もろもろの資料をイントラネットにアップしておきました。
プレゼン資料の「LDG」も「LGD」に直しておきました。
なお、次回提出する際のレポート課題の対象は、問題2になります。
2011年5月31日火曜日
2011年5月30日月曜日
講義「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」の補講日程
共同研究室から連絡がありましたが、ファイナンシャル・リスク・マネジメントの授業の補講が以下の日程になりました。
7月25日(月)1限:第3講義室 7月28日(木)1限:第3講義室
内容については追って連絡します。
2011年5月26日木曜日
2011年5月25日水曜日
5/31(火) 「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回:リスクの統合、リスク資本配賦
第6回目は、市場リスクの最終回ということになりますが、市場リスクというよりは、リスク尺度にまつわる問題に再度目を向けます。
準教科書では、5章の接合関数(Copulas) の最初の方と6章の6.2, 6.3節あたりの内容のいくつかの話題を大まかに扱います。
予定では、
予習用資料をイントラネットにアップしておきました。
資料には、過去に扱った「多期間リスク尺度」の話題についても資料をつけておきますが、今回の授業では扱いません。
準教科書では、5章の接合関数(Copulas) の最初の方と6章の6.2, 6.3節あたりの内容のいくつかの話題を大まかに扱います。
予定では、
- リスクの統合の話にからめての、コピュラ(copula)についての解説
- リスク資本の配賦の考え方-特にオイラー資本配分原理
予習用資料をイントラネットにアップしておきました。
資料には、過去に扱った「多期間リスク尺度」の話題についても資料をつけておきますが、今回の授業では扱いません。
第4回の課題レポートについて
第4回の課題についてのレポートを提出してくれた方は以下の通りです。
IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011, IM10F013, IM10F022,
IM10F024, IM10F025, IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038,
IM11F011, IM11F012, IM11F021, IK11F016,
提出したはずなのに、IDがここに挙がっていない人は早めに連絡ください。
一通りチェックしてのコメントです。
問題1については割愛します。
問題2について。
250営業日での各信頼水準についての超過回数に対する密度および超過確率に関する表の作成については皆さん正しくできていました。
ただ、解答の多くは、ゾーンの区切りは所与のものとして、99%VaR および 97%, 95%の信頼水準ごとに超過回数と各ゾーンの関係を確率などを示してまとめてくれていたのですが、肝心の「結局、ゾーンの区切り方は妥当なのか? 妥当だとしてなぜそう考えるのか?」という観点で、分かりやすくまとめてあるものは少なかったです。
典型的には、「(帰無仮説である)信頼水準を99%とするモデルが真としたときに、その超過回数以上が観測される確率がある程度低いからイエローゾーン、十分低いからレッドゾーン」という趣旨の説明だけが書かれているわけですが、「第1種の過誤の確率が低いこと」と「リスク評価の際にレッドゾーンと見なすことが妥当」という話をつなぐロジックをもう少し丁寧に説明してほしいと感じることがややありました。
要するに「グリーン」「イエロー」「レッド」という区分を250日のうちの超過回数「0~4」「5~9」「10~」とすることが妥当であるかどうかの判断・意見が表明されていないために、(少なくとも私に)説得力のある説明になっていないものが少なくなかったです。
あと、第2種の過誤をどのように見るかという点について。私自身も第2種の過誤の見方に慣れていないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、ゾーンの決め方には、第2種の過誤の見方も反映されていることが示唆されています(例えば、こちらの本など)。
つまり第一種の過誤を気にしすぎて、保守的に設定するために棄却基準となる超過回数を多くしてしまうと、当該のVaR値が、97%とか95%という、より低い信頼水準のモデルとして許容されてしまい、99%VaRとしては必要以上に保守的な値を設定しなければならない可能性が生じます。それはリスク資本の効率性という観点からあまりよい選択とは言えなくなってきます。
IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011, IM10F013, IM10F022,
IM10F024, IM10F025, IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038,
IM11F011, IM11F012, IM11F021, IK11F016,
提出したはずなのに、IDがここに挙がっていない人は早めに連絡ください。
一通りチェックしてのコメントです。
問題1については割愛します。
問題2について。
250営業日での各信頼水準についての超過回数に対する密度および超過確率に関する表の作成については皆さん正しくできていました。
ただ、解答の多くは、ゾーンの区切りは所与のものとして、99%VaR および 97%, 95%の信頼水準ごとに超過回数と各ゾーンの関係を確率などを示してまとめてくれていたのですが、肝心の「結局、ゾーンの区切り方は妥当なのか? 妥当だとしてなぜそう考えるのか?」という観点で、分かりやすくまとめてあるものは少なかったです。
典型的には、「(帰無仮説である)信頼水準を99%とするモデルが真としたときに、その超過回数以上が観測される確率がある程度低いからイエローゾーン、十分低いからレッドゾーン」という趣旨の説明だけが書かれているわけですが、「第1種の過誤の確率が低いこと」と「リスク評価の際にレッドゾーンと見なすことが妥当」という話をつなぐロジックをもう少し丁寧に説明してほしいと感じることがややありました。
要するに「グリーン」「イエロー」「レッド」という区分を250日のうちの超過回数「0~4」「5~9」「10~」とすることが妥当であるかどうかの判断・意見が表明されていないために、(少なくとも私に)説得力のある説明になっていないものが少なくなかったです。
あと、第2種の過誤をどのように見るかという点について。私自身も第2種の過誤の見方に慣れていないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、ゾーンの決め方には、第2種の過誤の見方も反映されていることが示唆されています(例えば、こちらの本など)。
