ラベル BFM2012 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル BFM2012 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年12月29日土曜日

BFM2012 に関連した冬休み用問題

【問題】 $\Omega = \{1,2,\cdots,1000\}, \ \mathcal{F} = \mathcal{P}(\Omega), P(\{\omega\}) = \dfrac{1}{1000} \ (\forall \omega \in \Omega)$ として確率空間 $(\Omega, \mathcal{F}, P)$ を与える。
いま、確率過程 $\{X_n\}_{n=1,2,\cdots}$ を $\forall n$ に対して「$X_n(\omega) = \omega$ を $n$ で割った余り」と定義する。 例えば $\omega = 63$ とすると \[ X_1(\omega) = 0, X_2(\omega) = 1, X_3(\omega) = 0, X_4(\omega) = 3, X_5(\omega) = 3, \cdots \] となる。
では、$n = 1,2,\cdots$ という時間の進行とともに確率過程 $X_n$ の値を私たちは知らされていくとき、どの時点まで $X_n$ の値を知ることができれば $\omega$ を特定できるだろうか?
先の例で $n = 5$ までの結果が \[ X_1(\omega) = 0, X_2(\omega) = 1, X_3(\omega) = 0, X_4(\omega) = 3, X_5(\omega) = 3 \] と教えられたとしても $\omega = 63$ は特定できるかというと、できない。 なぜなら $\omega = 123$ とか $\omega = 603$ であっても上のような結果になるからである。

問1
$n=15$までの確率過程 $\{X_n\}$ の値が次のように観測された。 \begin{align*} &X_1 = 0, X_2 = 0, X_3 = 1, X_4 = 2, X_5 = 2, X_6 = 4, X_7 = 1, X_8 = 6, \\ &X_9 = 4, X_{10} = 2, X_{11} = 0, X_{12} = 10, X_{13} = 9, X_{14} = 8, X_{15} = 7 \end{align*}
(i) $\omega$ の値を答えよ。
(ii) この $\omega$ の値を特定するのに必要な最小の $n$ の値を答えよ。

問2
一般に、任意の $\omega \in \Omega$ を特定するためには $\{X_n\}$ の値をどの $n$ まで知る必要があるかを調べよ(当然、手計算では無理なので、適当なプログラムを自分で作って探すことになる)。

そのうえで、次の問いに答えよ。
(i) ある $\omega$ を特定することが可能となる最小の $n$ および特定できる $\omega$ の値を答えよ。
(ii) 全ての $\omega$ を特定することが可能となる最小の $n$ を答えよ。

問3 フィルトレーション $(\mathcal{F}_n)_{n \in \mathbb{N}}$ を $\mathcal{F}_n = \sigma\{X_1, \cdots, X_n\}$ のように与える。
(i) $\{ \emptyset, \Omega \}, \mathcal{F}$ および $\mathcal{F}_1, \cdots, \mathcal{F}_{10}$ の12個の$\sigma$-加法族について、これらを適当な順序に並べて、それぞれの間を「$=$」または「$\subsetneqq$」のいずれか適当な方を用いて包含関係を明らかにせよ。

(ii) 確率変数 $Y(\omega) = \omega$ について、問1 の(i)の答えの $\omega$ の値に対する $\mathbf{E}[ Y | \mathcal{F}_n](\omega)$ の値を $n = 1,2,\cdots,10$ についてそれぞれ求めよ(ここでは、条件付き期待値を確率変数として表示するのではなく、特定の $\omega$ を与えたときの数値をそれぞれの $n$ について答えることを求めている)。

2012年1月30日月曜日

2012年度の「金融数理の基礎」について

【授業の概要】(※ 2011 年度までと若干授業内容が変わります)
確率モデルを用いて金融市場を理論的に分析する学問である「数理ファイナンス」の基本的な概念を理解するために必要な数学(確率解析)の基礎的な内容を理解してもらうために、その前提となる基礎的な数学の知識・考え方を講義する。

【履修のための条件】計量ファイナンス系のM1 向け科目だが、意欲があれば誰でも受講可能。

【授業の目的・到達目標】離散時間モデルにおけるデリバティブの価格付け理論の理解を最終的な目的とするが、そのために必要となる確率論の知識・考え方および、さらにその前提となる集合論の基本的な知識・考え方まで立ち戻って理解してもらうことを目指す。

【授業の内容・計画】(※ 2012 年1 月段階の構想のため変更の可能性あり。詳細は9 月に告知予定)
1. (10/2) Guidance & Introduction : 講義全般のオリエンテーション(高校数学の『論理』の復習など)
2. (10/9) 集合論(集合の演算、写像)
3. (10/16) 集合論(写像、集合族)
4. (10/23) 集合論(集合族,濃度)
5. (10/30) 集合論(同値関係ほか)
6. (11/6) 確率論(確率空間、確率変数)
7. (11/13) 確率論(期待値、独立性)
8. (11/20) 中間試験
9. (11/27) 確率論(条件付き期待値)
10. (12/4) 確率論(マルチンゲール)
11. (12/11) 2 項モデルを用いた解析(金融市場モデル)
12. (12/18) 2 項モデルを用いた解析(単純ランダムウォークを用いた金融市場モデル)
13. (12/25) 2 項モデルを用いた解析(ヨーロピアン・デリバティブ)
14. (1/8) 2 項モデルを用いた解析(ヨーロピアン・デリバティブ)
15. (1/15) 2 項モデルを用いた解析(ブラック・ショールズ公式への収束)
16. (2/5) 学期末試験

※海外出張などにより、スケジュール変更の可能性あり

【テキスト・参考文献】
1. 今岡光範他『これだけは知っておきたい教員のための数学I 代数・幾何」培風館(2007)
2. 関根 順, 『数理ファイナンス』, 培風館(2007)
※ 2~5 回目は1 の第1 章の記述に沿って、6 回~15 回については2 の第1 章の1.1 節~1.4 節と1.8 節に沿って解説する予定。ただし、確率論の部分は別の資料で補足する予定その他、授業中やブログで参考文献を紹介する。

【成績評価の方法】中間試験(50%)、期末試験(50%)。平常点を考慮する場合もある。