論の話題を念頭においたコメントかもしれませんが、前者は他の授業で十分に説明されているはずですし、後者の説明には数学的に高度な内容を理解しておく必要になるので避けました。


「信用リスクの数学をもう少し詳しく説明してほしかった」
「信用リスクモデルについて実際に手を動かしてモデルを使うというような作業がなく、消化不良を起こした気持ちが残った」
「信用リスクの数理面をもっと詳しく講義してほしい」
「信用リスクに関わる研究の流れ・テーマについて幅広く取り上げてもらったことは良かった反面、広く浅くとなった感は否めない」
「当初の想定より難易度が高く、特に後半部分は難易度が高いのに説明のスピードが速く理解に苦しんだ」
「信用リスクについては予想より難易度が高く、理解が追いついていない部分が多い」
「後半、信用リスクの誘導型モデルに対する理解が不十分と感じる」

(回答)信用リスク部分の教え方についての意見はいずれもその通りだと思いますが、広範な全てのニーズを満たすのは難しいというのも正直なところです。信用リスクは、ベースとなる理論はありますが、このモデルやこのアプローチだけを知っていれば十分というものではありませんし、授業だけで全容を理解してもらおうということは諦観しています。
そのかわりにいろいろな考え方を紹介することで、興味を持ったモデルやアイデアについては各自で深めていってほしいという希望もあります。
まあ、受講者の数学的準備の状況や関心ある部分が近ければ、それ相応の対応もできると思いますが、実質数名しか受講できない授業にしてしまうことにも抵抗があります。


「市場リスクと信用リスクの講義内容のレベルが非常に大きく感じられた」(市場リスクの方が少し易しかったという意味だと解しました)
「前半のリスク管理の話は抜きで、信用リスク(市場性)だけを集中的に扱った方が理解が深まったと思う」
「教科書は、やや難解であり、実際は購入の必要を感じられなかった。市場リスクと信用リスクが別になっても、他のテキストを指定した方がいいのでは?」
「カバーする範囲が広いため、市場リスクと信用リスクを分けたカリキュラムを望む」

(回答)「市場リスク」と「信用リスク」のバランスについての言及、あるいは「市場リスク」と「信用リスク」を別の授業でという要望は昨年度もありました。これはFSコース全体のカリキュラム編成に絡んできますので、他の先生方と相談したいと思います。
個人的には「市場リスク」のうち VaRについては統計の授業で触れてもらえれば十分という気がします。
また、「市場リスク」「信用リスク」という区別よりも「リスクを数値化するということ」自体を考えるということも
重要という風潮があるので、それは「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」のようなコンセプトの授業でないと消化しきれないという思いもあります。

「これとは別に測度論や確率論の授業があってもいいのでは?」

(回答)これもカリキュラム編成に絡む問題です。
ただし実現したとしても、かなりの数学的準備ができている学生に限定しないと、1.5時間×14回程度の授業で完結するのは難しいと思います。
冬学期に数回の非正規のレクチャーとして可能かどうかを少し考えたいと思います。