2011年12月21日水曜日

「金融数理の基礎」第12回フォロー

今回の配付資料と前回の問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。
(前回の解答例は少し不備があったので修正版をアップしました)



授業でも触れましたが、配付資料の「予習用問題」はレポート課題ではありません。授業の中でいくつかを消化していく予定ですので、提出は要しません。


また「冬休みのおまけ問題」も授業のレポートとして提出を要請しているものではありません。
興味をもった人はメールで解答を寄せていただければと思います。
(レポートとしてファイルを添付してもらってもかまいません)

第11回の課題レポートについて

本当はマルチンゲールの例を授業で説明した上で挑戦してもらう予定でしたので、考え方が分からなかった人が多かったと思います。すみません。

今日の授業および解答例を参考にしてください。
とにかく条件付き期待値の性質を適切に使うことで、マルチンゲールの定義の等号条件を示すというのが最大のポイントになります。

なお、解答例を修正しました。
問1については、
「$a \ge 0$ のとき劣マルチンゲール、$a \le 0$ のとき優マルチンゲール、$a = 0$ のときマルチンゲール」となります。

つまり、$a=0$ の場合は劣マルチンゲールでも優マルチンゲールでもあるわけです。

そもそもマルチンゲールの必要十分条件は「劣マルチンゲールかつ優マルチンゲール」ですので。

2011年12月20日火曜日

(受領確認)第11回レポート

「金融数理の基礎」第11回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F003,
IM11F006, IM11F011, IM11F014, IM11F021, IM11F041,
IK11F007, IK11F011, IK11F014

2011年12月16日金曜日

12/20(火)「金融数理の基礎」第12回:確率論(マルチンゲールの性質)

次回は、マルチンゲールの続きについて触れます。

準教科書の7.4節の7.4.2項の続き~7.4.4項の内容に触れます。

* マルチンゲール、優マルチンゲール、劣マルチンゲールの定義、およびそれらの簡単な例 
Doob分解、離散時間版確率積分(マルチンゲール変換)  ※前回の配付プリント



( 時間があれば、前回触れると言って触れられなかった条件付き期待値の幾何的イメージも…)

という流れで進めたいと思います。

第10回の課題レポートについて

手計算では大変な数字になってしまい、途中でやる気が失せた人が多いかもしれません。
レポート問題では、私も実際やっていますが、Excelや何らかの計算ソフトを用いて検算してもらってもかまいません。

問1は (3)が考え方として少し難しい以外は、面倒な計算を頑張れたかどうかですね。

(3)は解答例をもう少し噛み砕くと次のようになります。
\begin{align*}
& \int_{-10}^{3.5} gdP_X = \int_{\mathbb{R}} g(x)\mathbf{1}_{[-10,3.5]}(x)dP_X(x) \\
&= \int_{\Omega}g (X(\omega))\mathbf{1}_{[-10,3.5]}(X(\omega))dP(\omega) =  \int_{\Omega} g(X(\omega))\mathbf{1}_{\{X(\omega) \in [-10,3.5]\}}(\omega)dP(\omega) \\
&= \int_{\Omega} g(X(\omega))\mathbf{1}_{\{-10 \le X(\omega) \le 3.5\}}(\omega)dP(\omega) \\
&= \int_{\Omega} g(X(\omega))\mathbf{1}_{\{1,5,6\}}(\omega)dP(\omega)
\end{align*}

問2は計算ミスはそれなりに多かったですが、考え方はあっている人が多かったです。今回の授業でやった条件付き期待値の性質をうまく使えばもう少しシンプルに答えられるようになります。

2011年12月13日火曜日

「金融数理の基礎」第11回フォロー

今回の配付資料と前回の問題の解答例(Excelファイルも別添で)をイントラネットにアップしておきました。



今日の授業の「コイントス3回での2時点目(2回コイントスした時点)での $\sigma$-加法族 $\mathcal{F}_2$ の要素を全部書き出すと次のようになります。要素は全部で $16=2^4$個あることを確認してください。
これはそもそも$\Omega$ を4つに分割していることに起因するためです。

前回のレポートでも気づいていた人が複数いましたが、一般に $\Omega$ を $n$ 個に分割する集合から生成される $\sigma$-加法族は $2^n$ 個の集合を要素にもつ集合族になります。

\begin{align*}
\mathcal{F}_2 &= \{ \emptyset, \{HHH,HHT\}, \{HTH,HTT\}, \{THH,THT\}, \{TTH,TTT\}, \\
& \ \{HHH,HHT,HTH,HTT\},\{HHH,HHT,THH,THT\},\\
& \ \{HHH,HHT,TTH,TTT\},\{HTH,HTT,THH,THT\},\\
& \ \{HTH,HTT,TTH,TTT\},\{THH,THT,TTH,TTT\},\\
& \ \{HHH,HHT,HTH,HTT,THH,THT\},\\
& \ \{HHH,HHT,HTH,HTT,TTH,TTT\},\\
& \ \{HHH,HHT,THH,THT,THH,THT\},\\
& \ \{HTH,HTT,THH,THT,TTH,TTT\},\Omega\}
\end{align*}

また、今回はマルチンゲール等の定義の説明で終わってしまったので、課題を解くのはすこし大変だと思いますが、ポイントとしては

$\{M_n\}$ という確率過程がマルチンゲールになることを示す場合、適合かどうか、可積分かどうかを確認するということもありますが、一番重要なのは
$$ \mathbf{E}[M_{n+1} | \mathcal{F}_n ] = M_n $$
という等号が任意の時点 $n$ で成り立つことを示すことです。

