2011年11月30日水曜日

12/6(火)「金融数理の基礎」第10回:確率論(期待値、条件付き期待値)

次回は期待値、そして条件付き期待値について触れます。
ただ前回でコメントし忘れたところをいくつか最初に補足したいと思います。

準教科書の4.7節の4.7.1〜4.7.3項までと7.4節の7.4.1項までの内容に触れたいと思います。

* 確率測度による積分と確率分布による積分
* 期待値
* 条件付き期待値の定義とそのイメージ
* 条件付き期待値の計算

という流れで進めたいと思います。

条件付き期待値を「確率変数」として理解するということがポイントになります。

「金融数理の基礎」第9回フォロー

今回の配付資料をイントラネットにアップしておきました。

例題の解説が尻切れとんぼになってしまったので、解説付きで解答例をイントラネットにアップしておきました。

独立性についての説明ができませんでしたが、配付資料に目を通しておいてください。
演習問題については、集合 $A,B$ が独立と言うことの定義は $P(A \cap B) = P(A)P(B)$ が成り立つことである、ということの他に、確率変数 $X,Y$ が独立ということも考える問題もあります。
確率変数の独立性も資料で説明していますが、授業でもやった確率変数から生成される $\sigma$-加法族$\mathcal{F}_X$ と $\mathcal{F}_Y$ を考えた場合は
\[ \forall A \in \mathcal{F}_X, \forall B \in \mathcal{F}_Y \ P(A \cap B) =P(A)P(B) \]
が成り立つことが 確率変数 $X, Y$ が独立だということの定義ということができます。

また、授業で無限回のコイントスに関して確率測度 $P$ を導入することは容易ではないという話をしましたが、その補足です。

授業でもやったように $\Omega = \{H, T\}^{\mathbb{N}}$ として
\[ \mathcal{F} := \sigma\{ \{ \omega \in \Omega | \omega_k = H \} \ \forall k \in \mathbb{N} \} \]
のように $k$ 回目のコイントスの結果が H であるような事象たちを含む最小の $\sigma$-加法族で与えるという話をしました。
実際には、公正なコインを考えれば $\forall k \in \mathbb{N}$ について
\[ P( \omega_k = H) = P(\omega_k = T) = \frac{1}{2} \]
を満たすような $P$ を考えればいいというだけなのですが、これをきちんと説明するには「無限直積測度」という話をする必要があり、その前提で「直積測度」という話をしないといけませんので、説明を省きました。
(直積測度自体は、積分論において Fubiniの定理と呼ばれる積分と積分の順序交換に関する結果を理解するときにも必要になります)

ただし、公正なコインの無限回コイントスは、実は授業でその後に紹介した「閉区間[0,1]からランダムに数を1つ選ぶ」ということと、本質的には同じことになります。
H を 0、T を 1 と見なすと、例えば無限回コイントスの結果は $11010001\cdots$ のように表すことと同一視できますが、さらにこれを二進小数展開と対応させて
\[ \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{0}{2^3} + \frac{1}{2^4} + \frac{0}{2^5} + \frac{0}{2^6} + \frac{0}{2^7} + \frac{1}{2^8} + \cdots \]
と見なすこともできます。実はこの対応は全単射です。つまり無限回コイントスの1つの結果は[0,1)の1つの実数ともれなく1対1に対応するというわけです。

こうみると例えば1回目にHとなる事象は、ランダムに引いた数が $[0,\frac{1}{2})$ に含まれるということに対応してLebesgue測度の観点から、確率 $\frac{1}{2}$ と分かりますし、最初の3回の結果が THH となるという事象は、ランダムに引いた数が $[\frac{1}{2}, \frac{5}{8})$ に含まれるということに対応することがわかり、Lebesgue測度の観点から確率も $\frac{1}{8}$ と自然なものになることが分かります。

2011年11月25日金曜日

「金融数理の基礎」第8回:中間試験採点(続報版)

解答例はイントラネットにアップしておきました。

受験者数は19名。ガチンコ採点の段階ですが、
最高得点は94点(100点満点)。80点台が1名、70点台が1名、60点台が4名です。
返却前までに再チェックをするので、得点は変動すると思います。


