2011年11月30日水曜日

「金融数理の基礎」第9回フォロー

今回の配付資料をイントラネットにアップしておきました。

例題の解説が尻切れとんぼになってしまったので、解説付きで解答例イントラネットアップしておきました。

独立性についての説明ができませんでしたが、配付資料に目を通しておいてください。
演習問題については、集合 $A,B$ が独立と言うことの定義は $P(A \cap B) = P(A)P(B)$ が成り立つことである、ということの他に、確率変数 $X,Y$ が独立ということも考える問題もあります。
確率変数の独立性も資料で説明していますが、授業でもやった確率変数から生成される $\sigma$-加法族$\mathcal{F}_X$ と $\mathcal{F}_Y$ を考えた場合は
\[ \forall A \in \mathcal{F}_X, \forall B \in \mathcal{F}_Y \ P(A \cap B) =P(A)P(B) \]
が成り立つことが 確率変数 $X, Y$ が独立だということの定義ということができます。

また、授業で無限回のコイントスに関して確率測度 $P$ を導入することは容易ではないという話をしましたが、その補足です。

授業でもやったように $\Omega = \{H, T\}^{\mathbb{N}}$ として
\[ \mathcal{F} := \sigma\{ \{ \omega \in \Omega | \omega_k = H \} \ \forall k \in \mathbb{N} \} \]
のように $k$ 回目のコイントスの結果が H であるような事象たちを含む最小の $\sigma$-加法族で与えるという話をしました。
実際には、公正なコインを考えれば $\forall k \in \mathbb{N}$ について
\[ P( \omega_k = H) = P(\omega_k = T) = \frac{1}{2} \]
を満たすような $P$ を考えればいいというだけなのですが、これをきちんと説明するには「無限直積測度」という話をする必要があり、その前提で「直積測度」という話をしないといけませんので、説明を省きました。
(直積測度自体は、積分論において Fubiniの定理と呼ばれる積分と積分の順序交換に関する結果を理解するときにも必要になります)

ただし、公正なコインの無限回コイントスは、実は授業でその後に紹介した「閉区間[0,1]からランダムに数を1つ選ぶ」ということと、本質的には同じことになります。
H を 0、T を 1 と見なすと、例えば無限回コイントスの結果は $11010001\cdots$ のように表すことと同一視できますが、さらにこれを二進小数展開と対応させて
\[ \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{0}{2^3} + \frac{1}{2^4} + \frac{0}{2^5} + \frac{0}{2^6} + \frac{0}{2^7} + \frac{1}{2^8} + \cdots \]
と見なすこともできます。実はこの対応は全単射です。つまり無限回コイントスの1つの結果は[0,1)の1つの実数ともれなく1対1に対応するというわけです。

こうみると例えば1回目にHとなる事象は、ランダムに引いた数が $[0,\frac{1}{2})$ に含まれるということに対応してLebesgue測度の観点から、確率 $\frac{1}{2}$ と分かりますし、最初の3回の結果が THH となるという事象は、ランダムに引いた数が $[\frac{1}{2}, \frac{5}{8})$ に含まれるということに対応することがわかり、Lebesgue測度の観点から確率も $\frac{1}{8}$ と自然なものになることが分かります。

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