2010年10月23日土曜日

第3回レポートの講評

第3回目の課題レポートを1次チェックしての講評です。


3回目のレポート課題の問1のいくつかの解説を、また授業後(21:40~22:00くらい)に行いたいと思います。

問1は、完璧に近い出来の人もいましたし、一部だけという人もいました。
気になった点をいくつか挙げておきます。

  • 空集合(ここでは記号φを代用します)が答えであるところを、{φ} と表している人が目立ちました。φと{φ} は違うもので、試験のときに、この区別が出来ていないと大きな減点にするつもりです。{φ}は「空集合を要素にもつ集合(族)」の意味になります。
  • 答えの表記として (0,0) や(0,0]というものが見られましたが、意味から考えるとどちらも空集合ですから、φと答えるのが望ましいです。
  • 集合の上極限、下極限については解答していない人も多かったですが、答えとして 0 とか 1 といった数字を挙げている人がいました。「上極限、下極限」という呼び方は紹介しましたが、対象はあくまでも集合族の和集合と共通部分の組合せで表されていますので、結果は「集合」になります。
  • n=1,2 と同じように、n=∞ のときのA_∞, B_∞ というものを明示して考えていた人がいましたが、∞というのは自然数ではないので、こういう表記は厳密にはできません。可算個の集合族の和集合(あるいは共通部分)をとるという表記で「n=1から∞まで」と読める記号は使っていますが、それらは「∃ n ∈N」 (あるいは「∀ n ∈N 」)という記号で意味づけられるものです。

上の指摘の1つめと3つめは、要素、集合、集合族(集合を要素とする集合)という3つの区別がきちんとついていないということを示唆しています。
最初は混乱しても仕方ありませんが、「∈」と「⊂」の違い、x と{x}と{{x}}の違いなどを自分で分かっているか振り返ってみてください。


問2の答えは「非可算」になりますが、それとは違う答えを出している人がいました。予習用資料の問題にもなっていましたし、略解も示してありました。無理数の濃度は「実数全体」と同じ非可算だということ自体は知識として持っていてよかったと思います。

解答例は濃度の演算規則をうまく使って解答することを期待していて、その方向で解いていたレポートは多かったですが、|R| = |(R-Q) ∪ Q| = |R-Q| + |Q| ということを言うためには、「(R - Q) ∩Q = 空集合」ということにも触れる必要があります。配付資料でそのことが抜けていて、当日の追加訂正で示しただけだったので、重要視されなかったのかもしれませんが、A=B (有限集合)とすると
|A| = |A∪B| = |A| + |B| となってしまい変です。濃度の和をとるときは、互いに素な集合で和集合を撮る必要があるので注意してください。

あと、濃度演算ではなく、 R-Q と R の間に全単射が存在することを示そうという方針の解答もありました。直接全単射を構成するという方針のものと、両方向の単射の存在を示して、Bernstein の定理に委ねるという方針のものが見られました。これらも非常に良い方針ですが、おそらくこの解答は別の文献を参考にしたものと思います。参考にすること自体は非常によいことですが、レポートの表現だけ見ると自分では理解しきっていない状態なのかな、という印象をもちました。


問3は、内容的に正しいことを言っていても、それぞれの質問(反論)のポイントをふまえて、「ここがおかしい」ということを端的に指摘しないと解答としては成立しません。
1つ目は「示された方法では無限小数には附番できない」こと、2つ目については「対角線部分をずらしたものが有理数とは限らない」ことを指摘することが想定したポイントで、具体例を示せればなお良いでしょう。
その意味で、答えの表現からだとポイントがつかめていないと思えるものが多かったです。自分では「解答例と同じことを指摘したつもり」という人がいるかもしれませんが、そう受け取ってもらえる表現かどうかを自分なりに見直してみてください。


問4は、選択公理の話をしていなかったので解けなくても仕方ない部分もありましたが、単射や全射の定義そのものに関係する部分をブランクにしたつもりでしたので、論理のつながりを注意すれば半分くらいはブランクを埋められると思いましたが、手をつけた人でも出来はそれほどよくありませんでした。
正確にいうと、必ずしも内容としては間違いではないけれども、前後のつながりを考えると、より適切な式や記号を入れるべき、という理由で不正解にしたものもあります。

試験では、重要な命題の証明論理を穴埋め式で考えてもらう出題形式も考えています。



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