以下、簡単なコメントです。

[問題1] 問1~問3 は比較的よくできていました。問4は、前半は数え方を間違えている人が少しいましたし、前半の答えを後半に書いている人などいました。そもそも「濃度」とは何かを忘れている感じの答えもありました。問5は結論に対して2点。理由の説明で多少の表現の不備はおまけしていますが、「単射である」「全射でない」ことにそれぞれ言及していることが必要になります。
問6 は誰も正解していませんでした。まあ、今回の中で一番難しいかな、と思って作った問題ですが、B の要素が0以上の偶数の部分集合であるということと、逆像をしっかり理解していれば前半は誰か正解してほしいところでした。


[問題2] 間違い一つにつき3点減点です。したがって5つ以上間違いがあると0点になります。減点法は厳しいかと思いましたが、昨年度も同様の問題は減点法で採点しました。証明の穴埋め問題で、とりあえず何か書いたら1つ2つ当たってたということについて積極的に評価すべきかどうかということに関して、それはあまり意味がないと考えましたので、中間試験では減点法を適用しました。



[問題3] 問2は正解している人が比較的多かったです。問1(ア)は (0,1] のように左端を0とする答えが多かったです。左端の点は正負の符号が毎回入れ替わるので絶対値だけ見てはだめです。機械的にこういう場合は0になると思いこまれないように今回は少し意地悪くしました。具体的に小さいnに対して区間を図示すれば少なくとも全てのnについて0が含まれないこと、$\frac{1}{4}$ が左端の数字になることは見えたと思います。端点が閉か開かというところが違っているときは減点しています。


問1(イ)の証明は、12点配点で3点ずつの減点法なので4つ以上間違いだと0点ですが、(ア)が間違っていても対偶のところが正しい場合は減点幅を1点にとどめています。証明の構造としては分かっているという人はそこは若干評価をしています。

[問題4] 問1のグラフは形状としてはだいたいの人があっていましたが、縦軸上の白丸表示が明確でないときは減点しました。問2は "]" や ")"をつけないで解答した人がいました。ここは $a$ の式あるいは数字が正しければ ")" や "]" が間違っていても減点を1点にとどめました。問3は、答えだけあっている場合には1点。あとは単関数としての表示ができていたり、関数を正部分と負部分に分けて可積分関数だという確認のもとに議論しているという場合には答えが違っていても3点くらい与えています。そちらの考え方の方が大事だと思っています。


[問題5] 問1は比較的よくできていると思いました。計算ミスもありましたが、計算過程がまちがっていなければ3点は与えています。問2は $a,b$ の値は正しい人が多かったです。$C$ は端点の開閉が違っている人がいました。問3は、記述の程度によって減点はしていますが、(a)では「 $\{f_n\}$ が単調増大列ではないこと」 (b)では「例えば $g=2$ という$E$上の可積分関数で一様に上から押さえられる」ことに言及していれば正解としています。

2011年11月24日木曜日

11/29(火)「金融数理の基礎」第9回:確率論(確率空間、確率変数)

第9回から、確率論の話題に入っていきます。

準教科書の2.6節の2.6.2項までと3.5節の3.5.4項までの内容に触れます。
(予習用資料をイントラネットの第9回のところにおいてあります)

* 確率空間とその例
* 確率変数
* 確率分布
* 独立性について

という流れで進めたいと思います。

「金融数理の基礎」中間試験答案の返却について

「金融数理の基礎」中間試験の採点答案とメモを本日返却するよう手配します。
(採点した答案・メモについてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名右のところに赤丸で囲まれた赤い数字が100点満点での今回の点数です。

(最終的には期末試験の成績と勘案して成績評価のための得点調整の可能性はあります。また、期末試験の成績が重視される方式になっていることを忘れないでください)

共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。

中間試験の採点結果について質問・異議等があれば、12月6日(火)までに、直接中川に問い合わせてください。

2011年11月16日水曜日

11/22(火)「金融数理の基礎」第8回:中間試験

シラバス等で予告はしていますが、第8回目の授業は中間試験となります。
重要な追加事項は、この記事を更新する形で伝えます。
(もちろん授業中に伝えますし、必要があれば学内メーリングリストでお伝えします)


日時:11月22日(火)18:30~19:45(正味75分)
場所:第3講義室(席順はこちらで指定)