つまり第一種の過誤を気にしすぎて、保守的に設定するために棄却基準となる超過回数を多くしてしまうと、当該のVaR値が、97%とか95%という、より低い信頼水準のモデルとして許容されてしまい、99%VaRとしては必要以上に保守的な値を設定しなければならない可能性が生じます。それはリスク資本の効率性という観点からあまりよい選択とは言えなくなってきます。
2011年5月24日火曜日
VaR-ES2 ファイル提出者
FRM2011ポートフォリオラリーでの自分のポートフォリオに対して最終的に設定した95%VaRと95%ESのファイル提出者
IM09F010, IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011, IM10F013,
IM10F014, IM10F019, IM10F022, IM10F023, IM10F024, IM10F025,
IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038, IM11F003, IM11F011,
IM11F012, IM11F014, IM11F021, IK11F012, IK11F016,
IM09F010, IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011, IM10F013,
IM10F014, IM10F019, IM10F022, IM10F023, IM10F024, IM10F025,
IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038, IM11F003, IM11F011,
IM11F012, IM11F014, IM11F021, IK11F012, IK11F016,
2011年5月23日月曜日
VaR-ES ファイル提出者
FRM2011ポートフォリオラリーの指定した分散共分散法による95%VaRと95%ESファイル提出者
全員OKになりました
IM09F010, IM09F023, IM09F024, IM09F029, IM10F002, IM10F004,
IM10F006, IM10F011, IM10F013, IM10F014, IM10F019, IM10F022,
IM10F023, IM10F024, IM10F025, IM10F029, IM10F033, IM10F034,
IM10F038, IM11F003, IM11F011, IM11F012, IM11F014, IM11F021,
IK11F012, IK11F016
全員OKになりました
IM09F010, IM09F023, IM09F024, IM09F029, IM10F002, IM10F004,
IM10F006, IM10F011, IM10F013, IM10F014, IM10F019, IM10F022,
IM10F023, IM10F024, IM10F025, IM10F029, IM10F033, IM10F034,
IM10F038, IM11F003, IM11F011, IM11F012, IM11F014, IM11F021,
IK11F012, IK11F016
2011年5月19日木曜日
5/24(火) 「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回:リスクヘッジ
第5回目は、リスク・ヘッジがテーマです。
予定では
なお、レポート課題その1のための、最終的に設定する95%VaR, 95%ES のファイル提出も忘れずに。
準教科書にはぴったり当てはまる箇所はありません。
そこで、
J.C.Hull『フィナンシャルリスクマネジメント』および『フィナンシャル・エンジニアリング』
の中からヘッジに関係する基本的なトピックをいくつか選んで解説します。
また、Black-Scholesモデルを題材に Greeks の話もしたいと思います。
予習用資料をイントラネットにアップしておきます。
予定では
- 先物を利用するヘッジ例
- オプションを利用するヘッジ例
- Greeks
- 様々なヘッジ手法
なお、レポート課題その1のための、最終的に設定する95%VaR, 95%ES のファイル提出も忘れずに。
2011年5月17日火曜日
「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回フォロー(追記)
もろもろの資料をイントラネットにアップしておきました。
(ヒストリカル法の参考Excelファイルが正しくアップされていませんでした。アップし直しました。失礼しました。)
だいぶ駆け足になってしまったので、授業で全て消化できなかったかと思いますが、ヒストリカル法で自分のポートフォリオのVaRとESを算出するという作業はぜひやってください。
もっとも、「ヒストリカル法」というだけでは何も進みません。過去何日分のリスクファクター変化量を使うのか、パーセンタイル点をどう決めるのか、など自分で考えて決めることはたくさんあります。
次回の課題は、自分の33業種ポートフォリオについて、いろいろ検討して最終的に自分が適当だと考える 95%VaRと95%ES の数値を与えるというものです。提出方法を間違えないようにしてください。
(間違えても何とかなりますが)
あと、演習問題2については希望者はレポートとして提出してください。演習問題1については答えをプレゼン資料に与えてあるので、レポートとしての提出を要しませんが、与えた表の使い方などよく考えてほしいところです。
また、前回の課題で分散共分散法の結果が NG だった人はやり直して再提出してください。
たかが授業の課題ですが、こういう課題を間違えずに慎重に作業することが、修論での分析作業や日頃の仕事におけるミス軽減につながっていくと思います。
また、メール返信で間違いでは?と指摘された人も、それは私が一見してすぐにおかしいと気づけるレベルのミスでもあったということですので、できれば自分で気づいてほしかったです。今後の作業で注意してください。
(ヒストリカル法の参考Excelファイルが正しくアップされていませんでした。アップし直しました。失礼しました。)
だいぶ駆け足になってしまったので、授業で全て消化できなかったかと思いますが、ヒストリカル法で自分のポートフォリオのVaRとESを算出するという作業はぜひやってください。
もっとも、「ヒストリカル法」というだけでは何も進みません。過去何日分のリスクファクター変化量を使うのか、パーセンタイル点をどう決めるのか、など自分で考えて決めることはたくさんあります。
