【授業の概要】(※ 2011 年度までと若干授業内容が変わります)
確率モデルを用いて金融市場を理論的に分析する学問である「数理ファイナンス」の基本的な概念を理解するために必要な数学(確率解析)の基礎的な内容を理解してもらうために、その前提となる基礎的な数学の知識・考え方を講義する。
【履修のための条件】計量ファイナンス系のM1 向け科目だが、意欲があれば誰でも受講可能。
【授業の目的・到達目標】離散時間モデルにおけるデリバティブの価格付け理論の理解を最終的な目的とするが、そのために必要となる確率論の知識・考え方および、さらにその前提となる集合論の基本的な知識・考え方まで立ち戻って理解してもらうことを目指す。
【授業の内容・計画】(※ 2012 年1 月段階の構想のため変更の可能性あり。詳細は9 月に告知予定)
1. (10/2) Guidance & Introduction : 講義全般のオリエンテーション(高校数学の『論理』の復習など)
2. (10/9) 集合論(集合の演算、写像)
3. (10/16) 集合論(写像、集合族)
4. (10/23) 集合論(集合族,濃度)
5. (10/30) 集合論(同値関係ほか)
6. (11/6) 確率論(確率空間、確率変数)
7. (11/13) 確率論(期待値、独立性)
8. (11/20) 中間試験
9. (11/27) 確率論(条件付き期待値)
10. (12/4) 確率論(マルチンゲール)
11. (12/11) 2 項モデルを用いた解析(金融市場モデル)
12. (12/18) 2 項モデルを用いた解析(単純ランダムウォークを用いた金融市場モデル)
13. (12/25) 2 項モデルを用いた解析(ヨーロピアン・デリバティブ)
14. (1/8) 2 項モデルを用いた解析(ヨーロピアン・デリバティブ)
15. (1/15) 2 項モデルを用いた解析(ブラック・ショールズ公式への収束)
16. (2/5) 学期末試験
※海外出張などにより、スケジュール変更の可能性あり
【テキスト・参考文献】
1. 今岡光範他『これだけは知っておきたい教員のための数学I 代数・幾何」培風館(2007)
2. 関根 順, 『数理ファイナンス』, 培風館(2007)
※ 2~5 回目は1 の第1 章の記述に沿って、6 回~15 回については2 の第1 章の1.1 節~1.4 節と1.8 節に沿って解説する予定。ただし、確率論の部分は別の資料で補足する予定その他、授業中やブログで参考文献を紹介する。
【成績評価の方法】中間試験(50%)、期末試験(50%)。平常点を考慮する場合もある。
2012年1月30日月曜日
2012年1月27日金曜日
「金融数理の基礎」第15回フォロー(追記)
2012年1月24日火曜日
第14回の課題レポートについて
本当は今日の授業の最初にやった定理を前提にした問題でしたので、前回の時点できちんと解けなくても仕方なかったのですが、出題意図を組んで何人かがチャレンジしてくれました。
(1) は Wealth equation を使うことと、$\Delta_{k+1}$ が $\mathcal{F}_{k}$-可測をふまえて$\Delta_{k+1}$ を $\mathcal{F}_k$-条件付き期待値の外に出すことと、$\tilde{P}$ の下で $\{ S_k\}$ がマルチンゲールになること、とまとめられます。
まず、wealth equation への言及なしに
$$ \tilde{W}_k^{\Delta} = W_0 + \sum_{j=1}^k \Delta_j(\tilde{S}_j - \tilde{S}_{j-1}) $$
のような関係式を出している人が数名いました。
もちろん正しいのですが、wealth equation がベースと考えると、上の関係式の成立が自明であるとは言い難いので、これが成り立つことの詳しい説明は必要だと思います。
また、割引株価が $\tilde{P}$-マルチンゲールであることを直接使わずに、遠回りの説明で示している人がいました。それで構わないのですが、 $\tilde{P}$がリスク中立確率測度だということの定義をきちんとふまえればストレートな説明ができたと思います。
いずれにしても、ある確率過程がマルチンゲールであることを示すという問題については復習しておいてください。
