2012年2月16日木曜日

成績確定

2011年度秋学期の私が関係する授業・演習の単位はすべて確定させます。

2012年度の「ファイナンシャル・リスク・マネジメント」について

【授業の概要】(※ 2011 年度までと大きく授業内容・形態が変わります)
金融リスク(市場リスク・信用リスク)の計量に関するいくつかの論文の講究を通じて、モデルの理論的背景(特に数学的議論)の理解を深め、実際の金融リスク・マネジメントとの距離感や実用化の方法などについて議論する。

【履修のための条件】計量ファイナンス系のM2 向け科目という位置づけだが、意欲があれば誰でも受講可能。

【授業の目的・到達目標】
金融リスク計測に関連するモデルの理論的側面について、数学的議論を通じてきちんと理解することを目指す。くわえてモデルの実証方法を理解し、部分的に論文中の手法を再現できるようにリスク計測技術の向上も目指す。さらに、専門学術雑誌に掲載された学術論文をきちんと読む姿勢を身につけることも副次的に目指す。

【授業計画】(※ 2012 年1 月段階の構想のため変更の可能性あり。詳細は4 月初めに告知予定)

1. (4/3) Guidance & Introduction : 講義全般のオリエンテーション
2-3. (4/10, 4/17) 社債スプレッドと流動性:Chen et al.(2007)
4-6. (4/24, 5/1, 5/8) VaR の感応度分析:Gourieroux et al.(2000)
7-9. (5/15, 5/22, 5/29) デフォルト相関とコピュラ:Li (2000)
10-12. (6/5, 6/12, 6/19) リスク・ファクターモデル:Gordy (2003)
13-15. (6/26, 7/3, 7/10) 構造型モデルの原点:Merton (1974)

※海外出張などにより、スケジュール変更の可能性あり

【直接扱う論文】

[1] Chen, L., D. A. Lesmond, and J. Wei, “Corporate yield spreads and bond liquidity,” The Journal
of Finance, 62, 119-149 (2007)

[2] Gordy, M. B., “A risk-factor model foundation for ratings-based bank capital rules,” Journal of
Financial Intermediation, 12, 199-232 (2003)

[3] Gourieroux C., J. P. Laurent, and O. Scaillet, “Sensitivity analysis of Values at Risk,” Journal of Empirical Finance, 7, 225-245 (2000)

[4] Li, D., “On default correlation: a copula function approach,” Journal of Fixed Income, 9, 43-54
(2000)

[5] Merton, R. C., “On the pricing of corporate debt: the risk structure of interest rates,” The Journal of Finance, 29, 449-470 (1974)


【他の授業科目との関連】「金融数理の基礎」「金融数理」「金融データ分析の基礎」「統計科学の数理」などの授業を一通り履修しており、確率論・統計学の基本的な事項を修得していることを期待する。

【成績評価の方法】平常点(小レポートや課題への取組、発言内容など)。いわゆる筆記試験は行わない

【学生へのメッセージ】予習に相当時間をかけないと授業について来られないはずです。席に座って何かを教わりたいという姿勢の人は最後まで続かないでしょう。

2012年2月10日金曜日

解いてみました…

正解であることは別に保証しません。解答方針だけは分かって満足してるので。

(1) $\frac{1}{\sqrt{2\pi t}}e^{-\frac{x^2}{2t}}$

(2) $e^{(\frac{1}{2}\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2)t}$

(3) $e^{(\frac{1}{2}\alpha^2+\beta^2)t}$

(4) $W_s^2 + 2t - s$

(5) $2\sqrt{\frac{t}{\pi}}$

(6) $2\sqrt{\frac{t}{\pi}}$

(7) 満たす方程式自体はいろいろ考えられるけど期待されているのは熱方程式? $\frac{\partial f}{\partial t} = \frac{1}{2}\frac{\partial^2 f}{\partial x^2}$

(8) $\left(\frac{e^{\alpha}+e^{-\alpha}}{2}\right)^t$

(9) $e^{\alpha Z_s}\left(\frac{e^{\alpha}+e^{-\alpha}}{2}\right)^{t-s}$

(10) $\frac{15}{128}$

(11) $\frac{15}{28}$

(12) $Se^{(r - \frac{\sigma^2}{2})t + \sigma W_t}$

(13) $Se^{rt}$

(14) $S^2e^{2rt}(e^{\sigma^2t}-1)$

(15) $2S_ue^{(r+\sigma^2)(T-u)}$

2012年2月9日木曜日

「金融数理の基礎」の成績評価について

「金融数理の基礎」期末試験の採点答案とメモを本日返却するよう手配します。
(採点した答案・メモについてはコピーをとってあります)

1枚目の答案の氏名右のところに
青い○で囲まれた赤い数字が100点満点での期末試験の点数です。
また、赤いで囲まれた数字が、この講義に対する点数としての成績評価になります。
この点数は、以下のように算出しました。
max{中間試験の点数, 期末試験の点数} × 0.5 + 期末試験の点数 × 0.5 + 平常点(課題レポートの出来に応じて1~6点)

課題レポートについては、1回でも出していれば1点、毎回出していて平均くらいの出来なら5点、といった感じにしました。平常点はすこし甘めにつけました。

なお、上記の点数が60点以上の人は、それでまずA~Cの評点をつけました。
(80点以上がA, 70~79がB, 60~69がCというルールに沿っています)