そのために使う計算のツールは、授業の前半に解説した条件付き期待値の性質になります。
例えば問1では $S_{n+1} = S_n + X_{n+1}$ という変形ができることに注目します。
また、$X_1,X_2,\cdots$ が独立ということは $\mathcal{F}_{n}$ と $X_{n+1}$ が独立ということは、特に断らずに使ってよい性質とします。

問2も $Y_{n+1}^{(k)} = Y_n^{(k)} + $「何か」という変形ができることに注意して、あとは条件付き期待値の性質をいろいろと組合せることで目的に近づくことができるはずです。

(受領確認)第10回レポート

「金融数理の基礎」第10回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F003, IM11F005, 
IM11F006, IM11F014, IM11F021, IM11F037,
IM11F041, IK11F003, IK11F007, IK11F014

2011年12月9日金曜日

12/13(火)「金融数理の基礎」第11回:確率論(条件付き期待値、マルチンゲール)

次回は、条件付き期待値の残りとマルチンゲールについて触れます。

準教科書の7.4節の7.4.1項の続き~7.4.2項の内容に触れます。
(前回触れられなかった5.4.3項にある条件付き期待値の幾何的イメージにも言及したいと思います。)

* 前回配付資料の例題2の追加問題についての解説
* 条件付き期待値の性質
* 条件付き期待値の幾何的イメージ
* マルチンゲール、優マルチンゲール、劣マルチンゲールの定義、およびそれらの簡単な例

*( 時間があれば) Doob分解、離散時間版確率積分(マルチンゲール変換)

という流れで進めたいと思います。

2011年12月7日水曜日

第9回の課題レポートについて(追記)

第9回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。

なお、$\mathcal{P}(\Omega)$ と $P(\Omega)$ を混同したと思われる人がいました。
確かに同じ P から派生しているので混乱しがちですが、
$\mathcal{P}(\Omega)$ は集合 $\Omega$ の部分集合全体を表す集合族(ベキ集合)
$P(\Omega)$ は集合 $\Omega$ の確率(つまり1になる)
をそれぞれ意味します。

板書等でも区別つくように書いているつもりではいますが、気をつけます。
(ベキ集合は $2^{\Omega}$ という表記もあるので、そちらが良かったかもしれません)
ただ、見た目で判別しがたくでも、記号の前後の文脈で判断できるようになってほしいと思います。


問1 (1)はよくできていました。
(2) は10個という答えが大半でしたが、答えは16個です。$\{1\},\{2,3\},\{4\},\{5,6\}$ という分割の補集合(余事象)だけを考えていると思いますが、4つ以上に分割されている場合はそれだけではダメです。
$\mathcal{F}$ の要素の和集合はふたたび $\mathcal{F}$ の要素になるので、 $\{1| \cup \{2,3\} = \{1,2,3\}$ などを含めないといけません。

基本的には4つの分割から生成される最小の$\sigma$加法族の濃度は $2^4 = 16$ と言えるのですが、この問題は(3)(4)の観点から $\mathcal{F}$ の要素を全て具体的に書き出してもらって要素の数を確認するのがベストです。

(3)(4) は (2) が正しくないと議論を含めて正解にはなりませんが、それでも議論の方向性は半数くらいの人がマスターしているようでした。
ただ、端的にいうと「可測でない」ことを示すには反例を1つあげればよいのに対し、「可測」であることを示すには全ての可能性を確認するということが必要になります。その点で「可測でない」ことの説明が冗長だったり、「可測である」ことの説明が不十分だったりという人が見受けられました。
また、考え方は基本的に正しいけど、集合論の記号の使い方が正確でないという人が意外と多かったです。

(2)を間違えた人で、(3)(4)とも「可測でない」と答えた人が比較的多かったですが、同じような問いが続いていたので、どちらかは可測になるように問題を作っているのでは?と読んでほしかったですねw

(5) は比較的できていましたが、計算ミス・表記が不十分・$X=0$の場合忘れ、なども見られました。


問2は独立性に関する問題で、授業では十分に扱えなかったせいもあり、特に(2)で確率変数の独立性をどのように定式化するかで迷った感じの人が多いようでした。

(1)は高校数学で扱うレベルの独立性の問題なので計算ミスを除けば考え方含めて比較的よい出来でした。約分できるところを約分しないでいる人が数名いました。

(2)は解答例を参照してほしいのですが、未知数が2つなので方程式を2つ作ればよいという方針は変わりません。そのうち一つは確率の総和は1というところから得られるので、もう一つを独立性の条件から得られるようにすればよいわけです。

確率変数 $X,Y$ が独立であるということは $\mathcal{F}_X, \mathcal{F}_Y$ というそれぞれの確率変数で生成される $\sigma$-加法族を考えたとき
$$ \forall A \in \mathcal{F}_X,  \forall B \in \mathcal{F}_Y, \quad P(A \cap B) = P(A)P(B) $$
が成り立つことが必要十分な条件になりなすが、適当な $A, B$ を1組選んできて $P(A \cap B) = P(A)P(B)$ に基づいて方程式を立てればそれで十分です。
(集合の選び方によらず、この場合は独立性からは、本質的に1つの方程式が導かれます。)

「金融数理の基礎」第10回フォロー(追記)

今回の配付資料と前回の問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

あと例題2の(3)の解答は
$$ \mathbf{E}[ X | \mathcal{F}_Y] = 3\cdot \mathbf{1}_{\{1,4\}} + 2\cdot \mathbf{1}_{\{2,6\}} + 2\cdot \mathbf{1}_{\{3,5\}} = 3\cdot \mathbf{1}_{\{1,4\}} + 2\cdot \mathbf{1}_{\{2,3,5,6\}} $$
(同じ2の値をとる集合はまとめた方がよいです)および
$$ \mathbf{E}[ Y | \mathcal{F}_X] = \frac{3}{2}\cdot \mathbf{1}_{\{1,3\}} - 2\cdot \mathbf{1}_{\{2,4,6\}} + 3\cdot \mathbf{1}_{\{5\}} $$
と表せます。

