2012年2月8日水曜日

「金融数理の基礎」:期末試験採点講評(更新)

解答例はイントラネットにアップしておきました。


受験者数は17名。 問題冊子に示したとおりの配点でのガチンコ採点は一通り終了しました。
2回目の見直し採点を行い,期末試験としての素点は確定させました。
いちおう中間試験と課題レポート評価をもとにした成績も算出していますが、最終的な成績のつけ方はもう少し考えます。
ただし、過去に比べても、試験問題の難易度はあまり変えていないつもりですので、必要以上に救済するつもりはありません。

なお、期末試験だけの最高点は85点(1名)です。

なお、大問別の平均点は以下の通りです。
問題1:13.59 (/25点)   問題2:7.29 (/25点)  問題3:11.65 (/25点)  問題4:10.29 (/25点) 

以下は各問題についての簡単な講評です。

【問題1】 問題の背景はトランプ1枚をランダムに選ぶだけのことです。それをふまえて「マークが赤か黒か」と「数字部分を4で割った余りはいくつか」に応じてそれぞれ点数(確率変数 $X$ と $Y$)を与えて、最終的にマークと数字からのポイントをかけ算したものを得点とする(確率変数$Z$)といったゲームを想定してもらう問題でした。

そう言われればもっと気楽に答えられたというかもしれませんが、質問の仕方をわざと難しくしていたこともありますし、テストということで必要以上に難しく考えすぎたのでしょう。
その意味で数学というよりは国語力の要素が強かったのでしょうか。

(1) これはできていてほしい問題でしたが、間違えている人もいました。
(2) 二つとも正解という人はかなり少なかったです。どちかといえば $Y$ の期待値の正答率が低かったです。(1)を間違えていても期待値は正解という人はいました。
(3) 何を示せばいいか理解できていると判断できたら2点あげました。
(4) (2)の答えが間違っていても、独立な確率変数の期待値の計算を意識している(かどうかは本当は分かりませんが)という意味で、 (2)の積になっている人には1点あげました。
(5) どうも逆像は苦手な人が多いようです。ゲームの点数が2点になるカードは何種類かを答えるだけの問題です。
(6) 減点を1つ間違いにつき1点にしました。5個間違いなら3点になります。ここの条件付期待値は、要するに「マークだけ分かったときのゲームの点数の期待値」および「数字だけ分かったときのゲームの点数の期待値」を考えよ、という問題でした。ですから難しく考えすぎなければ、条件付期待値の性質に頼らずとも、直感で入る数字は分かったかと思います。


【問題2】少し本格的な数学の問題にしましたが、(1)~(3)くらいは解けるかな、という期待でした。

(1) 必要条件と十分条件は、混乱すると思いますが確実に答えてほしいところでした。間違った人の方も半数くらいいました。
(2) 授業でもやりました。説明不足なものが目立ちましたので、ポイントを完全に抑えていないと減点しています。
(3)「期待値が一定」というものが入らないと、最後の結論に直接つながりません。
(4) 下線部(d)の期待値の中を見ると、$k = \ell+1$ の場合だけ項が残っているので、$k=\ell + 1$ということに気づけます、という意図で出題しました。
(5) 条件付期待値の定義は分かりにくいので、これが一番難しいかな、と思っていました。できていたのは一人だけでした。

【問題3】いちおう授業で出しますよ、といったところを中心に出したつもりです。

(1) 過不足なく3つ選んでいて4点。一つ少ない、一つ多いは2点、1つ正解なら1点、という風にしました。さすがに全部選択した場合は0点にしました。
(2) $\mathcal{F}_k$-可測とすると「(未来の情報を使うことになるので)不合理」だというニュアンスがない場合は減点しました。しっかり説明できていると判断できた人は数名でした。
(3) 遠回りな説明のものもあって最初は減点したりしていましたが、期待値の計算が本質的に分かっているというものは正答として扱いました。
(4) 完全正解以外は正解ごとに1点与えるようにしました。(a)(d)(e) のところの出来が相対的に今一つでした。
(5) サービス問題のつもりで出題しましたが、意に反して不正解or空欄が多かったです。期待値の方はまじめに計算しなくてもリスク中立確率の下での株価の期待成長率は無リスク利子率に一致するというファイナンスの原則に気づけば、2期間後に株価がリスク中立確率下で平均何倍になっているかは、安全資産を2期分複利で運用したときと同じ倍率 $(1+r)^2 = (1+\frac{1}{6})^2$ であることも納得できると思います。


【問題4】出しますよと言っていたタイプの問題です。(2)だけは少し応用ですが。

(1) $Y$ 以外の変数の値を書いているような人が数名いました。もったいないです。$Y$ は後で計算が楽になるような設定にしたつもりですが、かえって仇となったのでしょうか…
(2) この問題は手付かずの人も多かったのですが、意外と健闘が見られたという印象です。
(3)(4)(5) はサービス問題のつもりでしたが、出来はあまりよくありませんでした。時間切れの人も多かったのか空欄のままの人も多かったです。


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