次回の課題は、自分の33業種ポートフォリオについて、いろいろ検討して最終的に自分が適当だと考える 95%VaRと95%ES の数値を与えるというものです。提出方法を間違えないようにしてください。
(間違えても何とかなりますが)
あと、演習問題2については希望者はレポートとして提出してください。演習問題1については答えをプレゼン資料に与えてあるので、レポートとしての提出を要しませんが、与えた表の使い方などよく考えてほしいところです。
また、前回の課題で分散共分散法の結果が NG だった人はやり直して再提出してください。
たかが授業の課題ですが、こういう課題を間違えずに慎重に作業することが、修論での分析作業や日頃の仕事におけるミス軽減につながっていくと思います。
また、メール返信で間違いでは?と指摘された人も、それは私が一見してすぐにおかしいと気づけるレベルのミスでもあったということですので、できれば自分で気づいてほしかったです。今後の作業で注意してください。
第3回の演習問題のレポートについて
前回の演習問題は特にレポートにするつもりはありませんでしたが、提出していただいた方については目を通して返却します。
成績処理上は記録はつけておきますが、平常点への算入は保留しておきます。
IM09F029, IM10F006, IM10F025, IM10F029, IM10F034, IM11F003,
IM11F012, IM11F021, IK11F016,
成績処理上は記録はつけておきますが、平常点への算入は保留しておきます。
IM09F029, IM10F006, IM10F025, IM10F029, IM10F034, IM11F003,
IM11F012, IM11F021, IK11F016,
2011年5月14日土曜日
「金融数理の基礎」2010年度秋学期の総括
学生の皆さんの授業評価コメントをまとめたものが共同研究室から送られてきました。
今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。
(もちろん、最後まで授業に出た方の声だけが反映されていて、途中で履修取り下げた方の声は反映されていないことを予めお断りしてきます。)
以下、皆さんのコメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままではなく、要点が分かるように私が適当に編集したものも含まれています。
-----------------------------------------------------------------------------
「前半は抽象的で非常にわかりにくく、残念ながら未だ完全に理解していない。後半は前半でのもやもや感が常態化したため、その比較という意味ではわかった気が少しだけした」
「内容は難しくついていくのが大変だった」
「後半は簡単になってしまったのが残念である。より発展的な内容のコマ(応用数理ファイナンス)などがあれば良いと思う」
「かなり高度な内容で理解を超える部分が多かった」
「前半は難しかった」
「計算式が多くボードに書く量が多いため、どうしてこのような事をするのかといった事や途中の式が除かれるのは残念だった」
「前半部分が難しくきちんと理解できなかった」
「前半はハードだった」
「前半は正直良くわからなかった。ゆっくりじっくり全般を復習したい」
「後半も宿題があった方が良いと思う」
(回答) 率直なご意見ありがとうございます。前半というのは「集合論・測度論・積分論」のパートですね。これらが分かりにくいという意見が多いのは、そもそも扱う内容の抽象度・難易度が高いということもありますが、私自身がこうした数学の内容を(しかも、数学のトレーニングを受けていない方向けに)授業で教えるのが初めてだったという経験不足および指導法研究不足の面もかなりの比重を占めていると思います(もちろん、そもそもの私の能力が…)。その点でご迷惑をおかけしたと思います。
また、前半と後半の難易度のバランスについてももう少し考えてみます。ただ、数学的な内容の難易度は特に変わらないと思います。後半は、確率とか期待値とか金融市場モデルとか、なんとなく馴染んでいる題材だから安心できているという心理的効果が大きいのかもしれません。あるいは、具体的な計算を多く扱ったためかなとも。
本来、抽象度の高い数学の内容は、私自身の経験でもそうなのですが、講義だけで理解できるということはなく、たくさんの演習を通じて何となく分かった気になり、さらにいろいろ勉強していったときに突然一気に見通しが良くなることがあるという性質のものだと思います。
また、どうしてもいろんな概念を導入するということが必要になり、時間制約もあって、結果的に定理や命題の証明などを端折ってしまうというのは、教える側としても最大のジレンマですね…
でも、難しかったと言いつつ前向きに考えていただいている回答が多かったことは非常にうれしいですね。
2011年度は授業時間数が実質2回増えるので、前半をもう少し丁寧にできるかなと思います。
「初回に説明はあったもののもう少し金融商品の具体的なプライシングの導出方法が多いと考えていた」
「履修前のレベルをはるかに超越していた。基礎なのでもう少し基礎的事項に時間を取って欲しかった」「基礎なのでもう少し基礎的なアプローチもあった方が良かった」
「前半の数学の話を削って後半の内容を充実させて欲しかった」
(回答) 「金融数理の基礎」という科目名からすれば、当然の要望だと思います。ただ私自身は、何年も教えているなかで、そもそも集合とか写像とか積分とか、いやそれ以前に「数式と論理で考える」というトレーニングそのものが「金融数理の基礎」という科目に必要な内容だと真剣に思うようになりました。
もちろん、私自身が数学科出身で、数学という視点でファイナンスの問題を眺めることが多かったということが、こうした結論に至った大きな理由だと思っています。
しかし、程度の差はあれファイナンスに関する学術論文には数式や数学的な議論が含まれています。そうした議論を上っ面で理解して済ませることも可能ですが、きちんと理解しようとするためには、抽象的な数学の議論に接したことがあるというのはアドバンテージだと思うのです。それは「この記号の定義は何だっけ?」「仮定や条件は何だっけ?」「この数式タイポじゃないの?」「必要条件と十分条件を取り違えたような議論をしているな」…といったような思考として現れてくるものだと思います。つまり、数式の結果を鵜呑みに出来なくなるとか、いい加減な議論をすんなり受け付けなくなる体質になるということこそが、この授業の成果だと思っています。
あと、藤田先生の「金融数理」「派生証券理論」では、具体的な計算をたくさん扱うという内容になっていると思いますので、私の授業でのモヤモヤの一部は解消されるかと思います。もちろん、藤田先生ももっと独自のワールドを作られると思いますが。
