2010年10月30日土曜日

第4回レポートの講評

第3回目の課題レポートを1次チェックしての講評です。

第3回課題の解説のときにも触れましたが、まだ書いてあるものを見る限りにおいて、要素、集合、集合族などの区別があいまいに思える人が見受けられます。
私の方で気づいたところは指摘していますので、指摘を受けた人は良く見直してください。

また、数学においては、解答の根拠として使えるのは授業で触れた内容と配付資料に書かれた内容に限るというのが前提です。
(話は飛びますが、この意味で、大学入試問題を大学レベルの数学の知識を使って解答してきた答案をどのように扱うかは非常に微妙な問題になります)

自分は知っていたけど授業や資料に書かれていない結果を使う場合には詳しく言及することが大事です。
また、授業や資料で触れていないことを持ち出している人の多くは「間違って道具を間違って使って」います(間違いが重なって結果だけはOKになっていたりしますが…数学としては×の扱いになります)


問1の前半は比較的良くできていました。外測度の単調性と劣加法性を使う方法がベストです。
ただし、気になる議論や記号の使い方もあったので、いくつか指摘しておきます。

  • m*(A ∪ B) = m*(A) +m*(B) -m*(A ∩ B) という式を持ち出していた人がいました。外測度m* に関して、こうした式が一般に成立することは定理などの形で述べられていません( 「測度 m」に関しては成り立つので証明はできます(授業等では直接触れていませんが)。したがって、これを使った解答は正しいと認められません。
  • m*(A) = 0 のとき、零集合A として空集合とか1点集合に限定した議論。零集合の中には、非可算濃度のもの(カントール集合と呼ばれるもの)もありますので、特別な零集合だけについて示しても議論として不十分です。
  • m*(A) = {0} や m*(A) ∪m*(B) などの表記。m*(A)の正体は0以上の実数か正の∞であることを理解していれば、上の2つのような表記は正しくないことに気づくと思います。うっかり書いてしまったと思いますが、読み手が常に好意的に理解してくれるとは限りません。
  • 「『加算』劣加法性」… もちろん『可算』です。まあこれくらいならあえて減点対象にはしませんが、思いこみをしていたら注意してください。
あと、一方の不等号の成立しか示していないのに、等号成立という結論に持ち込んでいる人がいました。ほぼ自明なことをあえて書いてもらうというのが問題の意図ですので、最後まできちんと議論してほしいです。

問1の後半はきちんとできている人はいませんでした。
「∀B(⊂R) に対して m*(A ∪ B) = m*(B)」が成立しているという仮定ですが、「∀B(⊂R) に対して」というところがポイントです。「偽」だと答えた人の多くが、A ⊂ B で m*(A) > 0 の場合が反例になるという議論をしていましたが、これは A を含むような特別な B だけしか見ていないことになります。そもそも A は Bとは関係なく与えられている状況なので、上の議論は、都合のよい B を先に与えて、さらに都合のよい A を選んでいるという議論に見えます。

他に、前半と同様な議論をして m*(A) ≧ 0 という自明の関係式を導出して、m*(A) = 0 とは限らないという議論で「偽」としていた人もいますが、これも「∀B(⊂R) に対して」の部分を適切に解釈できていないことになります。

また、「真」と答えた人も適切な議論になっている人はいませんでした。

「∀***に対して」や「∃*** 」という部分が、どこに修飾されているかを見抜くことは非常に重要です。


問2 についても、前半は問1と似たような指摘になりますので割愛します。
記号の使い方について指摘されている人は注意してください。集合が { } でくくられていない数字の0と「=」で結ばれるのは変だということをきちんと理解してください。

後半の答えは「偽」です。具体的な反例を示すことが大事ですが、「偽」と答えた人の中にも、具体的に反例を示さないで結論が成り立たない可能性がある(ようにできる)、という感じの議論をしているケースが少なからず見られました。
そういう解答については「だったら具体例を示してよ」という反応になります。「できそう」と「できる」は説得力がまるで違ってきます。


問3 は多少の記号ミスに目をつむっても完全正解者は半数以下でした。答えだけでなくきちんと条件を満たすかどうかについても議論している人も数名ですがいました。評価したいと思います。
いずれにしても、σ加法族については中間試験後の「確率論」で改めて解説します。

解答を見ると「そもそも何を質問されているか分からない」状態で解答されているものもありました。σ加法族ということに慣れていないので、答え方が分からないのも今の段階では仕方がないことですが、少なくとも答えとして求められているものは「5つの(異なる)集合族」だということには気づいてほしいです。

対象となる集合Ω={g,c,p}が与えられての集合族を考えるわけなので、
答えとしては { {g}, {c,p}} のようなものが期待されるわけです。{g} とか Ωがだけだと単に「集合」です。集合をもう一回 { } でくくって集合族になります。

今回の解答例とσ加法族の定義を見比べて、解答例がσ-加法族になっていることを確認してみてください。
(できれば、それ以外の集合族はなぜσ-加法族にならないかも検討してみるとよいでしょう)

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