日経新聞12/10朝刊の「経済教室」で紹介されていたこちらに目を通してみました。
論文の概略は、「経済教室」に書かれていたとおりなので触れません。
銀行の合併と倒産リスクへの影響という研究テーマには関心がありますが、この論文で紹介されている実証研究に基づく主張にはあまり興味がわきませんでした。日本の有名な都市銀行合併のケースだけを扱っていて、そうした事例にはいろいろな意味での先入観があるからかもしれません。
それでも、こうした研究の方法論を提示しているという点で貢献があると思いました。
関心があったのは、DD(Distance to Default)をどのように算出しているか、という技術的なところです。金融機関を対象にしているので、負債項目が一般事業会社のそれと異なるという点はあるものの、フレームワークは Merton モデルのそれと全く同じで特に補足することはありません。
銀行資産の現在価値(および過去時点の価値)とボラティリティの推定方法は、Crosby-Bohn(2002)に紹介されている KMVが採用しているとされている方法です。
株式価値を、資産のヨーロピアン・コール・オプション(負債価値を権利行使価格)だと見なすのは同じで、株価をインプットすることで、資産の現在価値とボラティリティを未知パラメータとする方程式を作るわけです。ただ、これだけだと解けないので、もう一つ方程式を作るわけで、レバレッジを勘案して、株価のボラティリティと資産価値のボラティリティの関係式からもう一つ方程式を作る方法もありますが、
この論文では、ボラティリティを、資産価値の過去データによる対数収益率の標準偏差として定義するという方法を採用しています。
最初に資産価値の時系列の初期値を与えて、それから対数収益率を計算してボラティリティの推定値を統計的に求め、それをB-S式にインプットとして新たな資産価値の時系列の推定値を求め、それからまた新しいボラティリティの推定値を求め、収束するまで続ける・・・といったものです。
つまり、Black-Scholes 式と標準偏差の計算式をループするアルゴリズムになります。
(Crosby-Bohnは、最初に ボラティリティの初期値を与えているようです。どちらから始めようと収束するころには分からなくなっているので関係ないのでしょう)
まあ、この辺のことは我々が翻訳した「定量的リスク管理」の第8章に詳しく書かれています・・・
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