2009年5月27日水曜日

「金融数理の基礎」第6回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第6回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月26日火曜日

「金融数理の基礎」第7回フォロー

第6回の宿題の略解をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の20名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F012, IM09F014, IM09F016,
IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025, IM09F031,
IM09F037, IM09F041

以下宿題の採点コメントです(昨年度と同じような内容です)。

以前に比べると、読みやすいレポートが増えてきましたが、説明不足に感じたり、議論をもっと整理してほしいものも少なくありません。
例 えば式変形を淡々と行っている解答がありますが、何も説明せずに複数の性質を使って一気に式変形していたりするのは、こちらとしてはきちんと理解しているのか、大事な議論をうやむやにして結果につながるように辻褄をあわせているのか判断に戸惑います。
式変形がいたずらに長くなるのが嫌であれば、「○○と△△、および□□により(or を用いて)」という説明を入れてから、複数の性質を使った変形をしてほしいです。

また、反対に説明が冗長に思えるものもあります。少し見直せばもっと短く端的に説明できる解答も多いです。
テストは時間との戦いなので、議論を整理して解答せよというのは厳しい要求ですが、レポートは(建前としては)検討する時間が十分あるので、自分の思考を整理してから解答をまとめてほしいと思います。
このコメント自体は、講義する自分自身への戒めでもあるのですが・・・

問1:(1) E_n[M_{n+1}]=M_n を示すところは多くの人が良くできていましたが、もう少し説明してほしいという解答も少なからずありました。

{M_n} が適合過程であることについて言及する人が増えましたが、まだ忘れている人 or 不要だと思っている人がいるということですね。

さらに細かいことですが、この問題は M_0 も含めてマルチンゲールですが、{X_k} を使って定義しているのは n ≧ 1 の場合なので、 n= 0 の場合については別に確認する必要があります。
 
(2) 数学的帰納法を用いた人と、巧妙な式変形を用いて直接示そうという人に別れましたが、後者の方が多かったです。鍵となる等式が説明なしに成り立つところから議論を進めていたりする人がいましたが、明らかと思えるところでも説明をしてほしいです。
式変形の際の細かい記述ミスについては気づけば直していますが、スルーしている可能性もあるのでご容赦ください。

あと、n=0 の場合に I_n = 1/2(M_n^2 - n) が成立することに言及していない人がほとんどでしたが、触れておく方が議論しては完璧です。n=0の場合だけは自明ですが、対称ランダムウォークの式変形の議論だけでは正当化できないことに注意です。

(3) 実は、前回の宿題であった練習問題6においてΔ_j を M_j とすれば、{M_n} がマルチンゲールであることを証明しているので、マルチンゲール変換の特別な形と見なせて、前回の宿題(一般論)から結論が得られる、という解答が隠れた ベストアンサーかもしれません。

証明は、I_n の定義そのものから前回の宿題とほぼ同じ議論をしているもの、と(2)の式を使って示すものの2通りに分かれていました。この問題を(2)の前においておけば、おそらく全員が前者のアプローチをとったと思いますが、いちおうこれも意図的に(2)の後において、どっちを選択するかを見るつもりでした。
前者の方針だと、n=0 のときは別の議論で確認する必要があります。I_n を {M_k} で定義しているのは、n ≧ 1 のときだからです。
後者は (2) が n= 0 でも成立していることを自覚していれば、n=0 を特別に考えなくてもよいです。

{I_n} が適合過程であることについて言及している人は(1)より少し減っています。

(4) は手つかずの人もいましたし、解いている人の中でもMarkov性の定義を十分理解していないと思われる解答が見られました。
任意の時点 n、任意の関数 f に対して、ある関数 g が存在して
E_n[f(I_{n+1})] = g(I_n)
が成り立つことを示すことになります。
このテキストに沿ってMarkov性を示すには、f を用いて g を具体的に表現するのが最も明解な答え方になります。
途中の議論に不備があったにせよ、略解と同様の正解を得ていた人は思ったよりは多かったです。

g を得ている人でも見た目は I_n と M_n の関数のままで解き終えている人や、M_n が I_n で表されることは(2)から分かるので、I_n と M_n の関数を強引に I_n に対応づけて新たに定義して証明を終わらせている人がそこそこいました。
その理解は正しいですし8割方Markov過程を理解していると判定できますが、関数 g の形を具体的に表すことができるのであれば、具体的に示すことにこしたことはありません。