「手書きは、授業に集中できず理解しにくくなるので正直やめて欲しい。ある程度理解度がある人にとっては手書きしながら整理できるので有効と思うが、自分には書くことに精いっぱいで説明を聞く余裕がなかったので理解度は低い」
(回答)板書については、いつも賛否両論いただいていて、板書スタイルを肯定する意見もいただいています。プレゼンテーションスタイルで授業をすることももちろん可能ですが、私は「数学」に重きをおいた授業では、板書を基本にすべきという(古い)考えをもっており、このスタイルを変えるつもりは申し訳ないのですが今のところありません。
その場で分からなくても、徹底的に書いていくということが、結果的に短時間でいろいろと吸収するために必要な要素に思えます。教育学的な根拠はまるでありませんが。
人の話を聞いて要点を整理しながら、90分くらい集中してひたすらメモをとり続けるという作業は、むしろ実務でこそ必要な能力だと思うのですが…
「絶版の本を教科書に指定しないでほしい」
「教科書の設問の評価が低いのは、教科書を手に入れられなかったから」
「準テキストは非常に読みにくかった。行間を深く読み解けられない、今現在も」
「テキストは購入できるものを選んでもらいたい」
(回答) 教科書が絶版状態だったということに気づくのが遅く、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。2011年度も『測度と積分』をベースに前半の授業をする予定にしています。最近、Amazonでも購入できるようになったようです。ただ、教科書については最低限のフォローはしたいと思います。
指定した教科書・準教科書は、分かりやすく説明されているテキストだと私は思って挙げたのですが、合う合わないはどうしても個人差があると思います。そもそも、数学のテキストですから簡単に読めるものではありません。
「中川先生の数学の別の授業(例えばベクトル解析、微分方程式、フーリエ変換等)を受けてみたい」
(回答) さすがにそこまではやりすぎかと… ただ、確率積分の導入、伊藤の公式あたりまでのショートカット・コースというのは考えてみたいと思います。
今年度も、おおむね好意的に評価していただきました。
(もちろん、最後まで授業に出た方の声だけが反映されていて、途中で履修取り下げた方の声は反映されていないことを予めお断りしてきます。)
以下、皆さんのコメント(お褒めの内容については割愛させていただきます)および、それに対する回答です。
また、コメントは原文そのままではなく、要点が分かるように私が適当に編集したものも含まれています。
-----------------------------------------------------------------------------
「前半は抽象的で非常にわかりにくく、残念ながら未だ完全に理解していない。後半は前半でのもやもや感が常態化したため、その比較という意味ではわかった気が少しだけした」
「内容は難しくついていくのが大変だった」
「後半は簡単になってしまったのが残念である。より発展的な内容のコマ(応用数理ファイナンス)などがあれば良いと思う」
「かなり高度な内容で理解を超える部分が多かった」
「前半は難しかった」
「計算式が多くボードに書く量が多いため、どうしてこのような事をするのかといった事や途中の式が除かれるのは残念だった」
「前半部分が難しくきちんと理解できなかった」
「前半はハードだった」
「前半は正直良くわからなかった。ゆっくりじっくり全般を復習したい」
「後半も宿題があった方が良いと思う」
(回答) 率直なご意見ありがとうございます。前半というのは「集合論・測度論・積分論」のパートですね。これらが分かりにくいという意見が多いのは、そもそも扱う内容の抽象度・難易度が高いということもありますが、私自身がこうした数学の内容を(しかも、数学のトレーニングを受けていない方向けに)授業で教えるのが初めてだったという経験不足および指導法研究不足の面もかなりの比重を占めていると思います(もちろん、そもそもの私の能力が…)。その点でご迷惑をおかけしたと思います。
また、前半と後半の難易度のバランスについてももう少し考えてみます。ただ、数学的な内容の難易度は特に変わらないと思います。後半は、確率とか期待値とか金融市場モデルとか、なんとなく馴染んでいる題材だから安心できているという心理的効果が大きいのかもしれません。あるいは、具体的な計算を多く扱ったためかなとも。
本来、抽象度の高い数学の内容は、私自身の経験でもそうなのですが、講義だけで理解できるということはなく、たくさんの演習を通じて何となく分かった気になり、さらにいろいろ勉強していったときに突然一気に見通しが良くなることがあるという性質のものだと思います。
また、どうしてもいろんな概念を導入するということが必要になり、時間制約もあって、結果的に定理や命題の証明などを端折ってしまうというのは、教える側としても最大のジレンマですね…
でも、難しかったと言いつつ前向きに考えていただいている回答が多かったことは非常にうれしいですね。
2011年度は授業時間数が実質2回増えるので、前半をもう少し丁寧にできるかなと思います。
「初回に説明はあったもののもう少し金融商品の具体的なプライシングの導出方法が多いと考えていた」
「履修前のレベルをはるかに超越していた。基礎なのでもう少し基礎的事項に時間を取って欲しかった」「基礎なのでもう少し基礎的なアプローチもあった方が良かった」
「前半の数学の話を削って後半の内容を充実させて欲しかった」
(回答) 「金融数理の基礎」という科目名からすれば、当然の要望だと思います。ただ私自身は、何年も教えているなかで、そもそも集合とか写像とか積分とか、いやそれ以前に「数式と論理で考える」というトレーニングそのものが「金融数理の基礎」という科目に必要な内容だと真剣に思うようになりました。
もちろん、私自身が数学科出身で、数学という視点でファイナンスの問題を眺めることが多かったということが、こうした結論に至った大きな理由だと思っています。
しかし、程度の差はあれファイナンスに関する学術論文には数式や数学的な議論が含まれています。そうした議論を上っ面で理解して済ませることも可能ですが、きちんと理解しようとするためには、抽象的な数学の議論に接したことがあるというのはアドバンテージだと思うのです。それは「この記号の定義は何だっけ?」「仮定や条件は何だっけ?」「この数式タイポじゃないの?」「必要条件と十分条件を取り違えたような議論をしているな」…といったような思考として現れてくるものだと思います。つまり、数式の結果を鵜呑みに出来なくなるとか、いい加減な議論をすんなり受け付けなくなる体質になるということこそが、この授業の成果だと思っています。
