金融数理の基礎(2008年度春学期、火曜20:00~21:30)のシラバスです。
【授業の概要】
確率モデルを用いて金融市場を理論的に分析する学問である「数理ファイナンス」の基本的な概念を理解するために必要な数学(確率解析)の基礎的な内容を、主に離散時間モデルの枠組みにおけるデリバティブの価格付け理論を題材として学習する。
(連続時間における理論は、冬学期の「金融数理」で扱う予定である)
【学生の指定】
計量ファイナンス系のM1向け科目だが、意欲があれば誰でも受講可能。
【授業の目的・到達目標と方法】
離散時間における確率過程、条件付き期待値、マルチンゲール、マルコフ性等の確率解析の基本的概念を習得するとともに、そうした確率論の概念とデリバティブの価格付け理論とがどのように関連しているかを理解することを目的とする。また、具体的な問題演習を通じて離散時間モデルにおける様々なデリバティブについて価格付け手法ができるようになることを目指す。
【授業計画】(4回~14回の日程が変更になりました)
1. (4/8) Guidance & Introduction : 講義内容についての説明とオリエンテーション
2. (4/15) 無裁定価格評価二項モデル(1):1期間二項モデル、複製戦略、リスク中立確率 (教科書 1.1節)
3. (4/22) 無裁定価格評価二項モデル(2):多期間二項モデル (教科書 1.2節)
4. (5/13) 二項モデルの確率論的整理(1):確率空間、確率変数、確率分布、条件付き期待値 (教科書 2.1-2.3節)
※4/28の授業はなくなりました
5. (5/20) 二項モデルの確率論的整理(2):マルチンゲール(教科書 2.4節)
6. (5/27) 二項モデルの確率論的整理(3):マルコフ過程(教科書 2.5節)
7. (6/3) 二項モデルの確率論的整理(4):問題演習(教科書 1.6, 2.8節)
8. (6/10) 状態価格:測度変換、Radon-Nikodym 微分(教科書 3.1-3.2節)
9. (6/17) 中間試験
10. (6/24) アメリカン・デリバティブ(1):優複製、停止時刻(教科書 4.1-4.3節)
11. (7/1) アメリカン・デリバティブ(2):最適停止戦略、コールオプションの場合(教科書 4.4-4.5節)
12. (7/8) ランダムウォーク(1) :到達時刻(教科書 5.1-5.2節)
13. (7/15) ランダムウォーク(2) :鏡像原理、永久アメリカン・プット(教科書 5.3-5.4節)
14. (7/22) 離散から連続へ :二項モデルの極限としてのBlack-Scholes モデル
15. (7/29) 学期末試験
【テキスト・参考文献】
(教科書)
S. E. シュリーヴ(長山 いづみ他訳),「ファイナンスのための確率解析I:二項モデルによる資産価格評価」, シュプリンガー・フェアラーク東京(2006)
※原書:S. E. Shreve, Stochastic Calculus for Finance I: The Binomial Asset Pricing Model. Springer(2004)
(参考書)
藤田 岳彦, 「道具としての金融工学」, 日本実業出版社(2005)
D. ウィリアムズ(赤堀 次郎・原 啓介・山田 俊雄共訳), 「マルチンゲールによる確率論 」, 培風館(2004)
※原著 D. Williams, Probability with Martingales. Cambridge Univ. Press(1991)
関根 順, 「数理ファイナンス」, 培風館(2007)
【質問等の連絡先・オフィスアワー】
Office-hour:火曜21:30~22:00
【成績評価の方法】
中間試験(50%)、期末試験(50%)、演習への取り組みなど平常点も考慮する。