任意の関数f について考える必要があるのですが、f(x)=x の場合しか考えていない人が少しいました。

あ とテキストの例題のように、I_{n+1}/I_n という比を考えようとしている人がいましたが、株価過程の場合とは異なり、この設定では「I_{n+1} = I_n × 何か」という関係になっていないので比をとる意味はあまりなく、むしろ差に注目する方が自然です。

もちろん、Markov 過程の前提として、それは適合過程であることが必要ですから、(3) で{I_n}の適合性に触れたとしても、ここでも改めて触れておくことは大事かもしれません。

5/28(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第8回:信用リスク(2)(追記)

第8回目は、判別分析によるデフォルト判別の話をします。
判別分析そのものの理論面や財務指標の意味などはさらっと流して、財務指標を説明変数としてデフォルト判別に応用する場合の注意点をフォーカスしたいと思います。
また、第2回目のレポート課題をアナウンスしたいと思います。

予定としては、以下のことに触れるつもりです。準教科書には特に対応箇所がありません。

  • Altman モデル
  • 財務指標の例と作成上の注意
  • 線形判別分析モデル作成時のポイント(分析ツールの説明)
  • モデル評価

Just a note

とりあえずこれにリンク

2009年5月23日土曜日

6/2(火)「金融数理の基礎」第8回:中間試験

6月2日(火)の第8回目の授業は中間試験です。

日時と場所:6月2日(火) 20:10~21:10(正味60分) 第3講義室
※遅刻は試験開始30分後まで認めます(つまり20:40まで)
※追試験の予定はありません(ただし、
正当な理由があり、なおかつ
試験開始1時間前までに当日の受験が不可能であることを中川に連絡してきた場合のみ、追試験の可能性を検討します。ただし、仮に追試験をした場合の成績評価は「学生便覧・講義要綱」の一橋大学大学院国際企業戦略研究科細則の第18条(追試験)3に倣って、得点の8割とします)

試験範囲と出題形式
  • 試験範囲は、教科書の第1章と第2章全体
  • 全体の7割は、メインテキストの例題や練習問題およびその類題を出題する
  • 参考書やノートなどの参照は不可とする。また卓上計算機などの使用も不可とする

5/26(火)「金融数理の基礎」第7回:二項モデルの確率論的整理(4)

第7回目は、教科書の2.5節の残りと1,2章の練習問題をいくつか扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 例題2.5.4 が非マルコフになること
  • 例題2.5.6 のマルコフ過程に対する backward な再帰式の導出法

2009年5月22日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月21日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回フォロー(追記)

配布プリントをイントラネットにアップしておきました。今回のプリントには課題はありません。
プレゼン資料をアップしました。

授業後に、某銀行のリスク計測モデルについての情報を寄せてくださった方がいます。ありがとうございます。

あと、授業で回覧してリストに載せなかった本はこちらこちらです。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の14名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014, IM09F017,
IK09F002, IK09F004

以下、課題(前回問題3)へのコメントです。

ES の計算方法をまだ正しく理解できていない人が若干いました。
(答えだけを列挙すると、(i) -0.8 (ii) H のとき -2, T のとき -0.5 (iii) -0.8 (ii) H のとき -2, T のとき +1)

特に時点1で最初のコイントスの結果で条件付けした場合の計算が不正確な人がいました。

例えば、(ii) で最初のコイントスが H の場合は、

1/(1-0.1) × [(-2)×0.1] = -2

となるのですが、0.1 の部分を 0.2 とか 0.1/0.2=0.05 とかにしてしまっている人がいました。
また、最初のコイントスが T の場合は、

1/(1-0.1) × [1×0.05 + (-2)×(0.1-0.05)] = -0.5

となりますが、(0.1-0.05)の部分が、(0.1-0.04)/0.8 などになっている人がいました。

もう一度ES の計算方法を確認しておいてください。
変に機械的に考えないで、ESの意味そのものを考えれば、求めた数字がESとして適当かどうかを自分でも判定できるはずです。