あと、藤田先生の「金融数理」「派生証券理論」では、具体的な計算をたくさん扱うという内容になっていると思いますので、私の授業でのモヤモヤの一部は解消されるかと思います。もちろん、藤田先生ももっと独自のワールドを作られると思いますが。
「手書きは、授業に集中できず理解しにくくなるので正直やめて欲しい。ある程度理解度がある人にとっては手書きしながら整理できるので有効と思うが、自分には書くことに精いっぱいで説明を聞く余裕がなかったので理解度は低い」
(回答)板書については、いつも賛否両論いただいていて、板書スタイルを肯定する意見もいただいています。プレゼンテーションスタイルで授業をすることももちろん可能ですが、私は「数学」に重きをおいた授業では、板書を基本にすべきという(古い)考えをもっており、このスタイルを変えるつもりは申し訳ないのですが今のところありません。
その場で分からなくても、徹底的に書いていくということが、結果的に短時間でいろいろと吸収するために必要な要素に思えます。教育学的な根拠はまるでありませんが。
人の話を聞いて要点を整理しながら、90分くらい集中してひたすらメモをとり続けるという作業は、むしろ実務でこそ必要な能力だと思うのですが…
「絶版の本を教科書に指定しないでほしい」
「教科書の設問の評価が低いのは、教科書を手に入れられなかったから」
「準テキストは非常に読みにくかった。行間を深く読み解けられない、今現在も」
「テキストは購入できるものを選んでもらいたい」
(回答) 教科書が絶版状態だったということに気づくのが遅く、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。2011年度も『測度と積分』をベースに前半の授業をする予定にしています。最近、Amazonでも購入できるようになったようです。ただ、教科書については最低限のフォローはしたいと思います。
指定した教科書・準教科書は、分かりやすく説明されているテキストだと私は思って挙げたのですが、合う合わないはどうしても個人差があると思います。そもそも、数学のテキストですから簡単に読めるものではありません。
「中川先生の数学の別の授業(例えばベクトル解析、微分方程式、フーリエ変換等)を受けてみたい」
(回答) さすがにそこまではやりすぎかと… ただ、確率積分の導入、伊藤の公式あたりまでのショートカット・コースというのは考えてみたいと思います。
2011年5月12日木曜日
5/17(火)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回:市場リスク(2)
第4回目は、VaRとES算出の話題の続きですが、前回プロジェクタが使えなかったので、前回分の資料に関していくつか必要な話をする予定です。
第4回の講義プレゼンのハンドアウト資料と演習問題(バックテストに関するもの)・レポート課題のファイルをイントラネット(第4回目のファイルのところ)にアップしておきました。
また、第1回レポート課題(成績評価に直結する)の説明も行う予定です。
第4回の講義プレゼンのハンドアウト資料と演習問題(バックテストに関するもの)・レポート課題のファイルをイントラネット(第4回目のファイルのところ)にアップしておきました。
準教科書でいうと、2.3.2, 2.3.3, 2.3.5(or 4.4.3) , 3.1.4 項の内容に関する資料を用意していますが、全部を詳しく説明する時間がありませんので、次のトピックに重点をおきます。
- 前回の演習問題3についての簡単な解説
- 前回資料:長い期間のVaR算出への対処 (2.3.4項)
- ヒストリカル法による VaRの計測の概要
- 超過回数に基づくバックテストの考え方
また、第1回レポート課題(成績評価に直結する)の説明も行う予定です。
2011年5月11日水曜日
MathJax の練習
\[ \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} = \frac{\pi^2}{6}\]
\[E^Q\left[\exp\Bigl(-\int_t^T r_sds\Bigr)X(1 - N_T) | \mathcal{G}_t\right] = (1 - N_t)E^Q\left[\exp\Bigl(-\int_t^T R_sds\Bigr)X | \mathcal{F}_t\right] \]
\[E^Q\left[\exp\Bigl(-\int_t^T r_sds\Bigr)X(1 - N_T) | \mathcal{G}_t\right] = (1 - N_t)E^Q\left[\exp\Bigl(-\int_t^T R_sds\Bigr)X | \mathcal{F}_t\right] \]
GW特別問題について
GW特別問題も予想以上に多くの人がチャレンジしてくれました。
隠れた出題意図は、問題1については「発生確率が低い事象に対するリスクのプライシング」、問題2については「シミュレーションの威力を知る」ということにありました。
問題1は、当初「497500回以下表」に対する賞金としては1億円に比べて低い金額を想定していた人がほとんどだったと思います。これは「497500回以下表」になる確率を過大評価していたことの裏返しなはずです。
しかし、実際に二項分布あるいは正規分布近似によって、「497500回以下表」の確率は「500000回ちょうど表」と比べてもずいぶん小さいことが確認できるわけです。
そうなると、普通は確率が小さい事象のイベントの方が賞金を高く設定するでしょう。確率の比を考えて3000億円くらいが妥当という解答がちらほらありました。
ただ、この賞金設定自体は本来いくらでもよいのです。正解はありませんし、ディーラーの立場、プレイヤーの立場で、実は異なる性質のものです。
「497500回以下表」の確率を過大評価してくれるプレーヤーが多そうなら、ディーラーとしては賞金を低めに設定しても(1億円以下にしても)、ゲーム料金次第ではカモにできるかもしれません。
逆に、自分がきちんと確率を把握しているプレイヤーだとすれば、1億円より相当大きな金額でないと納得できないでしょう。ただ、3000億円も出せるディーラーもいるでしょうか?
(カウンターパーティリスクみたいなものを考慮して考えている解答もありました)
また、実際にゲーム料金を設定するという問題では期待値評価で結論づける人が多かったです。そういう人はリスク中立的な人と言えますが、ほとんどの場合プレイしても賞金ゼロになるゲームの割には、プレイ料金が高い人が多かったです。
(賞金が何ももらえないという単純な事実を忘れている感じの人が多かったです)
そもそも、1億円当選確率が0.1% のくじの期待値が10万円になりますが、このくじの料金が10万円と設定されていて、皆さんはやりますか?あるいはやる人がいると考えますか?