遅刻は試験開始30分まで認める(すなわち 19:00まで)。
また、試験開始30分後から試験終了5分前(すなわち 19:00~19:40)の間は、早く終了した者の退室を認める。


【試験範囲およびその他の注意事項】

  • 試験範囲は第7回目までの授業内容および配付資料。特に板書した内容およびレポート課題の問題については復習しておくこと。試験に関するポイントは授業中に口頭で伝える。
  • テキスト、参考書の参照は不可。ただし、第5回目の授業で配付した「中間試験について」の裏側の枠内部分に手書きでメモしたもののみ参照することを許可する。この、手書きメモは試験答案と一緒に提出してもらう(採点答案といっしょに返却する)。
  • 卓上計算機などの使用は不可とする。
なお、中間試験と期末試験はそれぞれ100点満点で採点するが、最終成績評価は
 max{中間試験の点数, 期末試験の点数} × 0.5 + 期末試験の点数 × 0.5
として100点満点に変換する。

第6回の課題レポートについて

第6回目の課題レポートをチェックしての暫定的な講評です。

問1は、まず与えられた関数を単関数として正しく認識できていなかった人がけっこういました。したがって単関数に対する積分としての考え方は正しくても結果は間違うことになります。あと計算のケアレスミスが少し目立ちました。


問2の(1)は「単関数であること」を明確な根拠で述べている人は少なめでした。授業で与えた単関数の定義を満たしていることを、きちんと確かめないと、何となく単関数っぽいものを書いても正解という判断にはなりません。


(2)は半数くらいの人はできてましたが、元の式から $f_5$ を単関数として正しく認識できていなかった人や計算ミスの人がいました。


(3)は手つかずの人も多かったです。適切にできていたのは一人でした。何かしらの答えを出した人は、n=5を代入すれば自分の結果が正しいかを判断できたはずです。一般の式を提示する場合、簡単な場合に答えが一致するかを確かめるのは大切なことです。


問3は何人かの人がチャレンジしてくれていました。
(1)の可測性の証明は惜しい人がいましたが、逆像を全て適切に書けている人はいませんでした。
確かに少し面倒な逆像になるように問題を作っていますが。
そのかわり、(2)は可積分でないという結論を適切な議論で述べられている人が数名いました。

(受領確認)第6回レポート

「金融数理の基礎」第6回分レポートの提出者は以下の通りです。

提出したはずなのに自分のIDが
無いという人は、早めに中川に連絡ください。


IM11F003, IM11F004, 
IM11F006, IM11F011, IM11F014, IM11F021,
IM11F041, IK11F003, IK11F007, IK11F011

「金融数理の基礎」第7回フォロー

今回の配付資料、前回問題の解答例をイントラネットにアップしておきました。

2011年11月11日金曜日

首都大学東京での集中講義

情報数理科学2/情報数理科学特論2(集中講義)
タイトル:信用リスク・モデルへの確率解析の応用
担当教員: 中川秀敏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)
場所:首都大学東京南大沢キャンパス 8号館610号室

【授業の予定】※あくまでも予定です。
• 11 月15 日(火曜)
– 10:00~12:00
∗ デフォルト(債務不履行)をどう定式化するか? ~必要最低限の会計知識と二つのアプローチ
∗ 確率論の準備~ブラウン運動、フィルトレーション、停止時刻
– 13:30~15:30
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Merton モデル


• 11 月16 日(水曜)
– 10:00~12:00
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Black-Cox モデル
∗ 構造型(+完全情報)アプローチ~Leland モデル
– 13:30~15:30
∗ 構造型(+不完全情報)アプローチ~Duffie-Lando モデルほか


• 11 月17 日(木曜)
– 10:00~12:00
∗ 誘導型アプローチへのイントロダクション(ポアソン過程)
– 13:30~15:30
∗ 誘導型アプローチ~ハザード・レートとその性質、マルチンゲールによる特徴付け(デフォ
ルト強度)


• 11 月18 日(金曜)
– 10:00~12:00
∗ 誘導型アプローチ~クレジット・デリバティブ価格付け(割引社債、CDS)(プロジェクタ
で概説)
– 13:30~15:30
∗ 信用リスクの依存関係について (プロジェクタで概説)