2008年5月30日金曜日

「金融数理の基礎」第5回宿題コメント

第5回分の宿題についてのコメントです。

問1:テキストでいうところの「条件付Jensen不等式」とマルチンゲールの条件を組み合わせるだけです。少し回りくどい説明をしている人がいました。
ただし、厳密にいうと、φ(M_n) が適合過程であることにも言及する必要があります。ほぼ自明なことですが、そのことについて触れているかどうかで、その人がきちんと定義を確認できているかどうかが判断できます。その意味では誰も適合性について触れていませんでした。

問2:これも、条件付期待値の性質を繰り返し適用して式変形していき、とどめとして M_n がマルチンゲールであるという性質を使うことになりますが、説明不足と感じられる答案が多くありました。また、問1と同じで、I_n自体が適合過程であることにも言及する必要があります。自明と感じられるかもしれませんが、2行くらいで簡単な説明がほしいと思います。
あと、この問題のM_n が対称ランダムウォークとして定義されたものに限定していると勘違いしていた人もいますが、そうではありません。

問3:これについては出題の仕方があまり適切ではなかったと反省するところではあります。それは出題の段階で感じていたことでしたが、他にうまい設定を考え付かなかったので、結局、無裁定二項モデルという特殊な例に対して、ファイナンスとはあまり関係ない数学的な技術を問う問題のまま出題しました。

そのため、無リスク金利の扱いで無用な混乱をさせてしまったようです。私のタイプミスか何かと思ったのか、無リスク金利で割引した株価過程に対して議論していた人が少しいました。

また無リスク金利については他の問題からコピペしたのが残っているだけで、この問題に関しては不要な情報と思ってしまった人もいたようで、 0 < d < 1 +1/4 < u という無裁定と同値な制約条件がそもそも前提として存在することを考慮しないで答えていた人がいました。
私としては、その部分を気づかせるために問題文で「無裁定・・・」をゴシックにしていたのですが。

答え方として要求していませんでしたが、本当は必要十分条件をud平面に図示してもらうという大学入試にありがちな問題を念頭においていたので、その際には単なる等号成立条件から成り立つ以外に、何らかの制約条件が存在して図示されるのはある部分ということに思い至るかな、と考えていました。

まあ、私の出題の仕方も適切ではなかったですし、ファイナンス的な意味があるわけではないので、この問題に関して特にこだわる必要はありません。
強いて言えば、私の出題パターンとして、細かい条件を直接明示せずに問題文から読み取ってもらうような傾向がある、と思っていただければよいと思います。

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