2008年5月13日火曜日

「金融数理の基礎」第4回フォロー

今回の宿題と前回の宿題(問1と問4)に解答に関するExcelファイルを略解をイントラネットにアップしておきました。

今回の宿題は次回の授業(5/21)のときに提出してください。

授業は抽象的な話に終始してしまい、なかなか理解が追いつけなかった人もいるかと思います。
せっかく確率論の基礎的な部分に触れる機会でしたので、(かなり short cut でしたが)一般的な世界までご案内しました。

また、今回の範囲については、テキストを読んでいただければおおよそ理解できる内容ですし、テキストを参考にすれば宿題の計算問題も(面倒でしょうが)どう計算すればよいか分からないということ無いと思います。

条件付き期待値の定義について、あえて“ほぼ正式な”定義を説明した理由を繰り返すと、
  • 有限状態の場合には、テキストの定義のように、条件付き期待値を直観的な理解にも沿うように、具体的に書き表すことができるが、一般には明示的な表現ができない
  • しかしながら、条件付き期待値という概念は確率解析、ひいては数理ファイナンス理論では欠かせないものなので、それがどのように導入されるかという雰囲気をつかんでほしかった
ということになります。「ほぼ正式な」と書いた意味は、授業で触れたように「条件付き期待値が存在する」ことをきちんと保証しないということもありますが、もう一つ授業できちんと触れなかった問題として、「存在するとしてそれが一意であるか?」ということも曖昧にしたので「ほぼ正式な」と断っておきました。
厳密には「確率1の意味で、条件付き期待値は一意に決まる」ことが、 Radon-Nikodym の定理を用いて存在と同時に示されます。
「存在と一意性」について言及した上であれば、授業で説明したものは「正式な」条件付き期待値の定義になります。

あと、説明するときに「最初のn回目までのコイントスの結果だけに・・・」と言ったり書いたりするのが大変なので、情報の増大系を表現するための次回以降は都合のよい記法を導入していこうと思います。


また、前回の宿題の振り返りで少しふれた「誕生日のパラドックス(本来の意味でのparadoxとは意味あいが違う)」についてはご存じの方も多いと思いますが、例えばこちらを参照してください。

最後に、最近藤田先生が新しい本を出版されたので、紹介しておきます。
ランダムウォークと確率解析―ギャンブルから数理ファイナンスへ」(日本評論社)です。

連続時間モデルで使われる確率解析の道具は、離散時間モデルではどのように表現されるかという点へのこだわりがすごく、その点では非常にユニークなテキストになっていると思います。
それでいて、数学的には非常に豊富な内容が含まれています。

後期の藤田先生の金融数理の授業はこの本の内容をベースに行われるのではないかと推測されます。

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