これに関連した追加問題を出しておきます。
次回の話とも関連するので予習問題としておきます…

追加問題1:条件付き期待値で与えられる次の4つの確率変数の期待値をそれぞれ求めよ。

$$\mathbf{E}[ X | \mathcal{G}], \mathbf{E}[ Y | \mathcal{G}], \mathbf{E}[ X | \mathcal{F}_Y],  \mathbf{E}[ Y | \mathcal{F}_X] $$


追加問題2:以下を単関数表示で答えよ。

(a) $\mathbf{E}[ X^2 | \mathcal{F}_X]$
(b) $\mathbf{E}[ Y^2 | \mathcal{F}_Y]$
(c) $\mathbf{E}[ XY | \mathcal{F}_X]$
(d) $\mathbf{E}[ XY | \mathcal{F}_Y]$

2011年12月6日火曜日

(受領確認)第9回レポート

「金融数理の基礎」第9回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F004, IM11F005, 
IM11F006, IM11F014, IM11F021, IM11F037,
IM11F041, IK11F003, IK11F007, IK11F008,  IK11F011,  IK11F014

2011年11月30日水曜日

12/6(火)「金融数理の基礎」第10回:確率論(期待値、条件付き期待値)

次回は期待値、そして条件付き期待値について触れます。
ただ前回でコメントし忘れたところをいくつか最初に補足したいと思います。

準教科書の4.7節の4.7.1〜4.7.3項までと7.4節の7.4.1項までの内容に触れたいと思います。

* 確率測度による積分と確率分布による積分
* 期待値
* 条件付き期待値の定義とそのイメージ
* 条件付き期待値の計算

という流れで進めたいと思います。

条件付き期待値を「確率変数」として理解するということがポイントになります。

「金融数理の基礎」第9回フォロー

今回の配付資料をイントラネットにアップしておきました。

例題の解説が尻切れとんぼになってしまったので、解説付きで解答例イントラネットアップしておきました。

独立性についての説明ができませんでしたが、配付資料に目を通しておいてください。
演習問題については、集合 $A,B$ が独立と言うことの定義は $P(A \cap B) = P(A)P(B)$ が成り立つことである、ということの他に、確率変数 $X,Y$ が独立ということも考える問題もあります。
確率変数の独立性も資料で説明していますが、授業でもやった確率変数から生成される $\sigma$-加法族$\mathcal{F}_X$ と $\mathcal{F}_Y$ を考えた場合は
\[ \forall A \in \mathcal{F}_X, \forall B \in \mathcal{F}_Y \ P(A \cap B) =P(A)P(B) \]
が成り立つことが 確率変数 $X, Y$ が独立だということの定義ということができます。

また、授業で無限回のコイントスに関して確率測度 $P$ を導入することは容易ではないという話をしましたが、その補足です。

授業でもやったように $\Omega = \{H, T\}^{\mathbb{N}}$ として
\[ \mathcal{F} := \sigma\{ \{ \omega \in \Omega | \omega_k = H \} \ \forall k \in \mathbb{N} \} \]
のように $k$ 回目のコイントスの結果が H であるような事象たちを含む最小の $\sigma$-加法族で与えるという話をしました。
実際には、公正なコインを考えれば $\forall k \in \mathbb{N}$ について
\[ P( \omega_k = H) = P(\omega_k = T) = \frac{1}{2} \]
を満たすような $P$ を考えればいいというだけなのですが、これをきちんと説明するには「無限直積測度」という話をする必要があり、その前提で「直積測度」という話をしないといけませんので、説明を省きました。
(直積測度自体は、積分論において Fubiniの定理と呼ばれる積分と積分の順序交換に関する結果を理解するときにも必要になります)

ただし、公正なコインの無限回コイントスは、実は授業でその後に紹介した「閉区間[0,1]からランダムに数を1つ選ぶ」ということと、本質的には同じことになります。
H を 0、T を 1 と見なすと、例えば無限回コイントスの結果は $11010001\cdots$ のように表すことと同一視できますが、さらにこれを二進小数展開と対応させて
\[ \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{0}{2^3} + \frac{1}{2^4} + \frac{0}{2^5} + \frac{0}{2^6} + \frac{0}{2^7} + \frac{1}{2^8} + \cdots \]
と見なすこともできます。実はこの対応は全単射です。つまり無限回コイントスの1つの結果は[0,1)の1つの実数ともれなく1対1に対応するというわけです。

こうみると例えば1回目にHとなる事象は、ランダムに引いた数が $[0,\frac{1}{2})$ に含まれるということに対応してLebesgue測度の観点から、確率 $\frac{1}{2}$ と分かりますし、最初の3回の結果が THH となるという事象は、ランダムに引いた数が $[\frac{1}{2}, \frac{5}{8})$ に含まれるということに対応することがわかり、Lebesgue測度の観点から確率も $\frac{1}{8}$ と自然なものになることが分かります。

2011年11月25日金曜日

「金融数理の基礎」第8回:中間試験採点(続報版)

解答例はイントラネットにアップしておきました。

受験者数は19名。ガチンコ採点の段階ですが、
最高得点は94点(100点満点)。80点台が1名、70点台が1名、60点台が4名です。
返却前までに再チェックをするので、得点は変動すると思います。


