宿題プリント(配布したもの)を
イントラネットにアップしておきました。
前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の22名(G.W. もあったせいか提出者数は少し増えました)です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。
IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F033, IM08F036, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025,
IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041
以下、コメントです。
(大部分が、昨年度のコメントの repeat になりますが・・・)
問1:(i)についてはあまり問題なかったのですが、(ii)についてはあえて厳しく見たときには完全な解答と見なせるものはほとんどありませんでした。
証明問題では、
何を前提として使っていいのかが重要なのですが、こうした演習問題を解く場合には
テキストに書かれている定義や証明されている性質や定理や命題、およびそのテキストの前提となる基礎数学の知識だけ(場合によっては、どういう事実かをきちんと説明する必要もあると思います)を使うというのがルールになります。
(i)については、テキストにも書かれている「A∩B=空集合のとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)」という(授業で示した)確率の有限加法性と「A∪A^c=Ω, A∩A^c=空集合」に触れていれば問題ありません。
(A^c は A の補集合とします)
(ii)でよく見られたものとしては、
- 証明すべきことは2つある(一般には不等号が成立することと、排反な場合には等号が成立すること)のに、片方しか言及していないもの。片方が分からなかったのか、答える必要性を感じなかったから書いていなかったからか、判然としなかったです。
- 教科書や授業でま だ証明されていない事実を証明せずに使ってしまっているもの。このテキストに沿った場合には、確率の性質として、証明せずに使えるものは、定義そのものと「A∩B=空集合のとき、 P(A∪B)=P(A)+P(B)」というテキストに書いてある性質、あるいは授業で紹介した「A⊂Bのとき、P(A)≦P(B)」という性質くらいです。
この問題に関しては、他のこと(例えば、一般に P(A∪B)=P(A)+P(B) - P(A∩B) であること)は自明と思えてもいちいち証明して使うべきです。証明して使おうとしている人はごく少数でした。
証明の方針としては「数学的帰納法」をうまく用いるのが自然だと思いますが、厳密にいうと 「N=k の場合に仮定して・・・」というところの書き方は、多くの場合厳密には不十分でした(今年は厳しく指摘しませんでしたが)。
厳密には、「k 個の集合の選び方によらず、k個の和集合については問題の不等号が成立する」という書き方をしないといけません。単に A_1, ・・・ A_k の場合に成り立つと仮定しても、それは特別な k 個の集合を選択した場合にだけ成り立つと仮定しているかもしれないからです。少なくとも、集合の選び方によらないことを断っておく文言が必要です。
(集合の演算、∪や∩は普通の演算の和と積に対応するので、交換法則や結合法則は当然成り立つのですが、数学科の集合論の授業では最初にそういう自明に思える性質を証明するということを習います)
後は、N=2 とか N=3 の場合に示して(それも飛躍がある人が多かったですが)、それを強引に一般化している人が多かったです。
ほぼ当たり前に思えることでも、一般の自然数に対して成り立つことを言う場合は数学的帰納法を使うか。飛躍と感じられないように説明する必要があります。
いずれにしても、証明問題はどの既存知識を使えるかどうかを問題の文脈から考えることが必要です。
(東大に入試でも、三角関数の加法定理の証明や、円周率が3.05より大きいことの証明などが出題されたことがあります。特に後者は円周率は3.141592... を知っているから自明というわけにはいかないですよね)
問2: 計算ミスが多少あった以外はだいたいできていました。ただ確率分布を表現する方法が適切でない人が少しいました。S
3 の分布を与えるという場合は、S
3 の取り得る値と確率が対応されているような書き方 P(S
3 = △) =□のような表し方か、S
3 の値と確率の対応表として表すことが必要です。
(期待値の計算なのに、条件付き期待値と勘違いしている人がいました)
(ii)の平均成長率の計算を誤解している人が少しいました。また、 25% ではなく 125%(あるいはそれに相当する小数・分数)と答えた人がいました。教科書での「成長率」の使い方は「粗成長率」というべきもののような気がします。一般には、25%のように答える方が自然と思います。その上で、この 25%という数字は何なのかに言及しているかどうかというところに私はポイントを置きましたが、あまりそのことに触れている解答はありませんでした。
問3:条件付き期待値は確率変数であるので、答え方としては E_1[Y_3](H) = とか E_2[Z_3](TH)=
とか、情報を与える期待値の添え字の時点までのコイントスの結果を具体的に与えて、確率変数の取る値を計算することになるので、手計算派の人はけっこう答えをまとめて書くのが面倒だったと思います。
(この問題については、Excel 派の人が多くなっていました)
また、手付かず(手付けず?)の人もいました。
計算ミスは可能な限りチェックしたつもりです。また、答えの数字をチェックしにくい、あるいは数字のチェックができない答え方の人がいました。
また、根本的に条件付き期待値の計算結果が違っていた人も少なからずいました。授業では丁寧に例題をしたわけではなかったので、その場で理解できなかったかもしれませんが、教科書を参考にすれば計算法は修得できるはずです。
また、そもそも条件付き期待値とは何かをよく復習しておいてください。
Y の方は線形性(授業では前回まだやっていなかったですが)を使って、S の条件付き期待値に帰着させている人がいました。それ自体は悪くない考えです。
ただ、線形性は Z の方には有効ではないのですが、強引に同じような議論をして間違えている人がいました。
問4:手つかず、自分の誕生日の場合だけ、全部という3つの解答パターンがありました。
計算するための自作プログラムのコードをつけてくれた方も何人かいました。
また、私が想定した以上に、この問題の背景について分析してくれた方もいました。こういうのはうれしいですね。
あと(iii) でコールとプットの価格差を計算させたのにはある意図があったのですが、その辺のことに言及してくれていたのはわずかでした。問題の意図を考えてもらうことがむしろ大事で、それがなければ(iii)は、ただの小学生レベルの引き算の問題をさせているだけになってしまいます・・・
(iv) は何人かの人がコメントしてくれていましたが、微分して最大・最小を見つけるとか、Excel のソルバーで最適化するとかいう手段がうまく行かない最大・最小問題のケースです。
ということで 366(閏年生まれも考慮して)通り全てについて計算して、そこから最大・最小を探し出すというのが最も適当な方法と言えます。
成績評価ではプログラムを書く能力の有無を考慮するわけではありませんが、授業の内容を理解しているかどうかを確認する手段として、プログラムを自力で作らせて計算させることは非常に有効だと思っています。
リスク中立確率、株価分布、デリバティブの価値などの計算方法を正しく理解していないと、当然プログラムで正確に表現することはできません。
ただ、正確に理解していてもプログラムでうっかりミスをしてしまうことはよくあることなので、如何に自分で
自分のプログラムの誤りを見つけるかということが大事になってくると思います。
今回全部の小問い正解した人も、自分にプログラムや計算方法に間違いがないと自信を持っていた人はどれだけいるでしょうか?
他の計算問題についても言えますが、自分の計算ミスを他人に指摘される割合を減らして、できるだけ自分でミスを発見して事前に修正できるようになってほしいと思います。
コードを付けていた人で計算結果が正しくなかった人は、ざっとコードを追って問題点が分かった場合にはコメントしています(複数の問題があるかもしれませんが、気づいたところだけを指摘しています)。
あと、手計算や結果の数表をつけてくれた人についても、間違っているところが指摘出来る場合は指摘してあります。