2011年5月11日水曜日

GW特別問題について

GW特別問題も予想以上に多くの人がチャレンジしてくれました。

隠れた出題意図は、問題1については「発生確率が低い事象に対するリスクのプライシング」、問題2については「シミュレーションの威力を知る」ということにありました。

問題1は、当初「497500回以下表」に対する賞金としては1億円に比べて低い金額を想定していた人がほとんどだったと思います。これは「497500回以下表」になる確率を過大評価していたことの裏返しなはずです。
しかし、実際に二項分布あるいは正規分布近似によって、「497500回以下表」の確率は「500000回ちょうど表」と比べてもずいぶん小さいことが確認できるわけです。

そうなると、普通は確率が小さい事象のイベントの方が賞金を高く設定するでしょう。確率の比を考えて3000億円くらいが妥当という解答がちらほらありました。

ただ、この賞金設定自体は本来いくらでもよいのです。正解はありませんし、ディーラーの立場、プレイヤーの立場で、実は異なる性質のものです。
「497500回以下表」の確率を過大評価してくれるプレーヤーが多そうなら、ディーラーとしては賞金を低めに設定しても(1億円以下にしても)、ゲーム料金次第ではカモにできるかもしれません。

逆に、自分がきちんと確率を把握しているプレイヤーだとすれば、1億円より相当大きな金額でないと納得できないでしょう。ただ、3000億円も出せるディーラーもいるでしょうか?
(カウンターパーティリスクみたいなものを考慮して考えている解答もありました)

また、実際にゲーム料金を設定するという問題では期待値評価で結論づける人が多かったです。そういう人はリスク中立的な人と言えますが、ほとんどの場合プレイしても賞金ゼロになるゲームの割には、プレイ料金が高い人が多かったです。
(賞金が何ももらえないという単純な事実を忘れている感じの人が多かったです)


そもそも、1億円当選確率が0.1% のくじの期待値が10万円になりますが、このくじの料金が10万円と設定されていて、皆さんはやりますか?あるいはやる人がいると考えますか?

要するに、ディーラーとして料金設定する場合には、プレイする人のリスク許容度と何人位がプレイしてくれるかということ、プレーヤーとしての許容料金を考える際には自分のリスク許容度を考える必要が出てくるはずです。
実際の仕事で、市場性のない金融商品のプライシングをする場合には、売る側と買う側のいろんな駆け引きがあるでしょう。この問題はそうした話に相通ずるものとして作ってみました。

みなさんのレポートのコメントにはいろいろ書きましたが、金額の設定の仕方について分かりやすい説明をしているものは少なかったように思います。もう少しいろいろ考えてもらえればと思います。


問題2は、「どれも同じ」という答えも少なからずありましたが、そうではないという単純な驚きを感じてもらえれば十分でもあります。

また、自分なりに検討して戦略を見つけ出してくれた人もいましたが、私が想定していた答えにたどり着いたのは(1)では二人、(2)でも二人だったと思います。
ただし、その答えの根拠は、ある程度ポイントをついているとはいえ、完全とは言えないものでした。

まず、この問題は見た目以上にハードです。
理論的に任意のペアの勝率を評価することはできるのですが、ペアごとに注意するところが違ってくるので、場合によっては評価が大変面倒になります。それらを解答に書くことはできませんし、文章化すること自体が大変です。

そこで、私がとったのはシミュレーションです。つまりコンピュータに実際に何回もコイントスさせて、それぞれ何回勝利したかを記録させていくことで様子をみるというものです。
実際にはてのペアで1万回ずつ勝負させるようにしましたが、理論値にだいぶ近い結果が得られました。

こうしたシミュレーション結果が得られたら、(1)ではHHTに対する勝率が高いパターンを選べばいいですし、(2)では相手がベストな選択をしても自分の勝率がもっとも高く(負け率をできるだけおさえて)、相手がうっかりベストでない選択をしてくれたときの勝率が高くなるようなパターンを選べばよいということになります。

なお、解答例に書きましたが、どちらも「数学セミナー」という月刊誌の今年の4月号・5月号で紹介されていたネタをアレンジしたものです。そちらの解説も機会があれば目を通してみてください。

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