2010年6月30日水曜日

7/6(火) 「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第12回:信用リスク(6)

第12回はデフォルトの依存関係モデルについて概説する予定です。

補足資料をイントラネットにあげておきました。今回アップした補足資料は12回と13回の授業2回分に対応します。
最初の節に、問題1と問題2があります。授業で扱いますが、ぜひチャレンジしてみてください。

予定では、主に

  • デフォルト相関、アセット相関
  • CDO
について、静的な依存関係モデルという観点で概説したいと思います。

QRMでは8.3節あたりの内容、および9.1節のCDOの部分, Example9.43 あたりになります。

あと期末試験のことにも触れる予定です。

2010年6月29日火曜日

「フィ ナンシャル・リスク・マネジメント」第11回フォロー(更新)

もろもろのファイルは、イントラネットに アップしておきました。

第10回の課題についてのレポートを 提出してくれた方のidは以下の通りです。

IM09F001, IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F009, IM09F022,
IM09F023, IM09F025, IM09F026, IM09F037, IM09F038, IM10F030,
IK10F001

以下、レポートについてのコメントです。

(1) k格のt年目のハザード・レートのもつ意味を説明せよ、という問いでした。
厳しく見ると、何かそれらしいことを書いているのですが、不正確な表現だったり、表現自体は間違っていないのだけれども、その理由付けの部分とのロジックが分かりにくかったり、というものが多かったです。

私が意図していたのは、1-exp(-γ(t))≒γ(t)と見なすことで、問題文で与えた定義式をハザード・レートの近似式だと見なすことができ、そのうえで定義式の右辺が「t-1年までデフォルトしていないという条件の下でのt-1~t年の間の(条件付き)デフォルト確率」であることを読み取るというものです。
ただ、「ハザード・レート=○○の確率」という表現は違和感がありました。「ハザード・レート」は「確率」と深く関係しますが、確率そのものを表しているわけではないので、「近似できる」とか「期間あたりの・・・」といった修飾語句がほしいところです。

(2) おおよその人ができていました。理由はよく分かりませんが、部分的に数値結果が私のものと微妙にずれている人が数名いました。完全に私と同じ結果を出していた人も半数以上はいましたので、私のやり方が間違ってはいないと思いますが。計算ファイルとグラフは、イントラネットに アップしておきます。

(3) 約半数の人が正しく(というか私と同じく)結果を出していました。答えが合っていない人については、平均回収率までは数値が合っていてリスク中立ハザードレートにするところで合っていない人と、そもそも平均回収率のところで数値がずれている人に半々くらいでした。

(4) リスク・プレミアム的なことに言及していればOKとしました。そういう回答が大半でした。ただ、もう少し深く考察している人もいました。

さて、今回のレポート課題は線形計画法や非線形方程式を解くという内容を含んでいます。
昨日(6月30日未明まで)の試合中に片付いたでしょうか?

2010年6月28日月曜日

6th World Congress of the Bachelier Finance Society

6/22--6/26の間、Toronto の Hilton ホテルで開催された 6th World Congress of the Bachelier Finance Society に参加&研究発表してきました。
帰国の都合上、最後の1日は参加できませんでしたが、いろいろと刺激を受けてきました。
参加者名簿の人数をざっと数えてものべ500名くらいの参加者という大きな集会でした。

G20と時期が重なりセキュリティが厳しくなったせいもあり、空港からのバスの停まる場所が制限されたり、立ち入りが面倒な区域が設定されたりということもありましたが、個人的には大きなトラブルには巻き込まれることはありませんでした。
どちらかというと、G20と重なったことよりFIFA World Cup と重なったことの方が問題…

私はブルージェーズのナイトゲーム(といっても21時くらいまで明るかったので、途中までデイゲームという感じもしましたが)を1試合観戦してきました。
片道1時間半~2時間くらいでナイヤガラの滝にも行けたのですが、私は結局行きませんでした。