(v)のコメントについてですが、「時点0でのESの値が同じでも、時点1の状態によってESの値が異なることがある」というような内容の人が多かったです。
これは前回の問題2で私が解説した内容に引きづられたためかもしれません。説明不足だったと思います。すみません。
(ちなみに、時点0 での5/8-ES は L_1 もL_2 も -1 で、時点 1 において u だった場合は、L_1 の方の 5/8-ES は 5となり、L_2 の方の 5/8-ES は -1 でした。また、時点 1 において d だった場合は、L_1 の方の 5/8-ES は -13となり、L_2 の方の 5/8-ES は -1 となります)

ポイントは、損失という意味では、L_1 では最初に u のときには 5 だけリスク資本を積むべき水準になりますが、L_2 では(uでもdでも)-1 のままです。となると、次の時点の状態によって片方はリスクが顕在化し、片方はリスクが現れてこない状態なわけです。そうなるとL_1 の場合に、時点0の段階で5/8-ES の結果が -1 であるとしても、それを時点0でのリスクとすることは、自然には感じられないということです。

問題3においても、多期間リスク尺度を考える以上は、「時点0でのESの値が同じでも、時点1の状態によってESの値が異なる」こと自体は不自然なことではなく、むしろ時間と状態によってリスク値が変わって当然です。
問題なのは、各時点のリスク値および時間による変化の仕方が、「リスク」という意味合いに照らして整合的と思えるかどうかということです。時点1で状態によっては正のリスクが算出されることがわかっているのに、時点0でリスクが負(リスク資本が不要である)という状態は違和感がありませんか?というところがミソです。

ですから、考察する際にはもう少し2つの確率分布の設定の結果の違いに注目することが必要になります。
確率測度 P の下では最初のコイントス結果が H でも T でも 90%-ES がマイナスになりますから、時点0のリスクがマイナスであってもあまり違和感がありません。
(ちなみに、時点0での90%-ES は、時点1の90%-ESの期待値に一致しています。これは一般的に成り立つことではありません)
一方で、確率測度 P^ の下では最初のコイントス結果が T のとき 90%-ES が+1となり、リスク資本が必要な状態になりますから、それが20%の確率でしか起こらないことであったとしても、時点0のリスクがマイナスであり、リスクが正として現れないP のときと同じ値であるということはあまり自然とは思えません。
(ちなみに、P^ の下では時点0での90%-ES は、時点1の90%-ESの期待値に一致しません)

これは一つの説明の仕方ですが、いずれにしてもリスク量は「積むべきリスク資本」という視点からすると90%-ES は不自然な状況を引き起こすということを指摘してほしいというのが出題の意図でした。

2009年5月20日水曜日

「金融数理の基礎」第5回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第5回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月19日火曜日

「金融数理の基礎」第6回フォロー

配付プリント(中間試験情報・宿題つき)とG.W.問題のExcelブックをイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の23名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM06F023, IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F032, IM08F033,
IM08F036, IM09F001, IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F012,
IM09F014, IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024,
IM09F025, IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

第5回分の宿題についてのコメントです(昨年度とほとんど同じコメントになりますが)。

問1:テキストでいうところの「条件付Jensen不等式」とマルチンゲールの条件を組み合わせるだけです。回りくどい説明をしている人が少しいました。また、条件付き期待値であれば、En[ ]のように書くべきなのに、E[ ] としている人が数名いました。
うっかり書き忘れたということでしょうが、条件付き期待値という概念を理解しているかどうかはこの授業で大事なポイントですし、1カ所だけ忘れているようであれば大目に見ますが、何カ所も条件付きであることを明示していない場合は、テストでは減点対象になります。

また、厳密には{φ(M_n)} が適合過程であることに言及する必要があります。ほぼ自明なことですが、そのことについて触れているかどうかで、その人がきちんと定義を確認できているかどうかが判断できます。その意味では適合性について触れていた人は2名くらいでした。

