いま、確率過程 $\{X_n\}_{n=1,2,\cdots}$ を $\forall n$ に対して「$X_n(\omega) = \omega$ を $n$ で割った余り」と定義する。 例えば $\omega = 63$ とすると \[ X_1(\omega) = 0, X_2(\omega) = 1, X_3(\omega) = 0, X_4(\omega) = 3, X_5(\omega) = 3, \cdots \] となる。
では、$n = 1,2,\cdots$ という時間の進行とともに確率過程 $X_n$ の値を私たちは知らされていくとき、どの時点まで $X_n$ の値を知ることができれば $\omega$ を特定できるだろうか?
先の例で $n = 5$ までの結果が \[ X_1(\omega) = 0, X_2(\omega) = 1, X_3(\omega) = 0, X_4(\omega) = 3, X_5(\omega) = 3 \] と教えられたとしても $\omega = 63$ は特定できるかというと、できない。 なぜなら $\omega = 123$ とか $\omega = 603$ であっても上のような結果になるからである。
問1
$n=15$までの確率過程 $\{X_n\}$ の値が次のように観測された。 \begin{align*} &X_1 = 0, X_2 = 0, X_3 = 1, X_4 = 2, X_5 = 2, X_6 = 4, X_7 = 1, X_8 = 6, \\ &X_9 = 4, X_{10} = 2, X_{11} = 0, X_{12} = 10, X_{13} = 9, X_{14} = 8, X_{15} = 7 \end{align*}
(i) $\omega$ の値を答えよ。
(ii) この $\omega$ の値を特定するのに必要な最小の $n$ の値を答えよ。
問2
一般に、任意の $\omega \in \Omega$ を特定するためには $\{X_n\}$ の値をどの $n$ まで知る必要があるかを調べよ(当然、手計算では無理なので、適当なプログラムを自分で作って探すことになる)。
そのうえで、次の問いに答えよ。
(i) ある $\omega$ を特定することが可能となる最小の $n$ および特定できる $\omega$ の値を答えよ。
(ii) 全ての $\omega$ を特定することが可能となる最小の $n$ を答えよ。
問3
フィルトレーション $(\mathcal{F}_n)_{n \in \mathbb{N}}$ を $\mathcal{F}_n = \sigma\{X_1, \cdots, X_n\}$ のように与える。
(i) $\{ \emptyset, \Omega \}, \mathcal{F}$ および $\mathcal{F}_1, \cdots, \mathcal{F}_{10}$ の12個の$\sigma$-加法族について、これらを適当な順序に並べて、それぞれの間を「$=$」または「$\subsetneqq$」のいずれか適当な方を用いて包含関係を明らかにせよ。
(ii) 確率変数 $Y(\omega) = \omega$ について、問1 の(i)の答えの $\omega$ の値に対する $\mathbf{E}[ Y | \mathcal{F}_n](\omega)$ の値を $n = 1,2,\cdots,10$ についてそれぞれ求めよ(ここでは、条件付き期待値を確率変数として表示するのではなく、特定の $\omega$ を与えたときの数値をそれぞれの $n$ について答えることを求めている)。