6th World Congress の website はこちら。多くの発表のpresentation がdownloadableになっています。
ちなみに私の講演タイトルからダウンロードできる presentation ファイルは古いバージョンです。当日は20分という時間制約を意識して、もう少し流れを追いやすい順番にして、余計なところは省いたバージョンを作って使いました。ということで、何とか20分内に発表を収めることができました。

次回のBFS Congress は2012年Sydneyです。

2010年6月16日水曜日

6/29(火) 「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第11回:信用リスク(5)

再来週ですが、先に予告をしておきます。
第11回は誘導型アプローチに基づくクレジット・デリバティブ評価について概説する予定です。

予定では、

* リスク中立評価
* Duffie-Singleton モデル
* CDS のプライシング

などを予定してい ます。補足資料の8ページ以降の内容が中心です。
QRMでは9.3~9.5節の部分に相当しますが、授業でも触れたように9.3節のアイデアが最も重要です。
また、single name のCDSは、9.1.2項を参照してください。

「フィ ナンシャル・リスク・マネジメント」第10回フォロー(更新)

もろもろのファイルは、イントラネットに アップしておきました。

第9回の課題についてのレポートを 提出してくれた方のidは以下の通りです。

IM09F001, IM09F006, IM09F007, IM09F009, IM09F012, IM09F022,
IM09F025, IM09F026, IM09F031, IM09F037, IM09F038, IM10F030,
IK10F001

いちおう早めにチェックをして返却するように努めます。最悪、出張前には返却の手続きをしたいと思います。

授業でも触れましたが、私がアップしておいたExcelのデフォルト確率計算ツールには「いい加減なところ」がいくつか含まれていました。

(1) B29セルに埋め込まれた数式の符号が1カ所間違っている(2名指摘してくれていました)
(2) B34セルに埋め込まれた数式は、本来そこで計算すべき式になっていない。
(本来は、「K < V_T < D」ではなく、「min{V_t - Ke^{-b(T-t)} : 0 ≦ t ≦T} > 0 かつ K < V_T < D」 を計算しなくてはいけない。計算は可能だが、複雑になるための前半の事象を無視した)

ちなみに、分析対象として挙げられていた企業は以下の通り(並び順は業種で少しまとめましたが、テキトーです)

鹿島建設、大成建設、清水建設、サッポロ、キリン、メルシャン、沖電気(2名)、IHI、
アイフル(2名)、アコム、武富士、三菱UFJフィナンシャルG、三菱UFJリース、
トヨタ自動車、日産自動車、いすゞ自動車、JAL、ミサワホーム、高島屋、
日本エスコン(私的整理)、ジョイントコーポレーション(会社更生法)、シルバーオックス(破産)


前回のレポート課題、デフォルト確率を算出せよ、というのが直接の問いではありますが、算出していただいたデフォルト確率自体の正否は問題にしません。むしろ知りたいのは「どのように求めたか」「求めた結果をどう評価したか」という点です。
そこを問いとして明言していなかったので、あえて考察などをしなかった人もいたと思います。しかし、普通の感覚であれば、この数字を出して「だから何なの?」と感じたはずです。そう感じたら、最低でも自然にその数字が妥当かどうかについて自分の表明をしたくなると思います。

評価のポイントはおおよそ以下の通りです。
  • 論理性(デフォルト確率算出に用いるモデルの選択理由やモデルのインプット情報について適切な説明をしているか。対象企業の選択理由やそれに関連させた結果の考察をしているか。)
  • 構成力(主要な情報が一目で分かるように工夫して整理されているか。説明に必要なことが「過不足なく」適切に配置されているか。参考文献についての言及など)
  • 加点要素(今回はExcelツールのミスに気づいて対応したか、という点だけ。実際にはオリジナリティがあれば評価します)
返却レポートには、「5/6/0」 のように数字を青字で記入しておきます。
左から順に「論理性/構成力/加点」です。論理力、構成力は本番のレポート同様に、それぞれ10点満点にしてあります。7点が可もなく不可もなくという基準だと思ってください。構成力はどちらかというと甘めになっていると思います。