問2:これも、条件付期待値の性質を繰り返し適用して式変形していき、とどめとして {M_n} がマルチンゲールであるという性質を使うことになります。

説明不足と感じられる答案が多く見受けられました。ほぼ自明な変形であっても、ここでは条件付き期待値の性質を適切に利用できるかどうかを見たいわけなので、いちいち式変形にはその根拠を示してほしいところです。そういう意図で出題しています。

また、問1と同じで、{I_n}自体が適合過程であることにも言及する必要があります。自明と感じられるかもしれませんが、少し込み入った定義になっているので、2行くらいで簡単な説明がほしいところです。
これも言及している人はごくわずかでした。

あと、この問題のM_n が対称ランダムウォークとして定義されたものに限定していると勘違いしていた人もいて、M_{n+1} - M_n = X_{n+1} のような記法を使っていた人がいますが、関係ありませんし、
E[X_{n+1]}] = 0 と言われても意味不明です。

問3:本質は計算問題と見なして結果をまずチェックしてそれが正しければ、計算過程の細かい議論の不備には目をつむっています。

(i)(iii) は条件式を出すところまではけっこう出来ている人が多かったです。ただ、図の示し方という意味では不十分な人がいました。
(iii) で log x + log y = log xy や log 1 = 0 という対数の性質に気づけなかった人が若干いました。対数の性質を復習しましょう。

(ii) は恒等式の議論にもちこむと x^2 + y^2 = 2 と x + y = 2 という方程式が出てきますが、この解は x=y=1 なので、条件を満たさず不適となります。計算ミスで間違った解を出している人が若干いました。あと、(ii) だけスキップしたり、j恒等式と見なさずに少し面倒な議論に持ち込んでいた人もいました。

あとどうでも良いですが、キリル文字変換については例えばこちらをお試しください。

5/21(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第7回:信用リスク(1)

第7回目は、信用リスクの初回と言うことで、信用リスク計量にモデルについての概説をしたいと思います。
内容に関しては特に予習するポイントはありませんが、2つ目のレポート課題に向けての知識確認ということでB/S, P/L の基礎知識と財務指標の定義などについての小テストをしようと思っています。

予定としては、

  • 信用リスクのとらえ方
  • 信用リスク計量モデルの分類あれこれ
  • 会計知識の小テスト

です。

2009年5月16日土曜日

雑感

今学期は、月曜にゼミ2コマ、火曜・水曜・木曜に授業1コマずつというスケジュール(水曜は6月第1週で自分の担当分が終わるが)なので、それなりに大変です。

5月の残りの金曜日2回は、前任校東工大MOTでも講義します・・・

火曜の「金融数理の基礎」と木曜「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」は、大部分は昨年度の(本質的には東工大MOT時代からの)配付資料(宿題や演習問題)やプレゼン資料を再利用していますので、準備にはあまり時間がかかっていないと思われるかもしれませんが、さにあらず。

「金融数理の基礎」はぶっつけ本番でもそこそこ講義はできると思います。それでも90分で予定している内容をそれなりにうまく説明するためには、どこの部分をどのくらいの時間をかけて説明するとか、時間が超過しそうなときにはこの部分は省くとか、そういう授業進行のイメージ作りに時間を使います。

「ファイナンシャル・リスク・マネージメント」は、去年とシラバスを変えたので、プレゼン資料を編集する手間が多少あり、正直なところ準備は自転車操業状態です。また、統計分析作業の多くを Excel から、まだ不慣れな R に切り替えたりしているので、データ分析作業にも時間をとられています。

また、そもそもリスク管理は日々見直しされる性質のものですので、説明する際のデータを新しく取り直したり、リスク管理を取り巻く規制の動向や新しい理論・方法についても授業に反映させたりしないと意味がない科目ですので、本質的に毎年内容をチェンジさせる必要が生じます。
ただ、(いちおう経験している)実務から離れてだいぶ時間が経っていますし、最新の実務での動向などは目学問・耳学問に終始してしまい、あまり授業に向けて内容を消化できていないという反省の日々です。