要するに、ディーラーとして料金設定する場合には、プレイする人のリスク許容度と何人位がプレイしてくれるかということ、プレーヤーとしての許容料金を考える際には自分のリスク許容度を考える必要が出てくるはずです。
実際の仕事で、市場性のない金融商品のプライシングをする場合には、売る側と買う側のいろんな駆け引きがあるでしょう。この問題はそうした話に相通ずるものとして作ってみました。
みなさんのレポートのコメントにはいろいろ書きましたが、金額の設定の仕方について分かりやすい説明をしているものは少なかったように思います。もう少しいろいろ考えてもらえればと思います。
問題2は、「どれも同じ」という答えも少なからずありましたが、そうではないという単純な驚きを感じてもらえれば十分でもあります。
また、自分なりに検討して戦略を見つけ出してくれた人もいましたが、私が想定していた答えにたどり着いたのは(1)では二人、(2)でも二人だったと思います。
ただし、その答えの根拠は、ある程度ポイントをついているとはいえ、完全とは言えないものでした。
まず、この問題は見た目以上にハードです。
理論的に任意のペアの勝率を評価することはできるのですが、ペアごとに注意するところが違ってくるので、場合によっては評価が大変面倒になります。それらを解答に書くことはできませんし、文章化すること自体が大変です。
そこで、私がとったのはシミュレーションです。つまりコンピュータに実際に何回もコイントスさせて、それぞれ何回勝利したかを記録させていくことで様子をみるというものです。
実際にはてのペアで1万回ずつ勝負させるようにしましたが、理論値にだいぶ近い結果が得られました。
こうしたシミュレーション結果が得られたら、(1)ではHHTに対する勝率が高いパターンを選べばいいですし、(2)では相手がベストな選択をしても自分の勝率がもっとも高く(負け率をできるだけおさえて)、相手がうっかりベストでない選択をしてくれたときの勝率が高くなるようなパターンを選べばよいということになります。
なお、解答例に書きましたが、どちらも「数学セミナー」という月刊誌の今年の4月号・5月号で紹介されていたネタをアレンジしたものです。そちらの解説も機会があれば目を通してみてください。
隠れた出題意図は、問題1については「発生確率が低い事象に対するリスクのプライシング」、問題2については「シミュレーションの威力を知る」ということにありました。
問題1は、当初「497500回以下表」に対する賞金としては1億円に比べて低い金額を想定していた人がほとんどだったと思います。これは「497500回以下表」になる確率を過大評価していたことの裏返しなはずです。
しかし、実際に二項分布あるいは正規分布近似によって、「497500回以下表」の確率は「500000回ちょうど表」と比べてもずいぶん小さいことが確認できるわけです。
そうなると、普通は確率が小さい事象のイベントの方が賞金を高く設定するでしょう。確率の比を考えて3000億円くらいが妥当という解答がちらほらありました。
ただ、この賞金設定自体は本来いくらでもよいのです。正解はありませんし、ディーラーの立場、プレイヤーの立場で、実は異なる性質のものです。
「497500回以下表」の確率を過大評価してくれるプレーヤーが多そうなら、ディーラーとしては賞金を低めに設定しても(1億円以下にしても)、ゲーム料金次第ではカモにできるかもしれません。
逆に、自分がきちんと確率を把握しているプレイヤーだとすれば、1億円より相当大きな金額でないと納得できないでしょう。ただ、3000億円も出せるディーラーもいるでしょうか?
(カウンターパーティリスクみたいなものを考慮して考えている解答もありました)
また、実際にゲーム料金を設定するという問題では期待値評価で結論づける人が多かったです。そういう人はリスク中立的な人と言えますが、ほとんどの場合プレイしても賞金ゼロになるゲームの割には、プレイ料金が高い人が多かったです。
(賞金が何ももらえないという単純な事実を忘れている感じの人が多かったです)
そもそも、1億円当選確率が0.1% のくじの期待値が10万円になりますが、このくじの料金が10万円と設定されていて、皆さんはやりますか?あるいはやる人がいると考えますか?
要するに、ディーラーとして料金設定する場合には、プレイする人のリスク許容度と何人位がプレイしてくれるかということ、プレーヤーとしての許容料金を考える際には自分のリスク許容度を考える必要が出てくるはずです。
実際の仕事で、市場性のない金融商品のプライシングをする場合には、売る側と買う側のいろんな駆け引きがあるでしょう。この問題はそうした話に相通ずるものとして作ってみました。
みなさんのレポートのコメントにはいろいろ書きましたが、金額の設定の仕方について分かりやすい説明をしているものは少なかったように思います。もう少しいろいろ考えてもらえればと思います。
問題2は、「どれも同じ」という答えも少なからずありましたが、そうではないという単純な驚きを感じてもらえれば十分でもあります。
また、自分なりに検討して戦略を見つけ出してくれた人もいましたが、私が想定していた答えにたどり着いたのは(1)では二人、(2)でも二人だったと思います。
ただし、その答えの根拠は、ある程度ポイントをついているとはいえ、完全とは言えないものでした。
まず、この問題は見た目以上にハードです。
理論的に任意のペアの勝率を評価することはできるのですが、ペアごとに注意するところが違ってくるので、場合によっては評価が大変面倒になります。それらを解答に書くことはできませんし、文章化すること自体が大変です。
そこで、私がとったのはシミュレーションです。つまりコンピュータに実際に何回もコイントスさせて、それぞれ何回勝利したかを記録させていくことで様子をみるというものです。
実際にはてのペアで1万回ずつ勝負させるようにしましたが、理論値にだいぶ近い結果が得られました。
こうしたシミュレーション結果が得られたら、(1)ではHHTに対する勝率が高いパターンを選べばいいですし、(2)では相手がベストな選択をしても自分の勝率がもっとも高く(負け率をできるだけおさえて)、相手がうっかりベストでない選択をしてくれたときの勝率が高くなるようなパターンを選べばよいということになります。
なお、解答例に書きましたが、どちらも「数学セミナー」という月刊誌の今年の4月号・5月号で紹介されていたネタをアレンジしたものです。そちらの解説も機会があれば目を通してみてください。
「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回フォロー(追記)
前回課題の解答例(訂正版をアップ)と関連資料、配布プリント(課題付き)、演習用の過去データをイントラネットにアップしておきました。
また、説明に使うはずだったプレゼン資料もアップしておきました。