以下、簡単なコメントです。

[問題1] 問1~問3 は比較的よくできていました。問4は、前半は数え方を間違えている人が少しいましたし、前半の答えを後半に書いている人などいました。そもそも「濃度」とは何かを忘れている感じの答えもありました。問5は結論に対して2点。理由の説明で多少の表現の不備はおまけしていますが、「単射である」「全射でない」ことにそれぞれ言及していることが必要になります。
問6 は誰も正解していませんでした。まあ、今回の中で一番難しいかな、と思って作った問題ですが、B の要素が0以上の偶数の部分集合であるということと、逆像をしっかり理解していれば前半は誰か正解してほしいところでした。


[問題2] 間違い一つにつき3点減点です。したがって5つ以上間違いがあると0点になります。減点法は厳しいかと思いましたが、昨年度も同様の問題は減点法で採点しました。証明の穴埋め問題で、とりあえず何か書いたら1つ2つ当たってたということについて積極的に評価すべきかどうかということに関して、それはあまり意味がないと考えましたので、中間試験では減点法を適用しました。



[問題3] 問2は正解している人が比較的多かったです。問1(ア)は (0,1] のように左端を0とする答えが多かったです。左端の点は正負の符号が毎回入れ替わるので絶対値だけ見てはだめです。機械的にこういう場合は0になると思いこまれないように今回は少し意地悪くしました。具体的に小さいnに対して区間を図示すれば少なくとも全てのnについて0が含まれないこと、$\frac{1}{4}$ が左端の数字になることは見えたと思います。端点が閉か開かというところが違っているときは減点しています。


問1(イ)の証明は、12点配点で3点ずつの減点法なので4つ以上間違いだと0点ですが、(ア)が間違っていても対偶のところが正しい場合は減点幅を1点にとどめています。証明の構造としては分かっているという人はそこは若干評価をしています。

[問題4] 問1のグラフは形状としてはだいたいの人があっていましたが、縦軸上の白丸表示が明確でないときは減点しました。問2は "]" や ")"をつけないで解答した人がいました。ここは $a$ の式あるいは数字が正しければ ")" や "]" が間違っていても減点を1点にとどめました。問3は、答えだけあっている場合には1点。あとは単関数としての表示ができていたり、関数を正部分と負部分に分けて可積分関数だという確認のもとに議論しているという場合には答えが違っていても3点くらい与えています。そちらの考え方の方が大事だと思っています。


[問題5] 問1は比較的よくできていると思いました。計算ミスもありましたが、計算過程がまちがっていなければ3点は与えています。問2は $a,b$ の値は正しい人が多かったです。$C$ は端点の開閉が違っている人がいました。問3は、記述の程度によって減点はしていますが、(a)では「 $\{f_n\}$ が単調増大列ではないこと」 (b)では「例えば $g=2$ という$E$上の可積分関数で一様に上から押さえられる」ことに言及していれば正解としています。

2011年11月24日木曜日

11/29(火)「金融数理の基礎」第9回:確率論(確率空間、確率変数)

第9回から、確率論の話題に入っていきます。

準教科書の2.6節の2.6.2項までと3.5節の3.5.4項までの内容に触れます。
予習用資料イントラネットの第9回のところにおいてあります)

* 確率空間とその例
* 確率変数
* 確率分布
* 独立性について

という流れで進めたいと思います。

「金融数理の基礎」中間試験答案の返却について

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案とメモを本日返却するよう手配します。
(採点した答案・メモについてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名右のところに赤丸で囲まれた赤い数字が100点満点での今回の点数です。

(最終的には期末試験の成績と勘案して成績評価のための得点調整の可能性はあります。また、期末試験の成績が重視される方式になっていることを忘れないでください)

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダからけ取ってください。

中間試験の採点結果について質問・異議等があれば、12月6日(火)までに、直接中川に問い合わせてください。

2011年11月16日水曜日

11/22(火)「金融数理の基礎」第8回:中間試験

シラバス等で予告はしていますが、第8回目の授業は中間試験となります。
重要な追加事項は、この記事を更新する形で伝えます。
(もちろん授業中に伝えますし、必要があれば学内メーリングリストでお伝えします)


日時:11月22日(火)18:30~19:45(正味75分)
場所:第3講義室(席順はこちらで指定)

遅刻は試験開始30分まで認める(すなわち 19:00まで)。
また、試験開始30分後から試験終了5分前(すなわち 19:00~19:40)の間は、早く終了した者の退室を認める。


【試験範囲およびその他の注意事項】

  • 試験範囲は第7回目までの授業内容および配付資料。特に板書した内容およびレポート課題の問題については復習しておくこと。試験に関するポイントは授業中に口頭で伝える。
  • テキスト、参考書の参照は不可。ただし、第5回目の授業で配付した「中間試験について」の裏側の枠内部分に手書きでメモしたもののみ参照することを許可する。この、手書きメモは試験答案と一緒に提出してもらう(採点答案といっしょに返却する)。
  • 卓上計算機などの使用は不可とする。
なお、中間試験と期末試験はそれぞれ100点満点で採点するが、最終成績評価は
 max{中間試験の点数, 期末試験の点数} × 0.5 + 期末試験の点数 × 0.5
として100点満点に変換する。

第6回の課題レポートについて

第6回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。

問1は、まず与えられた関数を単関数として正しく認識できていなかった人がけっこういました。したがって単関数に対する積分としての考え方は正しくても結果は間違うことになります。あと計算のケアレスミスが少し目立ちました。


問2の(1)は「単関数であること」を明確な根拠で述べている人は少なめでした。授業で与えた単関数の定義を満たしていることを、きちんと確かめないと、何となく単関数っぽいものを書いても正解という判断にはなりません。


(2)は半数くらいの人はできてましたが、元の式から $f_5$ を単関数として正しく認識できていなかった人や計算ミスの人がいました。


(3)は手つかずの人も多かったです。適切にできていたのは一人でした。何かしらの答えを出した人は、n=5を代入すれば自分の結果が正しいかを判断できたはずです。一般の式を提示する場合、簡単な場合に答えが一致するかを確かめるのは大切なことです。