結局自分が出来ることは、ある程度確立している数学モデルについて、その意味するところを説明することだということはわきまえています。
細かいテクニカルな話よりは、リスク計測手法を一般化・普遍化するという視点も大切ということを授業のメッセージとして込めているつもりです。

水曜の博士課程科目「金融市場の計量分析」は、自分の研究テーマである信用リスクについての論文をいくつか取り上げています。教えること及びそのための準備は自分自身のためにもなっていますが、修士向け授業では省略するような計算ロジックの細かいところにもこだわったりするので、準備はそれなりに大変です。

月曜のM1ゼミは、共通のテキストを学生が輪読するというものですが、学生の発表にナイスな教育的突っ込み&フォローをするために、自分でもテキストの予習が欠かせません。いちおうプロなので、ぶっつけでも質問攻めにはできるとは思いますが、フォローの方は準備しておかないと多少不安です。

ICSの授業・ゼミについてはそんな感じです。

研究面では、自分の研究については一区切り付けたので、水面下で走っている共同論文プロジェクト3つ(本当は4つですが・・・)を夏までには目処をつけたいと思っています。

その他にも頼まれ仕事がありますが、とりあえず棚上げ状態。6月に入ったら直ちにその棚を下ろさないと・・・

ということで「暇ではない」ことを無駄にアピールしてみました。
それでも他の人に比べたら、相変わらずマシかもしれませんね・・・

2009年5月15日金曜日

ファイナンシャル・リスク・マネージメント:授業計画の変更

次回から信用リスクの話題に移りますが、シラバスで示してある授業計画案を以下のように修正したいと思います。
最初に信用リスク計測について概説的な話をすることにします。
全体的には当初予定していたトピックスをほとんどカバーする予定です。

7. (5/21) 信用リスク計測についての概観
8. (5/28) デフォルト判別分析
9. (6/4) 構造型アプローチ(Merton モデル、初到達時刻モデル、ファクターモデル)
10. (6/11) 誘導型アプローチ(強度モデルのための数学の整理
11. (6/18) 誘導型アプローチによるクレジット・デリバティブの評価
12. (6/25) 信用リスクの依存関係モデル
13. (7/2) トップダウン・アプローチ
14. (7/9) 信用リスクについての新しい話題
15. (7/23) 学期末試験

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

5/19(火)「金融数理の基礎」第6回:二項モデルの確率論的整理(3)

第6回目では、メインテキストの2.4節の残り~2.5節の例題2.5.4 までを扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 41ページの最後から43ページの中段くらいにかけての説明
  • マルコフ過程の定義および47ページ真ん中あたりの説明
  • 補題2.5.3 が意味するもの
  • 例題2.5.4が、マルコフではないということの意味
また、授業の冒頭で、GW問題についての簡単なレビューと、中間試験についてのアナウンスをする予定です。

2009年5月14日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と関連するファイルをイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の14名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F014, IM09F017,
IK09F002, IK09F004

コメントですが、多少の計算ミスはありましたが大多数ほとんどの人が正しく解答できていました。
標準正規分布関数Φ に対して、Φ(2.33) ≒ 0.99 としましたが、Excel で NORMSINV(0.99) を使って計算した場合との誤差も見てみてください。

第2主成分、第3主成分まで考える際のポートフォリオの標準偏差の計算式を間違えている人がいたので、復習しておいてください。
また、私の指示が曖昧だったためか、別に私がアップした日本の金利データ(円LIBORとswap rate)
を使って、主成分分析をしたうえで答えてくれていた人もいました。
それについては、正誤を確認できませんが、分析プログラムが添付されていたので、プログラムで気づいたことにはコメントしておきました。

2009年5月13日水曜日

「金融数理の基礎」第4回分宿題レポート【返却】

「金融数理の基礎」第4回分の宿題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

「金融数理の基礎」第5回フォロー(追加)

