2008年5月21日水曜日

「金融数理の基礎」第5回フォロー

配布資料はイントラネットにアップしておきました。

5月20日(火)提出分の「金融数理の基礎」第4回分のレポートの提出が確認できているのは、以下の20名です。

提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IK08F002, IM05F023, IM07F028, IM07F029, IM07F037, IM07F044,
IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F017, IM08F020, IM08F023,
IM08F024, IM08F026, IM08F027, IM08F028, IM08F030, IM08F037,
IM08F038, IM08F039

ちなみに、私はレポートの回収をした後、まず名簿順にレポートをソートするのですが、
一般に人間の手で sorting を行う場合に、効率のよいとされる sorting の
アルゴリズムをどなたかご存知でしょうか?
(まあ、成績処理をするだけなら順不同で採点して、学籍番号と点数を採点順に
記録していって、あとでExcel シート上とかでソートするのが一番賢いのでしょうが・・・)

あと、中間試験は、
 日時と場所:6月17日(火) 8:10~9:10(正味60分) 第3講義室
 試験範囲:テキストの第1章と第2章
の予定です。
※詳細は次回の授業のときにでもアナウンスします。


授業内容に関するフォローコメントですが、

条件付き期待値の性質の"独立性"についてです。これは一般に「独立性」の仮定があれば言える結果ですが、
テキストの条件では、「X という確率変数が最初のn回までのコイントスの結果とは関係せず、(n+1)回目以降の結果だけから決まるという」場合だけを条件にして、付録の証明もそのような場合についての証明になっています。
これは、「確率変数 X と F_n(時点 n までに得られるコイントスの結果から構成できるσ加法族)が独立」となる最も単純な例であり、直感的に独立という感じが成り立つのは分かると思いますが、
実際には「確率変数 X とσ加法族 F_nが独立」という条件は、直感に反するような場合もあります。

特殊な例ですが、
n=0,1,2,・・・に対して、Y_n(H) = 1, Y_n(T) = -1 とし、P(H)=P(T)=1/2 という設定で、
n=1,2,・・・に対して、X_n = Y_0×Y_1×・・・×Y_n
として X_n という確率過程を定義し、F_n :=σ(Y_1, ・・・, Y_n) とすると、
X_{n+1} は Y_1~Y_n の情報を全て使って定義されているにも関わらず、
F_n と独立になっています。
(そもそも X_1, X_2, ・・・, X_n そのものが独立な確率変数の列になっています。証明は考えてみてください)

あと、マルチンゲールの語源についての一つの言及はここの最後に書いてあります。
リアルなマルチンゲールの図入りの説明はこちら

Musiela-Rutkowski の本の中国版はこちら

確率のことは中国語では「概率」とか「機率」と書くようです。漢字から受ける印象だと中国語の漢字の方がふさわしい気もします。
あとどうでも良いですが、馬爾可夫鏈とか布朗運動とかが何のことか分かりますか?

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

マルチンゲールというのは測度を指定しないと意味がない概念というのは分かりました。

ただし、測度変換によってマルチンゲールとなるような確率(リスク中立確率)が存在するというように、マルチンゲールと同値な概念を測度に依存しない形で表現できるように思うのですが、どうでしょうか?

それが無裁定ということなんですか?(直感的には全然しっくり来ませんが…)

Unknown さんのコメント...

マルコフ過程にブラウン運動でしょうか?

匿名 さんのコメント...

>マルコフ過程にブラウン運動でしょうか?

前者は「マルコフ連鎖」のようです。後者はそのとおりです。

匿名 さんのコメント...

>ただし、測度変換によってマルチンゲールとなるような確率(リスク中立確率)が存在するというように、マルチンゲールと同値な概念を測度に依存しない形で表現できるように思うのですが、どうでしょうか?

まず大前提として、「無裁定」と「割引資産価値をマルチンゲールにするような確率測度(リスク中立確率測度)が存在する」というのは、一般的な設定でも基本的に成り立つ命題であることが証明されています。
(用語の言い回しは若干変わります。また「無裁定」の表現方法も非常に複雑になり、同値性の証明もハンパなく難しくなります)

次に、一般的な確率論には、セミマルチンゲール(semimartingale, 半マルチンゲールと書くこともある)という概念があります。
きちんとした定義を書くのは避けますが、
「Pという測度の下でセミマルチンゲールであれば、(互いに絶対連続という性質をもつ)別の測度 Q の下でも、その確率過程はセミマルチンゲールである」というある種の測度変換に対する
不変性をセミマルチンゲールはもっています。
また、マルチンゲールはセミマルチンゲールです。

ということは、大雑把に言うと一般のセミマルチンゲールを適当に測度変換すると(真の)マルチンゲールになる(本当はそんなに単純ではないのですが・・・)ということも言えます。

したがって、数理ファイナンスの世界で無裁定条件を満たすように、株価やリスクのある資産の価格を確率過程でモデル化するときは、(実確率測度の下で)セミマルチンゲールとなるものを考えることが必要になります。(そうしないと測度変換してもマルチンゲールにならなくなってしまい、無裁定との同値性が崩れてしまいます)

ただ価格のジャンプなどを考えない連続モデルでは、伊藤過程などと呼ばれるセミマルチンゲールの中の狭いクラスで済むことも多いです。


また、最近は、セミマルチンゲールにならない確率過程(例えばフラクショナル・ブラウン運動と呼ばれるものを使ったモデルなども研究されてきています。無裁定理論との折り合いについては、私自身詳しく勉強していませんが。