問3は何人かの人がチャレンジしてくれていました。
(1)の可測性の証明は惜しい人がいましたが、逆像を全て適切に書けている人はいませんでした。
確かに少し面倒な逆像になるように問題を作っていますが。
そのかわり、(2)は可積分でないという結論を適切な議論で述べられている人が数名いました。

(受領確認)第6回レポート

「金融数理の基礎」第6回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F003, IM11F004, 
IM11F006, IM11F011, IM11F014, IM11F021,
IM11F041, IK11F003, IK11F007, IK11F011

「金融数理の基礎」第7回フォロー

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

2011年11月11日金曜日

首都大学東京での集中講義

情報数理科学2/情報数理科学特論2(集中講義)
タイトル:信用リスク・モデルへの確率解析の応用
担当教員: 中川秀敏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)
場所:首都大学東京南大沢キャンパス 8号館610号室

【授業の予定】※あくまでも予定です。
• 11 月15 日(火曜)
– 10:00~12:00
∗ デフォルト(債務不履行)をどう定式化するか? ~必要最低限の会計知識と二つのアプローチ
∗ 確率論の準備~ブラウン運動、フィルトレーション、停止時刻
– 13:30~15:30
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Merton モデル


• 11 月16 日(水曜)
– 10:00~12:00
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Black-Cox モデル
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Leland モデル
– 13:30~15:30
∗ 構造型(+不完全情報)アプローチ~Duffie-Lando モデルほか


• 11 月17 日(木曜)
– 10:00~12:00
∗ 誘導型アプローチへのイントロダクション(ポアソン過程)
– 13:30~15:30
∗ 誘導型アプローチ~ハザード・レートとその性質、マルチンゲールによる特徴付け(デフォ
ルト強度)


• 11 月18 日(金曜)
– 10:00~12:00
∗ 誘導型アプローチ~クレジット・デリバティブ価格付け(割引社債、CDS)(プロジェクタ
で概説)
– 13:30~15:30
∗ 信用リスクの依存関係について (プロジェクタで概説)

2011年11月10日木曜日

「金融数理の基礎」第6回フォロー(追記)

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。


なお、今回の授業範囲に関することですが、準教科書の76ページ定義4.16には、
$f$ が可積分のときの積分の定義が
 $$ \int_E f dm = \int_E f^+dm + \int_E f^- dm $$
となっていますが、右辺の "+" は誤りで、授業でやったように
 $$ \int_E f dm = \int_E f^+dm - \int_E f^- dm $$
と引き算するのが正しい定義です。


なお、準教科書の正誤表はこちらを見てください。

11/15(火)「金融数理の基礎」第7回:積分論(収束定理)

第7回はLebesgue積分の理論において非常に重要な3つの収束定理について説明し、応用例をいくつか見たいと思います。いちおう中間試験の範囲です。

準教科書の4.2節および4.4節の内容に触れます。
必要な人は予習用資料に目を通しておいてください。

* Fatouの補題
* 単調収束定理
* 優収束定理(Lebesugueの収束定理、など他の呼び方もある)
* 収束定理の応用例

という流れで進めたいと思います。

2011年11月9日水曜日

第5回の課題レポートについて

第5回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。


問1は中間試験に直結する問題でしたが、完全正解の人はいませんでした(ケアレスミスで惜しい人はいましたが)。


解答例は結果しか載せてませんが、いくつかのポイントとしては
・グラフが描ける関数なので、グラフをきちんと描くこと。正しく描ければ、$a=-1,0,2$ で様子が変わることは少なくとも分かったはずです。
・$(a, \infty)$ という区間の逆像を考えるわけですが、その定義は
$$ f^{-1}((a, \infty)) = \{ x \in \mathbb{R} | f(x) \in (a, \infty) \} = \{ x \in \mathbb{R} | f(x) > a \} $$
であるということ。つまりは $f(x) > a$ という不等式を解く話です。それを集合の言葉にしているだけのことです。
そして $f(x)=a$ となる $x$ は含まれない、ということ。これで端点が含まれるかどうか、場合分けの $a$ の値の等号はどっちにつけるのか、などを冷静に判断できるはずです。
・$a < b$ のとき $(a,\infty) \supset (b,\infty)$ であるという包含関係が成り立つということ。ということは $a$ が小さくなるほど区間は広くなっていくのです。そして逆像の性質として $A \subset B$ ならば $f^{-1}(A) \subset f^{-1}(B)$ も成り立つので、$a$ が小さくなっていけばその逆像も広がっていく、ということ。なので、$a$ を小さくしていく過程で、突然区間だった逆像が $\emptyset$ に変わることはありえません。


問2は、グラフを正確には描けないという点で少し応用です。正確には描けませんが、$y=x$ と $y=1$ の2つのグラフが見えてくるはずで、$a=1$ が場合分けのポイントだということは分かると思います。また、$a$ をどんなに小さくしても、$(a,\infty)$ に含まれない有理数が存在するので、$f^{-1}((a,\infty)) = \mathbb{R}$ となるようなことは決してありません。


問3もあまりよくできていませんでした。(1)のところで $\bigcup_{k\le n}$ のように書いた人がいますが、そうなると
$$ \bigcup_{k\le n} f_k(x) > a $$
という表示になります。しかし、$f_k(x) > a$ というのは集合ではありませんから、$\bigcup$ と結びつけることはできません。同様に(8)の答えが $\bigcap_{k\le n}$ になることもありません。


