2009年5月26日火曜日

「金融数理の基礎」第7回フォロー

第6回の宿題の略解をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の20名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016,
IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025, IM09F031,
IM09F037, IM09F041

以下宿題の採点コメントです(昨年度と同じような内容です)。

以前に比べると、読みやすいレポートが増えてきましたが、説明不足に感じたり、議論をもっと整理してほしいものも少なくありません。
例 えば式変形を淡々と行っている解答がありますが、何も説明せずに複数の性質を使って一気に式変形していたりするのは、こちらとしてはきちんと理解しているのか、大事な議論をうやむやにして結果につながるように辻褄をあわせているのか判断に戸惑います。
式変形がいたずらに長くなるのが嫌であれば、「○○と△△、および□□により(or を用いて)」という説明を入れてから、複数の性質を使った変形をしてほしいです。

また、反対に説明が冗長に思えるものもあります。少し見直せばもっと短く端的に説明できる解答も多いです。
テストは時間との戦いなので、議論を整理して解答せよというのは厳しい要求ですが、レポートは(建前としては)検討する時間が十分あるので、自分の思考を整理してから解答をまとめてほしいと思います。
このコメント自体は、講義する自分自身への戒めでもあるのですが・・・

問1:(1) E_n[M_{n+1}]=M_n を示すところは多くの人が良くできていましたが、もう少し説明してほしいという解答も少なからずありました。

{M_n} が適合過程であることについて言及する人が増えましたが、まだ忘れている人 or 不要だと思っている人がいるということですね。

さらに細かいことですが、この問題は M_0 も含めてマルチンゲールですが、{X_k} を使って定義しているのは n ≧ 1 の場合なので、 n= 0 の場合については別に確認する必要があります。
 
(2) 数学的帰納法を用いた人と、巧妙な式変形を用いて直接示そうという人に別れましたが、後者の方が多かったです。鍵となる等式が説明なしに成り立つところから議論を進めていたりする人がいましたが、明らかと思えるところでも説明をしてほしいです。
式変形の際の細かい記述ミスについては気づけば直していますが、スルーしている可能性もあるのでご容赦ください。

あと、n=0 の場合に I_n = 1/2(M_n^2 - n) が成立することに言及していない人がほとんどでしたが、触れておく方が議論しては完璧です。n=0の場合だけは自明ですが、対称ランダムウォークの式変形の議論だけでは正当化できないことに注意です。

(3) 実は、前回の宿題であった練習問題6においてΔ_j を M_j とすれば、{M_n} がマルチンゲールであることを証明しているので、マルチンゲール変換の特別な形と見なせて、前回の宿題(一般論)から結論が得られる、という解答が隠れた ベストアンサーかもしれません。

証明は、I_n の定義そのものから前回の宿題とほぼ同じ議論をしているもの、と(2)の式を使って示すものの2通りに分かれていました。この問題を(2)の前においておけば、おそらく全員が前者のアプローチをとったと思いますが、いちおうこれも意図的に(2)の後において、どっちを選択するかを見るつもりでした。
前者の方針だと、n=0 のときは別の議論で確認する必要があります。I_n を {M_k} で定義しているのは、n ≧ 1 のときだからです。
後者は (2) が n= 0 でも成立していることを自覚していれば、n=0 を特別に考えなくてもよいです。

{I_n} が適合過程であることについて言及している人は(1)より少し減っています。

(4) は手つかずの人もいましたし、解いている人の中でもMarkov性の定義を十分理解していないと思われる解答が見られました。
任意の時点 n、任意の関数 f に対して、ある関数 g が存在して
E_n[f(I_{n+1})] = g(I_n)
が成り立つことを示すことになります。
このテキストに沿ってMarkov性を示すには、f を用いて g を具体的に表現するのが最も明解な答え方になります。
途中の議論に不備があったにせよ、略解と同様の正解を得ていた人は思ったよりは多かったです。

g を得ている人でも見た目は I_n と M_n の関数のままで解き終えている人や、M_n が I_n で表されることは(2)から分かるので、I_n と M_n の関数を強引に I_n に対応づけて新たに定義して証明を終わらせている人がそこそこいました。
その理解は正しいですし8割方Markov過程を理解していると判定できますが、関数 g の形を具体的に表すことができるのであれば、具体的に示すことにこしたことはありません。

任意の関数f について考える必要があるのですが、f(x)=x の場合しか考えていない人が少しいました。

あ とテキストの例題のように、I_{n+1}/I_n という比を考えようとしている人がいましたが、株価過程の場合とは異なり、この設定では「I_{n+1} = I_n × 何か」という関係になっていないので比をとる意味はあまりなく、むしろ差に注目する方が自然です。

もちろん、Markov 過程の前提として、それは適合過程であることが必要ですから、(3) で{I_n}の適合性に触れたとしても、ここでも改めて触れておくことは大事かもしれません。

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