宿題プリント(配布したもの)をイントラネットにアップしておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の22名(G.W. もあったせいか提出者数は少し増えました)です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM08F014, IM08F016, IM08F019, IM08F033, IM08F036, IM09F001,
IM09F002, IM09F006, IM09F007, IM09F010, IM09F012, IM09F014,
IM09F016, IM09F017, IM09F022, IM09F023, IM09F024, IM09F025,
IM09F031, IM09F032, IM09F037, IM09F041

以下、コメントです。
(大部分が、昨年度のコメントの repeat になりますが・・・)

問1:(i)についてはあまり問題なかったのですが、(ii)についてはあえて厳しく見たときには完全な解答と見なせるものはほとんどありませんでした。
証明問題では、何を前提として使っていいのかが重要なのですが、こうした演習問題を解く場合には
テキストに書かれている定義や証明されている性質や定理や命題、およびそのテキストの前提となる基礎数学の知識だけ(場合によっては、どういう事実かをきちんと説明する必要もあると思います)を使うというのがルールになります。

(i)については、テキストにも書かれている「A∩B=空集合のとき、P(A∪B)=P(A)+P(B)」という(授業で示した)確率の有限加法性と「A∪A^c=Ω, A∩A^c=空集合」に触れていれば問題ありません。
(A^c は A の補集合とします)

(ii)でよく見られたものとしては、
  • 証明すべきことは2つある(一般には不等号が成立することと、排反な場合には等号が成立すること)のに、片方しか言及していないもの。片方が分からなかったのか、答える必要性を感じなかったから書いていなかったからか、判然としなかったです。
  • 教科書や授業でま だ証明されていない事実を証明せずに使ってしまっているもの。このテキストに沿った場合には、確率の性質として、証明せずに使えるものは、定義そのものと「A∩B=空集合のとき、 P(A∪B)=P(A)+P(B)」というテキストに書いてある性質、あるいは授業で紹介した「A⊂Bのとき、P(A)≦P(B)」という性質くらいです。
    この問題に関しては、他のこと(例えば、一般に P(A∪B)=P(A)+P(B) - P(A∩B) であること)は自明と思えてもいちいち証明して使うべきです。証明して使おうとしている人はごく少数でした。
証明の方針としては「数学的帰納法」をうまく用いるのが自然だと思いますが、厳密にいうと 「N=k の場合に仮定して・・・」というところの書き方は、多くの場合厳密には不十分でした(今年は厳しく指摘しませんでしたが)。
厳密には、「k 個の集合の選び方によらず、k個の和集合については問題の不等号が成立する」という書き方をしないといけません。単に A_1, ・・・ A_k の場合に成り立つと仮定しても、それは特別な k 個の集合を選択した場合にだけ成り立つと仮定しているかもしれないからです。少なくとも、集合の選び方によらないことを断っておく文言が必要です。
(集合の演算、∪や∩は普通の演算の和と積に対応するので、交換法則や結合法則は当然成り立つのですが、数学科の集合論の授業では最初にそういう自明に思える性質を証明するということを習います)

後は、N=2 とか N=3 の場合に示して(それも飛躍がある人が多かったですが)、それを強引に一般化している人が多かったです。
ほぼ当たり前に思えることでも、一般の自然数に対して成り立つことを言う場合は数学的帰納法を使うか。飛躍と感じられないように説明する必要があります。

いずれにしても、証明問題はどの既存知識を使えるかどうかを問題の文脈から考えることが必要です。
(東大に入試でも、三角関数の加法定理の証明や、円周率が3.05より大きいことの証明などが出題されたことがあります。特に後者は円周率は3.141592... を知っているから自明というわけにはいかないですよね)

問2: 計算ミスが多少あった以外はだいたいできていました。ただ確率分布を表現する方法が適切でない人が少しいました。S3 の分布を与えるという場合は、S3 の取り得る値と確率が対応されているような書き方 P(S3 = △) =□のような表し方か、S3 の値と確率の対応表として表すことが必要です。
(期待値の計算なのに、条件付き期待値と勘違いしている人がいました)