また、関数の最大値に面食らったと思われる人もいましたが、本質は 
$$ \max\{a_1, \cdots, a_n\} > c $$
のように $n$ 個の要素の最大値が $c$ を超えるということは、少なくともどれか一つの要素が $c$ を超えていることと同値、すなわち $\exists k \in \{1, \cdots, n\} \ \ a_k > c$ 言い換えられるということです。 







2011年11月8日火曜日

(受領確認)第5回レポート

「金融数理の基礎」第5回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F003, IM11F004, 
IM11F005, IM11F006, IM11F011, IM11F014,
IM11F021, IM11F037, IM11F041, IK11F003, IK11F007, IK11F011

2011年11月7日月曜日

「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」2011年度春学期の総括

学生の皆さんの授業評価コメントをまとめたものが共同研究室から送られてきました。
今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。

以下、皆さんのコメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままではなく、要点が分かるように私が適当に編集したものも含まれています。




「VaRやESの話は、統計分野の先生がやるべきで、中川先生には信用リスク分野に特化してLectureをしたもらいたい。もったいないと感じる」
「市場が基礎的な内容の割には、信用が高度な話題が多かったように感じた」
「市場リスクのトピックにモデルリスクも加えてもらいたい」


(回答)「市場リスク」と「信用リスク」のバランスについての言及、あるいは「市場リスク」と「信用リスク」を別の授業でという要望は毎年あります。来年度は内容を大幅に見直してみようかと思います。
 ただし、個人的には、「市場リスク」「信用リスク」という区別よりも「リスクを数値化すること」「数値化したリスクをもとに適切なリスク管理をすること」自体をどのように考えるかが、今後はますます重要になっていくと考えます。そういうことは「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」のようなコンセプトの授業でないと消化しきれないという思いもあります。
 要するに、背景には理論があるんだけども、実際に手を動かす場面では、その理論からはずれること、理論では決着がつかない問題の方が大きいということなどを実感してもらい、そうしたジレンマを理論にフィードバックするよう試みてもらったり、理論と現実のギャップを客観的に把握したりして、よりよいリスクマネジメントのあり方を追求してほしい、そうしたことのきっかけになってほしいと思います。


「ホワイトボードで数理的な部分をもっと説明して欲しかった」
「板書じゃない分、授業中に理解できる量は少なかった。(追いつくので精一杯だった。ただ、授業の内容的に板書での進行は難しい事も理解しています)」
「中川先生の授業らしく板書で進めていただいたら、集中力が保てたのではないかと思った。理解ももう少し進んだかもしれない」


(回 答)板書をもっと取り入れて、数理的な議論をもう少し丁寧に説明してほしい、という趣旨のコメントだと思います。例年、改善したいと思いつつなかなかできていませんが、努力したいと思います。どうしてもスクリーンの上げ下げが必要なので、その辺も考えないといけないですね。
もちろん板書の量が増えると、その部分については深い理解が可能ですが、表向きに伝えられる情報量は減ります。そのバランスは永遠(?)の課題です。


「基本的な理論の理解として、自習課題程度の練習問題が欲しいと思った」
「宿題が多かったので、なかなか全部やる為の時間が取れなかった」


(回答)「課題」の難易度・量についてのコメントですが、私自身は「宿題」として課題を出しているわけではありません。最低限理解してほしい内容(期末試験に直接関連するレベルの問題)も出しつつ、それよりは少し発展的・応用的な課題を提示して、知的好奇心がモチベーションとなって自発的に考えてもらいたい問題を作っているつもりです。
 ですから、全てをきちんと解こうと無理せずに、まずは試験に関連する部分だけでもチャレンジしてもらうとよかったと思います。説明不足ですみません。
 また、問題の難易度の件についてですが、多少なりとも現実を意識した場合に、リスクマネジメントに関する適当なレベルの問題を作るというのがなかなか難しいという側面があります。それでも今後工夫していきたいと思います。


「レポートとテストを中間と期末に分けて欲しい。期末に重たすぎるように思う」


(回答)たしかに締切日は期末試験実施日と2つのレポート締め切りが近くなってしまいましたが、レポート課題は早い段階で提示していたので、 VaR の妥当性についての最終的な振り返りを除けば、けっこう早いうちにレポートは完成できるスケジュールだったと思います。


「資料に掲載されているモデル式にミスプリが数か所あり、少し混乱してしまったので、なるべく無くして欲しい。難易度が高めの箇所が、時々省略されていたのが残念であった」
「PDFを印刷すると小さくなってしまう事があった」
「授業後に資料が再度イントラにアップされるので、授業前に印刷して書き込みをしたものと、最新版の両方を見ないといけないのが多少手間だった。でいれば資料は一つだと管理がしやすい」
「PDFについて、授業用とその前とで分けるのは、紙が無駄になってしまうので、分けて欲しいと思う」


(回答)ミスプリに関しては毎年ご迷惑をおかけしています。また、問題だけの資料と解等例つきの資料の二つが存在するという意味で整理が面倒だと思いますので、授業本編、問題、解等例のように分けることも考えたいと思います。PDFの印刷に関するトラブルは注意してプリンタ設定で調整していただくしかないと思います。

2011年11月2日水曜日

第4回の課題レポートについて

第4回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。

問1の前半は比較的良くできていました。外測度の単調性と劣加法性を使う方法がベストです。
外測度の定義までもどって議論していた人がいましたが、そこまでは要求しません。でも、迷ったら定義に立ち戻るという姿勢は大切だと思います。


問1の後半はきちんとできている人はほとんどいませんでした。
「$\forall B (\subset \mathbb{R})$ に対して $m^*(A \cup B) = m^*(B)$」が成立しているという仮定ですが、「$\forall B (\subset \mathbb{R})$ に対して」というところがポイントです。「偽」だと答えた人の多くが、$A$ を含むような特別な $B$ だけしか考えていない議論になっていました。そもそも $A$ は $B$ とは関係なく与えられている状況なので、上の議論は、都合のよい $B$ を先に与えて、さらに都合のよい $A$ を選んでいるという議論に見えます。