今回の平均と最高点は、論理性が平均4.77点・最高点6点(4名)、構成力が平均5.38点・最高点7点(1名)となりました。



2010年6月9日水曜日

「フィ ナンシャル・リスク・マネジメント」第9回フォロー(更新)

もろもろのファイルは、イントラネットに アップしておきました。

第8回の追加課題についてのレポートを 提出してくれた方のidは以下の通りです。

IM09F022, IM09F025, IM10F030

授業中に明示した課題ではないので、平常点評価に直接算入はしませんが、記録はしておきます。
また、(1)(2)についての解答ファイルをいずれアップしておきます。

今回提示したレポート課題は、構造型モデル(Mertonモデル or 初到達時刻モデル)の結果式を用いて、自分で選んだ企業のデフォルト確率を算出せよ、というものです。
実際には、デフォルト確率を求める結果式を使うためにインプットする各数値をどう決めるかを熟考せよ、ということが本質的な課題です。

授業でも触れましたが、今回のレポートの評価ポイントは「求められたデフォルト確率の数字が正しいかどうか」ではなく「デフォルト確率を算出するまでのいたるプロセスの説明が(評価者である中川から見て)論理的であり、それが分かりやすく表現されているかどうか」です。


なお、Merton(1974), Black-Cox(1976)の論文は、どちらもJournal of Finance に載っています。ご存じの方も多いでしょうが、大学からなら図書館のwebページから電子ファイルとして入手できると思います。

6/15(火)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第10回:信用リスク(4)

第10回は、デフォルトリスクのある商品の評価の基本的な考え方、および誘導型モデル(特に強度とかハザードレートと呼ばれるものに注目)の理論的背景について概説する予定です。

なお、今回も補足資料をイントラネットにあげておきました。今回アップした補足資料は10回と11回の授業2回分に対応します。
最初のページが予習問題になっていますので、ぜひチャレンジしてみてください。

予定では、

* デフォルト・リスクのある金融商品の評価の基本的な考え方(予習問題の解説)
* 誘導型モデル-用語や概念の整理
* 強度型モデルの数理

を予定しています(QRMでは9.1~9.4節の部分に相当します)。

なお、すでに周知のことと思いますが、22日(火)は休講です。

2010年6月3日木曜日

6/8(火)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第9回:信用リスク(3)

第9回は数理ファイナンスアプローチのうち、構造型アプローチについて概説する予定です。予定では、
  • 構造型アプローチ(+完全情報)の概要
  • Merton モデル(とその応用としての、KMVモデルおよび1ファクターモデル)
  • 初到達時刻モデル(外生的な閾値設定と内生的な閾値設定)
を中心に解説し、時間があれば
  • 構造型アプローチ(+不完全情報)の概要と既存研究紹介
もしたいと思います。

QRMでは8.2節の部分に相当するところを扱いますが、私の方で別途「補足資料」を作成して(といっても昨年度のもののマイナーチェンジですが)、イントラネットにアップしておきます。
必要に応じてダウンロードして、そちらに目を通しておいてください。

なお、授業のときには当日のプレゼン資料のみ印刷して配付します。「補足資料」は印刷の配付はしません。

第9回~第13回は、それなりに高度な数学を使った議論を含んでいますので、ご容赦ください。
ただし、必要以上に数式を記憶する必要はありませんが、どういう形でモデルが作られているかということにはぜひ注意してください。