(ii)の平均成長率の計算を誤解している人が少しいました。また、 25% ではなく 125%(あるいはそれに相当する小数・分数)と答えた人がいました。教科書での「成長率」の使い方は「粗成長率」というべきもののような気がします。一般には、25%のように答える方が自然と思います。その上で、この 25%という数字は何なのかに言及しているかどうかというところに私はポイントを置きましたが、あまりそのことに触れている解答はありませんでした。

問3:条件付き期待値は確率変数であるので、答え方としては E_1[Y_3](H) = とか E_2[Z_3](TH)=
とか、情報を与える期待値の添え字の時点までのコイントスの結果を具体的に与えて、確率変数の取る値を計算することになるので、手計算派の人はけっこう答えをまとめて書くのが面倒だったと思います。
(この問題については、Excel 派の人が多くなっていました)
また、手付かず(手付けず?)の人もいました。

計算ミスは可能な限りチェックしたつもりです。また、答えの数字をチェックしにくい、あるいは数字のチェックができない答え方の人がいました。
また、根本的に条件付き期待値の計算結果が違っていた人も少なからずいました。授業では丁寧に例題をしたわけではなかったので、その場で理解できなかったかもしれませんが、教科書を参考にすれば計算法は修得できるはずです。
また、そもそも条件付き期待値とは何かをよく復習しておいてください。

Y の方は線形性(授業では前回まだやっていなかったですが)を使って、S の条件付き期待値に帰着させている人がいました。それ自体は悪くない考えです。
ただ、線形性は Z の方には有効ではないのですが、強引に同じような議論をして間違えている人がいました。

問4:手つかず、自分の誕生日の場合だけ、全部という3つの解答パターンがありました。
計算するための自作プログラムのコードをつけてくれた方も何人かいました。
また、私が想定した以上に、この問題の背景について分析してくれた方もいました。こういうのはうれしいですね。
あと(iii) でコールとプットの価格差を計算させたのにはある意図があったのですが、その辺のことに言及してくれていたのはわずかでした。問題の意図を考えてもらうことがむしろ大事で、それがなければ(iii)は、ただの小学生レベルの引き算の問題をさせているだけになってしまいます・・・
(iv) は何人かの人がコメントしてくれていましたが、微分して最大・最小を見つけるとか、Excel のソルバーで最適化するとかいう手段がうまく行かない最大・最小問題のケースです。
ということで 366(閏年生まれも考慮して)通り全てについて計算して、そこから最大・最小を探し出すというのが最も適当な方法と言えます。

成績評価ではプログラムを書く能力の有無を考慮するわけではありませんが、授業の内容を理解しているかどうかを確認する手段として、プログラムを自力で作らせて計算させることは非常に有効だと思っています。
リスク中立確率、株価分布、デリバティブの価値などの計算方法を正しく理解していないと、当然プログラムで正確に表現することはできません。
ただ、正確に理解していてもプログラムでうっかりミスをしてしまうことはよくあることなので、如何に自分で
自分のプログラムの誤りを見つけるかということが大事になってくると思います。
今回全部の小問い正解した人も、自分にプログラムや計算方法に間違いがないと自信を持っていた人はどれだけいるでしょうか?

他の計算問題についても言えますが、自分の計算ミスを他人に指摘される割合を減らして、できるだけ自分でミスを発見して事前に修正できるようになってほしいと思います。

コードを付けていた人で計算結果が正しくなかった人は、ざっとコードを追って問題点が分かった場合にはコメントしています(複数の問題があるかもしれませんが、気づいたところだけを指摘しています)。
あと、手計算や結果の数表をつけてくれた人についても、間違っているところが指摘出来る場合は指摘してあります。

2009年5月11日月曜日

5/14(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第6回:市場リスク(4)

第6回目は、市場リスクの最終回ということになりますが、市場リスクというよりは、リスク尺度自体に再度目を向けます。

準教科書では、5章の接合関数(Copulas) の最初の方と6章の6.2, 6.3節あたりの内容のいくつかの話題を大まかに扱います。また、多期間リスク尺度については準教科書には触れられていませんが、一般論よりも例をいくつか紹介したいと思います。

予定としては、

  • リスクの統合
  • copula
  • リスク資本配分
  • 多期間リスク尺度導入の難しさ
などの話題をとりあげたいと思います。

2009年5月8日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第4回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。