そこには授業で扱わなかった問題についても答えが載っていますので、それを参考にしてください。
(ということで、今回の演習問題については、次回特にレポートとして提出しなくてもかまいません。解答例を納得いくまで考えてください)
次回の課題は、自分の33業種ポートフォリオについてルールどおりに分散共分散法で 95%VaRと95%ES を算出するというものです。
不偏推定値の計算法については、プレゼン資料の21ページを参考にしてください。
なお、Excel関数を使う場合は、不偏推定値を求めるものかどうかをきちんと確認しましょう。
また、説明に使うはずだったプレゼン資料もアップしておきました。
そこには授業で扱わなかった問題についても答えが載っていますので、それを参考にしてください。
(ということで、今回の演習問題については、次回特にレポートとして提出しなくてもかまいません。解答例を納得いくまで考えてください)
次回の課題は、自分の33業種ポートフォリオについてルールどおりに分散共分散法で 95%VaRと95%ES を算出するというものです。
不偏推定値の計算法については、プレゼン資料の21ページを参考にしてください。
なお、Excel関数を使う場合は、不偏推定値を求めるものかどうかをきちんと確認しましょう。
2011年5月10日火曜日
第2回の課題レポートについて
現時点(5/10 20:20)までに第2回の課題についてのレポートを提出してくれた方は以下の通りです。
IM09F023, IM09F029, IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011,
IM10F013, IM10F014, IM10F019, IM10F022, IM10F024, IM10F025,
IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038, IM11F003, IM11F011,
IM11F012, IM11F014, IM11F021, IK11F016,
提出したはずなのに、IDがここに挙がっていない人は早めに連絡ください。
問題1.(1) 授業で説明したものなので、特にコメントはありません。
(2) 準テキストの例2.5を参考にして解いた人が多かったですが、自分なりに考えた人もいました。ただ自分なりに考えた人の中では数式を使ってうまく表現できている人は少なめでした。
準テキストを参考にしていた人でも、レポートを読む限りでは、きちんと「行間」を埋められている人と、その辺が怪しい人が見受けられました。
対数価格を1つめのリスクファクターとして考えて、対数価格差(=対数収益率)をリスクファクター変化量にしているわけなので、
\[ C_{\ln S}^{BS}X_{t+1,1} \]
という数式が来るのが自然に思われますが、実際にはいわゆる原資産価格に関する価格感応度「デルタ」を用いて
\[ C_{S}^{BS}S_tX_{t+1,1} \]
という数式が使われています。これはこれで正しいのですが、なぜそのように表示できるかを整合的に説明できていた人はわずかで、多くの人が結果を書き写した感じでした。
例えば、合成関数の微分と逆関数の微分を用いて
\[ C_{\ln S}^{BS} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial \ln S} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial S}\frac{\partial S}{\partial \ln S} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial S}\frac{1}{S} = C_{S}^{BS} S \]
となるという説明が可能かと思います。
(3) これも 準テキストの例2.6を参考にして解いた人が多かったです。自分で考えたと思われる人の中には、株式と同様に債券の対数価格そのものをリスクファクターにしていた人がいました。間違いではありませんが、債券の場合は「最終利回り」をリスクファクターと見なせば、その感応度が修正デュレーションになるということを知っていれば、$y(t,T_i)$ をリスクファクターと考えることができたでしょう。
ちなみに準テキストに沿って素朴に式変形していくと (2.13)式での $X_{t+1.i}$ の係数部分は $(T_i - tΔ)$ ではなくて、$(T_i - (t+1)Δ)$ になると思います。前回の授業できちんと触れなかった「偏微分を用いた1次近似」の式を使えば$(T_i - tΔ)$ が現れてくるはずです。
素朴な式変形の場合でも、おそらく、$\Delta$ と $X_{t+1.i}$ の積の部分は他と比べていっそう小さくなるはずなので、無視してもかまわないため
\[ (T_i - (t+1)\Delta)X_{t+1,1} \approx (T_i - t\Delta)X_{t+1,1} \qquad (\because \Delta X_{t+1,1} \ll 1 ) \]
IM09F023, IM09F029, IM10F002, IM10F004, IM10F006, IM10F011,
IM10F013, IM10F014, IM10F019, IM10F022, IM10F024, IM10F025,
IM10F029, IM10F033, IM10F034, IM10F038, IM11F003, IM11F011,
IM11F012, IM11F014, IM11F021, IK11F016,
提出したはずなのに、IDがここに挙がっていない人は早めに連絡ください。
問題1.(1) 授業で説明したものなので、特にコメントはありません。
(2) 準テキストの例2.5を参考にして解いた人が多かったですが、自分なりに考えた人もいました。ただ自分なりに考えた人の中では数式を使ってうまく表現できている人は少なめでした。
準テキストを参考にしていた人でも、レポートを読む限りでは、きちんと「行間」を埋められている人と、その辺が怪しい人が見受けられました。
対数価格を1つめのリスクファクターとして考えて、対数価格差(=対数収益率)をリスクファクター変化量にしているわけなので、
\[ C_{\ln S}^{BS}X_{t+1,1} \]
という数式が来るのが自然に思われますが、実際にはいわゆる原資産価格に関する価格感応度「デルタ」を用いて
\[ C_{S}^{BS}S_tX_{t+1,1} \]
という数式が使われています。これはこれで正しいのですが、なぜそのように表示できるかを整合的に説明できていた人はわずかで、多くの人が結果を書き写した感じでした。
例えば、合成関数の微分と逆関数の微分を用いて
