2008年12月26日金曜日

「金融数理の基礎」2008年春学期の総括

遅くなりましたが、学生の皆さんの授業評価コメントに基づいて、春学期に行った「金融数理の基礎」の反省を述べ、部分的に来年度以降の授業でどのように改善していくかを考えたいと思います。

全体的には、好意的に評価していただきました。
(期末試験前に回答していると思うので、最終成績によって評価が180度変わった人もいるかもしれません・・・)

以下、いくつかの学生コメントおよびそれに対する回答です。
コメントは原文ではなく、適宜、要点が分かるように私がまとめています。

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「テキストと同じ部分の板書はもう少し減らせないだろうか。」
(回答)授業に臨んだほとんどの人がテキストを購入したと思いますが、必携を条件にしていたわけではないので、板書は板書として self-contained になるように心がけています。
また、板書内容をノートに全て書き写す必要はないので、聞く側でノートに書く内容を取捨選択してくれれば結構です。
あとは、教える側のリズムの問題で、テキストの書き写しに近いことでも自分で書くほうが話しやすいという気が個人的にしています。

「ペースが速くついていくだけで精一杯だった」
「後半少しスピード飛ばした感があった」
(回答)授業のスピードについては教える側も悩むところですが、1学期を通じてこの範囲をカバーしたいというのが先にあって、それを各回の授業に割り振るという感じなので、これ以上ゆっくり進めるというのは難しいと思っています。もちろん、そのときの学生さんの全体的な反応を見て、予定よりゆっくり進めることはあると思います。
ただし、授業だけで全てを理解したいというのは甘いと思います。予習復習が必要だと思います。

後半のスピードが早く感じるのは、前半の土台部分は時間をかけてできるだけ確実に理解してもらえるように配慮しているのと、後半の内容が否応なくレベルが上がっているので、前半理解が速かった人でも後半の内容が腑に落ちるまでに時間がかかるようになっている、という2つの理由が大きいと思います。

「板書が早い。宿題の模範解答がほしかった。」
(回答)板書のスピードについては、毎年指摘を受けるので改善はしたいと思っていますが、1時間に教える分量を考えると、自然にあのくらいの速さになってしまいます。書く内容を絞ればよいのでしょうが、最初のコメントへの回答でも書いたように、板書を self-contained にすることへのこだわりもあるため、大幅に絞るのは難しいと思います。
他の授業のように、私のノートを配付資料にしてすることも可能ですが、ファイナンスにとっての読み書き算盤のような位置づけの授業なので、手を動かして理解することも大切だと強く考えています。
(学生のどなたかが私の板書を TeX でまとめてくれることを密かに期待していたりして・・・)

宿題の模範解答については、私が考える解答のポイントは授業やブログ等で示しています。
完全なものを用意すると、学ぶ側は楽でしょうが、少しでも自分で考える余地を残す方が教育的だろうと勝手ながら思っています。

「板書見えにくい」
(回答)私の字が小さめで汚いというのが最大の理由かと思います。毎年の反省点です。
責任転嫁気味ですが、教室のホワイトボードが小さいことが、字が小さめになっている原因かと思います。
いずれにしても、私も見やすさを意識していきますが、読みにくいところがあれば、遠慮無く指摘してもらえればと思います。


「5章ランダムウォークは、もう少し時間をとって欲しかった。」
「できればテキスト第1巻をほぼ全てカバーして頂きたかった」
(回答)5章は今年度は授業で扱いましたが、内容は完全に数学ですし、証明もテクニカル過ぎるので、来年度は別のテキストのファイナンスの話題を解説しようと考えています。
6章は金利の期間構造の話で、2項モデルで金利の期間構造を説明しているテキストは他にあまりありませんので、紹介したいところですが、4回分くらい費やさないと消化できそうにないですし、数理ファイナンスの準備としては発展的話題なので見送るつもりです。本音としては、自分が、金利の期間構造をこれまで上手に教えてこられなかったというコンプレックスもありますが・・・

「シュリーブの2巻の授業もあったらいい」
(回答)これについては、藤田先生の「金融数理」で内容的には2巻の前半部分はカバーされていると思っています・・・

「中川先生にはもっと授業のコマを持ってほしい」
(回答)最大の賛辞と受け取ります。ありがとうございます。ただし、現実に授業コマを増やすことについては・・・ 私大の先生に比べると授業負担は非常に軽いかもしれませんが、社会人大学院生を相手にすると1コマ分の授業に対する準備やフォローを含めて、それなりに大変です。
とはいえ、他の授業評価やカリキュラム評価でももう少し数学をきちんとやりたいというニーズはあるようなので、単位にはならないが、集中的に何かのトピックをレクチャーする機会は作れると思います。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

あの板書をTexにしたら、シュリーヴの教科書と同じになっちゃいますよ…(苦笑

匿名 さんのコメント...

ナイスな突っ込みをありがとうございました。