2012年1月24日火曜日

第14回の課題レポートについて

本当は今日の授業の最初にやった定理を前提にした問題でしたので、前回の時点できちんと解けなくても仕方なかったのですが、出題意図を組んで何人かがチャレンジしてくれました。

(1) は Wealth equation を使うことと、$\Delta_{k+1}$ が $\mathcal{F}_{k}$-可測をふまえて$\Delta_{k+1}$ を $\mathcal{F}_k$-条件付き期待値の外に出すことと、$\tilde{P}$ の下で $\{ S_k\}$ がマルチンゲールになること、とまとめられます。

まず、wealth equation への言及なしに
$$ \tilde{W}_k^{\Delta} = W_0 + \sum_{j=1}^k \Delta_j(\tilde{S}_j - \tilde{S}_{j-1}) $$
のような関係式を出している人が数名いました。
もちろん正しいのですが、wealth equation がベースと考えると、上の関係式の成立が自明であるとは言い難いので、これが成り立つことの詳しい説明は必要だと思います。

また、割引株価が $\tilde{P}$-マルチンゲールであることを直接使わずに、遠回りの説明で示している人がいました。それで構わないのですが、 $\tilde{P}$がリスク中立確率測度だということの定義をきちんとふまえればストレートな説明ができたと思います。

いずれにしても、ある確率過程がマルチンゲールであることを示すという問題については復習しておいてください。

(2)は行き詰っている人の方が多かったです。$\tilde{E}[W_k^{\Delta}]$ という期待値を考える問題だということを忘れている感じで議論している人や、$\tilde{E}[\tilde{W}_k^{\Delta}]$ の段階で止まってしまった人などが見られました。

計算で示すことも大事ですが、そもそもポートフォリオのリスク中立な世界での将来の期待価値を現時点の富と無リスク利子率で特徴付ける話と問題の意図を読み取れば、マルチンゲール云々の話を知らなくても、素朴なファイナンス理論のアイデアで答えの予想はつくと思います。

繰り返しますが、「金融数理の基礎」の内容は、普通簡単に説明されることを将来の一般化をふまえてあえて難しい道具立てをして説明しているということが多いです。
数学の議論を要求しているところでも、数式で混乱したら、あえて問題の本質を数式から離れた視点で見出そうとすることも大事だと思います。

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