2009年9月3日木曜日

「金融数理の基礎」2009年春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「金融数理の基礎」の授業について私なりの反省をし、今後の授業内容を組み立てを考えたいと思います。

今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、いくつかの学生コメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままとは限らず、要点が分かるように私が適宜まとめています。

-----------------------------------------------------------------------------
「講義でもいいので、TeXで作った授業ノートもアップしてもらえるとうれしい」
「板書だけだと、書くことだけで時間がつぶれてしまうところがある」
「板書が多い。レジュメで対応することはできないか?」
「板書をやめて、資料を配ってほしい。講義中の板書以外のコメント等まで理解して、書くことが困難となるため」

(回答)板書だけで押し通す授業は私の「金融数理の基礎」だけだと思うので、当然の意見という気がします。レジュメがあった方が楽でしょう。作る方としても教える内容を変えない限り、1回作れば毎年使い回せますし。

ただ板書をしているのは、数学的知識の伝達は黒板(ホワイトボードでもよいですが)を使うのが効率的であるという私自身の経験・思想が根底にあります。
私の出身の東大の数理科学研究科の各教室はだいたい上下スライド式の黒板が2つ装備されています(つまり最大で黒板を4面同時に使うことができるということです)。設計段階で数学者の意見が強く反映されたためです。
数学の伝承とはそういうものだという暗黙の了解がまだ残っているのでしょう。

正面に小さなホワイトボードしかない第3講義室は、その意味で数学の授業をするのに向いていないのですが、それでも板書をすることの効用の方を信じたいと考えています。

それに板書を全部書き写すことを私は要求しているわけではありません。
教科書を指定しているわけですから、うまく活用してほしいと思います。
また、授業中に完成版ノートを作ろうというのも無理だと思います。
私は大学時代、試験前には授業ノートをベースにもういちど清書用のノートを作っていました。
勉強法を押しつけるつもりはありませんが、ノートの取り方については皆さんの方にも工夫の余地はあると思います。

とはいえ、私の授業技術・板書技術によって緩和できるところもたくさんあると思いますので、そこは大いに反省したいと思います。

「板書が速すぎて、授業中には理解が追いつけない」
「板書の日本語比率を多くしてほしかった」
「後半の授業ペースが速くなり、ついていくのに苦労した」

(回答)これらは、私の授業技術・板書技術でだいぶ改善できるはずですので、工夫をしたいと思います。


「宿題の解答を充実させてほしい」
「毎回の宿題の解答がほしかった」

(回答)宿題の解答については特に対応しようという考えはありません。私が横着したいからというより、解答を与えるとそれを覚えるだけになってしまうので、教育的見地から答えとヒントくらいにとどめています。
(それに宿題をしようとしない人に解答を与えるということはあまりしたくないです)


「金利の期間構造もあつかってほしかった」
「ShreveのテキストIの4章までしか進めないのは残念」
「夏季休暇中に連続時間版の有志ゼミなどを開催していただけるとうれしい」

(回答)スピードアップをして、授業で扱う量を多くしてほしいと望む人も少なくないと思いますが、基礎科目としての位置づけなので、入学してすぐに受けるということや、授業の目的を勘案すると内容量としては適正と考えています。
もちろん、もっと勉強したいという意欲のある方に答えていく義務があると思います。
これはFSコース全体のカリキュラム編成で考えていくべきかもしれません。

「離散モデルに特化していたが、もう少し脱線してもよかったと思う」
「想定の範囲内だったので教科書からもう少し離れてもよかったのでは?」

(回答)教科書を超えたこともけっこう話したつもりでいましたが、こういう意見もありますので今後工夫したいと思います。ただ、いろんな人が受講していることをふまえると「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気持ちもあります。

0 件のコメント: