2008年3月23日日曜日

シラバス:金融市場の計量分析

金融市場の計量分析(2008年度春学期、木曜18:20~19:50)のシラバスです。

前半(第2回~第7回)を中川が担当。後半(第8回~第15回)を中村信弘先生が担当する予定。

【授業概要】
 まず、前半では、マリアヴァン解析とそのファイナンスへの応用を中心に講義する。 続いて、後半では、ファイナンスで現れる確率制御問題を解く代表的方法論を幾つかの事例を通じて解説する。

【学生の指定】
 博士課程の学生

【授業の目的・到達目標と方法】
 博士課程向けに開講された本講義は、金融市場の高度な計量分析を行うための方法論の習得を目的とする。履修者は、Reading listに挙げた代表的文献を事前に読んでおくことが求められる(その口頭発表も含む)。資格試験に備えるため、随時、ファイナンスの基本事項について口頭試問を行う。

【授業の内容・計画】

第1回:Guidance & Introduction:講義内容についての説明とオリエンテーション
第2回~第4回: マリアヴァン解析(Malliavin Calculus)のファイナンスへの応用(Greeks 、オプション価格計算)
第5回~第7回: 漸近展開法(Asymptotic Expansion Approach)のファイナンスへの応用

第8~9回 確率制御とそのファイナンスへの応用:HJB equation, Martingale method
第10回 Partial hedging strategy;down-side risk最小化
第11回 Incomplete market model; 確率ドリフト、確率ボラティリティ、ジャンプ拡散過程
第12回 Partial information model
第13~14回 Backward SDEとそのFinanceへの応用
第15回 Stochastic-differential utilityとrobust control

【テキスト・参考文献】
  
 ・ Kohatsu-Higa, A., Montero, M., “Malliavin Calculus in Finance”, Handbook of Computational and Numerical Methods in Finance.Birkhauser, 2004, 111-174
 ・ 国友直人・高橋明彦, 「数理ファイナンスの基礎:マリアバン解析と漸近展開の応用」, 東洋経済新報社(2003)
 ・ 今村悟・内田善彦・高橋明彦, 「マリアバン解析を用いたオプションのリスク指標の計算について」, 日本銀行金融研究所ディスカッションペーパーシリーズ2004-J-24, 2004
 ・ Ingersoll, “Theory of Financial Decision Making”; Karatzas-Shreve,“Methods of  Mathematical Finance”; Karatzas,“Lectures on the Mathematics of Finance”; Korn,“Optimal Portfolios”
 ・ Liptser, Shiryeav, “Statistics of Random Processes I,II”
 ・ Yong-Zhou,“Stochastic Controls”; Oksendal-Sulem,“Applied Stochastic Control of Jump Diffusions”;Hansen, Sargent,“Robustness”など。適宜、テーマ毎に文献を紹介する。

【質問等の連絡先・オフィスアワー】
 office hour:中川(火曜21:30-22:00)、中村先生(火曜2限目)

【他の授業科目との関連】
 博士科目である「資産価格理論」を併せて履修することが強く望まれる。

【成績評価の方法】
 成績評価は、宿題、レポート、授業中の発言・議論を基礎にして行う.

シラバス:ファイナンシャル・リスク・マネージメント2008

ファイナンシャル・リスク・マネージメント(2008年度春学期、水曜18:20~19:50)のシラバスです。


【授業の概要】
 金融機関が直面する市場リスク、信用リスク、オペレーショナル・リスク等の金融リスクを計測するための基本的な手法およびその理論的背景について理解すると ともに、実際のデータを利用したリスク計測の実習も行う。また、金融リスク計測手法の理解に必要となる確率論や統計学等の知識についても随時言及していく。

【学生の指定】
 計量ファイナンス系のM2向け科目だが、意欲があれば誰でも受講可能。

【授業の目的・到達目標と方法】
 市場リスク計測においては、Value at Risk の概念および計測方法を理解し、実際にリスクを計測し、その結果を考察できるようなることを目指す。また、信用リスク計測においては、個別企業の信用力を 計測するための統計モデルの構築および検討を演習で行うとともに、クレジット・デリバティブの評価のための確率解析モデルのエッセンスを理解することを目指す。
さらに、オペレーショナル・リスク計測手法の検討を通じて、今後の金融リスク計測のあり方についても議論していく。

【授業計画】

1. (4/9) Guidance & Introduction : 講義内容についての説明とオリエンテーション
2. (4/16) 金融リスクの基本的概念(1):確率論・統計学の復習
3. (4/23) 金融リスクの基本的概念(2):主なリスク尺度とその性質
4. (4/30) 市場リスク:分散共分散法による VaR の計測(演習含む)
5. (5/7) 市場リスク:ヒストリカル法、モンテカルロ法による VaR の計測と演習(演習含む)
6. (5/14) 市場リスク:金利の期間構造と金利リスクの計測
7. (5/21) 市場リスク:リスクの統合、リスク資本配賦、多期間のリスク計測
8. (5/28) 中間試験
9. (6/4) 信用リスク :デフォルト判別モデルなどの統計モデル(演習含む)
10. (6/11) 信用リスク:構造型アプローチによるモデルの概観
11. (6/18) 信用リスク:誘導型アプローチによるモデルの概観
12. (6/25) 信用リスク:誘導型アプローチによるクレジット・デリバティブの評価
13. (7/2) 信用リスク:信用リスクの依存関係モデル
14. (7/9) オペレーショナル・リスク:損害保険数理手法
15. (7/23) 学期末試験