(2)は行き詰っている人の方が多かったです。$\tilde{E}[W_k^{\Delta}]$ という期待値を考える問題だということを忘れている感じで議論している人や、$\tilde{E}[\tilde{W}_k^{\Delta}]$ の段階で止まってしまった人などが見られました。
計算で示すことも大事ですが、そもそもポートフォリオのリスク中立な世界での将来の期待価値を現時点の富と無リスク利子率で特徴付ける話と問題の意図を読み取れば、マルチンゲール云々の話を知らなくても、素朴なファイナンス理論のアイデアで答えの予想はつくと思います。
繰り返しますが、「金融数理の基礎」の内容は、普通簡単に説明されることを将来の一般化をふまえてあえて難しい道具立てをして説明しているということが多いです。
数学の議論を要求しているところでも、数式で混乱したら、あえて問題の本質を数式から離れた視点で見出そうとすることも大事だと思います。
(1) は Wealth equation を使うことと、$\Delta_{k+1}$ が $\mathcal{F}_{k}$-可測をふまえて$\Delta_{k+1}$ を $\mathcal{F}_k$-条件付き期待値の外に出すことと、$\tilde{P}$ の下で $\{ S_k\}$ がマルチンゲールになること、とまとめられます。
まず、wealth equation への言及なしに
$$ \tilde{W}_k^{\Delta} = W_0 + \sum_{j=1}^k \Delta_j(\tilde{S}_j - \tilde{S}_{j-1}) $$
のような関係式を出している人が数名いました。
もちろん正しいのですが、wealth equation がベースと考えると、上の関係式の成立が自明であるとは言い難いので、これが成り立つことの詳しい説明は必要だと思います。
また、割引株価が $\tilde{P}$-マルチンゲールであることを直接使わずに、遠回りの説明で示している人がいました。それで構わないのですが、 $\tilde{P}$がリスク中立確率測度だということの定義をきちんとふまえればストレートな説明ができたと思います。
いずれにしても、ある確率過程がマルチンゲールであることを示すという問題については復習しておいてください。
(2)は行き詰っている人の方が多かったです。$\tilde{E}[W_k^{\Delta}]$ という期待値を考える問題だということを忘れている感じで議論している人や、$\tilde{E}[\tilde{W}_k^{\Delta}]$ の段階で止まってしまった人などが見られました。
計算で示すことも大事ですが、そもそもポートフォリオのリスク中立な世界での将来の期待価値を現時点の富と無リスク利子率で特徴付ける話と問題の意図を読み取れば、マルチンゲール云々の話を知らなくても、素朴なファイナンス理論のアイデアで答えの予想はつくと思います。
繰り返しますが、「金融数理の基礎」の内容は、普通簡単に説明されることを将来の一般化をふまえてあえて難しい道具立てをして説明しているということが多いです。
数学の議論を要求しているところでも、数式で混乱したら、あえて問題の本質を数式から離れた視点で見出そうとすることも大事だと思います。
(受領確認)第14回レポート
「金融数理の基礎」第14回分レポートの提出者は以下の通りです。
提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。
IM11F003, IM11F005, IM11F006, IM11F014, IM11F021, IM11F041,
IK11F003, IK11F011
提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。
IM11F003, IM11F005, IM11F006, IM11F014, IM11F021, IM11F041,
IK11F003, IK11F011
2012年1月23日月曜日
1/24(火)「金融数理の基礎」第15回:離散時間モデル(デリバティブ価格評価)
授業の最後の10分弱で、授業評価アン投稿を公開ケートに回答してもらう予定です。
最終回ですが、残っている準教科書の7.4.4項に関連する話題になります。
前回の続きで
* リスク中立確率-2項モデルにおける結果
* デリバティブ価格のリスク中立評価式
* 応用例
という流れで進めたいと思います。