他に、前半と同様な議論をして $m^*(A) \ge 0$ という自明の関係式を導出して、$m^*(A) = 0$ とは限らないという議論で「偽」としていた人もいますが、これも「$\forall B (\subset \mathbb{R})$ に対して」の部分を適切に解釈できていないことになります。

「$\forall$ ○○に対して」や「$\exists$ ○○ 」という部分が、どこに修飾されているかを見抜くことは非常に重要です。


問2 についても、前半は説明不足かなと思う人もいましたが、比較的できていました。

後半の答えは「偽」です。具体的な反例を示すことが大事ですが、「偽」と答えた人の中にも、具体的に反例を示さないで結論が成り立たない可能性がある(ようにできる)、という感じの議論をしているケースが少なからず見られました。
そういう解答については「だったら具体例を示してよ」という反応になります。「できそう」と「できる」は説得力がまるで違ってきます。


問3の (1) は見た目で敬遠された気がしますが、実は苦し紛れに作った問題です。$n=1,2,3,\cdots$ で実験すれば互いに素で長さが半分な区間ができていく様子が確認できたと思います。


(2) は誰も解いていませんでした。

11/8(火)「金融数理の基礎」第6回:積分論(積分の定義)

第6回目は、Lebesgue積分の定義と性質、可積分関数について説明します。
あと、Riemann積分との関係(4.5節)についても触れたいと思います。

準教科書の4.1節および4.3節の内容に触れます。

必要な人は、イントラネットに予習用資料をアップしておきましたので目を通してきてください。

* 可測関数の単関数近似(前回のやり残し)
* Lebesgue積分の定義(単関数の場合、一般の非負可測関数の場合)と前回説明のイメージ訂正
* Lebesgue積分の基本的性質
* 可積分関数
* Riemann積分との関係(4.5節)

という流れで進めたいと思います。

2011年11月1日火曜日

「金融数理の基礎」第5回フォロー

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。


なお、お詫びと訂正があります。


Riemann積分の考え方との比較でLebesgue積分のイメージを説明した際、Lebesgue積分の求め方として、横長の長方形の重なりのような図を描いて、Lebesgue積分は縦軸を分割して切った長方形の積み重ねとしてとらえるという説明をしたような記憶がありますが、横になった長方形の面積の和というイメージは正しくありません。
正しくないイメージを植え付けてしまい、誤解を与えてしまったかもしれません。申し訳ありません。
次回きちんと説明します。


他によくあるRiemann積分とLebesgue積分の違いの説明としては、以下のようなものがあります。


例えば10月の月間売上高を求めるのに、日次売上のデータが
 1日 5,000円 2日 10,000円 3日 3,000円, ..., 30日 10,000円, 31日 7,000円
といった風にあったとき、日にちの順番に沿って1日をグラフの横軸の刻み幅と思って
 (5,000 + 10,000 + 3,000 + … + 10,000 + 7,000) × 1(日)
と計算していくのが Riemann 積分に近い考え方です。


一方、Lebesgue積分は、日次売上の金額に注目して、その額の小さい方から当該額の売上があった日数を先に数えて
 1,000×2日 + 3,000×1日 + … + 10,000×5日 + 12.000円×2日
といった計算の仕方をするというイメージです。このとき、10,000円に対する5日というのが、10,000円の逆像に対する測度に相当しています。この5日は別に連続している必要がなく、飛び飛びに発生していたとしても、同じ10,000円の売上があった日ということでまとめて考えているわけです。













(受領確認)第4回レポート

「金融数理の基礎」第4回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。
IM11F003, IM11F005, IM11F006, IM11F011, 
IM11F012, IM11F014,
IM11F021, IM11F037, IM11F041, IK11F007, IK11F011, IK11F014

2011年10月27日木曜日

11/1(火)「金融数理の基礎」第5回:測度論(可測関数)

第5回目は、Lebesgue積分を定義できる関数の性質を中心に見ていきます。

準教科書の3.2~3.4節の内容(あと、4章の定義4.1, 命題4.15も)に触れます。必要な人は、イントラネットに予習用資料をアップしておきましたので目を通してきてください。

* Lebesgue可測関数の定義
* Lebesgue可測関数の族の性質
* 可測関数の単関数近似

という流れで進めたいと思います。

ここでは、苦手な人の多い「逆像」の扱いがポイントになります!

前回の内容も含めて証明も簡単なものついては、授業でも触れたいと思います。

また、前回の課題レポートを提出する人は、授業前後に私が教室に持参するトレイに提出するか、授業開始前までに共同研究室の指定トレイに提出してください。

第3回課題レポートについて(追記)

第3回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。


今回は、いずれも難しかったのか、私を気づかってくれたのか(笑)、提出者数は少なかったです。


問1の(1)(2)以外は解いていた人がまばらでしたので、とくに問1の前半の「答え」についてコメントしておきます。


問1で気づいたところ。
$ \bigcap_{n=1}^{\infty} A_n$ を $\{0\}$ としたり、0 としたり、$(0,0)$ としたり、$\{\emptyset\}$ としたりしたものがありました。
いずれも間違い(と言い切れないものもありますが)のレベルは少しずつ違います。


$\{0\}$ は、そもそも $\forall n$ に対して $0 \not\in A_n$ なので、答えの集合が0を要素をもつことはおかしいです。
0 というのもその意味でおかしいですが、0は単なる要素です。$ \bigcap_{n=1}^{\infty} A_n$ は実数の部分集合になるはずなので、集合と要素が「=」で結ばれるのはおかしいことです。