レポート問題としては数学の議論についても出題しますが、期末試験では「考え方」を問う出題にしたいと思います。もちろんそこそこの数学の議論は必要です よ。

2010年6月2日水曜日

「金融市場の計量分析」中川担当分のレポート課題

「金融市場の計量分析」の中川担当分のレポート課題(単位取得を目指す人だけが対象)です。

提出期限は7月5日(月)とします。
TeX でまとめてもらうことを推奨します。

(1)テキストとして使用した"Credit Risk Modeling" の 5.6節と5.7節に関して

(a) P.244 の上から3番目の数式(等号が成立していない式)の左辺と右辺を具体的に計算して、両者が等しくないことを示せ(必要に応じて、テキストに明示されていない適当な仮定を設定すること)
Hint:Bielecki-Rutkowski, "Credit Risk:Modeling, Valuation and Hedging", Springer(2002)の7.3節を参照

(b)5.7.2項の Bonds with Zero Recovery の結果をふまえて、the first firm の割引社債価格式の違いについて、Jarrow-Yu モデルの場合と Kusuoka のモデルの場合との違い(各パラメータの感応度に対する価格の感応度など)を考察せよ。


(2) Frey-Schmidt のサーベイ論文に関して、6節"Constructing Reduced-form Credit Risk via Nonlinear Filtering" の中で参照番号がついている各式 (29)~(42) の等号の意味を確認せよ。
(「定義」としての等号もありますが、定義として意味をなしているかどうかを検討すること。また、「結果」としての等号については、その等号が成立する理由を丁寧に示すこと)

「フィ ナンシャル・リスク・マネジメント」第8回フォロー(更新)

もろもろのファイルは、イントラネットにアップしておきました。

分析用Excelツールを紹介しましたが、必ずしもそれを使わなければできない課題ではありません。
いちおうツールについて予想されるエラーなどへの対処法を書いたメモもアップしておきましたので、そちらを参考にしてください。

あと、財務指標作成演習として、5社分×2年分のサンプルを利用して、21個の指標(指標を作る手前の前処理を含む)を作るという作業用Excelファイルを用意しました。
これはレポート課題のために最低限作ってみてほしいという指標(やそのために必要な量)の例であって、もっといろいろと指標のアイデアを試してみてください。

授業では演習用ファイルで作業したものを提出したら見ますという言い方をしましたが、いちおう数式埋め込みではなく値だけが入っている答えシートを用意しましたので、自分の計算方法が正しいかどうかを自己チェックしてください。
(計算方法は、プレゼン資料に説明したものに基本的に沿っています。B/S項目とP/L項目を組み合わせて指標を作る場合は、B/S項目は1期前と当期の平均をとっています)

授業でVLOOKUP関数を使って財務指標を計算するという方法をさらっと紹介しましたが、それはExcelをうまく使うとこんなこともできますよ、ということを別に言いたかったわけではありません。
本質的なことは、財務指標を計算する際に本当に正しい財務科目の数値をきちんと引っ張って計算しているかどうかを確認する場合に、計算に使う財務科目名を明示的に引数に入れて数式入力した方が、「売上高」の数値を使いたいときに間違えてその前後の列の科目の数値を使ってしまうミスは避けることができるということです。
ですから、使うのは計算された財務指標の数値ですが、その指標を計算するためにどういう計算をしたかは後で確認しやすいようにしておいた方がよいでしょう。

もし、自分の計算方法は間違っていないはずだが、答えがあわないという場合は知らせてください。私が間違えている可能性は十二分にあります。

いずれにしても紙ベースで提出していただくレポート課題は今回もありません。


あとAR値、CAP曲線については、実際に自分で計算してもらわないと意味がつかめない(というか私の説明ではよく分からなかった)と思いますので、次回演習問題として出題しようかと思います 問題を作成しました

イントラネットに「補足問題:CAP曲線・AR」という問題ファイルを追加しました。
こちらをオプショナルな課題とします。解いた方は、次回の授業時にレポートとして提出してください。


Altman(1968)の論文は、例えばこちらから。

また、モデル評価についてサーベイしている山下・川口・敦賀(2003)の論文については、こちらから。