最終回ですが、残っている準教科書の7.4.4項に関連する話題になります。
前回の続きで
* リスク中立確率-2項モデルにおける結果
* デリバティブ価格のリスク中立評価式
* 応用例
という流れで進めたいと思います。
2012年1月18日水曜日
2/7(火)「金融数理の基礎」:期末試験
日時:2月7日(火)18:30~19:45(正味75分)
場所:第3講義室(席順はこちらで指定)
遅刻は試験開始30分まで認める(すなわち 19:00まで)。
また、試験開始30分後から試験終了5分前(すなわち 19:00~19:40)の間は、早く終了した者の退室を認める。
【試験範囲およびその他の注意事項】
max{中間試験の点数, 期末試験の点数} × 0.5 + 期末試験の点数 × 0.5
として100点満点に変換する。
場所:第3講義室(席順はこちらで指定)
遅刻は試験開始30分まで認める(すなわち 19:00まで)。
また、試験開始30分後から試験終了5分前(すなわち 19:00~19:40)の間は、早く終了した者の退室を認める。
【試験範囲およびその他の注意事項】
- 試験範囲は主として、第9 回~第15 回までの授業内容および配付資料。ただし、数学という積み上げ科目の性質上、第7 回までの内容も当然含まれる。特に板書した内容およびレポート課題の問題については復習しておくこと。
- テキスト、参考書の参照は不可。ただし、第13回目の授業で配付した「期末試験メモ用紙」の裏側の枠内部分に手書きでメモしたもののみ参照することを許可する。この、手書きメモは試験答案と一緒に提出してもらう(採点答案といっしょに返却する)。
- 卓上計算機などの使用は不可とする。
max{中間試験の点数, 期末試験の点数} × 0.5 + 期末試験の点数 × 0.5
として100点満点に変換する。
2012年1月17日火曜日
「金融数理の基礎」第14回フォロー
今回の配付資料をイントラネットにアップしておきました。
いちおうレポート課題としては、最後の演習問題だけとします。
FTAP の証明の穴埋めは自習課題としておきます。
なお、前回(第13回)配付の資料で、予習用問題の問4 (ii) で $Y$ の単関数表示の一部に間違いがあることを指摘していただいたので、修正しておきました。
(誤) $Y= \cdots +4\cdot \mathbf{1}_{\{HTT,THH\}}+ \cdots$
(正) $Y= \cdots +\frac{9}{2}\cdot \mathbf{1}_{\{HTT,THH\}}+ \cdots$
それと予習用問題の問5の解答例を今回載せた資料を配付したのにあわせて、予習用問題の問4, 問5 を計算させた Excelファイルを前回(第13回)のところにアップしておきました。ご参考まで。
いちおうレポート課題としては、最後の演習問題だけとします。
FTAP の証明の穴埋めは自習課題としておきます。
なお、前回(第13回)配付の資料で、予習用問題の問4 (ii) で $Y$ の単関数表示の一部に間違いがあることを指摘していただいたので、修正しておきました。
(誤) $Y= \cdots +4\cdot \mathbf{1}_{\{HTT,THH\}}+ \cdots$
(正) $Y= \cdots +\frac{9}{2}\cdot \mathbf{1}_{\{HTT,THH\}}+ \cdots$
それと予習用問題の問5の解答例を今回載せた資料を配付したのにあわせて、予習用問題の問4, 問5 を計算させた Excelファイルを前回(第13回)のところにアップしておきました。ご参考まで。
2012年1月13日金曜日
1/17(火)「金融数理の基礎」第14回:離散時間モデル
準教科書の7.4.4項に関連する話題の続きになります。
* 原資産の取引戦略
* 「裁定戦略」と「無裁定市場」
* 複製戦略
* リスク中立確率
という流れで進めたいと思います。
* 原資産の取引戦略
* 「裁定戦略」と「無裁定市場」
* 複製戦略
* リスク中立確率
という流れで進めたいと思います。
また、具体例などは2008,2009年度のテキストであった
S. E. シュリーヴ(長山 いづみ他訳),「ファイナンスのための確率解析I:二項モデルによる資産価格評価」, シュプリンガー・フェアラーク東京(2006)