$(0,0)$ あるいは $(0,0]$ は意味を考えれば $\emptyset$ ですから、ここは $\emptyset$ と答えてほしいところです。
ただし、$\{\emptyset\}$ は誤りです。これは空集合を要素として含む集合族という意味になり、これ自体は空集合ではありません。


また、$ \bigcap_{n=1}^{\infty} B_n = (0,1)$ という解答がありました。
こちらは、$\forall n$ に対して $0 \in B_n$ なので、答えの集合が0を含まないと逆におかしいです。


他に $ \bigcup_{n=1}^{\infty} C_n = \{ \mathbb{N} \}$ というのも、$\{ \mathbb{N} \}$ は自然数全体を要素にもつ集合族ですから、「自然数の部分集合=自然数の部分集合を要素にもつ集合族」という構図になっていて、階層の異なる対象同士を「=」で結んでいることになり、おかしいです。


おそらく内容は分かっていて、適切な記号の使い方ができなかっただけだと思うのですが、採点する側は記号の使い方で、要素・集合・集合族の区別についての理解度をチェックすることになります。$\{ \quad \}$ で囲むべきか否か、$=$ で結べるかどうか、$\in$ なのか $\subset$ なのか、などに注意するくせをつけてほしいと思います。


ふつうの語学だと文法を多少間違えても意味が通じることはありますが、数学は「文法」を間違えると、意味が伝わらなくなることすらありますので、表記には細心の注意をはらってほしいです。




2011年10月26日水曜日

「金融数理の基礎」第4回フォロー

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

今回の演習問題は、肝となる部分は、いちおう板書の情報+予習用資料で何とかがんばれると思います。

2011年10月25日火曜日

(受領確認)第3回レポート

「金融数理の基礎」第3回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。
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IM11F021, IM11F037, IM11F040, 
IM11F041, IK11F011, IK11F014

2011年10月20日木曜日

10/25(火)「金融数理の基礎」第4回:測度論(外測度,測度)

第4回目から、測度論の話題に移ってきます。

準教科書の2.1~2.4節の以下の内容に触れます。必要な人は、イントラネットに予習用資料をアップしておきましたので目を通してきてください。

* 零集合
* 外測度
* Lebesgue可測集合とLebesgue測度
* Lebesgue測度の性質

* 一般の測度空間の例

という流れで進めたいと思います。



ただし実際の議論の多くは、集合論の記号や概念を使ってなされます。
前の2回分の授業の内容をよく復習しておいてください。

また、前回の課題レポートを提出する人は、授業前後に私が教室に持参するトレイに提出するか、授業開始前までに共同研究室の指定トレイに提出してください。

2011年10月19日水曜日

「金融数理の基礎」第3回フォロー

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。


演習問題ですが、問2,問4,問5 は授業で板書した内容だけでなく、配付資料の補足で書かれた内容あるいは予習用資料の内容を使わないと、きちんと解答ないと思いますので、授業で触れていない部分についても適宜読んでおいてください。


また、対角線論法の最後のところですが、


$\forall n \in \mathbb{N}$ に対して $a_n^{(n)} \neq b_n$ から「矛盾」としましたが、
もう少し詳しく言えば、このことから $\forall n \in \mathbb{N}$ に対して $f(n) \neq y \in (0,1)$ となるわけで、$f$ が全射としたことに矛盾するわけです。


あと、集合族の演算についての例題と解答例を補足資料としてイントラネットの第3回のところにアップしておきました。

第2回課題レポートについて

第2回目の課題レポートをチェックしての講評です。


問1は、ケアレスミスも少しありましたが、だいたいよくできていましたが、B の要素のうち $\{31,32,34,35,37,38\}$ を抜いている人が複数いました。授業でも言いましたが、Bは世界のナベアツがアホになる数字の集合だったのです。


問2


(1)は1/3くらいの人が、私の期待していた方針で解答していました。途中で論理規則の分配律をうまく使えるとかっこいい証明になります。もちろん集合の等式変形でも示せますが、最初のうちは要素を持ち出して、論理規則の演算を用いる方向でトレーニングした方がいいと思います。


(2)は集合の等式変形で両者が一致するという方針で示した人が多かったです。もちろんそれでよいのですが、その際の等式変形では「結合則より」とか「分配則より」とか「○○により」といった根拠を示してもらわないと、解答した人が本当に分かっているかどうか、私には判断できません。



集合論における抽象的な議論は、定義および基本的性質に立ち返ることが大切です。$\Rightarrow$ や $=$ でつないだ部分については、どういう定義、性質、証明された事実を用いたのかを面倒でも一つ一つ書くようにしてください。

問3 (1)(2)は、数学の議論として単射性、全射性が的確に使えていない人が多かったです。もちろん、授業では定義と簡単な例しか触れられなかったので、すぐに分からなくても仕方ないです。解答例で復習してください。


繰り返しになりますが、集合論における抽象的な議論は、定義および基本的性質に立ち返ることが大切です。$\Rightarrow$ や $=$ でつないだ部分については、どういう定義、性質、証明された事実を用いたのかを面倒でも一つ一つ書くようにしてください。


(3) は、$f(f^{-1}((-1,1])) = f([-1,1]) = [0,1]$ の方は比較的良くできていましたが、 $f^{-1}(f((0,1))) = f^{-1}((0,1)) = (-1,0) \cup (0,1)$ の方は、0を除くのを忘れた $(-1,1)$ といった答えが多かったです。


また $\{ (-1,0), (0,1) \}$ という答えがありましたが、これは2つの開区間を要素に持つ集合族と読めてしまうので注意です。