\[ C_{\ln S}^{BS} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial \ln S} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial S}\frac{\partial S}{\partial \ln S} = \frac{\partial C^{BS}}{\partial S}\frac{1}{S} = C_{S}^{BS} S \]
となるという説明が可能かと思います。
(3) これも 準テキストの例2.6を参考にして解いた人が多かったです。自分で考えたと思われる人の中には、株式と同様に債券の対数価格そのものをリスクファクターにしていた人がいました。間違いではありませんが、債券の場合は「最終利回り」をリスクファクターと見なせば、その感応度が修正デュレーションになるということを知っていれば、$y(t,T_i)$ をリスクファクターと考えることができたでしょう。
ちなみに準テキストに沿って素朴に式変形していくと (2.13)式での $X_{t+1.i}$ の係数部分は $(T_i - tΔ)$ ではなくて、$(T_i - (t+1)Δ)$ になると思います。前回の授業できちんと触れなかった「偏微分を用いた1次近似」の式を使えば$(T_i - tΔ)$ が現れてくるはずです。
素朴な式変形の場合でも、おそらく、$\Delta$ と $X_{t+1.i}$ の積の部分は他と比べていっそう小さくなるはずなので、無視してもかまわないため
\[ (T_i - (t+1)\Delta)X_{t+1,1} \approx (T_i - t\Delta)X_{t+1,1} \qquad (\because \Delta X_{t+1,1} \ll 1 ) \]
と読み替えて、(2.13)式に帰着させることができると思います。
問題2. 答えは正しい人は多数いました。ただし、議論としては不完全な人がほとんどでした。この段階では厳密な論証を期待していませんが、自分の解答が不十分であるという認識はもってほしいと思います。
ポイントは
(1)答えとなる数字をみつける(それはほとんどの皆さんが出来ていました)
(2)その数字が本当に集合の sup や inf になっていることを「定義」の条件を満たしているかをチェックする
ということで、(2)に頭が向いた感じの人は少数でした。
慣れてくれば(1)だけで十分とも思えますが、慣れないときだからこそ、面倒くさい(2)のような手続きが本来必要だということを述べておきます。
いずれにしても、最大・最小や上限・下限の問題は、計算問題という側面が強いですが、最後の決め手は証明というか条件の確認になることをお忘れなく。
問題3. 手計算した人が多かったです。手計算した人も、検算の意味で何かツールを使って一致するかを調べてもよかったと思います。
(3) で「解なし」と答えた人が比較的多かったですが、連立方程式を行列表示して、逆行列を書けて求めるという方法に慣れすぎているのかもしれません。この問題は逆行列が存在しないケースなので、その方法は使えません。だからといって解がないわけではなく、解は無数に存在します。
もちろん、本当に解がないケースもありますが、いずれにしても逆行列が存在しないからといって、短絡的に解なしとは思わないでください。
GW特別問題については別記事として触れます。
名著『統計と確率の基礎』
FRMの授業に関連して、参考書を一つ紹介しておきます。
服部哲弥『統計と確率の基礎』,学術図書,第2版(第1刷2006.11, 第2刷2008.3),
2000円+税, A5判224頁, ISBN978-4-87361-842-5
服部先生ご自身によるこのテキストの紹介ページ(補足・訂正情報もあり)はこちら。
確率と統計の基本的な話題から高度な内容まで、広範でかつおもしろい例をたくさん用いて分かりやすく説明してくれています。
私は第2版第1刷を持っていますが、
導入は「結婚年齢の男女差」についての話題、最後は「地震発生間隔」を題材に「伊藤の公式」や「Cameron-Martin-Girsanov-丸山の定理」にまで言及しているという何気にすごいテキストです。
服部哲弥『統計と確率の基礎』,学術図書,第2版(第1刷2006.11, 第2刷2008.3),
2000円+税, A5判224頁, ISBN978-4-87361-842-5
服部先生ご自身によるこのテキストの紹介ページ(補足・訂正情報もあり)はこちら。
確率と統計の基本的な話題から高度な内容まで、広範でかつおもしろい例をたくさん用いて分かりやすく説明してくれています。
私は第2版第1刷を持っていますが、
導入は「結婚年齢の男女差」についての話題、最後は「地震発生間隔」を題材に「伊藤の公式」や「Cameron-Martin-Girsanov-丸山の定理」にまで言及しているという何気にすごいテキストです。
2011年5月2日月曜日
5/10(火)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回:市場リスク(1)
第3回目から市場リスク(主に株式ポートフォリオ)を題材に話を進めます。
とはいえ、今日リスク尺度としてのVaRやESの適用は、市場リスクに限った話ではありません。
ここでは、市場で観測される価格データを利用して統計的手法を適用することを念頭におくという意味にすぎないと思ってください。
また、授業で紹介する方法が市場リスク計測方法としてお奨めすべきもの、ということでもありません。
とはいえ、今日リスク尺度としてのVaRやESの適用は、市場リスクに限った話ではありません。
ここでは、市場で観測される価格データを利用して統計的手法を適用することを念頭におくという意味にすぎないと思ってください。
また、授業で紹介する方法が市場リスク計測方法としてお奨めすべきもの、ということでもありません。
準教科書でいうと、2.2.2-2.2.4節 および 2.3.1節の内容をポイントをしぼって説明します。
第3回の講義プレゼンのハンドアウト資料をイントラネット(第3回目のファイルのところ)にアップしておきました。
こちらは例によってプリントして配付はしません。
あと、第3回で扱う演習問題と課題のファイル(こちらは授業時に配付予定)もアップしておきました。
プレゼン資料や準教科書を見ながらでかまいませんので、演習問題も事前に考えてみてください。
問題1はプレゼン資料にある inf という記号を使ったVaRの定義に基づいて考えることになります。
問題2は正規分布に基づく計測方法で、次回の課題の直接的なヒントになっています。
予定は以下の通り
- VaRとESの定義と演習
- 分散共分散法による VaRの計測の概要と演習
- 33業種ポートフォリオの分散共分散法による VaRの計測課題の説明
登録:
投稿 (Atom)