※原書:S. E. Shreve, Stochastic Calculus for Finance I: The Binomial Asset Pricing Model. Springer(2004)
の1章・2章を参考にします。
2012年1月10日火曜日
「金融数理の基礎」第13回フォロー
予習用問題の(4)までの解答例をつけた今回の配付資料をイントラネットにアップしておきました。
(配付したプリントの(1)の解答例にタイポがあることを指摘していただいたので、そこを修正してあります)
また、一般に $\{\mathcal{F}_k\}$-適合過程 $\{ X_k\}$ を「デリバティブ」と定義したわけですが、これは一般にアメリカン・デリバティブや先物(futures)を念頭においたものです。
テキストによって、デリバティブの定義はいろいろですので注意してください。
授業では、アジアン・オプションやルックバック・オプションのようなエキゾチック・オプションを例に説明しましたが、正確にはこれらは $X_k = 0$ for $k \le N-1$ とおいて、満期時点の $X_N$ に対して
$$ X_N = \left( \frac{1}{N+1}\sum_{k=0}^N S_k - K \right)^+, \quad X_N = \max_{k=0,1,\cdots,N} S_k - K $$
のような形で与えられる確率過程ということになります。
また、ヨーロピアン・デリバティブもデリバティブの一種としてとらえられます。
$X_k = 0$ for $k \le N-1$ および $X_N = f(S_N)$ として、確率過程 $\{X_k\}$ を定義すればよいです。
(配付したプリントの(1)の解答例にタイポがあることを指摘していただいたので、そこを修正してあります)
また、一般に $\{\mathcal{F}_k\}$-適合過程 $\{ X_k\}$ を「デリバティブ」と定義したわけですが、これは一般にアメリカン・デリバティブや先物(futures)を念頭においたものです。
テキストによって、デリバティブの定義はいろいろですので注意してください。
授業では、アジアン・オプションやルックバック・オプションのようなエキゾチック・オプションを例に説明しましたが、正確にはこれらは $X_k = 0$ for $k \le N-1$ とおいて、満期時点の $X_N$ に対して
$$ X_N = \left( \frac{1}{N+1}\sum_{k=0}^N S_k - K \right)^+, \quad X_N = \max_{k=0,1,\cdots,N} S_k - K $$
のような形で与えられる確率過程ということになります。
また、ヨーロピアン・デリバティブもデリバティブの一種としてとらえられます。
$X_k = 0$ for $k \le N-1$ および $X_N = f(S_N)$ として、確率過程 $\{X_k\}$ を定義すればよいです。
2012年1月5日木曜日
1/10(火)「金融数理の基礎」第13回:離散時間モデル(金融市場モデルの定式化)
次回からの残り3回は、金融市場の離散時間モデル(特に2項ツリーモデル)を定式化する話をします。
これまでずっと準備してきた数学的概念が、やっと金融市場の概念と対応してモデル化されていくことになります。
繰り返しますが、前回配付した予習用問題にはチャレンジしておいてください。
具体的には、準教科書の2.6.3項、3.5.5項、4.7.5項、7.4.4項の内容をミックスとして触れていくつもりです。
* 2項ツリーの確率空間としての導入
* デリバティブの確率変数としての導入
「デリバティブ価格の期待値としての意味づけ」は次回の話題にしたいと思います。
これまでずっと準備してきた数学的概念が、やっと金融市場の概念と対応してモデル化されていくことになります。
繰り返しますが、前回配付した予習用問題にはチャレンジしておいてください。
具体的には、準教科書の2.6.3項、3.5.5項、4.7.5項、7.4.4項の内容をミックスとして触れていくつもりです。
* 2項ツリーの確率空間としての導入
* デリバティブの確率変数としての導入
* 原資産の取引戦略
という流れで進めたいと思います。
「デリバティブ価格の期待値としての意味づけ」は次回の話題にしたいと思います。
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