2010年4月14日水曜日

第1回発展課題レポート(「100 年に一度」)に関して(まだ途中ですが)

「100 年に一度」という表現を数学モデルでどのように表したらよいかという問題についてのフォローです。

まず、この問題に対しての解答というか納得させられるだけの例を、私自身まだ持っていません。
それだけ奥が深い問題だと私自身が感じています。

レポートで寄せられた解答のタイプは大まかに分けると次の3つになるかと思います。
  • 何らかの経済指標変数に対して、「100年に1度」と呼ぶのに見合った水準の確率(99% とか)についてのValue at Risk(VaR)のような基準を設定するというもの
  • 対象となるイベントが発生するまでの時間(イベントと次のイベントまでの時間)を確率変数と見て、発生するまでの時間の期待値を100年と考えるというもの
  • 「100年に一度」を「25000日に一度」と見なし、さらにそれを「ある1日の間に起こる確率が1/25000」と読みかえて、25000回試行の2項分布でイベント発生回数について考察するもの
VaR みたいなものを挙げてくるというのはこちらの予想通りです。VaR の概念を知っていれば、たぶん誰もが真っ先い思いつくと思います。
要は「100年に一度」を「1年に起こる確率が1/100」というような読み替えをして、特に損失分布の「最も悪い部分の1/100」に注目するということですね。

ただし、私の出題意図は「VaR で表現して済ませられる単純な話なのか?」ということを考えてもらいたいというものです。その点についての私の考えは後にまとめます。

「発生するまでの時間の期待値」というのは、昨年度の受講生も数名が示していたアイデアで、実は私は当時想定していなかった考え方で、なるほどと思いました。ただし、「100年に一度」を「発生するまでの時間の期待値が100年」と読み替えることが自然かどうかを考えると、それほど単純ではないかも、と私は思いました。
今回のレポートでは、私が自然でないと感じた感覚の原因について考察をしている内容に触れたものもあり、その点は注目して読むことができました。
期待値が100年という場合は実際には100年未満に起こる確率がけっこう高い一方で、確率はひどく小さいけれども極端に長い間起こらない可能性があって、その結果平均としては100年に落ち着くというモデルがよくあります。つまり、分布全体のイメージと期待値とのギャップですね。そこが基本的な違和感の原因だと思います。

2項分布の視点のポイントは、VaR派と異なり「金融危機」のような事象をどう認定するかという問題を棚上げにして、対象となる事象が起きるor起きないということに注目していると言えると思います。しかし、それゆえに(日々の事象発生を独立と見なせるのであれば)「100年に一度」ということを表現して、分析するのには意外と有効ではないかと思います。今回もこの方針をとった方は興味深い考察をしています。
ただし、VaR派と同様に、「100年に一度」を「1年に起こる確率が1/100」とか「1日に起こる確率が1/25000」という読み換えを出発点にしているので、

では「100年に一度」の数学的表現のどの辺が難しいのか、自分なりに整理してみます。異論や感想があればお寄せください。私もまだまだ視野が狭いと思いますので。
  • 「100に一度」ではなく「100に一度」であり、時間の概念についてはきちんと考慮しなければならない。
  • 500年に一度」や「1000年に一度」ではないところも考慮した方がよいとも思える。
  • 「100に一度」は「100年のうち1年にだけ」と読み替えるのが最も自然に思える。そうなると、単年の損失とかを見てはだめで、100年についての同時分布(100年のうち1年はあるイベントが発生するが、他の99年は起こらないといった確率)を考えていく必要があるのか、とも思えてしまう。その意味で2項分布の議論は使える。
  • 短いスパンで考えるのはあまり得策ではなく、すごく長いスパンで見たとき(要するに何らかの極限として見たとき)に、100年に1回とか100年周期というとらえ方ができればよいとして、大数の法則のような表現がよいかもしれない。


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