2009年5月7日木曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回フォロー

配布プリント(課題付き)とプレゼン資料と関連するファイルをイントラネットにアップしておきました。

問題2の主成分分析についての説明が中途半端でしたので、補足説明をイントラネットに追加しておきました。

前回の宿題レポートの提出を確認できたのは、以下の13名です。
提出したはずなのに自分の id が載っていないという人は至急連絡ください。

IM05F023, IM08F007, IM08F010, IM08F013, IM08F014, IM08F020,
IM08F028, IM08F029, IM08F030, IM08F036, IM09F017, IK09F002,
IK09F004

以下、レポートに関するコメントです。

250営業日での99%VaR 超過回数に対する検定に関して、対応する確率の表の作成や、第1種エラーおよび第2種エラーについての記述はほとんどの人が正しく述べていました。
しかし、散漫と事実だけを記したものも多く、結局「グリーン」「イエロー」「レッド」という区分が妥当かどうかについて、説得力のある主張・判断に至っていないものもありました。
「・・・以下の方が区分の基準として望ましい」とか「・・・であるから、このようにゾーン分けをしたと推察される」というような主張で、その理由・根拠も一応納得できるものについてはコメントしています。

当然、妥当かどうかの議論は想像の域を超えないので、それが正しい議論かどうかの判定はできませんが、それでも入手できる限られた情報と方法でいろいろと考えてみることは大切だと思います。

ちなみに、何人かの人が指摘していましたが、BIS規制においては市場リスクに対する所要自己資本額を、「前日の99%VaR値」と「直前の60営業日における日次の99%VaR値の平均に「乗数」を適用した値」の大きい方で与えることにしていており、「グリーン」「イエロー」「レッド」の区分は、この「乗数」を3~4のいずれに設定するかを決めるのに使われます。

所要自己資本額は少ない方がうれしいので、その意味ではVaR はできるだけ低い方が良いのですが、だからと言って VaR を低めに設定しすぎるとVaRを超過するケースが多くなってリスク管理的には本末転倒になり望ましくないので、「レッド」になるほど超過していた場合は低めだったVaRに対して最大の4を掛ける(要するにペナルティ)という対応になります。

詳しくはこちらのページの「2.サーベイの結果」の項を参照のこと。

2009年5月2日土曜日

5/12(火)「金融数理の基礎」第5回:二項モデルの確率論的整理(2)

第5回目は、教科書の2.3節の続き~2.4節を扱います。

予習時のポイント(授業において重点的に説明するところにもなります)として、以下の項目を挙げておきます。

  • 条件付き期待値の重要な性質(例題の説明は省略します)
  • マルチンゲールの定義と基本的な性質
  • 2項モデルにおける割引株価過程および割引富過程がマルチンゲールになること
  • リスク中立価値評価式のマルチンゲールによる特徴付け
条件付き期待値の重要な性質がどのように使われているかを見るために、後半は命題の証明の中身も少し見ていきたいと思います。

5/7(木)「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第5回:市場リスク(3)

第5回目は、金利リスクに関する話題が中心です。ただし、リスク管理の観点に話を絞るので、Vasicek モデルとか CIR モデルとか HJM モデルとか BGM モデルとか、確率微分方程式モデルの話は特にしません。(それは秋学期の中村先生の授業できっちりやると思います)

準教科書にそのまま当てはまるところはありませんが、2.1節の Example 2.6(bond portfolio)には触れておきたいと思います。

あとは参考書指定している Hull 本や関連図書について触れたいと思います。

予定としては、

  • 金利の数式表現、期間構造のモデル化
  • ポートフォリオの金利リスク管理のアイデア(grid point sensitivity, cashflow mapping)
  • 主成分分析を用いたVaR 算出方法
といった話題に触れたいと考えています。

2009年5月1日金曜日

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回分課題レポート【返却】

「フィナンシャル・リスク・マネジメント」第3回分の課題レポートを返却します。

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室の
ドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

採点内容やコメントについて質問・異議等ありましたら、直接中川まで。