次に、59点以下の人については、試験の平均点などを勘案して「最終成績が50点以上」の人は成績処理上60点(C)をつけることにしました。
最終成績が40点以上」かつ「4つの大問のうち2つ以上で大問の平均点を上回った点数をとっている」の人も成績処理上60点(C)をつけることにしました。
過去3年間の救済条件に比べると、やや甘めではありますが、基礎科目という位置づけで平時の取り組みと部分的にでもきちんと理解している跡が見られれば評価するということで判断しました。
このケースの人は緑でCと記入しています。


共同研究室からメールで連絡があると思いますので、8階の共同研究室のドアのところ個人フォルダから受け取ってください。


なお、期末試験の採点結果について質問・異議等があれば、2月16日(木)までに、直接中川に問い合わせてください。

2012年2月8日水曜日

「金融数理の基礎」:期末試験採点講評(更新)

解答例はイントラネットにアップしておきました。


受験者数は17名。 問題冊子に示したとおりの配点でのガチンコ採点は一通り終了しました。
2回目の見直し採点を行い,期末試験としての素点は確定させました。
いちおう中間試験と課題レポート評価をもとにした成績も算出していますが、最終的な成績のつけ方はもう少し考えます。
ただし、過去に比べても、試験問題の難易度はあまり変えていないつもりですので、必要以上に救済するつもりはありません。

なお、期末試験だけの最高点は85点(1名)です。

なお、大問別の平均点は以下の通りです。
問題1:13.59 (/25点)   問題2:7.29 (/25点)  問題3:11.65 (/25点)  問題4:10.29 (/25点) 

以下は各問題についての簡単な講評です。

【問題1】 問題の背景はトランプ1枚をランダムに選ぶだけのことです。それをふまえて「マークが赤か黒か」と「数字部分を4で割った余りはいくつか」に応じてそれぞれ点数(確率変数 $X$ と $Y$)を与えて、最終的にマークと数字からのポイントをかけ算したものを得点とする(確率変数$Z$)といったゲームを想定してもらう問題でした。

そう言われればもっと気楽に答えられたというかもしれませんが、質問の仕方をわざと難しくしていたこともありますし、テストということで必要以上に難しく考えすぎたのでしょう。
その意味で数学というよりは国語力の要素が強かったのでしょうか。

(1) これはできていてほしい問題でしたが、間違えている人もいました。
(2) 二つとも正解という人はかなり少なかったです。どちかといえば $Y$ の期待値の正答率が低かったです。(1)を間違えていても期待値は正解という人はいました。
(3) 何を示せばいいか理解できていると判断できたら2点あげました。
(4) (2)の答えが間違っていても、独立な確率変数の期待値の計算を意識している(かどうかは本当は分かりませんが)という意味で、 (2)の積になっている人には1点あげました。
(5) どうも逆像は苦手な人が多いようです。ゲームの点数が2点になるカードは何種類かを答えるだけの問題です。
(6) 減点を1つ間違いにつき1点にしました。5個間違いなら3点になります。ここの条件付期待値は、要するに「マークだけ分かったときのゲームの点数の期待値」および「数字だけ分かったときのゲームの点数の期待値」を考えよ、という問題でした。ですから難しく考えすぎなければ、条件付期待値の性質に頼らずとも、直感で入る数字は分かったかと思います。


【問題2】少し本格的な数学の問題にしましたが、(1)~(3)くらいは解けるかな、という期待でした。

(1) 必要条件と十分条件は、混乱すると思いますが確実に答えてほしいところでした。間違った人の方も半数くらいいました。
(2) 授業でもやりました。説明不足なものが目立ちましたので、ポイントを完全に抑えていないと減点しています。
(3)「期待値が一定」というものが入らないと、最後の結論に直接つながりません。
(4) 下線部(d)の期待値の中を見ると、$k = \ell+1$ の場合だけ項が残っているので、$k=\ell + 1$ということに気づけます、という意図で出題しました。
(5) 条件付期待値の定義は分かりにくいので、これが一番難しいかな、と思っていました。できていたのは一人だけでした。

【問題3】いちおう授業で出しますよ、といったところを中心に出したつもりです。

(1) 過不足なく3つ選んでいて4点。一つ少ない、一つ多いは2点、1つ正解なら1点、という風にしました。さすがに全部選択した場合は0点にしました。
(2) $\mathcal{F}_k$-可測とすると「(未来の情報を使うことになるので)不合理」だというニュアンスがない場合は減点しました。しっかり説明できていると判断できた人は数名でした。
(3) 遠回りな説明のものもあって最初は減点したりしていましたが、期待値の計算が本質的に分かっているというものは正答として扱いました。
(4) 完全正解以外は正解ごとに1点与えるようにしました。(a)(d)(e) のところの出来が相対的に今一つでした。
(5) サービス問題のつもりで出題しましたが、意に反して不正解or空欄が多かったです。期待値の方はまじめに計算しなくてもリスク中立確率の下での株価の期待成長率は無リスク利子率に一致するというファイナンスの原則に気づけば、2期間後に株価がリスク中立確率下で平均何倍になっているかは、安全資産を2期分複利で運用したときと同じ倍率 $(1+r)^2 = (1+\frac{1}{6})^2$ であることも納得できると思います。


【問題4】出しますよと言っていたタイプの問題です。(2)だけは少し応用ですが。

(1) $Y$ 以外の変数の値を書いているような人が数名いました。もったいないです。$Y$ は後で計算が楽になるような設定にしたつもりですが、かえって仇となったのでしょうか…
(2) この問題は手付かずの人も多かったのですが、意外と健闘が見られたという印象です。
(3)(4)(5) はサービス問題のつもりでしたが、出来はあまりよくありませんでした。時間切れの人も多かったのか空欄のままの人も多かったです。