【テキスト・参考文献】

(参考書)
 McNeil, Frey, Embrechts, ``Quantitative Risk Management", Princeton(2006)
 M. Crouhy, D. Galai, R. Mark(三浦 良造他訳), 「リスクマネジメント」, 共立出版(2004)
 ※原著 M. Crouhy, D. Galai, R. Mark, ``Risk Management", McGraw-Hill(2001)


【質問等の連絡先・オフィスアワー】
 Office-hour:火曜21:30~22:00

【成績評価の方法】(2008年4月30日変更)
 中間試験(30%)、期末試験(30%)、レポート1(20%)、レポート2(20%) 平常点も考慮する。

シラバス:金融数理の基礎2008

金融数理の基礎(2008年度春学期、火曜20:00~21:30)のシラバスです。


【授業の概要】
 確率モデルを用いて金融市場を理論的に分析する学問である「数理ファイナンス」の基本的な概念を理解するために必要な数学(確率解析)の基礎的な内容を、主に離散時間モデルの枠組みにおけるデリバティブの価格付け理論を題材として学習する。
(連続時間における理論は、冬学期の「金融数理」で扱う予定である)

【学生の指定】
 計量ファイナンス系のM1向け科目だが、意欲があれば誰でも受講可能。

【授業の目的・到達目標と方法】
 離散時間における確率過程、条件付き期待値、マルチンゲール、マルコフ性等の確率解析の基本的概念を習得するとともに、そうした確率論の概念とデリバティブの価格付け理論とがどのように関連しているかを理解することを目的とする。また、具体的な問題演習を通じて離散時間モデルにおける様々なデリバティブについて価格付け手法ができるようになることを目指す。

【授業計画】(4回~14回の日程が変更になりました)

1. (4/8) Guidance & Introduction : 講義内容についての説明とオリエンテーション
2. (4/15) 無裁定価格評価二項モデル(1):1期間二項モデル、複製戦略、リスク中立確率 (教科書 1.1節)
3. (4/22) 無裁定価格評価二項モデル(2):多期間二項モデル (教科書 1.2節)
4. (5/13) 二項モデルの確率論的整理(1):確率空間、確率変数、確率分布、条件付き期待値 (教科書 2.1-2.3節)
※4/28の授業はなくなりました
5. (5/20) 二項モデルの確率論的整理(2):マルチンゲール(教科書 2.4節)
6. (5/27) 二項モデルの確率論的整理(3):マルコフ過程(教科書 2.5節)
7. (6/3) 二項モデルの確率論的整理(4):問題演習(教科書 1.6, 2.8節)
8. (6/10) 状態価格:測度変換、Radon-Nikodym 微分(教科書 3.1-3.2節)
9. (6/17) 中間試験
10. (6/24) アメリカン・デリバティブ(1):優複製、停止時刻(教科書 4.1-4.3節)
11. (7/1) アメリカン・デリバティブ(2):最適停止戦略、コールオプションの場合(教科書 4.4-4.5節)
12. (7/8) ランダムウォーク(1) :到達時刻(教科書 5.1-5.2節)
13. (7/15) ランダムウォーク(2) :鏡像原理、永久アメリカン・プット(教科書 5.3-5.4節)
14. (7/22) 離散から連続へ :二項モデルの極限としてのBlack-Scholes モデル
15. (7/29) 学期末試験

【テキスト・参考文献】

(教科書)
  S. E. シュリーヴ(長山 いづみ他訳),「ファイナンスのための確率解析I:二項モデルによる資産価格評価」, シュプリンガー・フェアラーク東京(2006)
 ※原書:S. E. Shreve, Stochastic Calculus for Finance I: The Binomial Asset Pricing Model. Springer(2004)

(参考書)
 藤田 岳彦, 「道具としての金融工学」, 日本実業出版社(2005)
 D. ウィリアムズ(赤堀 次郎・原 啓介・山田 俊雄共訳), 「マルチンゲールによる確率論 」, 培風館(2004)
 ※原著 D. Williams, Probability with Martingales. Cambridge Univ. Press(1991)
 関根 順, 「数理ファイナンス」, 培風館(2007)

【質問等の連絡先・オフィスアワー】
 Office-hour:火曜21:30~22:00

【成績評価の方法】
 中間試験(50%)、期末試験(50%)、演習への取り組みなど平常点も考慮する。

Opening Message

このブログは、一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)での講義情報の提供および意見交換の場として作成しました。

さしあたり対象となる講義は
  • 金融数理の基礎(火曜20:00~21:30)
  • ファイナンシャル・リスク・マネージメント(水曜18:20~19:50)
  • 金融市場の計量分析(木曜18:20~19:50)
の3つです。